(旧)アリナレコード〜光と闇の小夜曲〜 作:選ばれざるオタクⅡ
そして、アリナさん…あなた本当にキャラがブレまくりますねぇ!!
うーん…記憶が開放されていけば原作アリナ先輩でいけるけども
現状は無理だからなぁ……
あ、今回は試験的に掲示板形式を入れてみました
好評だったり、やりたくなったらまたやります
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時は少し遡り、作戦会議の終盤
ある程度意見は出し尽くされ議論の勢いは失速し、七海さんのお菓子を食べる音だけが響く
「じゃあ結論だけど、今ある手がかりは『小さなキュウべぇ』。他の手がかりはコイツを探しながら地道に収拾していく。取り敢えずはコレでいいかしら?」
進まない会議に痺れを切らしたのか、七海さんがいい感じに纏めてくれた。ポテチを食べながらじゃ無かったらリーダーとして百点満点だったのに…
「そうだな、何しろその小さなキュウべぇが今、何処にいるのか、全く想像がつかないもんなぁ。
よし、じゃあ探索メンバーはどうする?アリナちゃんはやちよさんと、私はレナとかえでの三人で、2チームに分かれた良いかな?」
ももこさんも言ってることは正常なんだけど、みたまさんに膝枕+耳かきをしてもらいながら言われてもなぁ
え?ナニコレ。魔法少女ってこんな自由人ばっかりなの?私がおかしいの?あ、いや、記憶を無くしてた事に気づけなかった私が言えた事じゃないけど……
「いえ、もっと確実に行きましょう。みたま、アレ使っていいかしら?」
「ん〜?あぁ、アレならいつでもどうぞ〜」
みたまさん…あなたもももこさんの耳かきに夢中で殆ど聞いて無かったんじゃあないですか?
全く変わらないペースでお菓子を食べ続ける七海さん、客の前なのに堂々といちゃいちゃしてるももこさんとみたまさん……
この人達って凄い頼れるのにシュールだなぁ……
そんな事を思いながらお茶を啜っていると、七海さんが店の奥からパソコンを持ってきた。
なにやら薄くて高そうなノートパソコンを立ち上げ、何かを打ち込む七海さん。
「何してるんですか?」
どうせまた突拍子も無い事が起こるんだろうなぁ…この人達の事だし。と思いながらもお茶を飲んでると
「魔法少女専用掲示板で神浜中の魔法少女の力を借りるのよ」
「ブフーッ……ケホッ…ケホッ…え?……まっ…魔法少女…専用??」
全く予想外の攻撃が飛んできた
「そう、この店の奥に管理してるサーバーがあってね、認識阻害魔術が組み込まれてある特別製だから魔法少女以外は認識する事ができない私達の連絡ツールよ」
お茶を吹き出してしまったアリナだけど…これはアリナ悪くないと思うんだヨネ……。アリナにとってネットでの掲示板は『誰でも使える匿名掲示板』しか知らなかったし、一般的に見てもソレ以外考えられないだろうし。
吹き出したお茶を拭いてからパソコンの画面を見せてもらうと、何人もの魔法少女の皆さんが反応を示している光景が広がっていた。あっという間にスレの勢いが加速して、沢山の人から参加不参加の報告が飛んできて、数分後には十数人の魔法少女が私の記憶の為に協力してくれる事になっていた。
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342:七海やちよ
最重要シリアス案件よ
急ぎの用事がない人、現状暇な人は直ちに調整屋に集まって欲しいわ
詳細は調整屋で説明する
343:水波レナ
なんかまた始まったんだけど
344:十咎ももこ
うちのかえでを助けてくれたアリナちゃんの為なんだ。
皆協力してくれないか?
345:常盤ななか
ふふふ、パターン紫なんてこの前のホオヅキ市以来ですね
久々に腕がなります
353:都ひなの
ふむ、取り敢えず彼女の事をざっと調べてみたんだが…コレは………
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354:遊佐葉月
うーんこの…
何だろう
この『狂気の天才芸術家』っていう肩書きと自らの命を犠牲にして秋野さんを守ったっていう情報がうまく結びつかないんだけど…
356:五十鈴れん
過去の実績と最新のエピソードが乖離しすぎでは?
358:竜城明日香
命を張ってかえでさんを護ったという、その精神は素晴らしいとは思いましたが
やっぱり厄ネタでしたか
359:美凪ささら
厄ネタって……
まぁパターン紫なんて碌なの無かったからなぁ
365:相野みと
紫だから黒幕も魔女じゃなくて魔法少女なんだろうな〜
お、出番かな?(ガタッ
367:桑水せいか
それ出番じゃない時に使うやつだよ
369:伊吹れいら
実際に出番なんだから笑い事じゃあ無いんだよね…
って、二人共!ここにネタ書き込む暇があったら早く行こうよ!
