東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜   作:プルプルマン

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最近脱皮したての蟋蟀を見ました。
やっぱ白いんですね。はい


ホタルガとアゲハモドキ

荒ぶる使い魔の群れを隔てて霊夢と魔理沙はほぼ同時刻に行手を阻む人影と対峙していた。

彼女らはそれぞれ自信満々に霊夢と魔理沙を倒してみせるつもりでいるが、当の2人には冗談としか思えなかった。

何故なら、その人影は霊夢と魔理沙の顔見知りであり、かつて一度打ち負かした相手であったのだ。

 

『やれやれ、一体どういう風の吹き回しだ?だいたい、今は夏でも無ければ夜でも無いぜ。お前がのこのこ出歩いてるってのは腑に落ちないな、妖怪蛍。』

なんと、魔理沙の前に立ちはだかったのは永夜異変の時に異変解決御一行様に轢かれて以来のリグル・ナイトバグであった。

『ふふふ、今回ばかりは我らが甲鱗同盟の仲間の一大事!真昼だろうが春だろうが関係ないわ!根性だけでここまで来たのよ‼︎』

『そりゃあご苦労なこったな。素直に小川に帰って螺を肴に水でも飲んでた方が良いと思うぜ?こんな昼間じゃ風情もへったくれも無いしな。』

『ええい!馬鹿にすると後で怖いわよ!外の世界からやってきた、恐ろしい毒虫をあんたのベッドに忍ばせてやるわ!』

『そうかそうか、魔法の材料が増えて助かるぜ。ところで、お前さっき私を倒すとかなんとか言ってたな?その言葉、待ったは聞かないぜ?』

その言葉を聞いても、リグルは不敵に笑って言い返す。

『ふん、あの時とは違うのよ。もう異変に巻き込まれただけの哀れな貧弱一般妖怪じゃあないわ。今回はれっきとした異変の一員として、全力であんたたちを倒すのよ。さあ、お前は二度と私の弾幕から逃げられないぞ。閉じた檻の中で虚しく光り続けるが良い‼︎』

 

 

時は少し遡り、魔理沙がリグルと対面した頃、霊夢もまた顔見知りの敵と相対していた。

『はぁ…色々聞きたい事はあるけど、まずあんたって真夏の妖精じゃなかったっけ?それに、こんなところをうろちょろして喧嘩をふっかけて来るなんて、何の冗談かしら?まぁあんたも一応妖精だから異変が起きてる時に元気になるのはわかるけどねぇ。』

訝しがる霊夢の前に堂々と立ち塞がっていた人影の正体は、アゲハ蝶の妖精であるエタニティラルバであった。

『ふふ、いかにも阿呆な人間の考えそうなことね!私は冬以外一年中元気ハツラツなのよ!』

『冬を除いたらそれはもう一年中ではないのよね…少なくとも。』

『まぁ、なんでも良いわ!兎に角、我々こーりんどーめーの華々しいはたあげのイケニエになって貰うわ!覚悟しやがれ!』

『あんた…ホントにそれの意味わかって言ってんの?』

ラルバはキョトンとした表情で頭の上に❓のマークでも浮かべていそうな目をしていた。

どうやら、いつも通り深く考えずノリと勢いだけで異変に首を突っ込んだのだろう。

なんとも妖精らしいお花畑な考え方だが、それよりも少し気になることがあった。

『ねぇ、あんたの言うこうりんどうめいってのはなんなの?ちょっとだけ教えてくれないかしら?蜜柑の葉っぱあげるから。』

『よかろう!では、教えて…‼︎ 危ない危ない、巫女の口車に乗せられるとこだったわ。』

『あら、思ってたより冷静ね。妖精らしからぬ賢さだわ。』

『う〜、このごくどー巫女め〜もう謝っても許してやらないよ!今日の私はやるき全開なのよ!そんな私の弾幕のしんずいを人間なんかが見極められるかな?』

 

ほぼ同時刻にそれぞれの戦闘が始まり、その流れに合わせて使い魔の群れが蠢き、リグルとラルバの指示に従っていた。

『いけぇー!巫女を囲んで袋叩きにしてしまえー!』

ラルバのとてつもなく大雑把な指示に、使い魔達もかなり困惑してまごついている様子が見受けられたが、それでもなんとか陣形を組んで無数の鱗弾と小弾を雨霰と降らせてきた。

その数の多さゆえに同士討ちを狙った方が有利になると判断した霊夢は、向かって来る使い魔の群れの周囲を飛び回って撹乱する作戦に出たが、群れの左側に回り込もうとしたその時、目の前を緑黄色の中弾が撃ち抜き飛び去っていく。

それは、使い魔だけに気を取られた者を叩き落とさんとする妖精なりのフェイント攻撃であった。

もし、あとほんの少し霊夢が旋回のスピードを上げていたならば、すかさず彼女を捕らえていたであろう攻撃に霊夢は空中で停止し、ラルバを捉える視線が鋭いものへと瞬時に変化する。

