東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜   作:プルプルマン

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異変の最中にいるのは、何も黒幕側と解決屋だけではないのです。

今回の回はただのお祭り回なので、読み飛ばしていただいても、特にストーリーがわからなくなることなどはございません。


平和な平和な幻想郷

 紅魔館にて〜

赤ずくめの窓無し屋敷に取り付けられた数少ないテラスの一つで、静かに空を眺める少女が2人…

少女の1人がもう1人に話しかけている。

『ねぇ、パチェ、そんなに本ばかり見てないでたまにはアレを見てみたら?貴重…でもないけど折角の異変よ?』

『別にどうだっていいわ。私の書庫に影響がないなら。』

話しかけられたもう1人の少女は分厚い魔導書から一切顔を上げることなく愛想の無い返事を返した。

まぁいつものことなのだが。

『勿体無いわねぇ、あれだけ大きな蛾なんて中々見られるモノじゃないし、何より折角のイベントを楽しまないなんて。貴女もそう思うでしょ?』

『そうですね、仕事の息抜きには程よいと思います。』

羽の生えた少女が虚空に話しかけたと思ったら、そこにメイドが現れた。

何を言ってるかわからねぇと思うが(ry

『でしょ?折角だしフランも読んできて頂戴。異変解決を眺めながらティータイムと洒落込みましょう。』

『はい、お嬢様。因みに、美鈴はいかが致しましょうか?』

『居眠りしてなかったらついでに呼んできて頂戴。』

『かしこまりました。』

メイドが一瞬でその場から姿を消すと、本に没入している少女が友人に問いかける。

『そんなに騒ぐ程の事かしら。小規模のものを含めれば異変なんて割としょっちゅう起きてるし、流石にそろそろ慣れてきたわ。』

『それは良くないわね。何事も楽しむことが長生きの秘訣らしいわよ。貴女、ただでさえ早死にしそうなんだからもっと楽しまないと。ま、一番は自分で首を突っ込むことだけど…』

『ふふ、吸血鬼に言われると説得力が違うわね。』

『でしょ?退屈は不死をも殺す唯一の天敵なのよ。』

廊下から話し声が聞こえてくる、どうやら我が妹とメイドが来たようだ。(門番はいないので、寝てたらしいけど)

赤い館の主、レミリア・スカーレットが手に持つティーカップの中に入れられた紅茶には、白く大きな蛾の翅が映り込んでいた。

 

 

 白玉楼にて〜

常に亡霊漂う冥界においても、春が訪れ大量の桜はまさに見頃を迎えようとしていた。

一番巨大なただ一本を除いては。

そんな季節、この日も1人の少女は縁側に腰掛けて八分咲きの桜を楽しみつつ従者の帰りを待っていた。

『ただいま戻りました、今回の異変、私の見立てでは放っておいても問題は無いかと…』

徐に、2本の刀を帯びた少女が降り立ち、主人への報告を済ませる。

『そう、ご苦労様。貴女がそういうならそうしましょうか。ところで…』

縁側に腰掛けたまま、少女は手に持っていた扇子を閉じていたずらっぽく尋ねた。

『貴女はあの純白を切れるかしら?』

『…仰せとあらば。』

『相変わらず生真面目ねぇ、もっと力を抜いてくれても構わないわよ?』

『残念ながら、それだけが取り柄ですので。ところで、なぜそのようなことを?』

『うふふ、なんとなーくよ。日常を過ごすための理由なんて特に要らないでしょう?同じこと。』

『そういうものなんですかね…わかるような、わからないような…』

『ああ、にしても残念だわ〜仮にも、白玉楼の庭師で私の従者なら、絶対にできますってぐらいは豪語して欲しかったのにねぇ。』

『そのようなことを言われましても…』

『ま、もしそんなことを言ったならそれはそれで慢心を叱責するんだけど。』

『そんな正解がない質問はおやめください…禅問答じゃないんですから。』

『あらあら、それは失礼。それにしても、あの春も今日と同じ風が吹いていたわね。懐かしいものだわ。』

白玉楼の主、西行寺 幽々子は少し昔の思い出深い春を思い出し、しばし余韻と感傷に浸るのであった。

ちなみに妖夢は、そんな幽々子を放っておいて晩御飯の支度を始めた。

 

 

