(旧)アリナレコード〜光と闇の小夜曲〜   作:選ばれざるオタクⅡ

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 今回の話を書くためにちょろっとおりこ☆マギカについて調べたら
 もう知らない情報が出るわ出るわ…
 「コレ多分全部読まないと全体像がわかんないヤツだな?」
 思い立ったが吉日とばかりに本屋に駆け込みましたが……
 大変恥ずかしい事に現在金欠でして………
 えぇ…しかたがないのでまんがタイムきららが入っているマンガアプリで読んでいます

 取り敢えずアプリを入れた時にもらえるコインで一気に「無印」と「別編」を読破
 「新約」の途中まで読むことが出来ました
 続きはコインの関係上少しずつ読んでいく形になりますね

 完走できていませんが、感想なんですけども、
 すごかった(語彙力喪失)
 今までに知らなかった風見野の子とかが出てきておもしろいです
 特に良かったのが「優木沙々」ちゃん
 固有魔法「洗脳」で魔女操るとか…どこぞの紫色の人とか紫色の人とかと同じ匂いがして
 もう…たまんないんですよね
 それにとにかく性格が悪い!!(褒め言葉)
 クズには二種類あって、吐き気を催す邪悪と、クズであればあるほど私の好感度が上がるクズです
 さささささささささささちゃんは後者です
 最期の姿も良かったです
 別編の方はこれまたどこぞの紫色の人と重なっていましたねぇ
 (この書き方ならネタバレ防止にもなるかな
  どっちの紫色の人かわからないから……
  アレ?魔法少女の最期なんてほぼソウルジェムが砕けるか魔女化するかの二択だから
 結局ネタバレ配慮とか意味なかったか?)
 ま、状況とか心情とかは全くの別物でしたけども、それもまた良かった
 素晴らしかった

 「洗脳」「幻惑」「暗示」「結界」
 我ら魔女操作(ポケモントレーナー)四天王!!って感じで並ぶとしたら
 さささささささささささささささささささささささささささちゃんは最初の四天王でしょうね
 波乗りでなぞのばしょに行けそう(DPキッズ脳)

 また、他にもマギカ系統の作品が多数あるんですね
 世界観がカオスなやつばっかりでツッコまざるを得ませんでした
 家族には変なやつを見る目で見られましたが、非常に面白かったです
 金さえあれば……
 金さえあれば全部単行本を買えるのに……
 今後、少しずつ読んでいこうと思います


 今回はそんなおりこ☆マギカの回です
……難産でした


ほむら編その3〜前編〜

☆★☆★☆★

 

 美国織莉子の固有魔法は「未来視」である

 数十秒先、なんてちゃちなモンじゃあ断じて無い

 正真正銘未来の出来事が見える

 常時発動型故に燃費は悪いが、集中すればその精度は凄まじく

 応用しだいでは戦闘で常に優位に立つ事が出来るだろう

 

 そんな彼女の最初の予知はまさしく世界の終末だった

 

 吹き荒れる大嵐

 巻き上がる大量のビル

 高笑いをあげる舞台装置の魔女(ワルプルギスの夜)

 それと相対した一人の魔法少女(鹿目まどか)

 その一撃であっけなく舞台装置の魔女(ワルプルギスの夜)は倒れ伏すものの、倒した魔法少女の様子はおかしい

 その後、舞台装置の魔女(ワルプルギスの夜)を遥かに凌駕する最悪(災厄)の魔女となった彼女の暴走(救済)は7日間続き、

 世界は滅亡した(救済された)

 

 その未来を変えるため、彼女は鹿目まどか暗殺計画を実行する

 時にはキュウべぇに囮の情報を掴ませ、

 時には駒を増やし、

 時には魔法少女を殺害する

 

 それが私、美国織莉子の使命なのだから

 

★☆★☆★☆

 

 

「そうだね、次はちゃんと魔法少女だけ殺すよ

 

 葬式の帰り道、なんの変哲もない歩道橋で彼女は語る

 

