(旧)アリナレコード〜光と闇の小夜曲〜   作:選ばれざるオタクⅡ

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 お久しぶりです
 皆さんお元気ですか?
 私は、まぁ帰りの電車に乗ってたら寝過ごして終点で目覚める程度には元気です。
(世間一般ではそれを元気とは言わない。)

 前回投稿から約2ヶ月、アリナ編最終更新からは3ヶ月程経ってしまいました。
 この一ヶ月間、作者は一体何をしていたんだと言いますと、
 少し、スランプに陥っていたと言いますかなんと言いますか……
 書いても書いても修正に次ぐ修正でちっとも筆が進まず、話はどんどん迷走していくばかり。そんで自己嫌悪に陥ってリアルの生活に支障きたして悪循環
 以前のように勢いだけで小説を書くことが難しくなりました。
 そんなこんなで中々に辛い状況が続きましたが、今までみなさんが書いてくださった感想や評価等を見て気持ちを奮い立たせる事が出来ました。
 特に、Twitterでは私の世迷言に付き合ってくださりありがとうございます。
 今回無事に更新できたのもそういった皆さんのおかげです。
 本当にありがとうございました。
 皆さんには感謝しかありません。

 最後になりますが、今回のアリナ編はざっくり言って前回駆け足で終わらせた第一章の後日談的エピソードというか補完的エピソードというか、掘り下げたエピソードというか、「Air/まごころを君に」というか…そんな感じのナニカになります。
 どうか、私の妄想の塊である「アリナレコード」を今後ともよろしくおねがいします。


アリナ編その3.5 〜序〜

 〜前回までのアリナ編のあらすじ〜

 

 ・弱々(よわよわ)アリナ先輩

 ・やちよさんに助けられてみかづき荘入り

 ・調整したら記憶喪失が発覚

 ・神浜中の魔法少女が手伝ってくれて、皆で小さなキュウべぇを探すことに

 ・なんやかんやで死にかけたけど、小さなキュウべぇも見つかって記憶のカケラを取り戻す事に成功

 ・第一章「始まりのアリナ」終了。

 


 

 

第3.5話「小さなキュウべぇ」
 

 

 

 

 「んーちゃっちゃー♪ちゃーちゃーちゃ♪んちゃっちゃー♪カナメーイーヤーー♪アアーアアアーアアア♪アアアーアーーーー♪」

 

 

 アリナ・グレイは浮かれていた。 

 

 

 その足取りはまるでスキップのように軽く、どこかで聴いたことのあるような戦闘BGMを口ずさむ。

 口角は非常に気持ちよくつり上がっており、どこからどうみても()()()()に笑っている。

 これが普通の日常のワンシーンならばどれだけ良かっただろうか。

 実際は異形の化け物が襲いかかり、常に死と隣合わせの魔女結界内である。

 「んー、次はあそこらへん…カナ!」

 彼女は一際大きく飛ぶと、空中で自らの固有武器であるキューブを取り出し目の高さに構える。

 片目を閉じてキューブを通して向こう側*1を見渡すと、幸運にも彼女の仲間の攻撃を渦を生き残った使い魔が一匹

 「ん〜……ビンゴ!」

 使い魔(獲物)を見つけた瞬間、彼女の目は「狩る(いたぶる)」者の眼に代わった。

 その瞳は奥に彼女の網膜と同じ、緑色の炎を灯しており

 爛々と輝く様は見るものに恐怖を植え付けるだろうが……幸い今の彼女を見るものはここにはいなかった。

 その瞳は平常時とは比べ物にならない速さで脳内で彼我の距離、位置関係、その他の使い魔や魔法少女の動き、その他を計算し、

 最適な狙いを定め、確実に相手を貫く威力に調節する。

 そこまでの作業をそこらの木っ端魔法少女では知覚出来ない程の一瞬でこなした()は、役目を終えたかのように瞳の奥に引っ込んでいく。

 後に残るのは先程までと同じ彼女の()

