東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜   作:プルプルマン

43 / 56
布団から出たくない日が続きますね。
まぁ年柄年中そうだということもあるかもしれませんが。


Wild Silkroad

「古今東西ワームホール」

 

スペルカードが宣言されると共に桑子の全身が光り輝き、辺りは異様な雰囲気に包まれていく。

彼女は一呼吸置いて霊夢と魔理沙を見据え、堂々と宣言した。

『さあ、4つの大苦難を超えたお前達には、私の最高の弾幕が相応しい!止めれるものならやってみろ!』

『なるほど、そういうわかりやすいのは大歓迎だ。乗ったぜ。』

魔理沙がその勝負を受け、いつでも動き出せるように構える。

霊夢も無言のままではあるが特に異論は無かった。

桑子はゆっくりと自身の左に動き出すと、霊夢と魔理沙の目の前で瞬く間に加速し始める。

そして、数秒後には既に魔理沙のレーザーでも捉え切れず、霊夢の追跡お札も追いつけず距離を空けられるだけとなってしまっていた。

『く〜、的はあれだけ大きいのにな。流石に弱点ぐらい対策してやがったのか。』

大きな背負いものの弱点である機動力の低さと弾幕に当たる面積の広さ、それを覆すために桑子がとった手段は自身の持てる限りの力を使っての高速移動であった。

如何なる攻撃も当たらなければどうということはない、を地でいくその作戦は功を奏し、霊夢と魔理沙の弾幕を容易く回避することができている。

しかしながら、このスペルカードの本領はこんなものではない。

むしろ、ここからが本番と言えるのである。

幾度も幾度も加速を繰り返して自由自在に飛び回る桑子であったが、不気味なことに今まで一度も霊夢や魔理沙に向けて弾幕を放ってきていなかった。

当然2人は困惑する、何が目的なのだ?単なる時間稼ぎ?まさか自分のスピードを制していないなんてことは無いだろうし…

届かない弾幕を放ちながら考える霊夢であったが、その僅かな間にも桑子は益々その速度を増し、既に寺の超人阿闍梨や山の鴉天狗どもに迫ろうとしている。

いつの間にか直接追いついてやろうと並走していた魔理沙のスピードでも追いつくことは難しそうだ。

彼女も相当速い筈なのだが。

そのまま延々と加速し続けるかのように思われた桑子であったが、突然姿を消してしまう。

勿論それは文字通りの意味である。

速すぎて姿が尾を引く流星のように見えるとかそういったことではなく、正にその場から桑子本人だけでなく背中の巨大な翅もぷっつりと姿を消してしまったのだ。

まるで最初から誰も居なかったかのような顔を見せる空に桑子を追っていた魔理沙も少し離れてその様子を見ていた霊夢も驚きを隠せない。

無論、桑子から目を離していたわけではない、それでもいつ、どこに消えたのか全くわからないのだ。

その時、霊夢の脳裏に強烈な嫌な予感が浮かび上がる。

その正体などわかる筈もなく、またどういう内容なのかも漠然としてはいたが、確かにヒヤリとするものがあった。

次の瞬間には体が勝手に動いており、亜空穴を開いてその中へと飛び込んでいた。

そして、霊夢が飛び出したのは魔理沙のすぐ横、そのまま流れるように目の前にいる彼女を抱えて横へと飛び退いた。

『どわっ!いきなり何すんだよ⁉︎』

突然の霊夢に驚く魔理沙であったが、その直後につい1秒前まで自身がいた場所を中弾が撃ち抜いてゆく光景が目に飛び込んで来た。

いつの間にやら、どこからともなく再び桑子が姿を現し、中弾と大弾のばら撒き弾幕を放っているではないか。

そして、ことさらに魔理沙に衝撃を与えたのは弾幕をばら撒いた桑子は、一切停止する素振りを見せることも無く再加速し、またしても突然姿を消したということであった。

『どういうことだ?まさか…敵にまだサニーミルクでもいるのか?』

そんなことを呟いているうちにも全く違う場所から桑子が出現し、弾幕を乱雑にばら撒いて来る。

迫り来るそれを躱し、霊夢がそれに答えた。

『いや、多分そんなことは無いわね。アイツは音も消せるわけじゃないし、羽音まで消えてるのは辻褄が合わないわ。』

またしても桑子が消失と出現を繰り返し、弾幕を放つ。

