東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜   作:プルプルマン

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この夏、バイトといふものをしてみんとす
お金稼いで何に使おうかなぁ
南西諸島とか行けたらいいなぁ


風の向くまま弾の行くまま

霊夢の(ほぼ)反則じみた技にスペルカードを破られ、あわや撃墜されかけた水木は、慌てることもなく一呼吸置いて次の弾幕へと移行する。

この辺りは、さすがに一つの妖怪集団をまとめあげる長の器というべきであろう。

そして、肝心の弾幕は最初のものとは打って変わって、クナイ弾でこちらの行動を牽制し、正確に霊夢と魔理沙を狙撃する、直線的且つ高速で細身のレーザーを何本も放つ…といったものだろうか?

こういうタイプの弾幕は横へ横へとある程度の速度を保って動き続ければ、それだけで回避できるものも多い。

むしろ、ごちゃごちゃとした列をなして前方からゆっくりと進んでくるクナイ弾に自分からぶつかりに行くなんていう事故を起こさないように気を使うべきである。

以上のことをレーザーが放たれてから、自分達の所に到達するまでの僅かな時間で分析・予測し、霊夢と魔理沙はお互いに真逆の方向へ回避する。

当のレーザーは2人の素早い回避に対応することができずただただ中途半端な軌道で空を切るばかりだった。

『お!ふっふっふ、黒幕(候補)と戦ってるからかな。なんだか調子が出てきたぜ。』

『あんたも単純ねぇ。毎日が楽しそうで何よりだわ。』

『思い込みってやつはお前が思ってるよりもずっと大事で凶悪だぜ?嘘を使わずにカモを騙したり、病気を治したりできるからな。』

『へぇ、それなら魔理沙は今ここに居ないって思い込んだら姿が見えなくなるのかしら?ちょっと試してみようかな…』

霊夢が弾幕を躱しながら、思い込みの有効な利用法を考え出したのに対して、自分の存在が視界から消されかかっているなどとはつゆほどにも思っていない魔理沙であったが、その一方で期せずして自分の言葉の中からある閃きを見出していた。

『待てよ…一反木綿の関与をとことん否定している水木と私達の見解…もしかしたら、2つの話の噛み合わなさの正体は、思い込みじゃないか?一反木綿の集団が一派だけとも限らないし、この異変に対するそもそもの認識が的外れだったりするんじゃないか…』

実は、魔理沙のこの考えはかなり核心に近づいていたものなのであったが、世の中そううまくはいかない事の方が遥かに多いのは皆様も知るところであられるでしょう。

この時の魔理沙も、それ以上深く考える暇も無く、レーザーを躱してクナイ弾の隙間を抜けることに気を取られ、すぐにその考えを放り出してしまったのであった。

それから、3・4回ほどレーザーによる狙撃が続いたが、どれほど撃とうが当たることは無いと察したのか、水木は自ら現在の弾幕を切り上げ、2枚目のスペルカードを宣言した。

 

天符「木綿の羽衣」

 

そのスペルカードは至ってシンプルであった。

宣言と共に水木の纏うビニール製の羽衣が白っぽく色づき、空気をはらんではためいた。

次の瞬間、羽衣からクナイ弾・米粒弾・レーザーの3種類の弾が無造作にばら撒かれ、その密度を変えながら方々へと飛び散っていた。

まぁ早い話が、既に何度か出てきている気合い避け上等的な弾幕である。

数ある弾幕の中でも、最も反射神経と幸運を要求されるものであり、難易度も総じて高い傾向にある種類には違いないが、霊夢と魔理沙、2人とも幾度となく同じような弾幕を掻い潜ってきた実績がある。

