東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜 作:プルプルマン
ちょっと加筆したい部分も有りますし。
今回で多分ラスボスの正体は割れます。
推理できるのは今回が最後ということになりますね。
冷たい風で立ち込めていた煙は流され、水木が姿を現した。
『博麗の巫女に白黒の魔法使い…風の噂で聞くよりもずっと強いじゃないか。まさか子分達と総力戦を仕掛けても尚敵わないとは…』
『勝ち目がないってわかったんなら、さっさと異変を起こした理由と目的を手短に吐いて、この大物を片付けて頂戴な。』
霊夢はお祓い棒を片手で弄んではいるが、その目は真剣だ。
そういう時の霊夢には有無を言わせぬ圧力のようなものがある。
今回も御多分に洩れず、目に見えるのではないかと錯覚する程の圧力を放っていたが、相手も一勢力のボス、そんなことでは怯まないし退くことはできない。
『だから、さっきから言っているだろうに。子分達も含めて私達は一切この異変に関係してはいない。ただ、そう勘違いされるのも迷惑だから本当の主犯に文句を言いにきただけだ。』
『こっちはあんたの子分に道中で襲われてるし、何より真下に馬鹿大きい一反木綿を浮かべておいて…いや、このままだと堂々巡りね。』
『そうだな、一回私達か一反木綿のどっちかが倒れてからのほうが話はスムーズに進むと思うぜ?』
結局のところこうなるのである。
別に、彼女らが特別血の気が多いわけではなく、腕尽くが一番手っ取り早いだけなのだ。(やっぱり血の気が多いのかも…)
一反木綿奥義「水木 百香のキャトルミャーティレーション」
最後のスペルカードの宣言と共に、水木の羽衣が膨らんで巻きつき、その体を覆い尽くす。
そして、羽衣が解けた時、既に水木の姿はどこかに消え失せ、ただ羽衣のみが残されていた。
『…あんたは右に翔んだ方が良いわね。』
『ああ、そうだな。』
霊夢と魔理沙がほぼ同時に横に飛びのいた次の瞬間、ワンテンポ遅れて2人のいた場所に水木が現れ、彼女を中心とした放射状のレーザーと真っ赤なクナイ弾をばら撒いた。
『躱されたか、惜しいな。』
またしても水木は羽衣に巻かれて姿を消し、今度は魔理沙の先程までいた場所に出現と同時に弾幕を放つ。
そしてまた姿を消す…この繰り返しである。
霊夢と魔理沙は一旦合流し、背中合わせで相手の攻撃に備える。
『どうする?あれだけ消えたり出てきたりばっかりじゃあまともに攻撃もできやしないぜ。』
『春雪異変の時の紫みたいなことする奴ね…なんだか昔を思い出して腹が立ってきたわ。』
2人が離れたすぐ後に、丁度2人の頭があった高さをクナイ弾が通り過ぎた。
『くっ…ほんとにどうしたもんかな?出てくる一瞬で攻撃してみるか?』
『そんなに深く考えることもないわよ。私の勘だと、もうそろそろ…』
続きは聞き取れなかった。
いやまあ正確に言えば聞くこと自体はできただろうが、その場合魔理沙はクナイ弾を額の辺りでまともに受けて伸びていただろう。
その後も2回、3回と出てきては消えることを繰り返す水木に、段々とまどろっこしさを感じてきた魔理沙は、もういっそこうなったらマスタースパークでも使ってやろうかなどと考え、ミニ八卦炉を構え始めた。
その時、今まで飛び回っていた霊夢の動きが急に止まり、それからずっと空中に佇んでいた。
『何やってんだ!霊夢、動かないと直撃しちまうぜ!』
魔理沙が大声で叫んでも、霊夢は依然として動かない。
そして、水木が霊夢の正面に姿を現し、弾幕を放つ…ことはなかった。
それどころか、息を切らせて両肩を上下させているのがそれなりに離れた魔理沙の位置からでも窺い知れた。
『どうなってんだ?…まぁ行ってみるか。』
魔理沙が不思議に思い、近づいていくと、より一層水木の様子がわかってきた。
また、それと同時に、霊夢が動きを止めた理由も自ずと察せられた。
水木は見るからに疲労困憊しており、額には玉のような汗が浮かんでいた。
