東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜   作:プルプルマン

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妖々夢のアレみたいに和歌を出したかったんですが、蚕をテーマにしたいい感じの和歌を知りませんでした。
無知ってのは罪ですね。



???のテーマは
【アンフライングフェアリーズ】です。
どんな曲かは皆様の思い思いで…


イカロスの残留思念

幻想郷の彼方まで広がる白宙道が解け、光の粒となって消えてゆく様を見ながら霊夢と魔理沙はようやく一息つくことができた。

『ふぅ…やっぱりただの糸でできた道じゃなかったのね。』

『まあ、ただの糸じゃ落雷でもおきたら漏れなく全焼だしな。ここまできて雷が異変解決するなんて消化不良もいいところだぜ。』

『雷避けには桑でも使えばいいんじゃない?まぁそれは兎も角、終わってみれば意外と呆気なかったものね。最近は複雑な異変が多くて困るわ。それでもまだ考えることは残ってるけどね…』

その時、風向きが変わった。

勝負の場を遠巻きに覆っていた蚕の群れが一斉に空の一点へと集まり、急激に力が高まってゆく。

霊夢と魔理沙は脇を擦り抜ける蚕達の動きに一瞬戸惑ったものの、気を取り直し戦闘体勢を取った。

幻想郷中の蚕が集まって月のような球体になり、内部で何かを行なっているようだ。

そのまま30秒程が経過した後、球体は崩れ中から姿を現したのは文字通り真っ白になった桑子の形をしたモノであった。

元々全体的に白い奴ではあったが、流石にここまでではない。

何しろ服装や髪どころか肌も目も純白であり、どこまでが服で、どこまでが体なのかも見分けられないほどであった。

不気味なほど純白いソレは、微動だにしないままスペルカードを発動させた。

 

「千万無量の蝋の翅」

 

その瞬間、何も無い筈の空間から前触れも無く無数の蛾弾が現れ、あらゆる方向に進行していく。

『くっ…まだこれだけの力を隠していたの⁉︎流石に予想外だわ!』

『上等!元々予想の外にあるのが幻想郷の醍醐味だ!キッチリ片をつけようじゃないか!』

霊夢は残り少ないお札を、魔理沙は単純なウェーブ状の弾幕を放って桑子らしきモノを攻撃する。

それらは意外にもアッサリソレの元へと辿り着き、確かにその姿を捉えた…筈であった。

確かに命中こそしたものの、霊夢と魔理沙の弾幕はソレを貫通し遥かな後ろまで飛び去って行ってしまった。

ソレは弾幕が命中した箇所に大穴を開けながらもそのことを全く意に介する様子も無く無機質に弾幕を放ち続けている。

それどころか数瞬の後には空いた穴も完全に元通りとなっていた。

『どういうこと?あれは本当にさっきまでの桑子とおんなじ奴なの?』

不気味に思う霊夢であったが、魔理沙の言葉によってその疑問の答えは得られた。

『おい!桑子の奴、2人に増えてるじゃないか!ドッペルゲンガーってやつか?』

魔理沙が見ている場所は丁度アレがいる場所の真下に生えている大木であった。

その梢には恐らく気絶している桑子が引っかかっており、白い髪とクリーム色の触角が風に揺れている。

では、今目の前を飛ぶアレは一体…

謎の存在が放つ弾幕は時間と共に更に苛烈さを増し、気づけばあらゆる方向へのレーザーやゆっくりと5方向を覆う大弾が加わっている。

それを防ごうにも、こちらからの攻撃は一切通用しない。

であればどうするか。

『魔理沙!油断するんじゃないわよ!弾幕ごっこの本質は華麗なる回避にある!アレのパワーが尽き果てるまで、避けて避けて避けまくる!』

『了解!最後はやっぱり根比べか!』

幾度も発射地点を変えるレーザーに裾を焦がし、大弾と蛾弾が頬を掠めてゆく。

その度に世界がスローモーションで動き、自身の拍動が耳に響く気がする。

そして、弾幕の激しさは最高潮に達し、追加で小さな星弾も降り注ぎ始めた。

あまりに膨大な物量を目にして冷や汗が2人の頬を伝う。

咄嗟の判断で霊夢が魔理沙の前に躍り出る。

残されたお札全てを使い、大規模な結界を構築していく霊夢。

それすらも許容量の限界に近い弾幕を受け徐々に後退していかざるを得ない。

圧倒的にジリ貧…

そして、一際強くソレが輝き弾幕のパワーが増した時、遂に結界は破壊され、2人は大きく吹き飛ばされた。

『ぐうっ…おっと、早く体勢を整えな…』

『魔理沙。もうその必要は無いわよ。』

霊夢が見つめる先では、桑子の形を借りたソレがどんどんと薄まり、消滅しつつあった。

姿は半透明になり、それにつれて弾幕も徐々に消えてゆく。

やがて、その姿が完全に視認出来なくなると同時に弾幕は散り、周囲に集まった蚕達の群れも解散していく。

霊夢と魔理沙は上を見上げ、その最後を静かに見届けた。

時刻は既に夕刻、空の色は既に純白から紅へと移ろいつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

どれぐらいの時間がたったのだろうか、桑子は漸く目を覚まし、未だぼんやりとする意識の中で自分がどうなったのかを考えていた。

心地よい揺れ、何故か暖かい体、目を開けると、彼女は霊夢におぶられて夕暮れの道を歩いていた。

隣には魔理沙も箒を片手に歩いている。

『お、こいつ目を覚ましたぞ。』

『そう、まぁ今から色々聞くのも気が進まないし、寝てても良かったのに。』

『えーと…私、今からどこに連れてかれるの?』

『うちの神社、なんとなく晩御飯ができてる気がするし、疲れたもの。』

『そして私もご相伴にあずかろうと思ってな。』

『着いてくるな!そうだ、あんたも食べてく?』

桑子は静かに頷き、それを確認した霊夢は少し歩を速める。

幻想郷の住人たちは既に異変が解決したことを知り、酒盛りの準備に勤しんでいることだろう。

そしてまた博麗神社に妖怪が集まり、人間が寄り付かなくなるのだ。

3人の頭上には既に一際明るい一番星が瞬いていた。




もうちっとだけ続くんじゃ。

登場人物

???
スペルカード
「千万無量の蝋の翅」
正体不明、しかしそれもまた幻想郷らしくていいじゃないですか。

虫織 桑子

彼女は、協力者の力と知恵を借り、幻想郷の住人達に嗅ぎ付けられないように空に浮かぶ長い道、エリダヌス座に偽装して毎晩少しづつ白宙道を織っていった。
完成した白宙道は最も全存在が大人しい時間である早朝に出現させ、一気に幻想郷から出る作戦であった。
妖怪の世界と人間の世界、二つが入れ替わるゴタゴタとした時ならば確実に成功する作戦のはず…しかし、幻想郷を守る壁は想定以上に強固で、その調停者は想像以上に強者であった。
画して、彼女は敗れ、異変は未遂に終わったのだが、ある意味では幸運だったと言えるだろう。
仮に外の世界に出た時、妖怪となっている彼女は拠り所を失い、消えてゆく運命しかない。
加えて、現代に増え続ける蚕の楽園を養える桑畑があるだろうか?
結局、彼女は守られたのだろう。
幻想郷という場所に、博麗の巫女という存在に。
ちなみに、異変後にも彼女には仲間の蚕を飛ばせる力が僅かながら残っており、成虫となった彼等に冥土の土産として空を飛ばせているらしい。
なんだかんだで甲鱗同盟以外の交友関係も広くなり、楽しくやっているようだ。
Part-3
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