372:和泉十七夜
記憶関連ならなぎたんにもおまかせだぞっ!
374:八雲みたま
そうねぇ…一応私の方では見てみたけど…
な〜んにもわからなかったわ……
十七夜とみとちゃんには期待してるわよ?
380:三栗あやめ
かこ、そういえばフェリシア家にスマホ忘れてってから見てないけど
何処行ったか知ってる?
381:夏目かこ
なんか泊まり込みの仕事が入ったとかなんとかって書き置きが
公園のベンチに置いてあったけど……
382:静海このは
この掲示板も全ての魔法少女が入っているわけでは無いですからね…
その泊まり込みの仕事とやらの依頼主もこの掲示板にいるメンバーでは無いのでしょう
385:春名このみ
すみません!今ブロッサムの仕事が終わったので遅くなります!
390:矢宵かのこ
今日は欠席させていただきます!!
393:阿見莉愛
ちょっと!?七海やちよ!!
なんでこんな日に緊急招集なんて出すのよ!!
よりにもよって私の仕事が入っている日に!!
394:七海やちよ
うるさいからよ
395:阿見莉愛
むきー!!
仕事さえなければ魔女だろうと魔法少女だろうとぎったんぎったんにやっつけてやったのにー!!
くーッ!!
396:胡桃まなか
先輩……
あ、私も今日は父の手伝いで市外について行くので欠席します
397:阿見莉愛
それもこれも私のユーザーネームがバグってるせいですわ!!
なんで取り消し線がついてるのよ!!
398:和泉十七夜
ふむ……ベア君の『魔法少女から名前が覚えづらくなる』副作用がまさかこんな機械ですら適用されるなんて最初は驚いたものだ
いくらバグ取りをしても治らないし、シャア君のIDを検知したら上から正常な画像を貼り付けるシステムを導入してもその画像の方がバグる始末
もはや一種の呪いなんじゃあないか?仕様として受けてもらう他無いな
411:江利あいみ
あ〜…ゴメンナサイ
今日私は無理です…
413:保澄雫
今、網走で居場所探し中なので不参加でお願いします
コレ流氷館での写真
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414:桑水せいか
わぁ…綺麗………
あ、今日師匠は家族旅行で大阪に行ってるらしいですよ
いくら連絡しても返事が来ないので多分スマホ忘れてるんじゃないかな?
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さっきから開いた口が閉まらない。というか、なんか私が昔に描いたっていう絵の写真が貼られてるし、みんなドン引きしてるし
ってうわぁ………え?ナニコレ本当にアリナが描いたの?こんな魔女結界みたいな絵を?
あっ…うーん……言われてみれば描いたような気がしなくも無いけども。えぇ…(困惑)記憶取り戻すのが怖くなってきたんですケド
結局、他の魔法少女が集まるまでの待ち時間で七海さんが魔法少女専用掲示板について説明をしてくれた。
曰く、過去に普通のSNS等で魔女退治の相談や待ち合わせ等をした魔法少女がいて、それが教育委員会の監視に引っかかって夜遊びや廃墟への侵入などの罪で補導された事があったらしい。更に不味い事にその生徒はあの水名の生徒だったらしく、学校側から退学が言い渡されてしまった。
その子達は魔女との戦いで他界してしまったらしいが、その一件から魔法少女達の間では魔法少女としての連絡は暗号化して教育委員会にバレないようにしたり、待ち合わせや手紙などのアナログな手段のみで要件を伝えあったりするようになった。しかし、コレがいかんせん不便過ぎる。
そんな状況を変えたのがこの掲示板との事。
前述の通り、サーバーは調整屋にあって、管理も調整屋の仕事。調整屋って一体…?
