DESIGNED LIFE   作:坂ノ下

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第3話 箱庭の内と外

 学院本校舎の一階には広々としたラウンジが設けられている。高い天井から柔らかい照明が降り、テーブルを大きく区切るように配置された観葉植物が滞在者の目と心を癒す。

 講義と講義の狭間、もしくは放課後等、休憩や娯楽の場としてリリィたちが利用する場。今は昼の休憩を過ぎたので人影はまばら。それでも皆無ということはなく、談笑や本のページの擦れる音が聞こえてくる。

 ラウンジの壁際に近い席で、生徒会三役の一人である内田眞悠理(うちだまゆり)が自作の弁当を広げていた。生徒会の仕事が長引いたため、遅めの昼となったのだ。

 そこへ、横から紅茶の缶が差し出される。

 

「どうぞ」

「どうも」

 

 同じく生徒会三役――彼女の場合は代理だが――秦祀(はたまつり)が隣の席に腰を下ろした。腕に惣菜パンの入った紙袋を抱えて。

 

「かくれんぼ禁止の看板、追加するよう手配しておいたわ。目撃報告が上がったら、流石にねえ」

「それはお疲れ様」

 

 若干疲れが滲んだ様子の祀。彼女が代行するのはオルトリンデと呼ばれる役職で、主に学内政治や委員会を取り仕切っていた。雑務処理、という側面も否めないが。

 なお『かくれんぼ』というのは当然ながら暗喩である。元々は百合ヶ丘独自のものだったが、最近では他のガーデンでも使われているそうだ。それとももしかしたら、初めから同時発生的に生み出された暗喩なのかもしれない。

 

「ところで規律審院院長さんとしては、かくれんぼの件はどうお考えで?」

 

 祀が今度は悪戯っぽい笑みで問うてくる。

 眞悠理の役職はジーグルーネ。規律審院院長であり学内の風紀・校則を司る。百合ヶ丘女学院は明文化された校則を持たない。明文化されていないということは、管理者の権限が強大になりがちだということだ。

 ジーグルーネだから、というわけではないが、眞悠理はこの試すような問い掛けに応じることにした。

 

「そうだな……。まあ外でやるのは論外として。ただ抑圧するだけなのは逆効果だから、代替になり得るものを考えないと。例えば寮同室が希望できることをもっと周知させるとか」

 

 相手が気心の知れた同輩だけで、教職員も上級生も居ないので、眞悠理は外向けの言葉遣いではなく素の砕けた口調で喋る。

 

「お相手が居る生徒にはもう十分知れ渡ってると思うけど。それに学年が違うペアだと一般寮では同室になれないでしょう」

「学年違いねえ。だったらレギオン控室を、倉庫なり何なりの名目でもう一つ追加してみるっていうのは?」

「そんな都合よく手頃な部屋が用意できるかしら。本当に倉庫でするはめになったりして」

「……掃除用具も入れとくか」

 

 最後は半ば()()()()になりつつ、眞悠理が弁当箱の玉子焼きを箸でつつく。その玉子焼きの隣にはプチトマトやミニハンバーグ。製作者の風貌からはちょっとイメージし辛いラインナップだ。

 内田眞悠理という少女はお嬢様学校の百合ヶ丘では珍しいタイプだった。長い金髪の狭間から切れ長のツリ目を覗かせ、どんな場でも超然とした態度を取る。ひとたび戦場でチャームを持てば瞳と歯をぎらつかせる武闘派リリィ。それでいて風紀を管理するジーグルーネらしく、身だしなみは常にキッチリとしていた。

 普段から愛想も人当たりも良いため広く浅く慕われる祀と対照的に、眞悠理は一部に熱心なファンが居る。今もラウンジの離れた席で、二人の一年生が小声で何事か話しながら熱い視線を送っていた。

 しかしながら、生憎と眞悠理は年下にあまり興味が無かった。

 

「取りあえずは現状維持でしょうね。不必要に煽って火を起こすのも本末転倒だし。まあ何かあったらあった時にでも、眞悠理さんが骨を折ってくださいな」

「対症療法だな。まあそれしかないか」

「……っと、そろそろ始まるみたいね」

 