もうスペルカードを維持する体力をも使い果たし、攻撃を止めたのだろう。
そして、霊夢はそんな水木の状態をいち早く見抜き、もう攻撃は飛んでこないと見たのだろう。
『まいった…もう体力の限界だ…済まない、同志達よ…不甲斐ない…』
『さ、あんたの負けよ。素直にこの異変を終わらせるなりして頂戴。』
『だから、私達は関係ないのだ。つまり、異変を止めるなんてこともできるわけがないだろう。』
『あのねぇ、あんたもいい加減に…』
霊夢の言葉は途中で遮られた、それも衝撃的な言葉によって。
『そもそも、お前達には下に見える「アレ」が一反木綿に見えているのか?だとすれば、本当に節穴巫女と盲の魔法使いと呼ばれても不平は言えないな。』
『………どういう事かしら?』
『やっと話を聞く気になったか。多少小細工で隠してあるようだが、本物の一反木綿をだまくらかせるものか。「アレ」は一反木綿という妖怪…いや、木綿ですらない。』
『勿体ぶらなくてもいいぜ。じゃあその正体はなんだっていうんだ?』
『アレは…巨大で頑強に織られた「絹の道」《シルクロード》だよ。』
『だ…だけどさ、表面の質感だってどう見ても木綿だぜ?それに、異変を起こしている側の蜃はお前に会わせるわけにはいかないとかなんとか言って妨害してき…』
そこまで言いかけて、魔理沙はハッと気づいた。
魔理沙の話で霊夢も同じ考えに行き当たったようで、苦い顔をしている。
『じゃあつまり、私も魔理沙も最初から巨大な道を一反木綿と見せかけられていたってことが言いたいわけね。』
『ああ、そして恐らくではあるけども、お前達が戦ったという私の子分達も、適当な妖精か何かをさも一反木綿であるかのように見せかけていたのだろう。そして…』
『あの蜃がお前と私達を会わせるまいとしてたのは、ただのミスリードのためってわけか…』
『大方、潰しあってくれればベストだとか考えてたんだろうよ。これでもまだ私の話が信じられないならば、下にあるアレを触ってくるが良い。蜃気楼で誤魔化せるのは視覚だけだろう。木綿よりずっと滑らかな手触りのはずだ。』
なんということか、この戦いは壮大な無駄足だったということだ。
しかし、肩を落としている暇はない。
この時間で、どれほど異変は進行したのかは窺い知れないが、あまり望ましくない展開であることは確かだ。
最早、幾ばくの猶予も残っていないのかも知れない…
その時、いつの間に行っていたのか、霊夢が眼下に広がる道に触れて戻ってきた。
『間違いないわ、アレは絹でできてるわね…急ぎましょ。』
『おう、飛ばしていくぜ。』
霊夢と魔理沙は遅れを取り返すため、一気に加速して白き道の奥へと向かっていく。
『そういや、勝手に疑って悪かったな。今度饅頭でも持っていくぜ。』
途中で引き返してきた魔理沙にそう言われ、水木は驚きのあまり思わずバランスを崩して落っこちそうになった。
体勢を立て直すと、既に魔理沙は待っていた霊夢と合流して飛び去っていた。
『…あいつに良心とかあったのか…』
こうして、一反木綿のコミュニティ内で魔理沙の印象がほんの少しだけ良くなったのだった。(とはいえ、マイナスがほんの少しゼロに近づいただけだが…)
その頃、本当の異変の影響は、芋虫が這うようにゆっくりと忍び寄り、漸く目に見える形で現れ始めるのだった。
もうラスボスもわかってしまったのではないでしょうか?
一話からずっと一反木綿とばっかり言ってきましたが、一反木綿は全く関係ありませんでした。
いよいよ最終面、白宙道《シルクロード》の先には何が待ち構えているのか、そして本当の異変の影響とはなんなのか、乞うご期待です。
登場人物
春雪異変の時の紫
東方妖々夢の時の紫。
中でも、今回の弾幕のイメージは罔両「八雲 紫の神隠し」を簡素にしたイメージです。
蜃
詳しくは4面ボスの設定をご参照ください
芋虫
一般的に謎の毛でもっさりしていない蝶や蛾の幼虫を指す言葉。
野外に居るヤツは10中8.9寄生虫が入って大人になれないものばかりなので見かけたら手でも合わせといたげてくださいな。