東方白宙道〜Hundreds of Millions Wax PTERA〜   作:プルプルマン

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コタツから毛布を外そうと考えてめんどくさいからやめるということを数十回繰り返しています


空の支配者

隙間など無いのではないかと錯覚するほど詰め込んだ弾幕の嵐を突き破り、平然と姿を現した霊夢と魔理沙を琴姫はうんざりしたように見下ろす。

しかしその内面では彼女がいかに神器の力を受けても、いかに手の込んだ弾幕を作り出しても平然とそれを踏破してくる目の前の二人組に本能的な恐怖すら感じ始めていた。

『ああ、しつこい!こちとら数年は遊んで暮らすはずだった予定をぶち壊されてイラついてるんですけど!?あーもう予約しちゃった旅行も全部キャンセルする羽目になったし、キャンセル料だってバカにならないのにー!オマケに地上の人間なんかにこれ以上深入りされたら天帝様まで伝わって、大目玉よ!』

癇癪を起こした琴姫が何やら捲し立てているが、魔理沙はどうでも良さそうに受け流す。

『ヒステリックだなぁ。まぁ自業自得だ、せいぜい休日返上してよく働くこったな。』

『うるさい!給料安いのよ!』

そんな魔理沙の態度が火に油を注いだのか、聞いてもいない経済事情まで暴露してくる琴姫に生活には困らないが裕福とも言い難い博麗神社の主、霊夢はほんの少しだけ同情した。

『あんたの境遇には…その給料事情のことも含めてちょっぴり気の毒とは思わなくもないけど、私欲で幻想郷のシステムを揺さぶろうとした者をお咎めなしにする気は無いし、キッチリ代償は払ってもらわないと人妖どっちにも示しがつかないの。今度の宴会には来てもいいから、せめて潔く受け入れることね。』

『受け入れろですって?冗談じゃ無いわ、私は妖怪鵲!仮にも空の上で空を支配する存在に無礼が過ぎるとは思わなくって?一生を這いつくばって暮らす人間がよくそんなことを言えたものだわ。分を弁えることもできないなら……人間らしく地に堕ちろ‼️』

面倒くさい奴だとは薄々気づいていたが、逆ギレしたうえに捨て台詞とともに襲ってくるタイプだったとは、関わりたくないなぁなどと霊夢が思っている横で、対照的に魔理沙はそれでいいんだよと言わんばかりの笑顔を浮かべている。

そんな2人に向けて再び弾幕を放つ琴姫、先ほどのスペルカードは破れているので次なるスペカがくるかと思いきや、意外!それは通常弾幕!

放射状に広がる羽弾と霊夢と魔理沙を高精度で追尾する燕弾というオーソドックスな組み合わせで、その分対処法も体に染み付いているため苦労せず対処できるように思えるが…?

『なにか仕込んでやがるな、とは言っても何がくるにせよ私らにゃ腰を据えて受けるしかないけど。』

『…そうね、なるべくなら畳み掛けたいけどまた妙な反撃もらったら嫌だし。』

 

 

 

 

 

霊夢と魔理沙が燕弾を振り切りながら琴姫をレーザーと陰陽玉で挟み撃ちにしている頃、少し離れた空では大きな異変が起きていた。

白宙道異変から続けて見物していた紅魔館ではパチュリーがいちはやくその変異に気づく。

『あら?妙ね。』

『どうしたの?こういう時にパチェが喋るなんて珍しいじゃない。』

館の主人の問いにパチュリーは答える。

『星が動いているわ。』

星が動く、夜空を見たことがある人間なら誰しもが知識として持ち、実感できる現象だ。

しかし、パチュリーが気づいた星の動きとは本来正確に弧を描いて動くそれではなく時間の経過や星そのものの位置が不変であるはずであることを無視した異常な動きのことである。