 「織莉子、私は生まれ変わったような気分なんだ

  いや、気づいたんだ

  忘れていた願いに!」

 

 目の前で上機嫌にぴょんぴょんと飛び跳ねながら語る黒髪の少女には

 人を殺してしまい、罪の意識に潰れてしまうような

 そんな弱いココロはもう、どこにもない

 

 「それはきっと今私に溢れるこの感動だよ

  すごく大きくて重くて

  そして軽やかで晴れやかに

  私の心は上等に富んでいるよ」

 

 彼女は恍惚とした表情で笑いくるくると回る

 

 「誰にでも笑顔を振り撒けるし

  誰だって刻めるさ」

 

 よかった、ちゃんと完成したようね

 私の駒として使える硬いココロが

 

 「織莉子のためならね」

 

 そう言って彼女は私にくっついてくる

 あぁ……

 この子を私色に染め上げられたという事実が全身を駆け巡る

 ビリビリと流れる甘い痺れが私の感情を昂ぶらせる…ッ

 これで私の使命を果たしやすくなったという事はそうだが、純粋に私の事だけを見てくれる存在は彼女だけだ

 そんな彼女をここまで私の為だけの人間に創る(壊す)事が出来た

 もう恐れる事は何もないような気分だ

 私達は誰にも負けないという興奮が湧き上がってくる

 

 「織莉子早く命令しておくれよ」

 

 その欲望は幼い私の名残だったのかもしれない

 しかし、その程度の事は、この溢れ出る情欲の渦の前ではどうでもいい有象無象の情報と等しい

 

 誰かに私を見てもらえる

 誰かが私だけを見てくれる

 こんなにも素晴らしい事が他にあるだろうか

 愛はそそいだ分だけ返されるのだ

 

 ……だが、この感情は表には出さない

 彼女が求めているのはそんな私じゃあない

 魔法少女()()()()()なのだから

 

「気持ちが昂りすぎて私、後ろ足が跳ね上がっちゃうよ」

 

 奇遇ね、私もアナタというアナタをめちゃくちゃにしてあげたくてしょうが無いの

 

 「ぷっ、後ろ足って…猫じゃないんだから」

 

 けれど、()()()()その時じゃあ無い

 私の使命が全て終わった時

 私達の世界の中で一緒に過ごすためにはまだ動いてはいけない

 だからくすっと笑って受け流す

 

 「今日は大人しく帰りましょう」

 「え〜〜この新鮮な動力をどこにぶつければいいのさ」

 

 それに関しては完全に同意したい

 この感情を魔力に変換できたら私の固有魔法も使いやすくなるのだろうけれど

 

 「じゃあ家に来る?

  その元気はパンケーキにぶつければいいわ」

 

 よしっ

 自然にお家デートのお誘い成功!

 

 「うん!うん!うん!」

 

 彼女も飛び跳ねて喜んでいてくれている

 本当、使命なんてほっぽりだしてずっと幸せに暮らしたいものね

 

 「ところでキリカ、すごく歩き辛いのだけれど」

 

 そんな幸せな日常だったがそれを邪魔するいつもの横槍が入れられた

 

ブオン

 また、予知か……

 これは、複数の魔法少女が一人の魔法少女と戦っている…?

 風景はこの街では無い…じゃあ隣町かしら

 一人の魔法少女を護るように魔女がその腕を振るう

 魔女を操る魔法少女なんてのもいるのね

 なるほど、これは計画に使えるわ

 

 この魔法は本当にコントロールすることが出来なくて使い勝手が悪い

 突然どこかの光景が頭に浮かんできても混乱する事はなくなったにしても

 さっきまでの幸せな気持ちを潰されたこのやり場のない怒りをどうしたらいいものか…

 ただ、たまにこうやって有益な情報が得られるのは間違いなく他には無いアドバンテージだから我慢せざるを得ない

 

 「キリカ」

 「ん?」

 

 「残念だけどパンケーキは… 

 

ブオン

 また?二回連続は珍しいわね…

 今度は…私の家?時間は深夜か

 ッ…!!

