東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜 作:プルプルマン
ほんのちょっと僅かに吐血しておきます。
ようやく煙が晴れてきたことによって、浮舟の姿を探せるようになったと思われるが……?
『いないわね…今度は何処に潜んでるのかしら。魔理沙はどう?見つけられそう?』
『いや、私も見失なっちまったが、大体こういう時にあいつがやりそうなこともなんとなくだが察しがつくようになってきたぜ。』
そう言いつつ魔理沙はその方向をチラリとも見ることなく、まるで頭の後ろに目が付いているかのように、真後ろへと向けて4条のレーザーを撃ち込んだ。
驚いた様子で揺らめいた空間から姿を現した浮舟がレーザーを回避し、そのまま水面に着弾したレーザーが飛沫を飛ばす。
『お!やっぱり当たったな。この分だと私の来世はサトリ妖怪になっちまうかもなぁ。』
『どうにも腑に落ちませんね。どうして私の潜んでいる場所がわかったのですか?』
『簡単なことだ。お前、姿を隠した後に後ろから攻撃する癖があるだろ?何故かわかってしまうんだな、これが。』
そんなどこぞの秘神みたいな…それにしても、よく魔理沙が見破ったものだ。
そこまで考えて、霊夢はその理由に思い当たった。
『どっちも狡い…似た者同士かぁ。』
幸にしてその呟きはどちらにも聞こえていなかったらしい。
もし聞こえていたら、またしても面倒ごとが一つ増える所だった。
こちとら一反木綿そのものをどうにかしないというだけで相当面倒くさいというのに、これ以上抱え込まなければならないものを増やされてはたまったものではない。
そんな霊夢のひっそりとした安堵など知るよしもなく、魔理沙が先手を打ち、浮舟に向けて星弾で攻撃を仕掛け始める。
それに対して、不敵に笑顔を見せた浮舟の姿がぼやけ、霧散していく。
『またその手か。ちょっとくどいぜ?』
『ご心配なく…失望はさせませんよ?』
霧散した浮舟の姿が再び集合し、実体を持つ…まだは良かった。
問題は、その実体が複数出現していることであった。
目視で確認できる範囲にいる数だけで、6人も全く同じ仕草、表情の浮舟が霊夢た魔理沙を取り囲むように浮いていた。
『フフフ、やはり私も妖怪…人間を驚かせるのは心地の良いものです。』
姿形で見分けることができないほどよく似た6人の浮舟が整列し、冬の寒空を飛ぶ雁の群れのようにVの字となってこちらに向かってくる。
霊夢と魔理沙もすぐに踵を返して不本意ながらも追われる側にまわることとなった。
背を向ける2人に対して、6人の浮舟がそれぞれ鱗弾や炎弾、中弾を放ちながら後を追う。
『くっ、どうする?霊夢。どれが本物の浮舟か見分けがつかないぜ。どこからどう見ても同じ顔だしよ。』
『魔理沙、あの中に本物が居ないっていうパターンもあり得るのを忘れてないかしら?』
『なるほど、ということはあの中の全員が本物っていう可能性もあるわけだな。』
『そんなわけないでしょ…なんで敵を増やしてるのよ…』
しかし、本当にどうしたものか…もちろん一人一人順番に倒す、というのも十分選択肢には入ってくる。
だが、まともに相手をすると、単純に考えても1vs3で戦わねばならない。
かつて、1vs4、1vs10で戦ったこともあったが、その時もかなり苦労させられたものだ。
ましてや、この後にも最低でも1人の敵が控えていることが確実な今の状況で、精神的にも肉体的にも疲れる複数人相手はしたくないのが人情というものであろう。
『魔理沙、度々悪いんだけど私が合図するまで、そこ動かないでね。』
それを言い終わるより速く魔理沙の箒にお札を貼り付け、動きを止める。
『‼︎ちょっと待…』
霊夢はそのまま結界の中に姿を消してしまった…
これには浮舟も大困惑である。
なにせ、先程結界を利用したワープは見たばかりであるものの、今度は出口がどこにも見当たらないのだ。
『?…どうしたんです?貴方、裏切られるようなことをしたんですか?』
『えー、心当たりがちと多すぎてな…』
『そ…そうですか、では遠慮なく貴方を倒し、博麗の巫女を追うとしましょうかね。』
6人の浮舟が一斉に弾幕の構えをとり、正に放とうとするその瞬間、魔理沙の箒に貼り付けられたお札が外れ、分裂し、浮舟達と魔理沙を取り囲んで陣を作り出す。
『なっ…‼︎』
その時、霊夢が水中に隠してあった結界の出口から飛び出し、陰陽玉を構えた。
勢いよく放たれた陰陽玉は、浮舟の一つに命中し、その虚像を掻き消す。
が、しかし当然それだけで終わりではない。
陰陽玉はそのまま陣を構成するお札にぶつかり、そのまま一切スピードを落とすことなく反射された。