 ハムとコーンとマヨネーズの同居するパンを手にした祀が、会話を中断して目線を上げた。その先には背の高い台座に鎮座する巨大なディスプレイがある。

 眞悠理と祀の位置から距離こそあるものの、はっきりと見渡せる。二人がこの席を選んだ理由がこれだった。

 全寮制の学院でテレビは貴重な娯楽。そのはずなのだが、残念なことに娯楽としては大して機能していない。何故ならこのテレビ、国営放送ただ一局しか流さないのだから。

 ディスプレイが映し出すのは広く大きな空間だった。人の山がざわめきを生み出しながらも、どことなく陰鬱とした空気を孕んだ独特な世界だった。

 一口サイズのトマトを口内に放った上で、眞悠理もまた細めた瞳を無言で持ち上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 首都東京。

 強豪ガーデンに守られた都内中心部の地下に、巨大な空間がくり貫かれている。東京中に張り巡らされた地下鉄を避けて作るのは、さぞ難儀したことだろう。

 そうまでして築かれたこのシェルター、この国の国権の最高機関だった。もしもの時はシェルターの役割も果たすのだが、平素は人の言葉が盛んに飛び交う場。ある意味平和で、またある意味では平和でないとも言えた。

 そんなシェルター議事堂、本会議場で議員の一人が質問に立っている。

 

「――――以上のように、先の由比ヶ浜における戦闘処理についての予備費計上には疑義があったと言わざるを得ません。これは額の問題だけでなく、内容の問題でもあるのです。総理の見解をお伺いしたい」

 

 それはこの場に集った人間の中でも明らかに若い、三十代かそこらの男性だった。声はよく通り、背筋も真っ直ぐに伸びた美丈夫。席を立ち堂々質問する様は一つの()となっていた。

 

「本件予備費計上につきましては、特異生物災害対策基本法に基づく措置であります。ギガント級特型ヒュージとの交戦によるCounter Huge ARMS、通称チャームの損壊並びに百合ヶ丘女学院本校舎の破損。以上に対する補填を実施するべく、財務大臣及び所管大臣たる防衛大臣から提出された予備費使用に係る調書を閣議決定した件は、適正なものだったと認識しております」

 

 一方、質疑に答えるのは丸眼鏡を掛けた老齢の男性だった。淡々とした、原稿を読むような――実際原稿を手にしている――口調で長々と説明に終始する。

 

「一体ですよ! たった一体のヒュージとの戦闘で、一つ数億もするチャームを数十機と、ガーデンの根拠地を破壊された! 百合ヶ丘の指揮と防衛省の監督に不足があったのは明らかでしょう! ……そもそも、ガーデンへの公金投入の詳細には以前から疑義があります。本件については、百合ヶ丘女学院の理事長代行が総理とお友達であることが関係しているのでは?」

「ガーデンの装備品調達に係る補助金につきましては、防衛省防衛装備庁による厳正な審査の下で決定されます。従いまして、議員ご指摘の事実はないものと承知しています」

「総理っ! それでは答えになっていません! そんなの役人が忖度(そんたく)したに決まってるじゃあないですか!」

 

 直後、横合いから威勢の良い野次が飛ぶ。

 

「そうだっ!」

「忖度してないならしてない証拠を出せ!」

 

 野次とは本来、不規則発言である。

 しかしそこには波があった。どこか統制されている感すらあった。

 質問者の発言はなおも続く。

 

「思うに、ガーデンの諸問題はその強い独立性が原因ではないでしょうか? ヒュージへの迅速柔軟な対応のためとはいえ、ガーデンの独断専行は目に余る。良識ある国民が彼女らのことを何と呼んでいるか、総理はご存じですか? 『現代の関東軍』ですよ」