この掲示板では、普通の匿名掲示板と同じようにスレを建てて喋るだけでは無く、魔女討伐の依頼等を貼り付けたり全員に聞いてほしい話をしたりする『メインスレ』があるらしい。このメインスレでの依頼にはパターンという重要度を色で表したモノがあって、
種類は『紅・橙・黄・緑・青・藍・紫』の七種類
緑を基準として、寒色系はシリアスな案件、暖色系はコミカルな案件。緑から離れれば離れるほど重要度が高くなるらしい。
その中でも最重要案件のパターン紅とパターン紫は特別で、対象は全員で用事がある人以外は強制参加という破格の権力を持っている
まぁ、別に行かなかったからといって罰があるわけじゃあないし、この依頼の為に無理して予定を空ける必要は無いらしいけど
その強制力故に、
・調整屋であるみたまさん
・西のリーダーである七海さん
・現在行方不明だが、七海さんと同じ西のリーダー『梓みふゆ』さんという人
・東のリーダーである『和泉十七夜』さんという人
・中央のリーダーである『都ひなの』さんという人
この五人しか発動する権利を持っておらず、自宅か調整屋にあるパソコンからじゃないと使う事が出来ないらしい
(実例)
紅 | 魔法少女の皆で海に行かないか? |
橙 | 友人への誕生日プレゼントの相談 |
黄 | 暇な人あつまれー |
緑 | 特訓に付き合ってください |
青 | 魔女討伐に同行してくれる人募集中 |
藍 | 逃した魔女が成長していて手がつけられない、誰か助けて |
紫 | 昏 倒 事 件 |
他にもこの魔法少女専用掲示板には色々な機能がついているらしく、たとえばサプライズの企画をする時にはサプライズの対象の魔法少女にそのスレを表示させないように設定したり出来るらしい*1
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七海さんからの掲示板の説明が大体終わったあたりで調整屋のドアが開き二人の少女が現れた
「ふゆぅ……アリナちゃん、昨日は助けてくれてありがとうね」
一番最初に入ってきた赤髪の子は昨日の『秋野かえで』ちゃん
昨日はアリナが七海さんに助けられて泣いちゃったり、かえでちゃんが起きなかったりでお互いに自己紹介出来ていなかったので改めて自己紹介する
「ふーん…あんたがかえでを使い魔から守ってたっていうアリナ・グレイね
なによ、かえでと同じぐらいへなちょこじゃない
レナ達はパフェ食べてたのを切り上げてこっちに来たんだから早く終わらせてよね!」
「レナちゃん……たとえ本当でも、言って良いことと悪いことがあるよ
たとえ本当でも!!」
かえでちゃんの後ろから出てきた青髪ツインテの子は『水波レナ』ちゃん
最初はその言動から”私のせいで不機嫌にさせちゃったワケ?はわわわ…どうしよう謝らないと”って心配になったけど、
その後のかえでちゃんとの会話の内容や、若干頬を染めながらの
「ふん!ま、まぁ?へなちょこでも使い魔に立ち向かってったその勇気だけは褒めてあげるわ!!」
という言葉から『あぁ、ただのツンデレなんですねご馳走様です』って事がわかった
……それにしても、かえでちゃんしれっと毒吐いたヨネ…ちょっと傷ついた
ももこさんはいつもこの二人と一緒に三人チームで活動しているらしく
今回すぐに来たのはアリナを調整している間にももこさんが二人を呼んでいたかららしい
アリナの固有魔法を聞かれたケド、わからないって答えたら調整屋の奥を見ながら
「あぁなるほどね。やちよさんと同じかぁ…」
「確かアイツの謹慎って来週までだっけ?」
「ふゆぅ…私はあんまりオススメしないけど、どうしても知りたかったらみたまさんに頼めばその子の所に連れてってもらえると思うよ」
と、何故か顔をしかめながら言われた。そんなに固有魔法を判別してくれる子ってのが嫌なの?
その後は話の流れでかえでちゃん達の固有魔法の情報を教えてもらった
かえでちゃんは『一時消去』
だけど燃費が悪すぎるからどっちかっていうと蔦魔法の方をよく使うんだってさ
レナちゃんは『変身』
知ってる人に完璧に変身出来て、更にその人の魔法も使えるらしい
流石に固有魔法は無理らしいケド
ももこさんは『激励』
味方全体にバフをかける魔法なんて強くないわけ無いヨネ
そんなこんなでお話していたら、また調整屋のドアが開いてゾロゾロと四人の魔法少女が入ってきた
「あなたがアリナ・グレイさんですか」
「ある意味聞いてた通りって感じだね」
「そしてある意味情報と全く違うとも言えるネ」
「あっ…あの、よろしくおねがいします」
現れたのは、
かえでちゃんよりもピンクに近い赤髪の『常盤ななか』さん
銀髪ショートの『志伸あきら』さん
青髪でお団子みつあみの『純美雨』さん
アリナと同じ緑髪の『夏目かこ』さんの四人組