 幻想郷のどこかにて〜

この異変が始まって以来、ずっと桑子の監視をしている存在がいた。

何を隠そう幻想郷の賢者が1人、八雲 紫である。

彼女は全てを知っていた、スキマを通して覗き見た異変のきっかけ、過程、実行、そして霊夢と魔理沙との闘いも。

それどころか、それ以前のことまでも。

そもそも、外界で消え去りかけていた桑子を幻想郷に引き込んだ張本人は、彼女である。

よって彼女は、桑子が再び幻想郷の外に出てしまえば、ほぼ消滅は免れないということを知っている。

自ら引き止めてやろうかと考えたりもしたが、やはり消えてしまうようならそれまで。

そう決めて静観を決め込むこととしたのである。

そして、彼女の期待通りに異変解決屋達は現れ、桑子との闘いが始まった。

時は流れて、現在桑子が遂に本気を解き放ち、ヨナグニサンの翅を展開した頃…

『よろしいのですか、紫様?もしここで霊夢達が敗北するようなことがあれば、あれは無理矢理結界を破って自身の消滅を招くどころか幻想郷にまで危険をもたらすでしょう。』

いつの間に帰ってきたのか、彼女の式神が背中に問いかけてくる。

『勿論、十分承知の上よ。この幻想郷は閉じた世界、異変によるほどほどの攪乱がなくちゃいずれ抜け殻のようになり、緩やかに滅んでいく。こうやって異変解決を眺めつつ寛げるならそうしていたいわ。余裕と遊びを失った世界に幻想が寄り付くと思って?』

『紫様の高尚なお考え、私などには理解しかねますが、そういうものですか。であれば、私もそれに習いましょう。』

『それぐらいで構えておけばいいのよ。そうと決まれば、決闘を見物しながらお酒でもいただきましょうか。ほら、丁度手元に大吟醸が。』

式神は呆れたようにため息を吐いた。

『まだ日は高いですよ…後、また神社から勝手に酒を持ち出すと霊夢が怒りますよ?』

『つれないわねぇ。』

八雲 紫は瓶からお猪口へと酒を注ぎ、高く掲げた。

『今日も平和な幻想郷に乾杯ってところかしら。』

 

 

 人里にて〜

幻想郷で最も力なき者でありながら、幻想郷の維持に最も重要な役目を持つ人間たちの住む場所、人里では皆が空を見上げていた。

つい先程までは、僅かに弾幕ごっこをしていることが窺える程度であったのが、突然不意に巨大な蛾が空に出現したのだから無理も無いことではあるのだが。

広い通りの真ん中で、人々の信頼が厚い寺子屋の教師が何人もの人間の相談を受けている。

ざわめく民衆を尻目に、一つの人影が貸本屋「鈴奈庵」へと入っていった。

『ちょいとごめんよ、今日は営業しておるかな?』

『あ、いらっしゃいませ〜今日も絶賛営業中ですよ。』

鈴の髪飾りを身につけた少女が店の奥から駆けてきて頭を下げる。

『そりゃ良かったわい。里のどこもこんな様子なんでの、どこへ行っても半ばパニックじみておる。』

『無理も無いですよ、知り合いの蚕農家の方なんかショックで寝込んじゃってますもん。』

『今回の異変は皆の生活が掛かっとるからの、いつもと変わらんのはここぐらいじゃ。』

『アハハ…ちょっと妖魔本を集めすぎて感覚が麻痺してるのかもしれませんね。』

『まったく…ホントよ。一応自覚はあったのねぇ、驚いたわ。』

店の奥から呆れたような声が響く。

そこにいた紫の髪の少女が手を振りながら話を続ける。

『真っ当な危機感ぐらいは持って無いと、いざって時に間に合わないわよ?そもそも、あんた前のおかしな本の時も…』

『反省しております〜ところでお客さん、本日はどんな御用ですか?養蚕の入門書なんかも置いてますよ。』

『それはまた今度にしておこうかの。そうじゃのう…今日は南蛮の神話でも読んでみるとしようか。』

結局、彼女が借りて行ったのはいつどこからこの店にやってきたのかわからない希臘の神話について書かれた学術書であった。

『またのご利用お待ちしてまーす。』

快活な声を背に店を後にし、鈴奈庵常連もとい二ツ岩 マミゾウは考える。

『さて、この異変、一体何が関わっているやら…深いのう。』

そして彼女は、雑踏の中へと姿を消した。

 

 