その百戦錬磨の睨みつけにラルバの背中には、まるで喉元に針を突きつけられている様な悪寒が走った。

次の瞬間、霊夢はその場所から忽然と姿を消した…正確に言うと、そう錯覚させるほどのスピードで使い魔の群れの中に敢えて突撃し、その中で蛇行やUターンを織り交ぜて飛び回っていたのだ。

瞬く間に統率は乱れ、同士討ちやラルバの誤射、霊夢の弾幕によって次々と使い魔達はその数を減らしてゆく。

ラルバは周囲を必死で見回し、少しでも赤色が目に写れば攻撃を仕掛けていたが、そのたびに攻撃は虚しく空を切るか、あるいは友人から預かった使い魔を撃ち抜くのみであった。

『あんたの事をもうただの妖精なんて考えるのはやめることにするわ。』

どこからともなく霊夢の声が聞こえて来る。

ラルバは手当たり次第に弾幕を放ち、俗に言う「数撃ちゃ当たる戦法」を試みるも手応えは感じられなかった。

『異変に加担する者として、真剣に仕留めさせてもらう事にするわよ。』

右と言われりゃ右から、左と言われりゃ左から聞こえている様な声にラルバは混乱し、より一層激しく密度の高い弾幕を形成する。

しばらくの後、ようやくラルバの正面に霊夢が現れそのまま停止した。

『ふっふっふ、とうとう追い詰めてやったぞ!これでお前は骸のねずみだ!』

『勝手に死体呼ばわりするんじゃあ無いわよ。それを言うなら「袋の鼠」でしょ?』

『なんでもいいの!とりあえず、全員突撃〜!』

しかし、元気の良い号令に反して誰一人として使い魔達が霊夢に向かっていく姿が見えない。

そこでようやくラルバは気づく。

彼女が従えてきた使い魔の群れはほぼ全てが消え去ってしまっていたのだ。

『お、おまえー‼︎一体何をしたー‼︎』

『何にもしてないわよ。ほとんどあんたが撃ち落としたんじゃないの。ほら、向こうにいる連中も連れてきたら?』

霊夢が指差した方向には小規模な使い魔の群れがあったが、ラルバは首を横に振る。

『あそこは同志が魔法使いと戦ってるのよ。勝手に持ってったら怒られるわ!』

『聞いても無い事をよくそんなに喋ってくれるわね…うん、なるほど、目下の敵は黒幕含めて3人かしらね。それにしても…』

ラルバが何か喚きながらこちらに向かって放ってきた弾幕を回避すると、陰陽玉をその額に向けて勢い良く投げつける。

それは、若干カーブした軌道を描き吸い込まれる様にしてラルバに直撃したのであった。

『…あんたを司令塔にした奴ってセンス無いわねぇ。』

その時、魔理沙の方にいる群れも一気に離散し、消えていく様子が見えた。

どうやら、向こうもそれなりに順調なようだ。

 

『えっと、貴方達はこっちから回り込んで、ここからそっちの子たちは私に着いてきて、それで…』

リグルがせっせと指示を出している時、その相手を務める当の魔理沙はというと、自身の乗る箒のささくれを弄んでいた。

『おいおい、いつまで客を待たせるつもりだ?そういうのはテキパキやっとくもんだぜ?』

『もう大丈夫よ。完全にあんたを叩きのめす準備はできたわ!安心して死んでいけ‼︎』

『わざわざ待ってやった私に対してお礼の一つも無いのか?礼儀がなってないぜ、まったく。』

リグルの指揮に合わせ、使い魔の群れは3つに分かれてそれぞれが一つの巨大な生き物であるかのように動き出した。

『私相手にわざわざ戦力を分散するなんてな、そういうのはいわゆる愚の骨頂ってやつだと思うぜ?』

魔理沙は余裕の笑みを崩さない。

どこにしまい込んでいたのやら、大量にマジックミサイルを起動させて自らも共に群れの中へと突撃していく。

一方のリグルからしてみれば、この数相手に魔理沙が迷うこと無く正面から向かって来る方が想定外であった。

ここで、向かって来る魔理沙を全員で袋叩きにすることができれば最良の展開であったのだが、リグル以外の戦力は使い魔のみ。

そして、使い魔とは指揮者の命令の範囲で思考し、行動に移す物である。

結果的には、リグルは几帳面に命令しすぎたのだ。

使い魔達は自らの真横を通り過ぎる魔理沙を認識こそしていたが、リグルの決めたルートで突撃していく以外の命令は受けていなかった。

そういったことも手伝い、魔理沙はいとも簡単に挟み撃ちを仕掛けてきた2つの群れを突破し、その勢いのままに立ちはだかる最後の障壁の群れを貫こうとしたものの、突然その中より現れた緑と黄色の中弾に停止を余儀なくされる。