第一印象はメガネ、ボーイッシュ、チャイナ、文学少女、とバランスが良いのかキャラが立ちすぎてるのかよくわからないって感じ
話によると、とある目的の為に集まったチームで、現在はその目的を達成したけれども
(この話をしてる時七海さんが苦虫を噛み潰した顔してたけど…七海さんにも何かあったんだね。いや、まぁ調整屋入る時に言ってたみふゆさんって人の事だろうけど)
その七海さん達とはそれなりに前から交流があるらしく、何度も共に死線を潜った仲だとか
常盤さんが私をジーっと見つめてから安心したようにしてたケド、一体何をされたんだろうね
なんか若干身体を魔力が通っていく感じがしたような気がしたから魔法か何かだとは思うんだケド……
あと、なんか店の奥の方を気にしてるのもなんでなんだろうね
いや、まぁ詮索はしないケド…
詳しく話を聞く暇も無く、またまたドアが開いて魔法少女が入ってきた
「やっほー!!お、アリナっち発見!うひゃ〜写真の何倍もかわいいじゃん!!」
「ふ〜む…ますますあの絵とイメージが合いませんね…」
「明日香?流石に第一声がソレってどうなのさ」
「すまないな、何かと変な奴が多いが根はいい奴らなんだ。許してやってくれ」
アリナっちと勝手に名付けた金髪の子が「木崎衣美里」ちゃん。(エミリーと呼んでほしいらしい)
若干こちらを疑うような目で見てくる黒寄りの濃い青の髪の子が「竜城明日香」さん
明日香さんを宥めている黒髪の子が「美凪ささら」さん
一番背が低くぶかぶかの白衣を着ている緑髪の子が「都ひなの」さん(中央のリーダー格の人らしいが、そんな風には見えない)
その後も続々と魔法少女が調整屋に集まってきて、沢山の人と自己紹介を交わした
正直、こんなに多くの人の顔を一度に憶えるのは無理があると思ったので、髪の色と特徴と雰囲気だけを名前と紐付けて憶えた。後日、しっかりと顔も憶える予定。
そんなこんなで掲示板で参加表明した人達が全員集まったので七海さんが調整屋の中で一段高くなっているステージのような場所に立った
(多分こういう集会が行われる事も想定されてこの調整屋は作られていると思う)
「集まったわね…今回の事件は今までとは少し毛色が違うわ」
七海さんの声で場の空気が一気に真剣なモノとなる
「既に大体の人は知っていると思うけど、『アリナ・グレイ』さんが記憶喪失になった。
これが結構特殊なパターンで、生活に必要な記憶は全て入ったままそれまでの人生の記憶がすっぽり無くなっているの。
そして、気がついたら魔法少女だったらしいわ。だから、自分の願いも固有魔法もわからない。
皆も知っている通りここ半年間神浜でキュウべぇは目撃されていない。
グレイさんは生まれも育ちも神浜だから、魔法少女って事は半年前に契約していて、記憶を失ったのか
もしくはわざわざ神浜外に連れ出されてキュウべぇと契約して、それから記憶を失ったのか
考えられる可能性はどちらかになるわ。
勿論、こんな回りくどい事を魔女がやるわけが無い。
だからグレイさんは魔法少女の陰謀、もしくはウワサに巻き込まれているのかもしれないわ。
今わかっている手がかりは今の所昨日、私がグレイさんを保護した時に目撃した
グレイさんの話によると使い魔の結界に入る前にも見かけたらしいから、十分に怪しいわ。
今日はこの小さなキュウべぇを探そうと思う。
神浜は広い、今何処にいるのかはわからない小動物を探すのは骨が折れる。
でも人数がいればなんとかなるでしょう。
私は西のリーダーとして、この問題を神浜全体に関わる問題だと判断したわ。
グレイさんの記憶探し、手伝ってくれるかしら?」
シン……と静まり返る調整屋
聞いていた人たちの反応は、驚きに目を見開く人、私に同情の目を向ける人、正義感に燃える人、考え込む人、など三者三様
しかし、答えは皆同じだった。
「もちろん」
その後、軽くチーム分けをして捜索地域を話し合った結果、
ももこ組+このみさん:新西区
ななか組:中央区(終わり次第北養区)
相談所組:南凪区
梨花れん二人組:水名区
団地の仲良し三人組:大東区
十七夜さんとみたまさん:工匠区
アリナと七海さん:栄区
という割り振りになった
割り振りが終わる頃にはみたまさんが店の奥から人数分の表紙に
曰く、ルーラは数が少ないのでレンタル式の魔導書だが、緊急事態なのでタダで良いとの事。それ以外の魔導書も本来は高価なのだが貸し与えてもらえるらしい。が、魔導書を使う為には最低限練習する必要があるらしいのでアリナは貰えなかった
そうして各々が自分達の担当地域に飛んでいった(団地組の三人は「魔術は魔力の消費が激しいから」と言って、せいかさんの固有魔法で飛んでいった。……でも、水が必要だからって調整屋のお風呂を借りるのはどうなんだろう?)