実際、現在の夜空でははくちょう座とわし座を構成する星々が少しずつ弾幕ごっこの現場に吸い寄せられるように近づいているのだった。

これが夏に起きていればかの有名な夏の大三角に異常がということで大きな騒ぎになっただろうが、まだまだ彼らが目立たない春の空で起きていることには占星術にも造詣があるパチュリーのようなものでなければ気づくことはできなかったのだ。

現在の天文学では地球から見た星の位置が急に変わってしまうという現象はまずありえない。

しかしご存知の通り幻想郷はドーム状の博麗大結界によって覆われている。

結界を天蓋と見立て、結界を介して光が通った地点を星そのもののと見立てれば夜空そのものを書き換えることは不可能では無い。

桑子が白宙道を作った際には星神としても祀られる側面を持つ隠岐奈の力を借りることでエリダヌス座を利用していたが、琴姫は竪琴の力を用いて無理やり二つの星座を自らの方へ引き寄せているのだ。

 

 

 

 

パチュリー始め地上の有識者達が星の移動に気づき始めて程なく霊夢と魔理沙も異変に気づいた。

『なんか…空、こんなんだっけ?』

最初に切り出したのは魔理沙だった。

『あー、どうだったかしら?こういうのっていつも見てるはずなのに、いざとなると思い出せないのよね…』

その時、ピタリと琴姫の弾幕が止み、静寂が場を支配する。

直後、巨大な羽ばたきの音が聞こえ、そちらへと視線を向けた霊夢と魔理沙が見たものは星々をバックに悠々と飛び回る鷲と白鳥の姿だった。

星を繋いでできた二羽は輝く粒子を軌跡に残し、呆気に取られる2人を中心として琴姫・鷲・白鳥が三角形の頂点となる位置に静止した。

 

「バーズトライアングル」

 

3羽…もとい一人と二羽の間を光の線が結び、巨大な三角形を形作る。

その陣形が完成すると、白鳥が鋭い一声を上げ形を崩さないままゆっくりと回転を始めた。

それだけならサーカスを開いて目玉ネタとして披露すれば人間の里でも一大ブームを巻き起こすことができただろうが、悲しいかな今行われているのは美しき弾幕ごっこだ。

当然回るだけで終わるわけは無く、三角形の内側に閉じ込められた霊夢と魔理沙をさらに追い詰め仕留めるための弾幕を三者三様に内部に向けて放ち始めた。

白鳥は白く遅い大玉を、鷲は赤く高速の羽弾を、そして本体となる琴姫はジグザグに跳ね回る黄色い音符弾を放ち予測不能の弾幕地獄を展開する。

『目を瞑ってくれ霊夢!』

魔理沙の声が響き渡り閃光が全てを飲み込んでゆく。

 

恋心「ダブルスパーク」

 

耳をつんざくような轟音とともに魔理沙の目の前を覆っていた弾幕は全て灰塵へと帰していく。

『まだまだぁ!!』

ミニ八卦炉を両手で押さえ、体全てを使って光線を横に儺ぐ彼女に慌てて霊夢が頭を下げた瞬間頭上をそれが通過し、リボンがヂリヂリと焦げたのが実感できた。

『よし、これで少しは一掃できたと思うが…やっぱり琴姫のヤツには塞がれちまうか。あんの鳥もどきどももまともに飲み込まれたってのに涼しい顔してやがるな、傷つくぜ。まぁ考える時間はできたし結果オーライってやつか。』

『あんたが私の頭を炭にしかけたのはこの際時間を作ってくれたことに免じて見逃すとしましょう。ところで、こっちにとっても大事な手札を今切ったということはそれなりの理由があるんでしょ?』

『流石、察しの良さならさとり妖怪にも引けを取らないな。いいか、アレは星々を理解しその位置や輝きを自在に操ることで自在に力を生み出す、おおよそまともな魔導書には載ってないような禁忌に近い術と同じ現象だ。』