『おっとっと、それもそうだな。だが、ルナチャイルドでも一緒にいるなら…』

『それこそ考えにくいわね、あいつらに能力の切り替えを判断する頭はないわ。』

『辛辣だな…まあ、言えてるけどよ。じゃああれはどうやってるんだ?時間でも止めて動いてるのか?』

『そんなことは無いと思うけど…あいつは蚊じゃなくて蚕だし。私が見るに、あれはこういうことじゃ無いかしら?』

霊夢は大弾に被弾する直前、亜空穴の中に入って回避し、全く違う場所に現れる。

『なるほど、確かにそいつはよく似てるな。』

『でしょ?まあ細かい違いはあるけど、概ね似た技だと思うわ。どうしてあいつができるのか知らないけど。』

『そんなことは後で絞ればわかってくるんじゃないか?それより、どうしたもんかな、べらぼうに速い上にワープまでされたんじゃ面倒だぜ。』

ふと、何かを思いついたらしい霊夢が弾幕の隙を見て魔理沙に接近し、ゴニョゴニョと耳打ちをした。

『よし、わかった。じゃあ頼むぜ?亜空間に置いてけぼりはゴメンだからな。』

『安心しなさい。そんなことはあんまりしないから。』

霊夢が魔理沙の箒に腰掛け、前方に亜空穴を開く。

『さあ、いくわよ!今更止めるなんて言ったら封印するからね!』

2人を乗せた箒は勢いよく亜空穴へと飛び込んだ。

 

桑子はかなりの手応えを感じていた。

というのも、今までイメージだけはしていたが、どうしても成功しなかったスペルカードが最高の出来栄えで形となっているのだ。

これで結界術を教えてくれた神様にも胸を張って報告できるだろう。

いつか、外の世界で蚕の楽園を作り上げ、そこにも同じ結界を張ろう。

この幻想郷と同じ、常識を分かつ結界を。

なんて空想に浸っていると、いつの間にか霊夢と魔理沙の姿が見当たらない。

はて、どこへ行ったのだろうか?

と、その時、高速で飛ぶ桑子の右隣にピタリと張り付く人影が2つ…

『霊夢、やっぱこれ以上のスピードは出せないぜ。箒がいかれちまう。』

『分かったわ、これだけ近づければ十分よ。』

桑子が驚いて右に振り向くと、そこには姿勢を低くして箒の限界までスピードを上げた魔理沙とその箒に腰掛けた霊夢であった。

霊夢は作り出した小さな結界を蹴った勢いで桑子の前に躍り出る。

『どこで覚えた技か知らないけど、付け焼き刃の結界術なんかじゃ私は倒せないわよ!』

言い終わると同時に大きな陰陽玉を投げつける霊夢。

それを避けるにはあまりにもスピードが出過ぎており、あまりにも距離が近過ぎた。

結果、桑子はほとんどなす術なく陰陽玉の直撃を受け、大きく吹き飛ばされたのであった。

『よし!チェックメイトってやつだな!』

『王手飛車取りともいうわ!』

なんだか、和洋折衷将棋でも始まりそうなことを言っているが、桑子は2人の想像を上回るほどのしぶとさを見せる。

地を這う虫の泥臭い根性なのだろうか、彼女は残された最期の力を絞って体勢を整え、できることなら使いたくなかった奥の手とも言えるスペルカードを宣言する。

 

『ワイルドシルクロード』

 

鋭く風を切る音がする。

その音の正体は、少し前に弾き飛ばされた桑の枝が高速回転しながら桑子の手元へと戻ってくる音であった。

彼女はそれを手中に収めると、右手に持って天を突き周囲から弾幕を放った。

膨大な数の蛾弾が球状に膨らみ、交差を繰り返しながら霊夢と魔理沙に迫り、思わず後退りさせる。

『くっ…底無しか?こいつ。』

『底は見えてるわ、魔理沙。あいつに残った力じゃどう頑張ってもこのスペルカードが限界よ。』

『なるほど…つまりはここが正念場。桶狭間ってわけだ。』

2人はスッと身構える。

この異変に引導を渡すため、そして1人の妖怪を守るため、その姿は正しく威風堂々たる異変解決屋であった。

2人はほぼ同時に桑子の弾幕の中へと飛び込み、蛾弾の間をすり抜けて距離を詰めてゆく。

交差を繰り返す弾幕に呼応して緻密に方向転換し、時にはほんの数十cmほどしか幅の無い弾の間を全力で体を縮めて通り抜ける。

さながら蝶が戯れるように舞い、突き進む2人の周囲からアッサリと蛾弾か消え去った。

まさかもう抜けたのだろうか?

