東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜 作:プルプルマン
気が向いたので再開しました
やっぱ自分から始めた小説ですからきっちりまとめないといけませんよね
琴姫の周りを飛ぶ竪琴は更に放つ光を強めてゆく。
その輝きは既に真夏の織女星を凌駕するほどであった。
攻撃の準備を終えた琴姫が弾幕を再展開するために自身の両側に音符弾を作り出す魔法陣を整列させる。
直後、魔法陣は霊夢と魔理沙に向けて溢れんばかりの弾幕を発射し始めた。
左右交互に放たれた音符弾の連なりが描く軌道はさながら蛇行して流れる河のようであり、避ける者の無意識下での判断を狂わせてくる。
霊夢は柔軟にくねくねとした動きに適応していくが、直線的なタイプの魔理沙はどうもこういう弾幕は不得手であった。
先程までのように大胆な動きもできず、中途半端な距離で攻めあぐねているとどうにもイライラするもので…
『うーむ、どうするかなぁ。こういうへにょへにょした弾幕は何度も避けたことはあるけど、未だに慣れんぜ。ああ、目も疲れてきた気がするし、ここは霊夢に任せるか?』
苦手意識から彼女らしくも無いことすら頭に浮かぶ魔理沙であった。
が、しかし!そんなことを本気でやる様ならばここ幻想郷で異変解決屋なとできていない。
なによりも当の彼女自身がその選択を許せるわけもなく、暫し考えを巡らせたのち一つの策を企て、実行に移すのであった。
一方こちらは霊夢、魔理沙とはうってかわって琴姫の弾幕をするりするりとくぐり抜けていく。
というのも、この弾幕、軌道自体は極めて単純なものを繰り返す左右への運動によってなるべく複雑に見せているだけなのだ。
アレコレ思案せずともお手軽に難しそうな印象を相手に植え付けることのできる冷凍食品的?弾幕というわけだ。
そんな単純な正体を持つ弾幕は直感の鋭い霊夢にはまったく効果が無いらしく、まるで自身を遮るものなど何もないと言わんばかりにほぼ一直線に琴姫の元へと向かってきていた。
2人の距離が10メートルを切った時、その勢いをも加えて霊夢のもとから高速の針が放たれる。
琴姫は反射的にそれをバリアで防ぎ、後退しつつ更なる攻撃を霊夢へと向けた。
当然霊夢は音符弾の密集地帯と化した琴姫の前方空間を滑るように切り抜けていくが、いかんせんこの密度では時間がかかる。
そのとき、霊夢の感じていたまどろっこしい時間を切り裂くように弾幕を強引に跳ね飛ばしてきた閃光が一条彼女と琴姫の間に割り込んだ。
ご存知霧雨魔理沙だ。
彼女が手に持ったマジックミサイルを琴姫に向けて投げつけるとすぐさま尾部のブースターから動力が生み出されぐんぐんと加速していく。
ダメ押しに魔理沙自身が弾幕を打ち出すことによってミサイルを更に押し上げ、本来なら簡単に避けられる強烈無比な一撃を喰らわせることに成功したのだった。
これにはたまらず琴姫も無我夢中でスペルカードを宣誓して切り返しを狙う他はなかった。
三翼「鴆の毒羽根」
宣誓から間をおかず紫色の煙が発生し、周囲の空をドーム状に包み込む。
その範囲、直径にして50メートル程だろうか。
その煙のせいか突然鼻をつくワサビが効きすぎた時のような刺激に思わず霊夢と魔理沙が鼻を押さえた。
『なによこれ!嫌がらせにしたってタチが悪いわ!目も痛くなってきたし…』
『察するにこれは毒か?あの鈴蘭畑の毒人形といいケミカル弾幕は中々くるものがあるぜ…特に粘膜にな。』
だが、毒の煙は単なる嫌がらせではない。
それを示すれっきとした証拠とでも言わんばかりに刺激の強さで動きが鈍った二人の側をそれなりの速度で赤い羽弾が掠めてゆく。
そう、これは相手の機動力や迅速な判断力を奪い確実に仕留めることを目的とした反則スレスレ弾幕なのだ。
『さっきまでの勢いはどこへ行かれたのですか?前を見なければ避けられませんよ?』
非常に感に障る言い方だが、その通りといえばその通りである。
敵の言葉に気付かされるとは少々情けない話だが、よく考えればこのような搦手を使う相手など今までも相手してきたではないか。
鳥目やら変化やら上下左右反転やら…徐に魔理沙がポケットの中の小瓶を手探りで取り出し夜空に放つ。
空色の液体が入ったそれは模範的な放物線を描きやや降下に差し掛かろうとしたところで内部に気泡が生まれ、ほどなくして小規模な爆発を引き起こした。
琴姫と霊夢はその予想外の爆発に一瞬目を瞑る。
目を開けた時、彼女たちの周囲には紫色の煙が吹き飛ばされ晴れた空白のエリアができていた。
『ああ、やっと目が楽になったな。今たぶん兎みたいな目してんだろうなぁ、帰って鏡見るのが億劫だぜ。』
構えた魔理沙から放たれた星弾は琴姫のスペルカードを打ち破るには十分過ぎる威力を誇っていた。