 知らない魔法少女が私の部屋に乱入してきた

 窓ガラスを蹴り割るなんて随分と派手にやるのね

 髪型は黒のロングストレート…いや、若干2つに別れている?

 魔法少女姿は学校の制服の改造みたいな感じであまり突飛な特徴は無し

 左手に小型のラウンドシールド

 魔力的にコレが固有武器ね……

 って!?!?!?消えたと思ったら大量の爆弾?

 あ、コレ逃げ切れな……

 

 

 額に冷や汗が垂れる

 どうやら私はトンデモない相手に目をつけられているらしい

 予知の中ではあったが、彼女から溢れ出る膨大な魔力を感じた時の

 この言いしれない恐怖は彼女が相当の実力者であることの証明だろう

 そして、おそらくあの大量の爆弾はブラフ

 死ぬ直前に感じた衝撃は私は爆殺されたのでは無く、横から頭を撃ち抜かれた感じのもの

 爆弾を大量に持っているだけでは無く、銃も所持している……

 そして、あの突然消えたり現れたりする能力も厄介だ

 多分、私とキリカだけでは勝てない

 さっきの予知で出てきた魔女使いも仲間にしたほうが良いわね

 

 「織莉子?どうしたんだい

  いきなりだまりこくって考え込んで…

  ハッ!?もしかしてまた予知かい?

  魔力は大丈夫?減ってない?グリーフシードの予備は持ってる?」

 

 目の前でかわいい駒があわあわしている

 かわいい

 そうね、弱気になっていたらそれは()()()()()ではない

 もっと自信を持て、不敵に笑え、何もかも見通している風に装うんだ

 

 「キリカ、命令よ」

 

 その言葉を聞いた途端、駒の表情にパァッと笑顔が灯る

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 その後、私達は固有魔法「洗脳」を持つ魔法少女『優木沙々』と接触

 ネコ被っていた彼女の要望どおりに風見野の魔法少女達を暗殺し、かつその後の身の安全を保証する事を条件に一時的な協力関係を結ぶ事に成功

 そして、予定通りにキリカを風見野の魔法少女達に突っ込ませ乱戦に持ち込んだ

 この乱戦の中に鹿目まどかを連れてくる作戦や、他の魔法少女を魔女化させる作戦もあったが優木沙々に逃げられる可能性があるので

 普通に戦って全員蹴散らした

 しかし、その際の非人道的な行為の数々から優木沙々の中で私達はすっかり『ブッ壊れている奴ら』になってしまったらしく、

 その後全くネコ被る事は無くなったりしたけども、まぁどうでもいいことね

 

 そして、鴉も寝込む丑三つ時

 私達は屋根の上で対襲撃者戦の最期の作戦会議を開いていた

 「いいかしら?襲撃者はもうすぐこの道を通る

  私とキリカで引きつけるからすぐに沙々さんは魔女結界を張って頂戴

  その後、アナタの魔女と一緒に私達が戦うから

  スキが出来たら死角から「洗脳」をしてほしいの

  わかったかしら?」

 この作戦の肝となる彼女にそう問いかけるが

 「いや、わかるわけねぇーだろぉッ!!

  なんで私がそんなトンデモなく強い魔法少女との戦いに!それも一番重要なポジション任されなきゃなんねぇんだよッ!やってられっか!!」

 

 まだ乗り気じゃないようだ

 

 「あのさぁ…さささささ

  何度も言ってるけど、この襲撃者を殺さないと織莉子が安心して眠れないでしょ?