「各ガーデンに対する監督は防衛省が担っており、また重大事項に関しましては安全保障審査委員会によって慎重な審査がなされております」

「その安保審査委ですが、最近になって大掛かりな人事変更があったと聞いています。何か不都合が生じたのではないですか?」

「個別具体的な人事の詳細につきましては返答を差し控えさせて頂きます。しかし一般的に、人事においては各人の能力や適性に鑑み、適材適所の配置を行なっているものと認識しております」

 

 延々と展開される、暖簾に腕押すような問答。

 変化が生まれたのは質問内容が更に()れてからのことだった。

 

「ガーデンに内包される問題は何も予算面や軍事面だけではありません。聞くところによると、ガーデンでは男子生徒の存在しない女性ばかりの偏った環境のためか、特異な性的趣向が蔓延してるとか。教育機関としての側面もある場所で、これはいかがなものでしょう」

「……それは、同性愛が特異だと仰りたいのですか?」

 

 そのやり取りの直後、議場がこれまでにないほど騒然とする。

 

「質問者! 今のは問題発言だぞ!」

「いや、ガーデンこそ性差別の温床だ! 女子高なんぞ廃止しろ!」

「だがちょっと待って欲しい。男子校も作れば公平なのではないか?」

 

 与野党入り乱れて思い思いに言葉が飛び交う。これ以上先に進めば、手が出るのではないかと思わせるほどに。

 しかしそんな紛糾の最中でも、若き質問者は変わらぬ調子で総理を責める。

 

「総理、私とて個々人の趣向をあげつらうのは本意ではないのです。しかし、しかしですよ? リリィというただでさえ強大な力を持つ存在が、我々一般社会と著しくかけ離れた価値観や倫理観を有するとしたら、無力な市民が恐怖を抱くのは無理からぬこと。その恐怖を解消するのも政府の役目ではないでしょうか」

 

 通告に無い質問に、答弁が一時止まる。

 だが暫くすると、新たな資料が後ろから総理の手に渡された。通告に無くとも、でき得る限りの想定をしてあったのだろう。

 

「近年我が国において同性結婚が法制化されるに当たり、議論の末に同性愛に関して国民的理解が得られたものと考えています。従って議員の懸念は杞憂と言えるでしょう」

「果たして本当にそうでしょうか? 不快なことを不快と言えない、歪んだ同調圧力の結果なのでは? それに法制化の件についても、ガーデン間で留学生交換協定を結んでいる欧州からの圧力が要因でしょう」

 

 そこで質問者は一旦弁を止め、少々の間を空けてから再開させる。

 

「様々な問題を勘案した結果、やはりガーデンの独立性が諸悪の根源なのは明らか。そこで総理、私は提案いたします。全ガーデンに対し、第三者による常任監視委員を設置すべきだと」

「ただの政治将校じゃないか!」

 

 総理の答弁よりも先に、与党席から野次が飛ぶ。防衛族議員の一人だろう。彼ら防衛族にとって、リリィの保護者や親類縁者は無視できない票田なのだ。必然的にガーデン寄りの姿勢となる。

 

「繰り返し申し上げますが、ガーデンへの監督については防衛省及び安全保障審査委員会によって慎重かつ適正に実施されております。現行の体制を改める予定は、現在のところございません」

「……残念です。結局貴方は苦しい弁解と当たり障りのない一般論に終始している。総理、貴方には思想というものが無い。思想の無い者に、どうして国の舵取りができるというのでしょうか。真に国を想うなら、今すぐ職を辞すべきだ!」

 

 大袈裟なまでの身振り手振りえを交え、自信に満ち溢れた顔と言葉。それは内容の是非はともかくとして、目にした者も耳にした者も強く惹きつける何かがあった。だからこそ、今この場に立てているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 ディスプレイの向こう側の様子が一段落したところで、眞悠理は大きく溜め息を吐いた。視線は既に机上の弁当へと落ちている。

 

「ヒュージ出現から五十年。挙国一致体制なんていつまでも続けられないし、どこかでガス抜きは必要なのよ」

「そのためのショーね……。分かっちゃいるけど、虚しいな。そもそもあれ見て溜飲が下がるのか?」

「そりゃあ私だって、ああいうのを可愛い可愛い後輩たちに見せたくはないわよ。だけど私たちは知る必要がある。私たちが外からどんな風に見られているのかを」

「まあ、腐っても代議士。世情の代弁者か」

 