 永遠亭にて〜

『し、師匠!さっき何気なく空を見たんですけど、あの一反木綿に翅が生えてたんですよ!何か動きがあるんでしょうか⁉︎』

なんだかしわしわした兎耳の少女が引き戸を勢いよく開るなり、部屋の中にいた赤と青のツートンカラーが良く似合う少女に騒々しく報告をする。

『ええ、わかっているわ。私の部屋にも明かり取りの窓ぐらいはあるもの。』

『あっ…それもそうでしたね。失礼しました。』

『些細なことでも報告してくれる分には別に構わないけど…と言うか、あれは別に一反木綿じゃないわよ。』

『え、そうなんですか?いやー私てっきりそういうものなのかと…』

『精進が足らないわね。そもそも、あの大きさなら少なくとも「一反」木綿とは呼べないじゃない。』

『言われてみればそうですね…では、あれは何者が作り出した物…まさか、月の民が?』

『いえ、恐らく月絡みの異変ではないわ。ただ、天空の住人が関わっていることに間違いは無いと思うけど。』

『? それってどういう…』

『まぁ、いいわ。それより、姫さまの様子を見てきて頂戴。また妹紅と殺し合いをしてるから、巻き込まれないようにね。』

『了解しました。失礼します。』

部屋を出る弟子を見送った後、月の頭脳八意 永琳は窓から見える白宙道を眺めて考える。

『空の道ねぇ…随分時期外れな気もするけど、あの連中ならあるいは…』

 

 

 妖怪の山にて〜

山の中腹にて将棋盤を挟んで対峙する人影が2つ…

『まったく…腹立たしい。今日は異常がありすぎて報告書を尋常じゃない程作らないといけないのよ。やってられないわ。』

白狼天狗の少女がご機嫌斜めな様子で湯呑みのお茶を飲み干した。

『そりゃ大変だねぇ。じゃあ私と将棋なんてしてる場合じゃないよ、多分。』

答えたのは自身よりも大きいリュックにもたれかかった河童の少女である。

『いいじゃない、下っぱにも娯楽の一つや二つぐらいあっても。今日だけで麓の神様が騒ぎを起こすわ、独立した縄張りを持ってる気難しい妖怪が騒ぎを起こすわ、上空を大量の蚕が飛んでいくわ…ああ、考えたくない。』

パチン

『憐れだねぇ。ま、今日ぐらいは愚痴の1つや2つも聞いてあげるよ。』

パチン

『鴉天狗の連中も応援に来たかと思ったら、すぐにまたどこかに飛んで行くし、絶対に新聞のネタ探しに来ただけだわ…』

パチン

『まあ、そりゃあ腹も立つよねー、うん、同情するよ。』

パチン

『でしょ?現場に撮影しに来るだけなら、念写でもしててくれた方が余程マシよ。オマケに最近飯綱丸様も妙なことを企んでるみたいだし…部下の心労も考えてほしいわ。』

パチン

『ああ、なんか知らない洞窟が出来てたりするね。地下から何かがぶつかる様な音も聞こえるし、もしかしたらビジネスチャンスかもしれないなぁ…あ、王手。』

パチン

『えっ………あぁ〜‼︎』

今日は彼女にとって、近年稀に見る厄日であった。

 

 

 守矢神社にて〜

『あ〜あ、折角の異変なんだから私も行けばよかったな〜』

縁側に腰掛けて呟くカエルと蛇の髪飾りの少女に背後から声が掛かる。

『仕方がないさ、今日は人里での布教が捗ったからね。』

声の主は背丈よりも大きな注連縄を背負った少女であった。

『あっ、聞かれちゃいましたか。申し訳ありません、風祝の本懐を蔑ろにするつもりはないんですが…』

『いやいや、早苗は十分役目をこなしているじゃないか。その上で異変解決にも精を出すなら、私達も咎めやしないさ。』

『ありがとうございます、神奈子様。私もしばらく異変解決に携わってなかったのでウズウズしてたんですよ〜今度異変があったら行ってみようかな〜』

早苗と呼ばれた少女が去った後、残されたもう1人は屋根の上で話を聞いていた者に話しかけた。

『なんだか、早苗がだんだん危ない方向に向かっている気がするんだが、気のせいか?』

『割と前からあんな調子だったよ?まあなるようになるさ。』

屋根の上から目玉のついた珍妙な帽子を被った少女が飛び降り、手近な庭石の上に着地した。

『ただ、ほんのちょっと色々なものに影響を受けやすいだけさ。』

『そんなものかねぇ…』

人が神に似た姿なら、人と同じように神もまた悩むのだろう。多分

 

 