『やってくれるじゃあないか。確かにあの時の雑魚なんて思ってたらヤケドするかもしれないな。それなら…』

そのセリフを最後まで聞かないうちに、リグルは群れを盾のように位置どりながら先程と同じ弾幕を放ち続けた。

使い魔の壁は魔理沙の弾幕を受け止めて自爆で反撃し、リグルの弾幕のみを通過させる。

更に、リグルは魔理沙に出し抜かれた最初の群れ2つを呼び戻し、状況をほぼ立て直していた。

誰がどう見たとしてもこの場におけるリグルの優勢は確実と思われたが…

『私も本気で相手をしてやるぜ。』

言い終えていなかった言葉の続きと共に魔理沙の懐から何やら鳥の様なものが飛び出し、密集している使い魔達の間をスルスルと駆け抜けて行く。

そして、放たれたそれは急加速しながら辺りに衝撃波を撒き散らし始めた。

『お前なんぞを相手にお披露目ってのはちと惜しい気もするが、私の魔法と河童の科学の究極のフュージョン、「ショートウェーブスレイブ」だぜ!』

四方八方に飛んだ衝撃波は面で使い魔達を捕らえては吹き飛ばして行く。

その威力そのもの自体はリグルが持つ妖力でも存分に防ぐことのできるものだったが、自爆を想定に入れて耐久力を下げられている使い魔達には効果抜群であった。

彼等は表面積の大きさを重視した攻撃の前に、躱すことも強引に突破することもできず、ただただ圧倒されているばかりであった。

『ま…まずいわ!どうにかしないと…』

リグルはまず兎に角厄介なショートウェーブスレイブを破壊するため、それに向かって大量の弾幕を放った。

しかし、やたらと複雑に飛び回るそれは遮蔽物を避ける様にプログラムでもされているのか、紙一重でリグルの弾幕を躱してゆくばかりであった。

ただ過ぎ去って行く時間と減っていく使い魔達を目にしたリグルは焦り、それを撃ち落とすのに躍起になっていた。

その間、自分が魔理沙本人から目を離していることにも気づかずに弾幕を撃ち続け、ようやく一つを追い詰め仕留めた時には天にも登る様な心地であった。

『やったわ!遂に…遂にやってのけたんだわ!』

彼女の知る言葉では表現するのに事欠くほどの達成感と高揚感に包まれ、今ならなんでもできる様な気すらしていたリグルであったが、上空から聞こえた魔理沙の声にその気持ちは急激に萎むこととなる。

『おめでとさん、けどな、そんなんだからどこまでいっても弱小妖怪のままなんだぜ?』

上に振り向くと同時に目の前を虹色の光が包み、リグルは容易く吹き飛ばされたのであった。

また、細かい指揮ありきで動いていた使い魔達は急に司令塔を失い、混乱して群れを散らしつつあった。

めちゃくちゃに飛び回る使い魔達の群れの中で、魔理沙がふと霊夢の方を見ると、その時すでにそちら側の群れはほぼいなくなっており、彼女は察する。

『どうやら、あいつも順調みたいだな。いいことだぜ。』




ウェブマリは弱くねぇ
オラァそれがいいてぇんだ

登場人物


ここではいわゆる淡水性巻貝のカワニナのこと。
蛍の幼虫期における主食となる。
日本だけでもえげつない種数がいるらしい。

蜜柑
皆様ご存知冬の必需アイテムです。
やはりアゲハの幼虫期における主食となる。
個人的には、一度仏手柑を手に入れてみたいものです。

ショートウェーブスレイブ
今回、これがしたかっただけまである。

リグル・ナイトバグ
季節外れの輝く甲虫
能力 蟲を操る程度の能力
種族 妖怪(妖蟲)
スペルカード




彼女が今回の異変に参戦した理由は、ただ一つ。
友情のためである。
彼女とエタニティラルバ・そしてこの異変の黒幕が結成した甲鱗同盟の定例会議(要するに、明日一緒に遊ぼうぜ!みたいなもの)において、黒幕に異変への協力を頼まれた際、彼女とラルバは迷う事なく了承した。
もはや、あの時のただ通り道にいたから轢かれただけの自分ではない。
友人の願いも叶えることができる。
そう信じて、意気揚々と戦場へ向かった彼女であったが、まぁこの有様である。

エタニティラルバ
黒幕に近づく鱗翅目
能力 鱗粉を撒き散らす程度の能力
種族 妖精
スペルカード




彼女が今回の異変に参戦した理由はただ一つ。
友情のためである…はずだった。
彼女とリグル・ナイトバグ、そしてこの異変の黒幕で結成した甲鱗同盟の定例会議(リグルの設定を参照)において、黒幕に異変への協力を頼まれた際、彼女とリグルは迷うこともなく了承した。
が、そこは彼女も妖精であった。
異変が起きている最中に活発化する妖精という種族の特性と、元々の忘れっぽさが合わさり、交戦時には友情のためというよりも暴れたくてウズウズしていたという面が大きいらしい。
異変時の妖精特有の全能感と、それでも完全に忘れはしなかった友情を胸に猪突猛進していく彼女だったが、それでも妖精は妖精であった。
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