すぐ目の前を掠めたクナイ弾を横目に見つつ、魔理沙が負けじと星弾を撃ち返し、レーザーに真正面からお札をぶつけて相殺しつつ、霊夢が鋭く針を撃ち込む。

その結果、多種多様な弾幕が飛び交い、側からその光景を見れば、さながら真昼の花火大会のように見えただろう。

水木に倒されていた妖精たちも目を覚まし、瞼を開いたすぐ先で繰り広げられている弾幕ごっこに釘付けとなっていた。

しかし、永遠に続くようにも錯覚するこの時間にも当然終わりは来た。

水木の弾幕は、魔理沙が周囲に呼び出した赤色や青色の球《オーレリーズ》から放たれた、より一層高密度な弾幕に力で押し切られ、水木本人もまとめて吹き飛ばされたが、なんとかバランスをとって姿勢を整える。

その後、スペルカードが破られたことをお互いに気にする様子もなく自然に弾幕ごっこを続ける3人。

その姿からは、彼女達がいかに弾幕ごっこに没入し、本気で楽しんでいる、ということがどんなに鈍い者にも伝わっただろう。

弾幕であれ、それ以外であれ、誰かの真剣というものによって創り上げられた物は美しい。

幻想郷の弾幕ごっこが美しさも競い合うルールなのは、その実真剣な遊びとしてのものだからという理由がある…のかもしれない。

霊夢のお札と針、魔理沙の星弾、水木のばら撒きレーザーと前後から迫るクナイ弾…交差し、火花を散らす弾幕ごっこの中で、3人がほぼ同時にふと我に帰る。

『なるほど…これは楽しいものだ。思わず夢中になってしまったよ。だが、私にはやるべきことがある!今の今まで幻想郷で築き上げた一反木綿の地位を崩すなど…させてなるものか!全員集合だ!我らの外敵を叩き潰せ!』

水木が指を鳴らすと、その背後にどこからともなく集まった一反木綿達がお互いに絡み、結びつき、一つの大きな形を作って行く…

やがて、それは空を泳ぐ大蛇のような姿となり、上下左右にくねって漂っていた。

 

化符「半透明のスカイサーペント」

 

スペルカードの宣言と共に一反木綿が寄り集まって形成されたモノが、大蛇が肥えたカエルを見つけた時のように体をくねらせてこちらに突撃してくる。

霊夢と魔理沙が真横に飛びのいて回避すると、やはり大きな体だけあって攻撃も大振りなのか、特にずっとしつこく追尾してくるなんてことはなく、そのまま通り過ぎていったが問題はむしろその軌跡にあった。

その一反木綿集合体が通り過ぎて行った後には、もれなくびっしりとクナイ弾が置かれていたのだ。

もちろん、弾幕が空間内に置かれているだけで行動できる範囲を狭め、いざという時に響いてくるのだが、たったそれだけで済むはずも無く…

しばらく時間が経つと、ゆっくりとそこに置かれたクナイ弾が動き出し、四方八方へと出鱈目に散開して行く。

大振りながらも油断できない一反木綿達もさることながら、ゆっくりと進み出し、ずっと居座るクナイ弾、そして何より、自由に行動できる水木…それらの全てに気を配っておかねばならないという、中々糖分が欲しくなる弾幕だ。

『魔理沙、あんたにあの大物は任せるわよ!』

『おい、ちょっと待てっての。こういう時はジャンケンでだな…』

霊夢は既に魔理沙との距離を離して、独自に動き始めており、その声は届かなかった。

『なんだかなぁ…貧乏御籤を引かされたぜ。さて…しっかり付いてこいよ!』

なんだかんだ文句を言いながらも、魔理沙は背後に迫る一反木綿達を自分の方へと引きつけるために、派手な星弾をばら撒きながら急加速やジグザグ飛行を行い、巨大な相手を手玉に取っていた。

一方、厄介者を厄介者に押し付けてきた霊夢は、本体の水木を撃ち破るため、近距離で激しい弾幕の撃ち合いをしていた。

瞬きほどの時間の間にも無数の弾がぶつかり合って爆ぜる音と閃光が無数に感じられ、須臾ほどの時間の油断も許されない状況だ。

しかしながら、やはり真っ向からの弾幕勝負においては霊夢の方が上手らしく、しばらくは戦況も拮抗していたように見えたが、やがてお札と針に押し切られ、水木はたまらず後方へと距離を取ろうとする。