 天界にて〜

『総領娘様〜いらっしゃいますか〜?』

紅いヒラヒラした少女が声を張り上げて呼んでいると、

『あ、衣玖〜ちょっとこっち来てみなさいよ!面白いものが見られるわよ〜』

その声の方向に少女が飛んで行くと、要石に腰掛けたもう1人の少女が桃を齧りつつ下界を眺めていた。

『総領娘様…こんなところにいらしたのですか。また、お父上様の呼び出しを無視して…そんなことでは折角許された一時帰宅も取り消しになりますよ?』

『こんな退屈な所、帰ってきてもしょうがないわ。いつ追い出されても別にどうでもいいしね。そんなことより、ほらここの雲から下界を覗いてみなさいよ。』

言われるがままにそこを覗いてみると、どうやら3人が弾幕ごっこの真っ最中のようだ。

3人のうち、2人は既に見知った顔であるが、もう1人の蛾の翅を背負った少女とは出会ったことがない。

そして、その少女は空気が震える凄まじい力を放っていた。

『どう?退屈凌ぎにはもってこいじゃない?弾幕ごっこを上から眺めるって中々ないし、薄味の桃も少しは美味しく食べられるわ。』

『そうですか、それはそうと帰らないと…』

『ええい、話が通じないわね…この石頭め〜』

『なんとでもお呼びください。私は時間が許す限り言い続けますよ。』

霊夢達の頭上でも何故か別の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 妙蓮寺にて〜

『聖、ナズーリンから報告がありましたが、どうやら里の蚕が全て行方不明になったようです。おそらく、これが今回の異変の本命でしょう。』

しましま頭の少女から話を聞き、大阿闍梨は立ち上がった。

『なるほど…ありがとうございます。里の皆さんに直接被害が出ているとなれば、私も出ましょうか。』

障子を開け、頼れる門弟達を呼びに行こうと廊下を歩く彼女の耳に何やら賑やかな笑い声が聞こえてきた。

単なる風の音か何かの聞き間違いかと思いきや、その後も2度3度と聴こえてきている。

どうやら本当に笑い声らしい。

しかも、その元は明らかにこの寺内であった。

まさかとは思ったが、何も確認していない状態から断定するのは良くないことだ。

笑い声の元の部屋を見つけ、障子を開けた。

『あっはっは、異変だ異変だ!そーれ飲め〜』

『早く飲まないと姐さんが来るぞ〜』

その姐さんが部屋に入ってきたことにも気づかず、徳利を空ける門弟が2人、障子が開いた時に瞬時に正体不明になった者が1人、床には巻き込まれて酔い潰れたと思われる山彦と唐傘お化けがすやすやと眠っていた。

『楽しそうですね、ムラサ、一輪?』

『楽しいですよ〜さあ、聖様もご一緒に…って、え。』

『どうしたのよ〜みなみつ〜乗りが悪いわよ〜』

『い、いや、その、聖様?こ、これは違うんです!』

『話は後にしましょう。南無三ー!』

2人が折檻されている隙に、コッソリと部屋を抜けようとする者が1人…

『ぬえ、貴女もこの場から離れることは許しません。』

見逃してもらえる筈も無く、この時だけここは寺であるにもかかわらず、阿鼻叫喚となったのであった。

 

 

 神子の仙界にて〜

『太子様、此度の異変、我々はいかに動きますか。』

『そうだな…今回は静観に徹するとしようか。布都は不満かもしれないけどね。』

ふよふよと浮かぶ亡霊少女の問いに聖人はそう答えた。

『かしこまりました。』

彼女が姿を消すと同時に、入れ替わるように部屋の中へと入る人影が一つ。

『あらあら、もったいない。これだけの騒ぎを巻き起こしている異変を放っておくなんて。人里にも直接被害が出ている事ですし、解決に乗り出して民衆の耳目を集める絶好の機会ですわよ?』

壁に簪で大穴を開けて部屋に入ってきたのは、羽衣を纏った少女であった。

『ふふ、青娥、私には聴こえているのよ。これほどの距離が離れていようと、このアイテムで届く欲の声を制限していようとね。』

聖人は自身の耳に付けたそれを指差しながら答える。

『と、言われますと?あそこにいる黒幕の欲がよほど強いと?』

『そういうこと、どうやったのか本人の格に合わない力も備えている様だし…何より、なんとなく関わらない方が良い気がするのよね。』

『あら?珍しいことをおっしゃいますわね。いつも損得で動く太子様が、単なる勘で判断なさるなんて。』

『失礼しちゃうわね。私は常に利が最大となる様に動いているだけ。それに、たまには理屈抜きで判断しても構わないでしょう?一度死んでいいるとはいえ、元は人間なんだから。』

聖人 豊聡耳 神子は、欲望の青空の下で静かに窓を通じて入ってきた風に吹かれていた。

 

 