ルーラは一つの魔導書でも皆で魔力を込めれば一緒に飛べるらしいが、アリナは出来ないので七海さんの腰にしがみついてルーラする事になった。
その結果……
……ウン…物凄い勢いで空を飛ぶもんだから、身体にかかるGと叩きつけられる空気抵抗で七海さんの身体から何度も振り落とされそうになった……どうやらちゃんと魔力を流せなかったアリナはルーラの範囲外って判定されたらしくて、魔法の保護範囲からは外されちゃったワケ……
雲を突っ切ったので体中ビショビショだし、凄い勢いで飛んでるから身体は冷えるし、正直、魔法少女じゃ無かったら低体温症で死んでいたと思う。
栄区の人気のない空き地に到着した七海さん*2はアリナの状態を見て驚くと、すぐに焚き火を用意してくれた。あったか〜い。
もちろん、この焚き火は実際の炎じゃなくって
帰りは絶対に歩いて帰る、と心に決めながらアリナ達は小さなキュウべぇを探し始めた
ヘクチッ……ズズ……まだちょっと寒気がするカモ
☆★☆★☆★
〜三時間後〜
少し特殊な魔力を見つけたアリナは七海さんと一緒にその魔力を辿って魔女の結界を見つけた。
「これは…立ち耳の魔女の結界かしら? でも、あの魔女の魔力とは明らかに性質が違う……それにかなり強いと見たわ。私達だけじゃ危険ね」
そして掲示板で救援要請をしておき、増援が来るまでの間は暇なので結界内の使い魔相手に七海さんから魔法少女の戦い方を教えてもらっていた。
「まずは魔法少女の戦い方基礎1『通常攻撃』、魔法少女の通常攻撃には大きく分けて、アクセル、チャージ、ブラスト、この三種類があるわ。全ての魔法少女がなんとなく出来る攻撃ね。
アクセルは
チャージは次の攻撃の威力が強化する攻撃。
ブラストは広範囲を攻撃出来る威力の高い攻撃よ。」
「いや!あの!七海さん!?教えてもらえるのはありがたいんですけど!!そういう座学はできればもっと早くにやって欲しかったなって!うわっ…危ないなぁ!!」
使い魔と戦いながら講義されても上手く集中出来ない。最悪、使い魔への注意がそれて攻撃を喰らってしまうかもしれない。
しかし、アリナの抗議はバッサリと斬られた
「実践でやった方がわかりやすいのよ。それと、戦いながら授業を聞く位出来ないと神浜ではやっていけないのよ。」
七海さんはトンデモないスパルタ体育会系教育者だった。
いや、確かに命掛かってるこの状況なら死ぬ気で憶えようとするっていう理屈はわかるけども……
やっぱり怖いものは怖い……あぁもう!わかったワカッタ、やりゃあ良いんデショ!!やってやるよ!!西のリーダーに師事した最弱魔法少女が最強目指す少年漫画の如きサクセスストーリーやってやるよ!!覚悟完了!!まずはアクセルからじゃオラァ!!(豹変)
〜3分後〜
「いやいやいやいやムリムリムリムリ無理だってぇ〜ッ!!」
アリナは使い魔の攻撃をひたすら避けていた。というか、コイツ攻撃の間隔が短くてロクに攻撃出来ないんですケドッ!
「回避のスジはいいわね…ちゃんと攻撃の軌道が読めてる。やっぱり貴方才能あるわ」
七海さんに褒められてるっぽいがそれどころじゃあ無い。正直言ってこのままじゃジリ貧だ。いくらチャージを貯めてブラストをぶっ放しても相手は倒れる様子がない
「それじゃあ次に行きましょう。魔法少女の戦い方基礎2『コネクト』、相手に自身の魔力を分け与える事で回復させたり、火力を底上げしたり、回避しやすくなったりする、神浜独自の技術よ」
そう言うと、七海さんはアリナの隣まで移動してきてアリナの手と手を合わせた
すると、重ねた手のひらから七海さんの魔力が流れ込んできて身体中に力が漲ってくる
「これが、コネクトよ。さぁ、解き放ちなってみなさい。これがチームで戦うという事よ。」
七海さんの言葉にうなずくと、アリナは一つ深呼吸をして目の前のこちらに突っ込んでくる使い魔を見据える。
固有武器である不思議なキューブを構え、魔力をキューブの内の一つのブロックに収束させていく。
その間にもどんどん使い魔は近づいてくるが、七海さんの魔力を受け取った今は全く怖くなかった。
使い魔との距離がほとんどゼロになったその時、キューブに溜め込み続けていた魔力を一気にビームへと変換、そのまま小さな放出口に圧力を最大限かけて発射した。
渾身のブラストを使い魔の土手っ腹にブチ込むと、放たれた緑色のビームは螺旋を描きながら直進、使い魔の身体を貫いて結界の壁にぶつかって消失した。
「えっ……コレ…アリナがやった…の…?」
魔貫光殺砲みたいな光景を自分がやった事が信じられないアリナは震え声で七海さんに確認する