 祀の宥めるような言葉にも眞悠理の気は好転せず、残った弁当箱の中身を淡々と口に運んでいく。

 だが昼食を完全に終えた時点で眞悠理の調子が戻ってきた。調子というのは、論を発する舌のことだが。

 

「元はと言えば、ガーデンに独立性を与えたのは省庁の縄張り争いから遠ざけるためだろうに。今でこそ防衛省の下で納まってるが、昔は酷く揉めたそうじゃないか。『ヒュージは海から来るから海保の管轄だ』と国交省が主張したり、『ヒュージは野生動物だから』と言って農水省が横槍入れたり」

「そうね。でも国防の要を私立機関に任せるなんて、当時の政府も思い切ったものよね」

「それに、ケイブなんて代物使う連中相手にしてるんだ。東京での会議の結果なんて待ってられない。この辺りは防衛軍とも意見が一致してる」

 

 ガーデンの裁量に対する批判は極めて不服なものだった。実際に矢面に立つ身からすると堪ったものではないし、合理性にも乏しいと思える。眞悠理も合理性だけでは社会が成り立たないのは理解しているが、自分たちの手足を不必要に縛るのは容認できない。

 

「じゃあ性的趣向については?」

「それは、やましい点がないこともない」

 

 突然の話題転換に、流石の眞悠理も歯切れが悪くなる。ちょうど先程まで風紀に関して頭を悩ませていたばかりなのだから。

 とは言っても、テレビの中でされた批判を無批判で受け入れるわけではない。質問者の物言いを見る限り、どうにも誤った認識を持ってそうだった。

 

「だけどあれは、ガーデンを魔女のサバトとでも勘違いしてるんじゃないか?」

 

 確かに女の子同士で関係を持ってはいる。

 しかし不特定多数で乱痴気騒ぎを起こすような真似はしていない。自分たちはそこまで外の社会規範から外れた存在ではない。もしもそんな風に疑われているのだとしたら眞悠理としては、否、百合ヶ丘のリリィとしては甚だ心外である。

 

「ええ、同感よ。私たちは誤解されてるわ。ただちょっと戦う力があって、ちょっと女の子が好きな女の子ってだけなのに」

()()()()じゃなくて()()()だけど」

 

 祀による折角の同意だが、正すべき部分にはしっかりと突っ込みを入れるのだった。

 

「しかし、総理も総理だ。メディアには八方美人内閣だの何だの揶揄されてるが、不祥事や失言の類はただの一度も聞いたことがない。あの手の人間が一番食えないんだ。何を考えてるのか分からないから」

 

 眉をひそめた眞悠理がそう評すると、少しの間考え込んでから祀が口を開く。

 

「だけどあの時……結梨さんが百合ヶ丘に戻って来た時。安保審査委に手を入れてくれたから、今こうしてあの子が大手を振って暮らせるのよね」

「ああ。単なる善意じゃないだろうけど。確かあの総理、元外務官僚だったか?」

「理事長代行が現役で前線に出てた頃からの付き合いだそうよ。あの世代には、あの世代の人間にしか共有できないものがあるんでしょう」

 

 一度は結梨の処遇を――渋々ながらだが――百合ヶ丘に委ねた安全保障審査委員会だが、彼女のギガント級ヒュージ単独撃破を知って再び干渉してきた。そんな中での安保審査委に対する人事介入。これにより結梨は一先ずの安寧を得た。

 けれども眞悠理を含めて、それで終わったなどと思う者は生徒会には居ない。総理が理事長代行のお友達だから、と納得できるほど簡単ならどんなに良かったことか。

 もっとも、ただ不穏というだけで、結梨を狭い箱の中に隠し続けることもしなかった。レギオン復帰も認めていた。無論、代行の許可の下で。

 

「……ん?」

 