だが、霊夢がそんなことをそう簡単には許すはずも無く、すぐに追走を始め、逃げる水木を追い詰める弾幕を展開して行く。

無論、白熱しているのはこちらだけでは無い。

一反木綿軍団と魔理沙の戦いも大きく変化を迎えようとしていた。

『うむむ、烏合の衆かと思ったが、中々どうして甘く見れないもんだな。』

と言うのも、一反木綿達は確かに一匹ずつでは非力な妖怪である、しかし今目の前を舞う「それ」は違った。

寄り合い、結びつき、統率の取れた動きで宙を舞う姿は、最早一匹の巨大な生物と呼んでも差し支えなく、多少の攻撃などは兎の毛で突かれたも同然である。

ただ、当然ながら無敵では無い。

魔理沙の攻撃によって、一匹、また一匹と剥がれ落ちていくのは確認できるが、圧倒的な数でそのダメージをカバーしているだけなのだ。

所詮は数、されども数、それなりに厄介な相手である。

そこで魔理沙もチマチマした攻撃は止めて、一気に掃討する作戦に転じようとするも、これがまた難しい。

『さて、どうするかな…コイツはなんとなくまだ使う気分じゃないしな…』

その手の内には必殺のスペルカードが握られているが、どうしたことか、これはまだ温めておいた方が良いという気がしていた。

となれば…

『やっぱ景気良くこれで吹っ飛ばすか。』

代替案が浮かんだはいいが、確実に成功させるためには、まず隙を伺いたい。

ポケットから取り出したマジックボムをいつでも使えるように備えて、相手の隙を見逃すまいと気合を入れ直す魔理沙なのであった。

 

『くっ…巫女の奴はどこに行った⁉︎見逃すとまずいぞ…』

その頃、霊夢と水木の鬼ごっこは終焉を迎えようとしていた。

水木の心配は的中し、周囲の空間に橙色の光を放つ壁のような結界が張り巡らされていく。

『‼︎…しまった‼︎』

 

神技「八方龍殺陣」

 

結界の中を無数のお札と小弾が埋め尽くし、外から見ると輝くラバランプのようにも見えていた。

それでもしばらくは中で回避していたようだが、やがて着弾を示す煙と共にスペルカードは破られたのだった。

これに面食らったのは子分の一反木綿達である。

何しろ、ボスの身に起きた一大事だ、統率が乱れ、てんでバラバラのタイミングで動こうとしては他の個体に引っかかってパニックを起こしている。

そんな絶好のチャンスを見逃すはずも無く、魔理沙がその集団の丁度中心付近にマジックボムを投げ込み、起爆させた。

どれほど強固な集団も内部から瓦解し、オマケに爆発まで起こされたのではもうどうしようもない。

頭が落ちた百足は永くない。

かくして、ボスの呼びかけに応じて馳せ参じた一反木綿達はVS魔理沙にて敗北を喫したのであった。

『やったな、霊夢!これで私に厄介者を押し付けたのはあいこにしてやるぜ。』

『はいはい、そりゃどーも。…油断はしない方が良いんじゃない?』

子分も全て撃ち落とされ、3つものスペルカードを破られた水木が取れる策はそれほど残っているとは思えないが、獣も妖怪も手負いが一番恐ろしいものである。

魔理沙は兜の緒を締め直す意味も込めて帽子の角度を調整し、リボンのずれが無いことを確認すると、未だ爆煙の中から出てこない水木の方を鋭く見据えるのだった。




北海道の夏が既に終わりそうな雰囲気を感じて、心底びっくりしております。
いくらなんでも季節の変わり目が極端過ぎませんかね…

登場人物

一反木綿軍団
水木 百香の子分達。
彼女によると、今回の異変には誰も関わっていないらしいが…?

スカイサーペント
くねくねと空を飛び回る細長い物体。
未確認飛行生物(UFC)とも呼ばれる謎の存在。
メキシコとか行ったらたまに見られるらしいですよ。

水木 百香
スペルカード
一反「体長10メートルのプレデター」
天符「木綿の羽衣」
化符「半透明のスカイサーペント」

その他の設定等は前々回をご参照ください。
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