「えぇ、紛れもなく貴方が倒したのよ。おめでとう」
「くぅう……いやったぁぁぁぁああぁあぁ!!!!」
その後、魔法少女の属性やらマギアの事やら隊列の事やら、なんやかんや魔法少女の戦い方基礎が終了する頃にはももこ組とななか組が集まっていたので結界の奥に進むことになった。
七海さんやももこさん、常盤さんや志伸さん等大多数の前衛職の人達が使い魔の群れに突っ込んでいく中、基礎を終えたアリナはかえでちゃんとかこちゃんと一緒に後方火力支援としての役目をしっかり果たせた。(思えば、後衛のメンバー全員木属性なんですケド……相手が水属性が多くて助かったワケ)
順調に進んでいってついに最深部にまでたどり着く頃にはすっかりアリナも戦うことに慣れてきていた。(というか、だんだん楽しくなってきた)
★☆★☆★☆
最深部で待っていたのは最初に予想した通り『立ち耳の魔女』。そして、そこから離れた所で立ち耳の魔女の攻撃を避けている小さなキュウべぇだった。
小さなキュウべぇを捕獲したい一同だったが、この立ち耳の魔女は通常の個体の数倍強く、ベテラン揃いのこの合同チームの総攻撃でも期待したダメージは与えられなかった。
今の所、戦況は拮抗しているものの、一人が倒れたらあっという間に崩れかねない苦しい状況が続いていた。掲示板の情報から、もう少し耐えれば増援が期待できるものの、そんないつ来るかわからない援軍に頼って勝てる相手では無い。
なんとか相手の猛攻を耐え凌いでいた合同チームだったが限界は案外早くに訪れてしまった。
「グレイさん!!」
よりにもよって、まだ経験が浅く一番耐久力の無いアリナに立ち耳の魔女のハサミが当たってしまい、数十メートル上空に打ち上げられてしまった。
更に運の無い事に、立ち耳の魔女は空中に上がったアリナを追撃すべくその巨体に見合わない程の大ジャンプをやってのけたのだ。
とっさにかえでが蔦魔法を使うもアリナにはあと少しの所で届かない。誰もが最悪の未来を想像してしまった。終わったと心の何処かで思ってしまった。
「モッキューーッッ!!!!」
雄叫びのような、なんなのかよくわからない叫びに振り向くと、小さなキュウべぇが跳んでいた。
その跳躍は一般的には不自然な速度と軌道で伸びていき、空中のアリナの元まで立ち耳の魔女よりも先に辿り着いてしまった。
小さなキュウべぇは衝撃で気を失っているアリナの身体に飛び移ると、魔法少女服のポケットから
次の瞬間、突如起こった巨大な光と衝撃波に合同チームの面々も立ち耳の魔女も、皆まとめて吹き飛ばされた
☆★☆★☆★
「あ、アリナせんぱーい新しく描いた漫画みて欲しいの〜」
栄総合学園のとある教室、紅い夕陽が差し込むその場所でアリナは新しい作品の作成にいそしんでいる真っ最中……
だったんだケド、どうにも上手く筆が乗らない
そんな時に、向かい合った机の向こう側で何かを描いていたピンク色の髪をした小動物のような子がアリナにすり寄ってくる
アリナは顔はしかめつつも、リフレッシュになるカラと何の文句も無くその漫画を受け取るとペラペラと流し読みしていき
「ふーん……ま、可もなく不可もなく、ゴミだヨネ」
率直に思ったことを口にする
「がーんなの……でも前よりは評価良くなったの!!」
アリナはそうやって冷たくあしらっているのに、小動物みたいな子はアリナの些細な言い方の変化にきゃっきゃと喜んでいる
まるで、アリナの心を見透かされているみたい
そんな様子にちょっと苛ついたアリナは小動物みたいな子の机の上から飲みかけのイチゴ牛乳を勝手にとり
ちゅーズゾゾゾ
と残りを飲み干し、空の箱を小動物みたいな子に投げ渡す
「あ〜んひどいの!飲みたいんならちゃんと先輩の分も買ってきてあげるのに…」
「飲まれたくなかったらさっさとアリナを満足させる作品を書いてよね
そうだ……
何故この夜空に煌めく流れ星を忘れていたのだろう
『御園かりん』
栄総合学園中等部三年生 所属漫画研究部
アリナが唯一指導した
魔法少女マジカルかりん
誰もがアリナを『若き天才アーティスト』としてしか見なかった中で、唯一『アリナ・グレイ』を見てくれた人
初めて一緒に居て心地よかった人
アリナがアリナである為の大事な要素の一つ
そして、もう一生会えないk縺九b縺励l縺ェ縺?ココ
☆★☆★☆★
光が収まり、ようやく視界が回復した七海やちよ達は目の前の光景に唖然とした。
空中からまるで羽根を携えた天使のように光を纏い、戦場にふわりと着地したアリナ・グレイ…
いや、あれは本当にアリナ・グレイなのだろうか?