  ささささささささの安全を確保するのはこの襲撃者をなんとかしてからって最初に言ったじゃないか」

 「冗談じゃねぇ!私はそんなちょっとミスったら死んじまうような作戦は御免だよ!バーカ!」

 「バッ……バカとは何だバカとは!!バカって言ったほうがバカなんだぞ!!」

 「やーいやーい、お前の脳内小学生!!」

 二人揃って小学生みたいな事をしている

 ここ人の家の屋根の上だからあまり騒がないでほしいのだけれど……

 頭が痛くなってきた

 正直言って、彼女の固有魔法「洗脳」は強力だ、

 いつ裏切られるかわからないが、例の襲撃者を撃退するにはコレしか方法が無かった

 予知でどんな方法で襲撃者を倒そうとしても私とキリカだけでは返り討ちにされる未来しか存在しなかった

 唯一違ったパターンが優木沙々が協力してくれたパターンのみ……

 彼女こそが切り札なのよね

 それに、さんざん言っている彼女だがなんやかんやでここまでついてきている

 きっと頭ではわかってるんでしょう

 私達が手をあげるような魔法少女が生きていたら、自分の命も危ない事に

 (まぁ、最悪の場合私達を盾にして逃げようとかは考えてるんでしょうけど)

 

 「時間よ、行きましょう」

 

 すると二人共ピタリと言い争いを止め、こちらを向いて了承の意を示す

 「なんでこんな時ばっかりチームらしくなるのかしらね」

 「「あ゛ァ!?(織莉子ぉ!?)誰がこんなヤツと!!」」

 寸分違わぬ動きでお互いを指差し、こちらに抗議してくる様に不覚にも笑ってしまった

 「そういう所よ」

 

 その後、私達は二手に分かれ、沙々は空き家の中に隠れ私とキリカが道の真ん中に立って襲撃者を待ち構えた

 

 

 

 コツーン

 コツーン

 コツーン

 コツーン

 

 ブーツが地面を蹴る音が響く

 ここは高級住宅地の歩道なのに、何故かトンネルの中のように反響する音と共に謎の威圧感が辺りを支配した

 自然と息が荒くなり、威圧感が増してゆくと共に体感時間が長く引き伸ばされていく

 一呼吸するだけでも数秒、数十秒かかるように感じ、非常に息苦しい

 威圧感の中心に近づくほど、体が危機を感じてアドレナリンを出しているのかもしれない

 キリカもこの摩訶不思議な感覚を感じているのだろう

 顔は青ざめ息は荒いが、目が見開かれ、爛々と輝き、滾る闘志を燃やしている事がわかる

 やはりキリカは私の駒として優秀だ

 

 

 ひときわ長い一秒の末、

 ついに遠くの交差点から一人の少女が現れた

 長いストレートの髪は電灯に照らされ濡羽色を輝かせ、紫色の瞳は怪しく光っている

 間違いない、この時間帯でここを通るのは例の襲撃者だけだ

 そこで、隣のキリカがいぶかしげに眉をひそめる

 【ねぇ、織莉子。本当にコイツなの?】

 テレパシーでそう私に聞いてくるのも無理は無い

 襲撃者からは魔法少女ならばどんなに弱い魔法少女でも確実に出ているハズの魔力が全く感じられないのだから

 よもや一般人なのでは?と疑うレベル

 しかし、それではこの叩きつけるようなプレッシャーに説明がつかない

 

 「………………」

 

 襲撃者の少女がこちらを向いて足を止める

 その間約500メートル程度

 魔法少女なら本気を出せばすぐに詰められる距離

 だが、私達は動けなかった

 向こうも動かなかった

 それは数秒だったか、数十秒だったか

 私には無限の時間にも思えるような長い時間、私とキリカは襲撃者の彼女と真顔で睨み合った

 

 ついに動きだした襲撃者の少女が自らの後ろ髪を横に流し口を動かそうとした

 次の瞬間

 世界は襲撃者も私達も巻き込んで目まぐるしく変わっていった

 あちこちから放たれる毒々しいショッキングピンクの水流、

 所々点在しているドギツイ色で輝く水晶で出来た小島が唯一の足場

 謎の紅い肉壁で仕切られた巨大なホールのような場所であり、戦うには十分な広さといえるだろう

 その目に痛いピンク色の水(…?)の中には大きな怪魚の魔女がゆうゆうと泳いで、こちらに襲いかかる機会を伺っている

 

 【さぁさぁ私の愛しいガギエルちゃん!!やっちゃってくださーい!!】

 

