「エレナ、あなたはいったいいつになったら時間を守れるようになるのかしら?」
砂夜先輩は呆れたように問いかける。
「だってだって聞いてよ砂夜ちゃ~ん。私の目の前を可愛い一年生ちゃんたちが無防備で現れるんだもの~。もう私我慢できなくって~」
望月先輩は砂夜先輩に詰め寄り、というか抱きつきながら許しを請う。
ひどく怪しい言葉が混じっていた気がするが、敢えてスルー、というよりも僕は先輩の大胆な行動に驚いていた。
あの砂夜先輩に何の躊躇もせずに抱きついたのだ。
しかも砂夜先輩の方も呆れてはいるが、別段振り払うそぶりがない。
つまりこの光景はよくあることなのだと推測される。
「ところで~砂夜ちゃん? この見かけない男の子が砂夜ちゃんの言ってた転校生君?」
一通りの言い訳を終えたのだろう望月先輩は不意に僕の方へと視線を向けそう口にする。
え? 僕?
「ええ、そうよ。このあとあなたと一緒に行ってもらうことになってるわ」
「ふぅ~ん。確かに砂夜ちゃんが言ってた通り顔は可愛い顔してるけど~、でも男の子なのが残念よね~」
そういいながら僕に詰め寄ってくる望月先輩。
近い、近い近い!
目と鼻の先まで顔を近づけられた僕は焦っていた。
だってしょうがない。僕だって男だ。
色々と危うい言葉を口にしている望月先輩だけど、正真証明、美少女である。
制服がいまだに肌蹴ているせいで、もともと持っているであろう色気がさらに溢れている。
極めつけは女性特有の甘くいい香り。
これで焦るなというのは無理がある。
「聖士くんだったかしら~?」
「あ、は、はい!」
「お姉さん、早く女の子を撮りに行きたいのよ~。だから早く行きましょう~?」
そういうと僕から離れて扉の方へと向かう。
ふぅ。めちゃくちゃ心臓に悪い。
女の子に直接触れなければ僕の体質は反応したりはしない。
ただ今回ばかりは間違いが起こるかもと思ってしまった。
それほど望月先輩は強烈だった。
そんな感想を抱いていると望月先輩は余程早く行きたいのか、僕を置いて部屋を出て行く。
まだ行先を聞いていないけど、どうやら望月先輩が知っているようなので僕も後について行こうと、砂夜先輩に「行ってきます」といって部屋を出た。
そして出たところで拓真に呼び止められる。
拓真は小声でこんなことを言った。
「気をつけろ聖士。望月先輩は学園一目のやり場に困る先輩だ」
うん。それは何となく理解できるよ。
初対面の僕に対してさえあの無防備さだ。
ただ、拓真の言葉はそれだけでは終わらなかった・・・。
現在、僕と望月先輩は、三年生校舎の4階にある部室を出て1階、二年生校舎を繋ぐ渡り廊下まで来ている。
ここまでだけを見ればなんらおかしなところはないだろう。
ただ聞いてほしい。
部室を出たのが大体、午後12時半を回ったところ。
そして、現在の時刻は・・・。
「1時10分かぁ。いったい僕たちはいつになったら目的地に着くんだろうなぁ」
そう。たかだか階段を3階下りるだけで30分以上を費やしていた。
原因は明白である。
今僕の目の前で、周りの目を気にすることなく自分の世界に入り込み、中庭で昼食をとっている一年生女子を際どい角度で写真を撮りまくっている望月先輩のせいである。
僕は都合4回、今のような足止めをくらっていた。
3階、2階、1階、そしてこの渡り廊下である。
内心僕は諦めている。
何を? と問われれば当然望月先輩の説得だ。
あの人は治らない。いや、そもそも治す気がないというのが正しい。
拓真の言葉である程度の想定はしていたけど、正直これほどとは思わなかった。
だってそうでしょ?
望月先輩は誰もが認めるだろう美少女である。
そんな美少女が男子の眼を全く気にすることなく、スカートの中の下着を高頻度で露出させているのだ。
これが想定外でなければなんだというのだ?