 魔法の森にて〜

幻想郷有数の危険地帯である魔法の森の入り口に一軒の古道具屋があった。

今日は珍しくお客が1人…

『ごめんください、店主さん、いらっしゃいます?』

その声にも作業を黙々と続けていた店主の手が止まることはなく、ただ一言

『ああ、お探しの店主はここにいるよ。要件があるならなるべく早く済ませてくれ…』

『折角お客が来たってのに、相変わらず愛想無いわね…』

『なんだ、君だったのか。』

店主が振り向くと、そこには小さな人形を引き連れた少女が立っていた。

『それで、今日はなんの用かな?人形の材料でも切らしたのかい?』

『ご心配無く、まだまだ家に置いてあるわ。今日は魔理沙の行方を聞きに来ただけよ。あいつったら勝手に人を呼びつけておいて、どっかへ行っちゃうんだもの。』

『まぁ、魔理沙らしいね…でも、僕の知る限りでは今日店に来たのは君が初めてだ。だから、魔理沙がどこへ行ったのかなんて知らないな。ただ、やっぱり異変解決じゃないかなぁ。』

『そうよね…あいつがあんな巨大な妖怪を見逃すわけもないしね。どうせだから異変の話でもしましょうか。あれは一体なんなのかしら?』

『ふむ、まず、あれは道具だ。巨大な妖怪とかなんかじゃない。』

『あら、そうなの?私てっきり一反木綿か何かかと。』

『うん、僕も最初はそう思った。能力で見てようやく気付いたんだ。つくづく、便利なのかそうじゃないのかよくわからない能力だよ…さて、異変の話に戻ろうか。あれの名称は白宙道、用途は幻想郷を出るため…らしいよ。』

『さらっとすごいこと言ってるわね…幻想郷を出るって…無茶な異変だわ。』

『そうでもないよ、1人の人間ですら外界から幻想郷へと自らの意思でやってきた例もある。』

『オカルトボール、だったかしら?』

『ああ、だからその逆も容易ではないにせよ無理ではない筈だよ。』

『なるほどね。それにしても、幻想郷を出たいっていうだけなら放っておいてもいいと思うけど…』

『ま、異変は異変だからね。恐らく霊夢も解決に向かっている筈さ。また2人とも服をボロボロにして帰ってくるだろうから、僕も準備をしておかないといけないな。』

話したいことは全て話したのか、店主は再び机に向き直りまた黙々と作業の続きを始めたのであった。

 

 

 博麗神社にて〜

幻想郷の僻地に立つ賑やかな神社、その縁側で日向ぼっこにふけりつつ空を見上げる小さな人影が一つあった。

『霊夢、上手くやってるかな〜返り討ちにされてなきゃ良いけど。』

『まぁ大丈夫じゃないかい?実際、今もこうして戦ってるんだしね?』

部屋の奥で昼間から…というより常に酔っ払っている鬼が答えた。

『いや、もしかしたら今戦ってるのは一緒に飛んで行った魔理沙だけだったりして〜』

床下から不安を煽るのは、妖精。

『そんなわけないじゃないですか!霊夢さんはどんな相手にも負けませんよ!一番近くで見てきた私から言わせてもらうと…』

めんどくさい反応をしているのは狛犬。

あらためてみると、何という珍妙な面子だろうか。

オマケに、最初の発言は小人のものである。

これほどの多くの種族が揃うことも中々無い。

『どっちにしろ、生きてるなら帰ってくるでしょ。ご飯ぐらいは用意してしておいてあげようかなぁ。』

小人が走って寝転んだ鬼を迂回しつつ土間へと向かい、1分ほどで戻って来た。

『どうしたの?火種がないとか?アタイの松明使う?』

息を切らせて肩を上下させながら彼女は答えた。

『お鍋が、重くて、持ち上が、らないの…』

これには思わず全員が苦笑いするしかなかった。

『しょうがないねぇ、じゃあ私も手伝ってやろうかね。』

『ああ、私も何かやりますよ。霊夢さんのためとあらば。』

『じゃあアタイも火、着けてあげる〜』

『お前さん、火好きだねぇ。』

博麗神社は今日も変わらず賑わいを見せていた。

それは、霊夢が持つ人を惹きつける魅力に由来するのか、それとも…どちらにせよ人間はあまりいないのだが。

 




幻想郷の時系列把握難しい、難しくない?
よって、今回の話には間違いも多々あると思われます。
もし発見なさったらご報告いただけると幸いです。

登場人物

多すぎるため割愛させていただきます。
気になったらなんとか自分で調べてくださいな。
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