だとするのなら攻撃チャンス到来で万々歳なのだが…

魔理沙が桑子を仰ぎ見ると、彼女は当初の天を突いたポーズのままで枝をくるくると頭上で回していた。

どうやら追撃が来る気配も無い。

やけにすぐ見えた隙に疑念を抱く魔理沙であったが、最終的に彼女はシンプルに攻撃することを選んだ。

相手が多少未知数の行動をとったとしても先手を取った方が有利であると考えたのだ。

魔理沙が軽くジャンプして箒の上に立ち上がり、真っ直ぐに伸ばした腕の先にミニ八卦炉を構える。

先程は不調が重なり不覚を取ったが、今度は失敗できない。するわけにはいかない。

八卦炉から掌に伝わる熱、振動、増幅した魔力、ここまでは一切の不調も無く完璧である。

そして、相棒の調子が戻ったことを実感した魔理沙は、もはや遠慮は不要と言わんばかりに無数の星弾を放った。

下手なスペルカードすら凌駕するほどの量と密度、加えてかなりの速度で放たれる星弾。

その巨大な流れが目の前に迫っても桑子が慌てた素振りはない。

彼女は天を突いていた枝を迫り来る星弾に向けて振り下ろし、攻撃対象を定めた。

一条の光線が放たれ、刹那の間にそれは太さを増し、威力を増し、速度を増して意気揚々と突撃してくる星弾を逆に飲み込んで行く。

世界が震えているかと思い込んでしまいそうなほどの発射音。

そのレーザーを横から見た霊夢の目には、さながら一本の白い道が地上に向けて伸びているようにも映りこんだ。

魔理沙がそれを察知し、紙一重で直撃を避けると、勢いが衰えることも無くレーザーは自身の蛾弾を含めた直線上の全てを飲み込んで眼下の森へと着弾した。

その威力は高く、着弾点では数本の木がへし折れてまとめて宙に舞い上がったのが見て取れる。

一連の光景はそれを見た霊夢と魔理沙を戦慄させるのに十分過ぎるほどであった。

その間にも桑子は再び天を突き、次なるレーザーの準備を始めている。

もはや猶予は無く、万が一にも自分の家がある魔法の森方面に向けられては大変と魔理沙は高度を引き上げ、桑子と同じ目線の高度までやってきた。

多少位置が変わろうが変わるまいが桑子は気にすることなく枝を振り回しては極太のレーザーを放っている。

そのうち、桑子自身もその巨大なエネルギーの扱い方についてコツを掴んできたらしく、魔理沙や霊夢が直撃を避けたとしても強引にレーザーを引っ張って移動させ、その動きに対応できるようになりつつあった。

『くっ、いつまでもやられてると思うなよッ!』

隙を見て魔理沙が放った無数の弾幕は現在霊夢を追ってレーザーを振り回している桑子の背中を、確実に捉えられる軌道で飛んでいったものの、突如放たれた細いレーザーによって弾かれ、消し去られる。

完全に桑子の意識外から飛来した弾幕、そんなものを防げるということは…

魔理沙がそのレーザーが放たれたと思わしき方向を確認すると、やはりというべきか桑子の使い魔が魔法陣を備えてホバリングしていた。

直後、彼等は素早く魔理沙の方へと向きを変え狙いを寸分たりとも違えずレーザーで撃ち落としに掛かってきていた。

『うおっ、中々良い狙いしてやがるな…目の前で指をグルグル回したら落ちていってくれないかね。』

トンボじゃあるまいしそんなことが本当にあるとは思えず、試してみるには今の状況下ではリスキーすぎる。

その時、いつの間に仕込まれていたのやら魔理沙のポケットから妖しく光る4枚のお札が飛び出し、自動的に結界を展開し始めた。

ごく僅かな時間で結界は出来上がり、その中からは今日最も多く聞き、明日もそのまた次の日も聞くことになるであろう彼女の声が聞こえてくる。

『あ、よかった、魔理沙、聞こえる?今結界を通じて喋ってるんだけど、正直このまま闘いを続けても相手が逃げ切るだけだわ。時間もあんまり残ってないし、勝負を決めにいくわよ!』