『まともな魔導書って何よ。私が見たことあるのはどれもこれも度合いこそ違うけど全部ページの隙間から狂気が見え隠れしてたわよ?』

『……そう言われりゃ否定はしかねるが、そこについては本題じゃないから割愛させてもらおうか。要するに、またあの竪琴の力で無理やり天蓋を操って無尽蔵に強力な弾幕を作り出しているってわけだ。気合い避けって言葉は大好物だが、今回ばかりは多少の策がいると思うぜ?』

『なるほど…じゃあアンタに任せるわね。詳しそうだし。』

『任された!じゃあちょっとお耳を拝借…ゴニョゴニョ…てな感じだ。早速始めるか!』

改めて放たれた弾幕が二人に迫る中、魔理沙から作戦を耳打ちされた霊夢が瞬時に亜空穴へと姿を晦ます。

一方の魔理沙は箒の尾部にミニ八卦炉を取り付け、羽ばたく鷲に狙いを定めた。

『知り合いのじいさん鴨撃ちが言ってたぜ。売れる肉を増やすために翼を狙って撃ってるってな。みんなそうなのかは知らないが。』

八卦炉から弾幕が噴き出し、魔理沙が飛び降りたことでより軽さと速度を増した箒はミシミシと音を立てながら突進し、鷲の右翼の一点を貫いた。

するとどういうわけか翼そのものが胴体から外れ、放っていた弾幕も止み行動が覚束なくなる。

同時に白鳥の目の前に出現した霊夢がその長い首に向けて霊力のこもった大幣を振り下ろすとこれまた首がポロリと胴体から外れて鷲と同じように機能不全を引き起こした。

不落と言える布陣が簡単に破られた琴姫は明らかに動揺し、音符弾の列を乱して決定的な隙を晒してしまった。

そこにすかさず魔理沙は手元に戻ってきた箒から八卦炉を抜き取り琴姫を照準に捉えた。

『やっぱり、なんでも齧っておくもんだな。広く深く、だぜ。』

 

白恋「ピュアーホワイトスパーク」

 

霊夢と魔理沙が断ったのは星と星のつながりであり、それによって繋がった状態で初めて一つのものとして認識される星座は少しでも形が欠けるとそれが持つ性質を保つことはできなくなるのだ。

よって、今回ばかりは少しだけ星を利用した魔法について齧っていたことに加えて、決して多くはない知識を実戦で応用し唯一に等しい弱点を突いた魔理沙の完全勝利と言えるだろう。

今まで通り琴姫に対するスペルカードの影響は竪琴の力により防がれてしまうが、脆くなった相手のスペカを破壊しつくすには十分だった。

 

白鳥と鷲の残骸が嘆きの声を上げて姿を失ってゆき、再び星はあるべき位置に舞い戻った。




現代では星の光は街の灯りでかなり見にくくなっているそうです
かつての芸術家達がインスピレーションを受けた夜空をこの先眺められることはないのかもしれません
街明かりは技術の明かり、便利さの代わりに失ったものは何か…なんて書くと皮肉的でいいかもしれません
まぁ今どき夜空を見る時なんてスーパームーンか流星群くらいですけど

登場人物


英語で言うところのイーグル
つまりウォーグルはワシモデルだと思われる

白鳥
黒鳥もいる
冗談みたいなホントの話

じいさん鴨撃ち
原作書籍にいたような気がして登場していただいたが、見直してみるとそんな人物は影も形も無かった
たぶん運松翁と誰かのイメージが混ざってる
大造じいさんかなぁ

井上 琴姫
スペルカード
一翼「バードストライク」
二翼「鵲の渡せる橋」
三翼「鴆の毒羽根」
死翼「クロス・ザ・ステュクス」
五翼「鵲のエクリプス」
六翼「ダイナミックソアリング」
七月七日「814羽の鵲」
「クルメグレイザー」
「バーズトライアングル」


次回、EX編最終回‼︎
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