 暫く沈黙していた眞悠理が、ふと、祀の変化に気付く。

 それまでの物憂げな、彼女の魅力を更に引き上げるような大人びた様子から一変、口の隅に隠し切れない喜色を露わにしている。

 彼女の視線を追ってラウンジ端の廊下へ目を向けると、眞悠理は二人の少女に気が付いた。一人はついさっきまで、ここで話題に出されていた当人だった。

 やがてラウンジ内へと入って来た二人の前へ、すっくと立ち上がった祀が近寄っていく。ちょうど彼女らの進路に立ち塞がるかのように。

 この時点で既に眞悠理は面白そうな、もとい、悪い予感を感じていた。

 

「ごきげんよう、結梨さん鶴紗さん。休憩に来たのかしら?」

「ごきげんよー」

「ごきげんよう、祀様。次の講義まで時間潰しに」

 

 のほほんと返事をした結梨。一方でその隣の鶴紗は一瞬、身を強張らせた。

 興味の無い振りをしながらも、しっかりと観察していた眞悠理は、「あれは警戒されてるな」と見て取った。祀も気付いているはずなのだが、それよりも結梨の方に気が向いているのだろう。

 その結梨だが、目の前の祀ではなく奥にあるテレビの方をやたらと気にしている。いつもならこの時間の国営放送は、情操教育も兼ねた動物ドキュメンタリーを流すはずだった。しかし残念ながら未だに国会中継が続いている。

 

「ところで二人とも、お腹減ってない? ちょうど美味しいパンがあるのよ~。少し食べていったらどう?」

 

 ニコニコと人の良さそうな笑顔で、パンの入った紙袋を抱えて更に近付く祀。

 ところが祀と結梨の間に割り込んで、仁王立ちの如く立ちはだかる影が。

 

「駄目です」

「あの、鶴紗さん?」

「今食べたら、おやつが食べられない。それに……楓や神琳と同じものを感じる」

「えっ」

 

 眞悠理は我慢できず、笑い声をこぼした。

 相変わらず祀のアプローチはお姫様に届かず、騎士様にもガードされてるようだった。

 そうこうしている内に、ラウンジへ更に顔見知りが現れた。結梨たちと同じレギオンの二年生、夢結と梅である。

 先程までの会話を与り知らぬ夢結たちが、祀や鶴紗の元へ歩いて来る。知り合いなのだから声を掛けるのは自然なことだ。だが会話の内容を把握していたら、わざわざ火薬庫に飛び込むような真似はしなかったに違いない。

 

「ごきげんよう、祀さん。鶴紗さんに結梨も」

「ごきげんよう……。ところで夢結さん、貴方たちの隊の中で、私は一体どういった扱いなのかしら」

「はい?」

 

 夢結は思わず間の抜けた声を出す。

 

「私だって、可愛い結梨さんを愛でたいのにっ」

「ちょっとごめんなさい。状況が飲み込めないのだけど」

「ずるいわずるいわ! 一柳隊の皆で結梨さんを独占してるんでしょう!」

「元々、結梨を梨璃に託したのは貴方でしょうに……」

 

 いまいち噛み合わない応酬が展開するのを、隣の梅は楽し気に観戦している。

 だが渦中の人物はというと、しかめっ面でテレビの画面を指差した。

 

「ねえ、梅ー。ゾウもキリンも映ってないよ?」

「ん? ああ、映ってないなあ。狸や狐ばっかりだ」

「んんー? ……人しか映ってないよっ!」

「あははー」

 

 わちゃわちゃとした、おかしなやり取りを眺めていた眞悠理。そんな彼女もやがて席を立ち、喧噪の中へ入っていく。本日の生徒会としての仕事こそ終わったものの、レギオンでの活動があるからだ。特に祀は自身のレギオンを持つ隊長でもあった。

 

「皆、邪魔したわね。祀さんはちゃんと連れて帰るから」

「ちょっと、もうっ、眞悠理さんまで」

 

 外向けの口調に戻った眞悠理は祀の腕を取ってその場を後にする。

 ジーグルーネとして風紀の乱れを正せたかどうかはともかくとして、取りあえずラウンジの平和だけは守ることができた。

 

 

 

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