『了解!作戦はどうする?』

『そうね…そこは魔理沙に任せるわ。今回ばかりはその方が上手くいく気がするし。』

『なるほど、大役だな。さて、やらかして戦犯の汚名を背負う訳にはいかないし、どうしたもんかな…』

桑子は再び魔理沙をターゲットに据え、純白のレーザーで逃げ回る魔理沙の後を追い回していく。

何しろ尋常ではないレーザーが縦横無尽に動き回っている。

後ろの空に浮かぶ雲を真っ二つに裂き、遅めの渡り鳥の群れの中を横切ってはその群れ全体にパニックを巻き起こし、天すら割りかねないほどであった。

オマケに、今は霊夢を狙撃したり本体に向けられた弾幕を防いだりしている桑子の使い魔はつい先程までよりも明らかに数を増している。

これはよろしく無い、やはり霊夢の言った通り攻めに転じなくては…

その時!魔理沙の虹色の脳細胞に電撃が走る!

桑子のレーザーが一瞬途切れるタイミング、彼女は突然箒から飛び降り、自由落下に体を預けたままミニ八卦炉を桑子に向け出力を最大限にまで引き上げた。

 

白恋「ピュアーホワイトスパーク」

 

桑子の放つそれより少し濁った白色のレーザーがミニ八卦炉から溢れ出し、世界を震わせて肌寒い空気を切り裂いて進んで行く。

そして、真正面から桑子と魔理沙のレーザーがぶつかり合い、今までに聞いたことのないような轟音を辺り一面に振りまいている。

その衝突面ではお互いを破壊し合うレーザーの作用で無数の大弾・中弾・小弾ほどの大きさまで分解されたエネルギーが意図せず弾幕のようにばら撒かれていた。

『いっけーー!押し切れー!』

超パワー弾幕同士の押し合いの結果か、枝を持つ桑子の手が小刻みに震え出した。

気づけば、防御に徹していた使い魔達もレーザーを桑子のものと統合してさらなるパワーアップを試みているが、魔理沙の新スペルカードは既にその程度で止められるような代物ではなかった。

だが、桑子にも意地・理想・希望、抱えるものは多くある。

なんとか耐え凌ぎ、大きく体勢を崩したものの魔理沙の攻撃を防ぐことに成功した。

しかし、そんな肩で息をしている彼女に切り札を更に超えた奥の手を叩きつけるように霊夢が宣言する。

 

白宙夢「夢想封印・宙」

 

『これが…博麗の巫女の力…そりゃあ誰も勝てないよねぇ。』

信じられないほど陰陽玉が巨大化し、純白に輝いて桑子の方へと落ちてゆく。

全ての使い魔がコンマ1秒でも陰陽玉の侵攻を止めようと突撃していくも、触れることすら出来ずに陰陽玉の放つ莫大なエネルギーの余波を受けて消滅していく。

結局、桑子は蛇に睨まれた蛙のように動けないまま陰陽玉に呑まれていったのであった。

異変の黒幕、力の源であった桑子は倒され、流れていた力が断ち切られたことにより、眼下に延々と広がっていた白宙道はほつれ、瞬く間にバラバラの糸くずのようになってゆく。

薄く光り輝いていた巨大な蛾の翅も端から順に粉々になり、風に吹き流されて大気に同化していく。

その光景は、虫織 桑子との弾幕ごっこが完全なる決着を迎えたことをハッキリと示していた。

そう、虫織 桑子との弾幕ごっこは…




北海道はもう雪が降りそうです。
ここは本当に日本なのだろうか?
全然関係ないですが、今冬の目標は赤気を自分の目で見ることです。
発生するかなぁ?

登場人物

サニーミルク
三月精で一番元気そう。

ルナチャイルド
三月精で一番ずっこけてそう。


人類の永遠の天敵。
わりと冗談抜きで。

虫織 桑子
スペルカード
蚕符「蚕食弾幕」
桑符「マルベリーシューティング」
蛹符「スカシ玉繭」
野生「ヤサンオールスターズ」
「古今東西ワームホール」
「ワイルドシルクロード」

霧雨 魔理沙
スペルカード
白恋「ピュアーホワイトスパーク」

博麗 霊夢
スペルカード
白宙夢「夢想封印・宙」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。