そう、言うなれば狭い部屋の中にスーパーボールを投げ込んだようなもので、滅茶苦茶な軌道で反射され続けては次々と浮舟の偽物を消し去ってゆく。
ようやっと陣の中から脱出できたのは本物の浮舟ただ1人で、陣の中に残っている者は余裕綽々の魔理沙だけであった。
『…よく当たっていないものですね。もしやあの軌道を見切ったのですか?』
『いーや、あんなもん人間の動体視力で見えるわけ無いぜ。ただ、霊夢が動かないでくれって言ってたから、動いてないだけだよ。』
涼しい顔をしてそんなことを言い出す魔理沙に底知れないものを感じて、思わず浮舟の額を冷や汗が伝った。
『やっぱりあの水も蜃気楼なのねぇ。冷たかったし、なんだかやたらとしょっぱい感覚だったけど、息はできたし、服も全然濡れてないわ。…あ、そうそう。魔理沙、もう動いてもいいわよ〜』
『おう、いい休憩になったぜ。』
…これが異変解決のスペシャリスト達か。
軽口を交わす2人を見ながら、浮舟は思う。
なるほど、これは中々異変を完遂するものがいない筈だ。こちらが策を弄しても構わず進んでくるこんな連中が解決しにくるんじゃあ仕方のないことかもしれない。
小細工ももう通用しないかも、となればただ全身全霊で純粋な弾幕ごっこをするしかないだろう。
決意を固め、スペルカードを掲げて宣言する。
蜃気楼「海上の超弩級ヴィマナ』
宣言と同時に浮舟の周囲から全てを覆い尽くすように灰色の靄が噴出し、四方八方へと立体的に拡散していく。
そして、真夏の入道雲のように高く大きく広がった靄の中に徐々に、徐々に浮かび上がってくる、途方もなく巨大な影。
その大きさたるや地上の一部(命蓮寺の辺りだろうか?)を覆い尽くさんばかりであった。
『今度は何をするつもりだ?あいつ。』
魔理沙の疑問はすぐに解けることとなる、なぜなら靄の中からその巨影はゆっくりと姿を現したのだ。
それは、霊夢も魔理沙も驚愕するほどのものであった。
空に浮かべるとはおおよそ思えない巨大な木製の船、しかも何やらあちらこちらに取り付けられた黒光りする鋼の筒(大砲)や大きなお椀のようなもの(レーダーのアンテナ)は、やたらと物騒に見える。
総じておかしな表現ではあるが、武装した星輦船といった印象であった。
『こりゃたまげたな。中々パワフルじゃないか。』
『全部蜃気楼とはわかってるけど…すごいものねぇ。』
おもむろに黒い筒の一つが光り、赤い大弾が放たれる。
『見惚れているのも結構ですが、これは私のスペルカードですよ?しっかり避けた方が良いと思いますがね。』
『『言われなくとも‼︎』』
2人は素早く身を翻し、大弾を躱して浮舟に接近を試みる。
が、船に取り付けられた20門ほどの黒い筒が霊夢と魔理沙を照準に捉え、一斉に大弾を放つ。
一瞬で切り返しができたからよかったものの、少し遅れていれば非常に危なかった。
『どうしたんです?その距離から攻撃しても簡単に避けられますよ。』
火薬の爆発のような轟音を響かせながら大弾を絶え間なく放つ黒い筒に手こずる2人は、距離を詰めることさえ中々うまくいかない。
『さて、どうする?あいつ結構無茶苦茶するやつだぜ。』
『人も妖怪も見かけによらないものね。まぁ、あてにできる策はあるわよ。』
そう言うと、霊夢は追尾するお札を放つ。
再びそれはうねる軌道を描いて浮舟に向かって飛んでいく。
浮舟が手を差し向けると、自分の方へと進行してくるお札に向かって大弾が掃射され、浮舟へと続くルートが遮断された。
だが、浮舟の予想に反して、お札は大弾とぶつかる寸前で急激に進行方向を変え、浮舟の両脇をすり抜けて背後の船に着弾。
衝撃で黒い筒がニ門破壊され、動作を停止する。
浮舟が驚き硬直した瞬間、霊夢と魔理沙は残留する大弾を掻い潜り、浮舟とその背後の船へと向かって弾幕を放つ。
針、レーザー、お札、星弾…一門、また一門と落とされる黒い筒。
気づけば、残りの砲台はちょうど10門。
このまま続けても勝機は希薄だと考え、浮舟は切り札のレーザーモードを起動する。
その瞬間、先程までただクルクルと回転していたアンテナの動きが、不気味なほど静かに止まる。
その無機質な違和感に最初に勘づいたのは魔理沙であった。
『ん?あの河童が持ってそうなお椀…何かありそうだが…』
魔理沙の警戒通り、しばらくするとアンテナに急速にエネルギーが集まってゆく。
『‼︎ 霊夢!気をつけろ!』
アンテナに集められたエネルギーは無数のレーザーとなり降り注いだものの、魔理沙の警告によって2人とも擦り傷すら負うこともなく避け切ったのであった。
かくして、レーザーモードによってエネルギーが尽きたことでスペルカードは破られ、浮かび上がった蜃気楼の超弩級ヴィマナもこれまた蜃気楼の海へと墜落したのであった。
燕符「海より生じ海に帰す」
だが!浮舟は倒れてはいなかった!