しかし与えられた視覚情報から得られる答えは『アリナ・グレイである』のみ、
ふざけるな!人間が空中をゆっくりと落下する事などあるものか
だが彼女は魔法少女だ。常識なんて物は通用しない。
そうして降りてきたアリナ・グレイに驚愕してると、背後で大質量が地面を蹴る轟音がなった。いまだ立ち上がれない身体を捻って振り返ると、一足先に吹き飛びからのスタン状態から回復した立ち耳の魔女が未だ体制が整っていない私達に向かって突進してくる最中だった。
やたら強いこの魔女の突進なんて受けたら、ひとたまりもない
―――やられる!!
誰もがそう思った。
今まで通りなら確かにここでやられていた。が、しかしもう既に状況は劇的に変わっていたのだ。
アリナ・グレイはやちよ達と魔女との間に立ち塞がると、
この場にいる者は皆知らないが、これこそが彼女を「アリナ・グレイ」たらしめる能力
「七海さん!皆さん!!思い出しました!!」
しかし、よく見たらアリナは立ち耳の魔女に力押しされて徐々に後ろに押されている
「今まで忘れていた大切な……とても大切な事を思い出せたんです!!」
一撃、また一撃、魔女の腕や頭のハサミによるラッシュが結界に阻まれるほど、確実に移動させられる、
だが、彼女は満面の笑みで嗤っていた。
「私の願いは『誰にも邪魔されないアトリエが欲しい』!!これによって得た固有魔法は『結界』!!この魔法は……」
その叫びと共に緑色のバリアは巨大化し、折りたたまれて立ち耳の魔女をまるまるスッポリ入る大きさの立方体が形成された。魔女を中に閉じ込めたままその結界の匣は少しずつ小さくなり、己の最後を想像したのか魔女の悲鳴のような断末魔が聞こえてくる。
本来ならば中身の空間もそのまま縮小されるハズである。しかし、彼女はソレを使わなかった。
ブチッグシャグシャァッ
およそ半分程の大きさになったあたりで遂にナニカが潰れるような音が聞こえ、匣からは魔女の体液のようなモノが吹き出して周囲を青く染め上げる。
「ヒッ……」
そのあまりにも悲惨すぎる見えない真実を理解してしまったかえでは声にならない悲鳴をあげる。かこは青ざめ口元を抑える。
枠組みだけを縮小して、縮小して、中の空間を物理的な体積と同じ大きさになるように設定された結界、いやもはや一種の拷問器具とでも呼んだほうが良いだろう。シンプル故に凄惨さを想起する事が容易なこの匣は本来は恐怖の象徴である魔女をじわじわと、しかし確実にすり潰していく。
最終的にサイコロ程の大きさにまで小さくすると、彼女はその結界を開き…………開ききる前にその結界ごと、サイコロ大になった魔女だったナニカを握りつぶした。
「だから……アリナはこんな所で死ぬわけにはいかないワケ…do you understand?」
その絞り出すような独り言は、この静寂に支配された空間に虚しく響き渡る。
クシャリ
軽い音が聞こえ魔女結界は崩れだし、一行は元の空き地へと戻ってきた。
誰も何も言えなかった。
未だ恐怖に支配され、腰を抜かしている者、顔を青ざめて目を背けている者、悲しい瞳で彼女を見つめている者、顔を手で覆う者、唇を噛みしめる者、
しかし、誰一人アリナ・グレイを恐れたり、排除した方が良いと考える保守的な者はこの場に居なかった。
しばらくすると、アリナは糸が切れたようにその地面に膝から崩れ落ちると、地面に手を付き慟哭をあげる
「うぐっ……おえっ……ひぐっ………っあ゛あ゛あ゛ぁぁぁあッッッ……」
「グレイさん!!」
やちよはハッと何かに気づくと、慌ててアリナの元へ駆け寄る。彼女のソウルジェムはやはりと言うべきか真っ黒に濁っていた。
幸い、先程倒した魔女のグリーフシードは結界の崩壊と共に落ちてきていたのでそれを拾い、彼女のソウルジェムに押し当てその穢れを吸い取る。
他の面々もいまだ衝撃をうけてはいるが彼女を心配してかけよってきた。
が、アリナの悲痛な叫びに何と声をかけていいか、誰もわからなかった。
しばらくした後、少し落ち着いたのかアリナは袖で顔を拭い、疲れ果てた表情を見せると口からこぼすように言葉を発する。