 「()てー!!」

 まるで遊びであるかのような呑気な掛け声と共に魔法のトリガーを引く。

 キューブから撃ち出された緑とも白とも取れる質量を持った魔力の光は、「光」という性質に反してへにょりと曲がる。

 鏡に反射したような直線的な曲がり方では無い。

 曲線の壁にそって進んでいるかのような、緩やかで、かつ明確に意思を持っているかのような、

 まさに「へにょり」と形容するしかない曲がり方。

 こんなレーザー普通に狙ってもまず当たらないだろう。

 しかし解き放たれた光の犯流は大きく弧を描き、使い魔を死角から貫いた。

 使い魔からすれば、「気がついたら腹に大穴が空いていた」といった状況だろう。そこまでの知性が彼らにあるとは思えないが。

 「ん……グッド!!」

 その様子を見て彼女は小さくガッツポーズ

 彼女の()は輝いていた。まるで、初めてゲームという物に触れる幼子のように。

 

 

 アリナ・グレイは浮かれていた。

 

 

 こうなってしまったのにはいくつか理由がある。

 

 一つ目は「ついさっきまで七海やちよに戦闘訓練をつけてもらっていた事」

 調整によるステータスの強化に加えて、基本を身に付けコツを掴んだ彼女の魔法は昨日とは比べ物にならない程の火力にまで成長し、それは単純に彼女の()()に繋がった。

 そして、()()()()へと姿を変える。

 いや、この場合は「成長」というよりは「思い出した」という方が正しいのだが……

 

 そもそも調整前彼女はこのへにょりレーザーを持て余していたのだ。

 接近戦ならばいざしらず中距離でも当たらないというのに、こんな使いづらいレーザーで長距離狙撃をしようなんて正気沙汰じゃ無い。

 だが、七海やちよとの訓練でそれは解決した。………してしまった。

 それはやちよのコネクトで初めて使い魔を倒した後の事。*2

 (覚えている限りでは)初めての体験による興奮から、彼女は周囲の使い魔に向けて至近距離でバカスカへにょりレーザーを放ちまくり、使い魔の意識を刈り取っていった。

 先程のクソ硬使い魔と比べてその呆気なさに驚き、まるで無双ゲームのように使い魔を伸していく。

 この時点で、()の片鱗はあった。

 実際もっと長く最初の階層でザコ狩りを続けていれば()が意味するものも全く違う物になっただろう。

 しかし現実は一つ階層を降りると共に呆気なく撃沈。

 やちよに救助され説教された事で天狗になっていた鼻は折れた。

 その後やちよ指導の下、後衛からの援護射撃の訓練中

 へにょりレーザーが全く当たらず徐々にフラストレーションが溜まっていき、使い魔の遠距離攻撃がその身を貫いた事で限界に達した(ブチギレた)

 その結果、()を完全に開く事に成功し、()のアシストによる遠距離狙撃が可能になった。

 やちよから見ても()は異質のはずなのだが、とある人物達の影響で「まぁ、そんな事もあるわよね」と特に気にしていない模様。

 本人は()を自覚しておらず

 「なんか”撃つぞ〜”って気合い入れると勝手に”後はトリガーを引くだけ”になってるだヨネ」との事。

 

 

 

 二つ目は「共に戦う仲間が大勢いる事」

 やちよにななか組にももこ組

 更に結界の外には他の神浜の魔法少女たちが彼女の為に頑張ってくれている。

 その事実が彼女を浮足立たせ、冷静な思考判断を妨げている。

 では、何故仲間がいる事が彼女を喜ばせているのか?

 それは様々な要因があるのだが、少なくとも間違いなく言えることは「()()()()()()()()()()()()()」という事だ。

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 少し、「アリナ・グレイ」の内面について話さなくてはいけない。

 確かに彼女は『アリナ・グレイ』とは違った考え方 ――まるで別人のような―― を持っている。

 しかし、だからと言って、彼女が「善」なのかと言うと、実はそうでは無い。

 それどころか、「アリナ・グレイ」の性質は『アリナ・グレイ』の時となんら変わっていないのだ。

 ならば何故「アリナ・グレイ」は『アリナ・グレイ』とは正反対のような行動を取るのか。

 それは彼女の”何を大事にするか”の違いのよる物である。

 

 最初に入った魔女結界にて

 使い魔の群れからかえでを助けた時、彼女は「見捨てるなんてありえない」と言った。

 それは確かに本心でこそあれ、()()()理由では無い。

 そもそも、彼女はこの段階で自らの事を「へなちょこアリナ」と評している。

 そんな自信のない魔法少女が大勢の使い魔が迫っている中、誰とも知らない他人を助けようとするだろうか?