 どうやら沙々が操っている魔女の結界はちゃんと張れたようだ

 まずは先手必勝

 不安定な結界内で足場を確保しながらあらかじめ予知しておいた襲撃者の位置に攻撃する

 

 

Oracle Ray「オラクルレイッ!!」

 

 私の固有武器は純白の水晶球

それらを多数召喚し操りつつレーザーで切り裂くいわゆる必殺技だ

 予知とあわさったこの技は絶対不可避の弾幕

 敵の死角から近づき確実に切り裂く文字通りの必殺技

 

 

 「久しぶりね美国織莉子」

 

 

 なのだが、技を放ったと同時に背後から声が聞こえる

 だが、避けられたとてここまでは想定内

 予知で襲撃者の固有魔法は瞬間移動かナニカだという事は割れている

 もしくは他のモノの可能性も十二分にあるが…あまり関係ないだろう

 すぐに振り向き予備で残しておいた一つの水晶球をぶつけるも、空を切る

 

 「あら、危ないわね…いきなり人にそんなものを向けるなんて」

 

 と同時に本命のテレパシーでキリカと沙々に予知で見えた襲撃者の次の移動先を教え

 予知通りのタイミングでキリカと魔女がそこに現れるハズの襲撃者の首を切り裂く

 

Vampire Fang 「ヴァンパイアファングッ!!」

Madness Freezing 「迢ゅ>蜥イ縺阪?悟㍾縺ヲ縺、縺崎協縺励?讌ス蝨偵?蜃カ縲」

 

 しかし、キリカの渾身の一撃は空を切り、怪魚の魔女は何もない場所にドギツイ色の結晶の花を創り出すだけだった

 

 「んあ!?ナンデいないの!?」

 「縺ェ繧薙〒繧?シ√↑繧薙〒豁、蜃ヲ縺ォ縺?↑縺?s繧?シ?シ」

 【ちょっ…テキトーな指示出してんじゃねーぞ美国織莉子ォッ!】

 

 誰も居ない場所に攻撃をしたキリカ達は大きなスキをさらす事になってしまい

 また何の予兆も無く現れたタンクローリーに轢かれて吹っ飛ばされ、中に入っていたガソリンが大爆発を巻き起こす

 魔女の方は突如その体中に数多の筒型の爆弾が連なった鎖が巻きつけられ、爆発すると共に襲撃者が魔女の正面に現れ、多弾頭ミサイルを口の中に打ち込んであっという間に消滅させたれた

 

 

 「不味い……」

 

 思わず口に出てしまう

 魔女は倒されてしまったものの、キリカの速度低下の魔法でなんとか魔女結界は崩壊するのを見送られてはいる

 が、それも時間の問題

 パッと見た感じキリカは右腕骨折左足欠損全身やけど、魔力での回復に集中しなければならないから戦線には復帰出来ないだろう

 そして極めつけは私の予知が使い物にならない事

 目の前に再び姿を表した襲撃者に水晶球を操り突っ込ませるも、ことごとく予知とは違う動きをされ全て避けられてしまう

 

 【いやいやいや…こんなバケモン相手に勝てるわけ無いですよォッ!!私は逃げさせてもらいますねッ!!】

 

 案の定優木沙々が戦線離脱したようだ

 私の予知が使い物にならなくなったのだから、当然といえば当然ね

 彼女にとって一番大切なのは自分の身の安全でしょうから

 

 「とうとう、私一人になっちゃったわね……」

 

 遠い向こう側を見ながらつぶやく

 

 「あら、だったらこちらの話を聞いてくれてもいいんじゃない?」

 

 意外なことに襲撃者の少女が返事をしてきた

 

 「よく、言いますね……こんな惨状を引き起こしておいて、ぬけぬけと」

 

 憎々しげに襲撃者を睨む

 貴方がいなければキリカも重症を負うことは無かったのに

 

 「そもそも、私は何もしてないわ

  夜道を歩いていたらあなた達から襲ってきた

  攻撃が飛んできたから反撃した……違う?」

 

 痛いところをついてくる

 確かに私達は現状何もされていない以上、加害者でしかない…けれど

 

