海の猫   作:Byaraku

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訓練

 青い海、青い空。チラホラと雲が流れていき、チロチロと頬を撫でる。気持ちのいい日だ、空も僕の門出を歓迎しているようだ。今僕の目の前には立派なお城、その下には大きな町。綺麗に鋪装された人工島のような巨大な島。海軍本部、マリンフォードが写っていた。

 

「でか。」

 

 反射的にそんなことを口走る、前に居た島で全てが完結していた僕は感動すら覚える。聞くと見るではここまで違うのか。

 

「ははは、すごいじゃろ。」

 

 船首に座っていた僕に、ガープが声をかけた。

 

「うん。あの島しか知らなかったからね。」

 

 ガープと僕はすっかり親しくなっていた、あの闘いの後一緒に島を出てここまでやってくる間いろいろな事を話した。闘った時使っていたのは何だったのかとか他にはどんな所があるのかとか。海軍入隊のことはガープが話を通してくれたらしい、他の人も良くしてくれた。まあ、怯えの様なものも混じっていたが気にしない。

 今日から僕も海兵という扱いになるらしい、楽しみだ。

 

「よしついたぞピトー!船を降りるぞ。」

 

 そうこうしている内に目的地に着いたらしい、僕はガープたちに連れられて船を降りた。

 船を降りた後、僕は海軍候補生の入学式に出席していた。何でも僕が来た時タイミング良く、正規募集の新兵の募集が終わり試験やら式典を開く時期と被ったらしい。その日は新しい制服の着心地を確かめて、食堂で夕食を食べた後、案内された宿舎の自室で寝た。

 

 早朝、宿舎全体に鳴り響くサイレン。僕はそれに殴られた様に目を覚ます。しかし、体は毛布を離そうとしない。まだ眠りから覚めるのを拒絶している様だった。

 

「うぅ。」

 

 必死に睡魔に抵抗するように声を漏らす、海軍に入隊してからはや二週間とちょっと。まさか朝早くに起きるのがこんなに辛いとは思わなかった。生物的な本能なのかこれといって近くに危険がないと、どこまでも自堕落になりそうな気がする。島で暮らしていた時は、猛獣やら海賊やらで結構しっかりとした脅威があったが、まだ実戦というよりかは訓練が主な仕事なので警戒心があまり仕事をしない。サイレンが聞こえてから一分ほどで、僕は自分の睡眠欲と決別しベットから飛び出る。

 

「おはよ、チャズカ。」

 

 僕はルームメイトに朝の挨拶をする、僕のここ最近の習慣になっている。

 

「おはよ、ピトー。」

 

 チャズカもそう返してくる。洗面台に向かい、水を掬いそれに顔を沈める。

 

「今日そっちは。」

 

 僕はタオルで顔を拭きながら、チャズカに尋ねる。チャズカ・スク、宿舎の部屋が割り振られた時に一緒の部屋になった女の子だ。端正な顔つきで、燃えるような赤い髪が特徴。

 

「昨日と同じだよ、どうせ分かって聞いてるでしょ。」

 

 顔を洗い終わり歯を磨いていた僕は、そう返してきたチャズカの方を向く。

 

「バレた?」

 

「遅れるよ。」

 

 僕の問いかけに制服を着終えそっけなく返すチャズカ、そう現在進行形で僕は今遅れそうなのである。僕が今住んでいるのは三等兵から一等兵が住むのを許されている宿舎、そして三等兵から一等兵までには早朝のサイレンが鳴ってから十分以内に準備を整え、廊下にに並び宿舎常駐の上官の点呼に備えなければならない。

 今の時刻は六時九分、猶予は僅かだ。僕は、流れるような動作で口を濯ぎ制服の袖に腕を通す。そして自慢のスピードで廊下に躍り出た。扉の前には一足先に立っていたチャズカがいた、他の部屋の前にも女性海兵が並んでいる。そして、廊下の奥から女性の上官が現れた。

 

「総員!点呼開始!」

 

 上官の声が廊下に響き渡る、これが僕たち一等兵以下の海兵の日常。伍長以上になるともっと良い宿舎に移れるし、朝の点呼から解放されるから皆んな頑張るらしい。でも、今期の女性海兵は男性海兵よりも少し優遇されてたりする。今期入隊した人数はざっと見積もって一千人ほどその殆どが男性だった、女性はその半分にも満たない二百人ほど。これにより、部屋に飽きが生まれ。本来四人で一部屋な所、二人で一部屋使えるのだ。

 

「一号室!整列完了!」

 

「二号室!整列完了!」

 

「三号室!整列完了!」・・・

 

 続々と、同期達の声が聞こえる。同期と言っても、あまり話したことはないが。

 

「十八号室!整列完了!」

 

 僕の隣のチャズカが声をあげる、昨日は僕がしたから今日は彼女だ。

 

「二十五号室!整列完了!」

 

「点呼完了!各自、配属された部隊の予定に従って行動されたし!解散!」

 

 その後僕は、チャズカと共にグラウンドに向かった。

 

「腕立て三百回、始め!」

 

 良い天気の空、良すぎて少し暑い。皆んなもそう思っているようで、その顔から辟易している様子がうかがえる。

 正直、海軍の肉体訓練は退屈だ。腕立ても走るのもスクワットも簡単に出来てしまう、しかし退屈ばかりでは無い。戦闘訓練がある、なんせ僕の相手はゼファー先生がしてくれるのだ。最初の戦闘訓練で相手を数秒でノックアウトしてからというもの、ゼファー先生直々に見てもらえることになったのだ。僕は歓喜した、ゼファー先生が強かったから。最初見たときにも思ったが、尋常ではない。ガープにも届くのではないかと思っている、そんな先生と訓練ではあるが。戦えるのだ、それも毎日。喜ばないわけがない。

 そんなことを考えていたら、腕立てが終わった。

 

「グラウンド百周、始め!」

 

 そんなこんなで、グラウンド百周、腹筋三百回、スクワット三百回、武装行軍が終わりひと段落つく。三十分間の休憩をはさみ、お待ちかねの戦闘訓練だ。

 

「あんた、どうして汗ひとつ書いてないのよ。」

 

 横を向くと、武装行軍で背負っていた装備をおろして芝生で伸びているチャズカが何か言っていた。

 

「さあね、一部だと僕がゾオン系悪魔の実の能力者なんじゃないかって言われてるけど、違うよ。」

 

 そんなチャズカに、最近の噂話で答える。

 

「知ってるわよ、あんた水泳訓練参加してたじゃない。」

 

 彼女も最近の話題で返してくる、能力者じゃなかったってだけでも話題になってたな。

 

「そうだね。」

 

 実の所、僕はここで少し浮いてる。猫のような耳と尻尾が原因なのか、四本しかない指が原因なのか、甲殻類の関節のような膝が原因なのかはわからないが、同期から少し距離を感じる。それともオーラだろうか、ガープの船にいた頃船員の一人に誤ってオーラを当ててしまったことがあるのだが。尋常ではない怯え方をしていた、それ以来、オーラは極力薄く纏う程度にしているのだが。

 

「チャズカ、何で僕避けられてるのかな。」

 

「そりゃ、同期にあんたにみたいなのがいたらね。」

 

 それがどうしたんだ、チャズカの返事は曖昧でわかりにくい。

 

「何不満そうな顔してんのよ、それぐらい自分で考えなさい。」

 

 チャズカはそう言って、水を飲みに行った。

 

 

 

 

 




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