ぼっち『死者のストンプ』   作:ゆずぽん

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導入(私)

皆さん静粛に!

えー、簡潔ではありますが、時代背景なんぞをご説明。

 

 この冒険は、1920年代のアメリカ、禁酒法の時代を想定している。かのビリー・サンデーはこう語った。『今夜、午前零時を回れば、新しい国が生まれます。明晰な考えと、好ましいマナーの時代が始まるのです。刑務所や少年院は空っぽになり、工場へ姿を変えます。男性たちはみなまっすぐ歩き、女性たちはみな微笑み、子供たちはみな笑い声をあげるのでしょう。地獄への門は、永遠に閉ざされるのです』

 しかし、そうはならなかった。『speak easy』というお(・)し(・)ゃ(・)べ(・)り(・)す(・)る(・)だ(・)け(・)という看板を騙った酒場が乱立し、その元締めは法を無視するマフィアたちが担った。彼らはメキシコやキューバから各々のルートを使って酒を輸入し、莫大な財産を築いた。酒の密売を担った犯罪シンジケートは強大なものとなり、地方当局レベルの買収も行われ、これらは公然の秘密となった。酒場では『フラッパー(お転婆娘)』と呼ばれた丈の短い、ゆったりとしたラインのドレスを身にまとった女性たちが現れた―――禁酒法を推し進めたのは女性人権団体だった。彼女らは『飲酒がDVを助長し、貧困を招く』と説いた―――同時期に参政権を得て社会進出を果たした女性は、そうして得た自由で酒場へと潜った。

 また、空間演出の手段としてジャズが好まれ、同時期にレコーディング技術が完成を迎えた。レコードは音楽そのものを広く知らしめた。音楽の複製と大量生産を可能にし、手に取りやすい価格を実現したからだ(それ以前の録音は、ひとつひとつ歌手が直に吹き込んだものだった)。ジャズと禁酒法は、切っても切れない間柄、というわけだ。

 もちろん、時代の寵児、ルイ・アームストロングの誕生も忘れてはならない。

 

 物語の冒頭は、『ブルーヘブン・ボールルーム』という酒場から始まる。探索者はこのもぐり酒場にいる。それが常連か、今回限りなのかはわからないが。

本作のキーパーソンであるリロイ・ターナーは、その酒場の黒人のジャズマンだ。

 彼は酒臭く、遅刻の常習犯であり、卑屈で、そのせいか職を得ては失うことを繰り返しており、愛する人をなくしている。

物語は、彼が特殊なトランペットを授かったことから動き出す。吹けば死者が蘇る、とびっきりのトランペットを!

 

 

……さてさて、それではご開演といこう。エキストラは二人。正義感溢れる女性警官と、地元マフィアとねんごろな開業医だ。彼らは古い知己で、浅からぬ因縁があるが、それはおいおい。古き良きシナリオに傷をつけるようで気が滅入るが、まぁレコードとはそういうものだ。傷がみ(・)ぞ(・)になり音楽となるか、雑音となり果てるかは、それこそ針を置くまでわからない。これぞホントの神のみ(・)ぞ(・)知る、なんて。

……。

………。

…………。

……えー(咳払い)。それでは、再生を開始する。

 

 

 

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