手持ちの最後のスペルカードに全力をかけ、霊夢と魔理沙に立ち向かってくる。
『さあ!見事破ってごらんなさい!正真正銘、最後のスペルカードを!』
またしても青い光沢の中弾の波が霊夢と魔理沙の左右から襲いかかる。
2人は難なくこれらを躱してゆくが、当然ながらこれだけで終わってはラストスペルとは言い難い。
突然、波の合間から飛び出した高速の何かが霊夢の目の前を横切った。
それも、一つや二つどころではない。
よくよく見ればいくつもの燕のような形の弾が中弾の合間から生じ、再び別の合間に消えている。
しかも、速いだけではなく、最も厄介な点は燕弾の発生地点が読めない点である。
どこか全然関係のない遠くで発生したかと思えば、ほんの隣で発生して肝を冷やすこともある。
更に追い討ちのように、それらの燕弾は皆霊夢と魔理沙をかなり正確に狙ってくるときた。
これならば確かに奥の手と呼ぶにふさわしいだろう。
『どうかな?ちっぽけな燕雀とて大鳳を食い物にし、血を啜ることができるのですよ‼︎』
『……ええ、そうね。でも、本当の大鳳は燕や雀を歯牙にかけたりはしないものよ。尤も、鳥に歯、ましてや牙なんて無いけどね。』
燕弾をお祓い棒で叩き落とした霊夢がスペルカードを宣言する。
霊符「封魔陣」
巨大な陣形が展開され、燕弾、中弾全てが掻き消され、ずっと広がる蜃気楼の海までが霧散し、ようやく一反木綿本来の見た目に戻っていく。
それは、あまりにも巫女然とした力であった。
『はぁー、しぶといやつだったわね…こんな奴がまだ控えてるのかしら?』
『まぁどんな奴が現れても根こそぎぶっ飛ばすのみだぜ。』
『ぐぬぬ、あの方に合わせるわけには…』
『だから、誰よ?あの方ってのは。』
『それは言うわけにはいきません。裏切りとなってしまいますゆえ。』
『今日の昼食はシーフードにしようかしら。』
『あっちに一反木綿がいましたよ。』
かつて、こんなにも見事な掌返しがあっただろうか?
『裏切りはしないんじゃ無かったの?』
『裏切ってはいませんよ。断じて。』
『言ってることが無茶苦茶ね。もう行きましょ。』
『おう。じゃ、またな。』
霊夢と魔理沙が浮舟の示した方向に向かって飛び去り、その姿が小さくなっていくのを眺めながら浮舟は1人ほくそ笑む。
『よし、第一プランは成功。思ったよりは引き止められなかったけど…まぁ良いでしょ。後は第二プランね。あいつらを誘導して、あの2人にも連絡をとって…』
燕型の使い魔に手紙を預け、ある2人のいる場所へと飛ばす。
『さて、私ももう一仕事やりますか!』
浮舟は気合を入れ直し、霊夢と魔理沙が飛び去った方向へと高速で向かうのだった。
浮舟のプランとは?連絡をとった2人とは?黒幕の目的とは?
謎に包まれた白宙道異変、一反木綿を倒して無事解決なるか⁉︎
登場人物
サトリ妖怪
人の心を読んで襲ってくる妖怪らしい。
また、その特性ゆえに無意識の攻撃に弱いという伝承もある。
東方的にいうと地霊殿プレイしてください。
どこぞの秘神
幻想郷のえらい人
彼女の存在が発表されたことによって、このストーリーは完成したので、実は結構重要人物なのです。
雁
インドガンという鳥はとんでもない高さを飛行することができるらしい。
ちなみに、今までの記録で最も高いところを飛んでいた鳥は、上空10km以上でバードストライクを起こしたハゲワシだそうです。
スーパーボール
私事ではありますが、地蔵盆のスーパーボールすくいで300個以上の大記録を打ち立てたことがあります。
ヴィマナ
ロマンでできた兵器の伝説
命蓮寺
ガンガンいく妖怪寺
星輦船
キャプテンはムラサ
変形してお寺になる。
あの2人
ラスボスとある共通点を持っており、仲がいいらしい
八代 浮舟
スペルカード
幻覚「幻想郷の海」
貝符「閉じゆく弾幕の世界」
蜃気楼「出処不明の怪火」
蜃気楼「海上の超弩級ヴィマナ」
燕符「海より生じ海に帰す」
その他の設定などは以前の話をご参照ください