 勿論、本当に「気づいたら身体が動いていた」という聖人君子もいるだろう。

 環いろはなんか特に。

 だが、アリナ・グレイは違った。

 彼女の場合は「自分が見捨てられるのが怖いから助ける」のだ。

 自らが誰かを見捨てた場合、自分が危機に陥っても誰も助けてくれないかもしれない。

 確かに、かえでを守ろうと戦いの渦に突撃したら、殺されてしまうだろう。

 だが、ここでかえでを見捨ててもいつかは自分も誰かに見捨てられ、殺されてしまう。

 だからかえでを()()()。自分が助かりたいが為に。

 

 やちよに助けられた翌日にみかづき荘に入居したのも

 ここで繋がった縁が切れる前により強固なモノにしたかったから

 そも、彼女は神浜の西を統べる魔法少女である。実力もその目でしかと見た。

 長いものには巻かれろ。強い者の傘下に入るのは弱き者が生き残るための術の一つである。

 勿論アートにしたいという意思も少なからずあったのだろうが……

 まぁ、それは彼女の中にかろうじて残っていたとある人物との記憶、その残滓の影響だろう。

 

 彼女がチャーハンやその他家事が出来るのも、

 他者に必要とされる事で一緒に居続けてもらう理由にするためである。

 例の事件によって彼女が記憶を失ってから、()()()()()()()()日常をただひたすら繰り返させられ

 実家で暮らしていた数週間〜数ヶ月の間、彼女は無意識にハウスキーパーの人達に教わっていたのだ。

 (彼女の家は両親も超有名芸術家なので家政婦やハウスキーパー等の職種の人がいる)

 記憶に残っていなくとも、身体は覚えていた。

 

 よく彼女が感極まって土下座したり、またことあるごとに自分を卑下したりする行動は「孤独への恐怖」からきているのだろう。

 

 

 彼女は「人に置いていかれる事を何よりも恐れている」

 

 

 勿論彼女が常時打算的な思考をして、計算づくで行動をしている訳ではない。

 しかしやはりその行動理念の原点は「他者への渇望」なのだ。

 何故、彼女はここまでして他者の存在に依存するのだろうか。

 まるで「本当に誰かに置いていかれた」事があるかのように怯えている。

 

 

 『アリナ・グレイ』という人物を知っている人からすればこれは()()()()()()()だろう。

 『アリナ・グレイ』といえば、周りへの被害を一切気にせず自らの感情が昂るままに行動し、障害は実力で排除する。

 その判断基準に他者への気遣いだとか、思いやりだとか、そういったモノは一切存在しない。

 端的に表すのならば「エゴ100%の人間」

 そして、そんな彼女の芸術(アート)のテーマは「生と死」

 こんなにも不安になる組み合わせは無いだろう。

 事実、最終的に彼女は人類を滅亡させようとした。…最も、それはこことは別の時間軸なのだが。

 某奇妙な冒険第四部にてこんな有名な台詞がある

 「この岸辺露伴が金やチヤホヤされる為にマンガを描いていると思っていたのかァーーーーッ!!」

 『アリナ・グレイ』という本質はまさにコレと同じようなモノ。

 0から100まで自分のために行動する。

 その為の努力は一切妥協しない。

 純粋に自分の望みのために全てを犠牲に出来る人間なのだ。

 ただ、そんな彼女にも唯一例外と言える人物が居たのだが……

 そこらへんは『アリナ・グレイ』のMSS(魔法少女ストーリー)を読んで欲しい。

 

 ―――とにもかくにもだ。

 

 「アリナ・グレイ」は「他者に置いていかれるのが怖い」

 だから、周りに自らを必要としてもらえるように行動する。

 そこに本当の意味での他人への思いやりは無い。

 ただ、自分の為だけに、己の欲望のままに彼女は行動する。

 

