海の猫   作:Byaraku

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種子

 ピトーが切り落とした海賊の首を持って、船のある海岸に戻っているとここにくる途中に置いてきて来てしまった海兵達が駆け寄ってきた。

 

「ピトー少尉!ご無事でしたか!」

 

 そのうちの一人が、慌てた様子で言葉をかけてくる。

 取り逃した海賊団の船長と部下の数人が逃げたのを追う追撃部隊としてピトーを中心にその他三等兵から曹長までの海兵三十名で負っていたのだが、茂みになっている山道に差し掛かってから部隊の移動速度が落ちて来たのでピトーが一人で行くと言い9名の海兵をその場に残し残党には気を付けてと言い残し行ってしまったのだ。

 

「うん、問題ない。そっちは。」

 

 そう言うと、船長と乗組員だと思われる海賊の死体から切り取った生首を掲げる。

 

「は!こちらに被害はありません、接敵はしませんでした。」

 

 そう答えるのはこの小隊でピトーの次に偉いパッケーノ曹長、ピトーがいない間の小隊の指揮を任されている。

 

「少尉殿、お顔に血が。」

 

「ん。」

 

 ピトーはパッケーノ曹長の声を聞き顔にかかった返り血を拭う。その様子を見ながら、パッケーノは思う。

 ピトー少尉は美しい人だ、その顔はまさに人形のようと言う言葉がこれほど似合う人はいないだろう。人間ではありえない耳や尻尾もそれに拍車をかけている。しかし、同時に恐ろしい人でもある。海賊、犯罪者からしたら、ピトー少尉は確実に相手にしたくないタイプの海兵だろう。少なくともパッケーノからの印象はそうだった、顔色一つ変えずに投降を拒否した海賊を惨殺していくその様は他の海兵の間でも恐怖と畏怖の対象となって来ている。

 普通、訓練期間を終えたばかりの海兵は戦いの際、人を殺してしまったり凄惨な死体を見たりした時吐いてしまったり精神に傷を負ったりなどするものだ。パッケーノ曹長自身新兵の頃は経験したし、そうゆう新兵を何人も見ていた。しかしピトー少尉にはそれがないのだ。

 それゆえ、多くの海兵からはサカズキ中将のような人だと思われている。

 

「任務も終わったし、おツル中将の所に戻るよ。」

 

 ピトーは手土産のように、部下に海賊達の生首を持たせる。持たされた部下達は引き攣ったような顔をしている女性海兵は特に、だがピトーは気にすることは無いそのままおツル中将の軍艦が停泊している海岸に足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 場所は変わり、ここは最弱の海と名高い東の海。そんな海の島で、岩だらけの海岸いや磯と言った方がしっくりくる岩場で座礁した船の積荷を数十人の男たちが漁っていた。

 

「おほっ!結構溜め込んでやがるなぁ!」

 

 ガチャっガチャっと男が金貨を漁る音が響く、その他の男達もそれぞれ船の積荷を漁っている。

 

「お!こっちは酒樽だ!」

 

「干し肉もあるぞ!」

 

 偶然見つけた座礁した船、漁ってみると結構多く金貨やら骨董品やら食料なんかが出てきた。それはこの男達山賊にとって、とても喜ばしいことだった。最近は海軍や王国軍の監視がキツくあまり実入りがいいとは言えない状況だったからだ。

 

「よーしお前ら!今日は宴だ!」

 

「いよっしゃ!」

 

「さっすがお頭!」

 

 次々に喜び山賊のリーダーを讃える声をあげる男達、各自各々財宝やら食糧やらが入った木箱大樽を担いで山道を登り森の中に戻っていった。

 

(・・・・骨董品類は全部売りかな。)

 

 山賊達は山の奥の拠点に戻ってから、奪って来たものの仕分けをしていた。と言っても、仕分けをしているのは獲物をちょろまかさないリーダーから信頼されている下っ端なのだが。他は宴の準備をしている下っ端、小屋の中で寝ているリーダーを中心とした山賊内のカースト上位の連中。そんな中、骨董品の仕分けをしている下っ端ヒグマは心の中で呟いた。

 

「しっかし、こうゆうのはわかんね〜な。」

 

 仮にも、これから売りに出す物の選別をしながらつまら無そうに言うヒグマ。東洋風の絵皿を選別用の木箱に入れ、身選別の木箱から顔のような模様の付いた不気味な壺を取り出した。

 

「ハハ、趣味わりー壺。」

 

 ヒグマが手に取った壺の感想を呟いたその時。

 

「よお、ヒグマ。壺や皿なら目利きのきく俺が見てやろうか。」

 

 能天気な声でヒグマの同僚である自称元古物商の男であった。

 

「なんならこれ全部やってくれよ。」

 

「ギャハハ、それ一個だったらいいぜ。」

 

 ふざけた様子で言う自称元古物商の同僚カザン、ヒグマはだろうなと溜息を吐く。

 

「で〜、ちょっと見せてみろ。」

 

 手に持っていた壺をわたし、ヒグマは思う。どうせ出鱈目だろ、と。この山賊団自体、ならず者の集まりで街で普通に生きられなかったクズの溜まり場。ここにくる前、何をしていたかなんてお互いに何も知らない者がほとんどだった。

 

「お!こいつは!なーんか見たことあんなって思ったら、街にいた頃資料で少し見たことがあんだよ!」

 

 少し興奮したように言うカザン。

 

「なんでもカキンとかカコンとか言う昔に滅びた国の儀式に使う器具らしいぜ、壺の上の穴に血を一滴垂らして横の顔みてえな模様の口の所に手を入れたら不思議な力が手に入るとかなんとか。」

 

 そのままの勢いで、熱弁する。

 

「ふーん。」

 

 ヒグマは興味無しとでも言うかのように答えるだけ。早く作業を終わらせようと木箱に手を伸ばす。

 

「いで!」

 

 しかし、ヒグマが次の物を取ることは叶わなかった。どうやら注意力散漫で木箱から飛び出ていた釘に指を刺してしまったらしい。

 

「は!よそ見してるからだよ!」

 

「チ!丁度いい、試してやるよ。」

 

 そう言うと、ヒグマは壺に少し出た血を垂らし側面の口に手を突っ込んだ。だが変化は起こらない。

 

「は!やっぱなんも起こらねーじゃねぇかよ!」

 

 指を怪我したことを、紛らわせるかのように怒鳴る。

 

「ギャハハ!そんなんまやかしに決まってるだろ!」

 

 カザンはヒグマを馬鹿にしたように言うが、その瞬間、壺の上の口から妖精のようなものが出て来てヒグマの口に何やら透明な卵のようなものをねじ込んでいった。

 その光景を見たものは居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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