『ふぅ…どうだ、霊夢?』
『何が?』
『今私の目赤くなってるか?』
『まあ、ちょっとだけ。』
『うげー、気が滅入るなぁ。目薬の作り方はどうするんだっけか…』
魔理沙が珍しく乙女チックを発動していると、それを隙と見たのか羽弾が降り注いだ。
無論不意打ちは成功せずいたずらに琴姫自身の体制を整える時間を消費しただけに終わったが、そこで彼女は止まらなかった。
先程の不意打ちから続け様に軌道を交差させる形で白い羽弾を無数に降り注がせるその攻撃は単純な弾幕で事故を誘発するのが狙いだろうか。
しかし、このままずっと相手の手番になることを許せるほど穏やかな二人組ではなく、こちらも負けじと霊夢が針を投げて対抗する。
投げられた銀色の針はわずかに狙いが外れ、垂れた袖を貫いたのみであったが、それは琴姫に次のスペルカードを使用するという決断をさせるのに十分な危機感を与えていた。
『これは早めに決着をつけた方が得策でしょうね…!』
弾幕で霊夢と魔理沙を牽制しつつ琴姫はこれまでのスペルカードとは纏う毛色の違う黒紫色のカードを取り出し宣誓する。
死翼「クロス・ザ・ステュクス」
琴姫の背後で巨大な妖力が実像を持ち聳え立つ。
その形状は彼女の周囲を漂いながら求められた力を常に供給し、一人でに音を奏で続けている竪琴のそれとよく似ていた。
『あれだけハッキリと形を持った妖力が出てきたってことは、いよいよ本気でくるわね。ほんとに扱い切れてるのか疑問っちゃ疑問だけど。』
『燃えるじゃないか。やっぱり弾幕ごっこは本気に限るからな!』
琴姫がゆっくりと手を前に突き出すと、彼女の左右から出現した魔法陣から無数の黒い燕弾が斜面を駆け落ちる濁流のように現れ霊夢と魔理沙をちょうど交点で捉えようと迫り来る。
もはや言葉なく意思疎通し上下に分かれて攻撃方向の撹乱を狙う二人だったが、その作戦は通用せず弾の群れは迷いなく四つの塊に分かれて再び二人をそれぞれ挟んで呑み込もうとしていた。
怒涛の勢いで追ってくる弾の群れは複雑に稼動する研磨装置のようで追いつかれた時を想像すると寒気がしてくる。
『涼ませてくれるのは結構だが、今は風鈴もいらない季節だしましてや夜だぜ。3ヶ月後の昼に来なッ!』
魔理沙の放った星弾を受けて一部の弾は消えたもののいまだ大多数は追ってきている。
そのことを確認した魔理沙は真っ向勝負を早々に諦め、踵を返して回避に徹することに決めたようだった。
もし仮に第三者がこの弾幕ごっこの一幕を見物したならば縦横無尽に夜空を駆け回る燕弾の群れは日頃より輝きを増した天の川と合わさって鵲の群れが橋渡しをするかの七夕伝説の再現に見えていたことだろう。
このままジリ貧かと思われたその時、博麗霊夢が動いた。
普通人間は危険が背後から迫れば前方に、前方から迫れば背後へと逃避しようとする…だがしかし、霊夢はあえて群れの中に飛び込んだのだ。
正気の沙汰ではない行動に琴姫も魔理沙も思考の巡りがほんの少しの間停止してしまったが、その意図はすぐに目に見える形で表れることとなった。
なぜか霊夢を呑み込んだ弾の一部がおかしな螺旋状の軌道を描いて飛んだ後、一直線に琴姫を狙って襲撃したのだ。
咄嗟に弾幕で二羽を相殺することに成功した琴姫だったが、残り三羽の対処は遅れまともに攻撃を受けてしまい、スペルカードが解除される結果になった。
解除されると同時に群れが解け中から霊夢が姿を現した。
『よし、やっぱ賭けには度胸が肝心ね。』
豆知識 冬に胸まで海に浸かると寒い
死ぬかと思った
登場人物
鈴蘭畑の毒人形
人形解放戦線!
鳥目と変化と上下左右反転
いったい何ティアと何ゾウと何邪なんだ…?
井上 琴姫
スペルカード
一翼「バードストライク」
二翼「鵲の渡せる橋」
三翼「鴆の毒羽根」
死翼「クロス・ザ・ステュクス」
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こうして、楽をしたい一心でエリダヌス座を利用するという悪知恵を桑子に吹き込み自分はその起点となる力を探すことにした琴姫だったが、難航する捜索の中で彼女は思いついた。
巨大なエネルギー源といえば星座として天に数多く浮かぶ神器がベストではないか。
その中でも琴であれば自身の名前とも相性がよく、更に型を真似たレプリカを作れば…
結論からいうと、彼女の想定以上に計画はうまく行った。
琴のレプリカは自分でも制御ができたし、エリダヌス座は元々天を貫く星座であったことからそれを模して作った白宙道も同じ性質を持っていたため空を覆う結界を貫くために必要なエネルギーも質量に比べれば節約できたのだ。
加えてエネルギー自体も桑子が協力者によって自前で用意できたという。
彼女の栄光ぐーたら生活はすぐそこまで見えてきていた。
part3
次回へ続く