 『アリナ・グレイ』は「自分の表現したい物を邪魔されるのが嫌い」

 だから、邪魔してくる他人を排除し続ける。

 そこに他人を貶めてやろうといった悪の感情は存在しない。

 ただ、自分の為だけに、己の欲望のままに彼女は行動する。

 

☆★☆★☆★

 

 

 閑 話 休 題(まぁ、それはそれとして)

 

 

 話を元に戻そう。

 重要なのは彼女は一人を恐れていて、そんな彼女の為に頑張ってくれる人が一気に何十人も増えたという事だ。

 これで浮足立つなという方が酷であろう。

 

 

 

 さて、彼女が浮かれている理由。

 三つ目は「命の危険を感じる事が出来ない事」

 

 いくらこの結界の使い魔が通常よりも強く、まだ彼女が初心者(ビギナー)の域を出ていないとしても

 流石に3チーム、計9人の魔法少女による圧倒的物量

 それに加えてほぼ全員が一騎当千の凄腕魔法少女

 こんな条件下でピンチに陥るワケが無い。

 

 彼女達の進軍を止めようと真正面から突撃してくる使い魔の軍勢は

 振る度に花びらが舞う(常盤ななかの)二刀により横一文字に消し飛ばされ(縦ブラスト)

 蒼い激流を伴う(七海やちよの)槍の突進によって直線上の使い魔は大穴を開け(横ブラスト)地面に倒れ伏す。

 運良く二刀と槍(ブラストゴリラ達)による苛烈すぎる猛攻を掻い潜ってきた使い魔も、

 十咎ももこ、志伸あきら、純美雨(チャージゴリラ)によるチャージドロー三連発からのチャージ連携(C C C)の前に倒され、

 オマケに一気に稼がれたチャージはそのまま特攻隊(ブラストゴリラ)へと送られ、最前線の火力が更に跳ね上がり多くの使い魔が吹き飛ぶ。

 前衛が使い魔の大群を相手にしている間、当然後衛に横や後ろから不意打ちを仕掛けてくる使い魔もいたが、

 後衛の護衛として残った水波レナにより、トリプルアクセル(A A A)からの速攻マギア(インフェニット・ポセイドン)連打によって駆逐される。

 彼女に守られている後衛は夏目かこがたまにアクセルドローで全員にMP(マギアポイント)配ったり、マギア(煌道のページ)で自動回復バフばら撒いたり、

 秋野かえでが霧のデバフを撒いたり(出発前の調整で新しく覚えたらしい)、蔦魔法で水波レナの足場を作ったりしている。

 そんな彼女達の間に挟まれているアリナ・グレイの仕事は、ただひたすらに遠くから使い魔を撃って撃って撃ちまくるのみ。

 

 これでどうやって命の危機を感じろと?

 

 どう考えても火力担当(脳筋)ばかりのチームで、必然的に後衛の仕事が少ない。

 

 ブラストゴリラ×2(そのうち一人はブラストドロー持ち)

 チャージゴリラ×3(全員チャージドロー持ち)

 アクセルゴリラ×1

 アクセルドロー持ち×1

 デバフ&地形形成×1

 こんな脳筋の集まりの中に多少マシになったもののまだ低レベル故に十分に能力が育っていないアリナ・グレイが入っているというワケだ。

 前線に出たら足手まといになるだけだし、かと言って彼女がいる一番奥まで攻撃は届かないし、

 また前述の火力UPと()による必中によって一撃で倒せる快感も合わさり、彼女はついつい()()()()()で戦っていたのだ。

 

 

 アリナ・グレイは浮かれていた。

 他の少女達も安心していた。

 こんなに人数がいて、連携もしっかり出来ている。

 ()()()()()負けることは無いだろう。

 

 

 だからこそ、万に一つが起こってしまった。

*1
有象無象の使い魔がわんさか蔓延り瞬く間に消えていく戦いの最前線

*2
ちなみに、あの硬い使い魔は火属性で自動回復持ちの強個体だったらしい。





 散々書き直して得た答えがコレです。
 序、破、Q、の三部構成になります。
 序では”うちのアリナ先輩は聖人みたいだけど別に善ではないんだよ〜。むしろ『アリナ・グレイ』の部分は変わってないんだよ〜”という事を伝えたかった。

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