僕は心の底からもっと自分を大切にしてくださいと願った。
いや願ったのではない。言ったのだ。本人に。
しかし返ってきた言葉は――。
「心配してくれるの~? でも大丈夫よ~。私今まで体調不良で休んだことないもの~。それに~、休んだらその日に撮れた筈のベストショットを逃しちゃうじゃな~い。そんなの私耐えられないもの~」
である。
僕は別に体調に関して気を遣ってほしかったわけではないのだが、それを言おうとしたところれで再び写真に夢中になってしまったので断念せざるを得なかった。
そして同時に、ここまで望月先輩のゲリラ撮影会に付き合ったことで、拓真の言葉の意味を十分理解した。
拓真は部室を出る際にこう言ったのだ。
「いいか? 望月先輩には二つ名がある」
二つ名とは、いちいち説明しなくともわかってもらえるだろうが、例に出すなら、とある有名武将の『独眼竜』といったところだろうか。
云わば、本人の特徴を捉えた通称の様なものだ。
この学園にも二つ名を持つ生徒がたくさんいるらしい。
そして望月先輩の二つ名、それは、
まさに現在進行形で、道行く男子をその溢れる色香で魅了している先輩にはピッタリの二つ名であろう。
ただし、望月先輩の二つ名はこれだけではない。
これは男女関係なく皆が認識している二つ名であり、もう一つ、主に男子のみに語られる二つ名が存在するという。
その二つ名とは・・・
正直最初はその意味が全く分からなかった。
でも今ならわかってしまう。
男子にとって、美少女のパンチラとは、例え同一人物による連続であっても、毎回目で追ってしまうのが男の本能である。
したがって、俊敏な動きでありとあらゆるアングルから撮影を試みる望月先輩の光景は、まさにパンチララッシュであった。
健全な男子にとっては目を逸らしてなどいられない天国のような光景。
しかし忘れてはいけない。
自分たちが見ている依然に、自分たちも同じように見られていることを。
当然、女子の下着をまじまじと見つめる男子を見た女子は軽蔑するだろう。
同時にそれは学園生活における立ち位置に大きく関わることになる。
実際、このことが原因で彼女に振られた男子や、好意を持っていた女子に嫌われた男子は少なくないとか。
油断すれば一気に評判がどん底まで落ちてしまう、まさに天国か地獄である。
ちなみに、そんな恐ろしい二つ名を持つ現在の望月先輩を止められる人がたった一人だけいるらしい。
もちろん、砂夜先輩でも、ましてや理事長先生でもない。
そんな人がいるのか、と今の僕はその人の凄さを十分身に染みていると同時に、その人に会ってみたいものだと、いつか会える日を楽しみにしている。
さて、そんなこんなでようやく満足のいった写真が撮れたようで、僕たちは再び目的地を目指して歩を進める。
すでに僕は望月先輩から行先を聞いている。
僕の新聞部としての初仕事は、二年生校舎の1階にある、理化学室、の中にある扉の向こう。
実はそこ、とある天才生徒の個人研究所となっているらしい。
そんなまさか、とも思ったのだがこの学園、今思えばそう言った天才は珍しくない。
特に多いのはスポーツ系。
各部活に1人ないし2人はすでにプロと呼ばれてもおかしくない、あるいはすでにプロとして扱われている生徒がいるくらいだ。
さらに言えば今回の取材対象である生徒は、僕にも身に覚えのある人だった。
昨年のテレビにて、ある女子高校生が素晴らしい発明をした。
というニュースが流れた。
どんな発明をしたかは忘れてしまったかは覚えていないが、その後報道陣が聞いた質問の答えはよく覚えている。
その女子高校生は言った。自分の夢は人間とロボットの共存だと。
そしてそのために現在、アンドロイドを生み出している、と。
まさか今回その人を僕が取材することになるとは思ってもみなかったけどね。
まあ取材というのは名ばかりで、別段内容について指示を受けていないので、これは砂夜先輩による学園を見てきなさい、という遠回しの優しさなのだと勝手に解釈している。
もちろん当たっているかはわからないが、少なくとも昔の砂夜ちゃんにはそういう節があった記憶がある。
それにそう思っていた方が気持ち的にも楽だろう。
そしてようやく目的地の扉までたどり着いた僕たちはそのまま扉を開ける。
「失礼しま・・・あれ?」
扉を開けた僕の目に入ってきたのは、再び扉へとつながる地下への階段だった・・・。
はいやってしまいました~。
でも言い訳させてください。
エロナ先輩・・・書くこと多すぎるよw
ということで、今回後2人出てくるはずがまさかのほぼエレナ先輩で終わってしまうという事態になってしまった。
ただ一応ひとりだけは予告できたのであとは次回をお楽しみに。それではさようなら。
追記、ええっと本日より部活対抗が始まってしまうので更新状況が悪くなりますご容赦を(笑)