 「確かに、そうかもしれない

  けど、貴方がこれから私を殺そうとしていたのは確実でしょう?」

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そんな詭弁をいけしゃあしゃあと、さも当然の事のように答えてくる

 行動には思考が伴う

 全ての事象いにはそれ相応の因果関係があり、襲撃される予知が見えたという事は、それを行動するだけの思考があったという事

 その時点で明確な敵対意識ではないか

 そして戦っている最中に見えた予知で一つ疑問が出来たのでカマをかけてみる

 

 「そう……それが貴方の答えなのね……鹿目まどかの『守護者』さん」

 「えぇそうよ……まどかを殺そうとする『預言者』さん」

 

 即答された

 やはりこの襲撃者はどういうわけか鹿目まどかに何も行動していない私の事を知っている

 そして最初の予知で見えた光景に一瞬写り込んでいた黒い影

 この襲撃者で間違いないのだろう

 鹿目まどかの予知の中で私が殺される相手も、きっとこの襲撃者だ

 私の仮説が正しければ……

 

 

 

 

「何度繰り返したの?

 

 

 あと何度繰り返すの?」

 

 

 少なくとも多少は動揺するだろう

 そう考えてこの問いを放った

 おそらく彼女の魔法は時を操る物

 そして私の事を知っているのは未来から戻ってきているから

 ならばきっと何回も同じ時を鹿目まどかの為に繰り返しているのだろう

 ならばその虚しさに既に気づいているのだろう

 だから、相手の弱い部分につけこむ

 『永遠』なんてものは人にとって果てしなく長くて、とても手におえるような物ではないのだから

 

 

 

 

「そうね……私は一ヶ月を繰り返しているけれど、15000回からは数えてないわ

 

 そして、この最高の時間軸で全て終わらすつもりよ」

 

 

 だから、思わず口が開けっぱなしになったのも仕方ないと思う

 一ヶ月を15000回以上!?

 単純計算で1200歳を超えるのだけれど!?

 まるで戯言のような話だが、彼女の目は真剣で嘘ではないことがハッキリとわかる

 

 「揺さぶっていたのなら、お生憎様

  私には精神的動揺によるミスは無い、と思っていただこうかしら」

 

 その瞳に宿る意思はとても大きく、彼女の回答が正しい事の何よりの証拠であろう

 

 「かつての貴方は私にこう言った

 『私は貴方と違う

  道が昏いなら自ら陽を灯す

  違う道に逃げ続ける貴方が私に敵うはずがない』とね」

 「確かに思い返してみればその通りだった

  私はその時は現実逃避しかしていなかった」

 「でもね、それは貴方にだって言える事なの

  貴方は未来の道を見ているものの、そこから選んでいるだけ

  ただ、数多にある運命の中から都合のいいものを選んでいるだけにすぎないわ」

 

 「クッ……」

 

 何も言い返せない

 恐らく彼女に私の予知が効かないのはそういう事なのだろう

 私はただの観測者と思い込み、ただただ見ているだけだったのだ

 

 「えぇ、言わせてもらいましょう

  ()()()()()()()()

  ()()()()()()()()()()()()()()()

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 眩しい

 自分とは全く違うその輝く精神のありかたに思わず目を背けてしまいそうになる

 あぁ、彼女の言っている事はもっともだ

 自分の使命を求めて魔法少女になったけれども、それは間違いだったのだろう

 いつの間にか私は膝をついていた

 襲撃者の少女はチェックメイトとでも言いたげにソウルジェムに銃口が突きつける

 

 「撃たないの?」

 私が問う

 「()()()、撃たないわ」

 少女が答える

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そう言って彼女は微笑んだ姿は、かつての母を思い出すようで……

 

 

 

 

 「織莉子に…触るなぁぁぁぁアァァァッ!!!」

 

Stepping Fang ステッピングファング

 