「………七海さん…アリナをぶん殴って下さい…………」
「ハァ!?しっかりしなさい!」
やちよさんはアリナの肩を掴み前後に激しく揺らす。
アリナはロクな抵抗をせずに頭を揺らされ、瞳はどこか遠くを見ているかのようだった。
「一体何があったの!?ちゃんと話してくれないと判断が出来ないわ!」
アリナの顔を強引に向かい合わせ、そのある意味無気力ともとれる瞳を睨みつける。
「ハハ……とんでもないファッキンクソ野郎ですよ………アリナは。
アリナは忘れてはならない人を……とんでもない大切な人の事を忘れていたんですよ。
『御園かりん』アリナの……たった一人の後輩です。
ともすれば、家族よりも大切な人でした。
調整屋で見えた光景はそのアリナの後輩との日常だったんです…。」
やちよは与えられた情報に短く息を呑む。
「それでも、忘れたのはグレイさんのせいでは無いでしょう。自己嫌悪は時に大事だけれども、使い方を誤れば自らの手で身を滅ぼす事になるわよ。」
やちよはその
「違うんです。
………現実世界における
アリナの部屋の本棚には
昨日、部屋で見つけたアルバムには何枚か透明人間とのツーショットのような写真が入っていました。」
「グレイさん……」
やちよは言葉を失う。もし、それが本当なのだとしたら
それは個人の記憶喪失なんて問題では無い。
アリナは心からの叫びを上げる。
「簡単に
たとえ、魔女だろうと魔法少女だろうと、ウワサとかいう未知のバケモノだとしても、
……私はなんだってやります。」
その瞳に灯る憎悪の炎はとても強く、やちよは返す言葉を持たない。
先程は自らの持つ経験の上での話しだったが、この状況はやちよの経験には全くのノーデータ。ナニカを言うことすらもお門違いである
その事を悟り、やちよは自らの握力の限り握っていたアリナの肩を離しうつむく。
夕暮れの空き地に静寂が戻った。
「いいえ、それは違います」
一分二分どれだけ経っただろう。
気づいたら常盤ななかがアリナの側に立っていた。
「
アリナ・グレイさん…あなたがいくら相手を憎んだからといって、相手が
相手だって人間なんですから……」
ななかの持つ言葉には、他には無い重みがあった。
ももこやレナが何かに気づき、ななかの事を見つめる。
「復讐のためだけに生き、そして復讐を終えた時、初めて今まで積み上げてきたものが意味をなします。
先程あなたは
そこで、果たしてその後輩さんはどう思うのでしょうか?それまでと同じように接してくれるのでしょうか?まわりはそれを看過してくれるのでしょうか?
貴方は復讐したあと、どうなりたいのですか?」
その質問にアリナは顔をうつむかせ何かを考えた後にななかの目を真っ直ぐと見据え、それに答えた。
「アリナは…………私は…
「えぇでしたら、
その瞳には、先程までの昏い憎悪や悲しみは写っておらず、黄金の如き決意のみが浮かんでいた。
「じゃないと、私達みたいに何も無くなりますから……」
アリナ・グレイ
・神浜魔法少女としての知識が増えた!
・戦闘の基礎を叩き込まれた!
・記憶のカケラを取り戻した
レアリティUP!★→★★
光属性と木属性の切り替えが可能に
固有魔法「結界」開放
称号「私の名はアリナ・グレイ」獲得
称号「御園かりんを護る為の魔法」獲得
・現状とりもどした記憶は十分の一にも満たない。
今後記憶を取り戻す度に本来の力を取り戻していくが、それ以上の成長は精神の成長なくしてあり得ない
・魔術は今の所行使不可能
まずは魔術における魔力の使い方を熟知せねばならない。
七海やちよ
・今回めっちゃアリナ先輩の為に頑張ったMVP
常盤ななか
・復讐経験者は語る
魔法少女専用掲示板
・パターンの元ネタは勿論エヴァの「パターン青!使徒です!!」から
虹の七色なのはなんとなく思いついたから。
立ち耳の魔女
・実はマギウス管轄の魔女だったりするが、本編にはあまり関係が無い。
謹慎処分受けてるアイツ
・調整屋の地下、座敷牢に
作者がアリナ先輩の次に好きなキャラ
今回異様に長くなった挙げ句、所々ボロボロだから書き直したりするカモ