「へぇ、それでは暁君は理事長先生とは顔見知りだったんですねぇ」
「はい。一応そうですね。まあ会ったのは一度だけみたいですし、子供の頃でしたので正直、全然記憶にないんですけど」
今僕は、担任となった橘先生と共に新しいクラスへ向けて移動している。
「それは仕方ありませんね。しかし暁君、人は一度記憶したものは簡単に消え去ったりはしません。それは思い出せないだけできっと、記憶のどこかに残っているはずですよ。ですがやはり思い出せないというのは少し寂しいですよね。ですから、これからこの聖櫻学園で新たに記憶したことをいつでも昨日のことのように思い出せるくらい充実した、楽しい学園生活がおくれることを担任として心から願っていますよ」
なぜだろう?
見た目はまるで子供みたいな先生だけど、今の言葉はすごく僕の中で重みを感じた。
どんな重みかは今の僕では判断できないけれど、決して嫌な重みではなかったのは確かだった。
さすがは年の功、というのはさすがに失礼か。
いくらなんでも30代ということはないだろう。
10離れているかどうかではないだろうか?
さすがは学習面においてもトップレベルの学園、その教師を務めるほどの人だ。
国語教師であることもその要因だろう。
「はい。ありがとうございます」
僕は素直に、いや自然にお礼の言葉が漏れていた。
「それでは暁君は少々こちらで待っていてくださいね。先生が呼んだら入ってきてください」
そう言うと、橘先生は扉を開け「はぁい皆さん、席についてくださいねぇ」と教室へ入っていく。
クラスの皆は、いや、主に男子だが、担任が橘先生と知って、「ラッキー」だとか、「相変わらず可愛いぞぉ」とか叫んでいる。
(賑やかなクラスだなぁ)
そんな感想を抱きつつ、僕は先生の指示を待っていた。
2年A組。
それが僕の入るクラスだ。
一学年約420人。各クラス42名の計10クラス。
そのうち7割が女子生徒。
つまりこの教室にも当然、少なくとも30人近くの女子生徒がいるわけだ。
一般的な男子からしてみれば、思わず心躍る展開だろう。
実際この学園に通う男子生徒の志望理由は、そういう下心が大半らしい。
そのために必死で勉強する奴もいるくらいだ。
だがそれは仕方のないことだ。
はっきり言おう。
この学園にいる女性はスペックが高い。
運動も、学習も、そして容姿もだ。
それは理事長先生然り、橘先生然り・・・。
もちろん全員が、とは言わない。
しかしほとんどが、とは十分言えるだろう。
これに喜ばない男子がいるだろうか? 否。
それはもちろん僕も同じだ。
ただ、僕の場合嬉しい反面、不安もある。
早々にその不安を払拭出来ればいいのだが、そうもいかないだろう。
なにせ物心ついたころから悩まされ続けた体質だ。
とりあえず、できる限り失態を犯さないように気を付けるのが先決だろう。
そして橘先生に呼ばれ、僕は教室へと入っていく。
先生の立つ教壇の横まで来た僕は、クラスメイトとなる皆の方へと視線を向ける。
(うわ、ほんとに女子多いなぁ)
そんな分かり切っていたはずの感想がおもわず出てくる。
「では暁君、簡単な自己紹介を」
そう促され、僕は従った。
「初めまして、暁聖士です。親の都合による引っ越しで、今日からこの学園へ通うこととなりました。慣れるまで色々迷惑をかける場面があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、皆から拍手が零れる。
我ながら初めての経験にしては噛まずに良くできたと思うので、素直に嬉しい。
そうして僕は視線を元に戻したのだが、不意に最後部席の女子生徒と視線が合ってしまう。
いや、視線が合ったというよりは自然と吸い寄せられてしまった、が正しいのかもしれない。
現に僕はその女子生徒から視線を外せないでいる。
明らかに周りの女子とは違うオーラを纏っている。
それもそのはずだ。
後に聞けば、彼女は昨年、一年生ながらミス聖櫻学園の夏、冬の第一位らしい。
まさに学校一の美少女である。
もちろんこのクラスにもパッと見だけでかなりの美少女さんたちがいる。
けどやはり、貫録というのだろうか? 彼女の妙に落ち着いた雰囲気は、周りの女子たちと比べても段違いだった。
「それでは紹介も終わりましたのでホームルームを始めたいと思います。暁君の席は真ん中の一番後ろ、椎名さんの隣ですのでそちらへ・・・。暁君?」
「へ? あ、は、はい!」
普通にボーっとしていた僕は慌てて指定された席へと向かう。
この学園はの教室の机は一般的な大学や、塾のように長机を使用しているので、必然的に2人で一つを使用する。
そして座席一つ分挟んだ僕のお隣さんは・・・。
「お隣さんですね。
これが僕と、学園一の美少女と噂の椎名との出会いであった・・・。
お疲れ様です。
ようやくヒロインが登場。
しかも最後だけ。
ん~余計な事書きすぎなんですかね?
出来ればその辺は大目に見てやってください。
感想お待ちしております。