 きっと私達の会話が聞こえていなかったのだろう

 キリカのツメが少女に向かって射出されていた

 その質量と速度から、私を救おうと自分の回復を後回しにして魔力を全て使い切った全力の攻撃だという事がわかる

 気づいたら咄嗟に身体が動いていて、少女を突き飛ばしていた

 よくわからないが、この少女には生きていてもらわねばならない、という予感がしたような気がする

 そして、突き飛ばしたという事は、私がキリカのツメの攻撃を受けるという事

 世界が再びスローになる

 遠くでキリカがこの世の終わりのような顔をしているのがハッキリと見えた

 また違った方向からは、優木沙々がこちらに向かって駆け出しているのも見えた

 だが、やはりと言うべきかなんと言うべきか

 次の瞬間、私の視界は突き飛ばしたはずの少女で一杯になっていた

 アドレナリンで引き伸ばされている体感時間の中、

 確かに彼女はこう言った

 「もう一つ教えておくわ

  覚悟とは自己犠牲の心では無い

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そして彼女は3つの言葉を呟いた

 

 

 

 

 

 

氷雪属性纏繞特技(アイスフォース)」「中級氷雪魔法(ヒャダルコ)真空魔法(バギ)

 

 そこからは驚きの連続だった

 魔法少女なんてものをやっている以上、非日常に生きているつもりだったが

 この光景は次元が違いすぎた

 

 つぶやきと共に彼女を中心に謎の文字が空中に刻まれ、とてつもない冷気を帯びた風が巻き起こる

 その風は一つの束になって彼女に巻き付き、瞬く間に堅牢な氷の鎧…?ダイビングスーツ?のようなナニカになった

 例えるのならば日曜日の朝にやっている仮面ライダーに似ているような似ていないような………?

 顔の部分だけは透き通った氷で出来ており、

 頭には何故か、本当になんでかわからないがネコミミ(?)のような飾りが氷で表現されている

 いや、本当になんでネコミミ?

 そういう雰囲気の人には見えないのだけれども…

 周囲の空気は完全に凍りつき、至るところにキラキラとダイヤモンドダストが浮かんでいる

 

 キリカのツメがもう目前にまで迫っていたが

 着弾する直前でナニカに弾かれたように甲高い音を響かせ進路を変えた

 そして、空中で見えない壁に何度も弾かれたキリカのステッピングファングは明後日の方向へと飛んでいった

 とても信じられない

 キリカのツメは空中に輝いているダイヤモンドダストに弾かれて進路を変えたのだ

 どうやってあんなに小さなサイズの氷が、空中で攻撃を弾けるほどの強固さで固定されているのか

 全くもって理解不能だった

 頭がどうにかなりそうだった

 魔法少女や魔女の範疇からはみ出ている

 恐ろしいものの片鱗を感じた

 

 遠くでキリカが力を使い果たし崩れる音が聞こえる

 それと同時に、周囲の魔女結界が消え去り元いた住宅街に投げ出された

 

 見るとキリカが倒れているのは道路のど真ん中

 いそいでキリカの元へと駆け寄る

 身体の傷は殆ど治っておらず、ソウルジェムは既に穢れで真っ黒で魔女化ギリギリの状態だった

 懐からグリーフシードを取り出そうとするも、どこにも見当たらない

 最悪の未来を想像してしまい、血の気が引いていく

 すると、横から少女がキリカにグリーフシードを使ってくれた

 感謝を伝えようと少女の方を向いたが、そういえば名前を知らない事に今更ながら気づく

 

 「ありがとう……お名前を聞いても?」

 「暁美ほむら……ほむらでいいわ」

 

 暁美ほむら……きっと、私はその名前を一生忘れないでしょう

 今日、彼女は私の人生を大きく変えたのだから

 

 

 

 

 

 と、その時、沙々さんが何故かほむらさんの背後に立っていて洗脳魔法を発動させていた……!!

 

 「かかったなアホがァッ!!最後に油断してるからこうなるんですよ?さっさと食らって私のしもべになってもらいます!!」

 

 勝った!ほむら編、完!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法反射魔法(マホカンタ)

 

☆★☆★☆★




長引きすぎたので前後編です……

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