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白を基調とした部屋に一組の男女がいた。
男女は互いに違う机におり、黒ジャージ姿の男、千鳥の目の前の机には二枚の紙が置かれていた。
その内の一つは書き殴ったように文字が羅列しており、もう一つは名前と日付以外は記入されておらず白紙のままだ。
男は一つ溜息をつくと無記入の紙を握り潰し丸めると部屋の角にあるゴミ箱に向けて投げた。
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部屋にいた女性、井河アサギは、千鳥の行動の一部始終を眺めていた。
アサギが千鳥に渡した紙は二枚あり、一つは報告書。そしてもう一つは始末書だ。
千鳥がそれを受け取ると、一枚目を書き始め、ボールペンが紙を走る音以外は聞こえなかった。
しかし音がピタリと止み、千鳥は何を思ったか二枚目を握り潰し始め、丸めるとゴミ箱へ向け投げ捨てた。
…全く、と思いながら目の前に来た千鳥から報告書を受け取る。
相変わらず文字は汚いが的確に状況と戦果を書き上げていることには脱帽者だ。
アサギ「そろそろ、チームかコンビを決めたらどうなの?千鳥」
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アサギから言われたことは単独行動を控えさせるような物言いだった。
一人で戦果を挙げ、任務を完遂させているにも関わらずそう言われるのは、
…生存確率を上げたいからだろうな。
だからここ最近ずっと言われ続けるのだろう。
千鳥「あなたか不知火さんほどの実力者か、まぁ生存率が格段に高い奴をピックアップしてもらえると助かります」
千鳥はその言葉に対する最適解を答えたつもりだった。
相手を決めて組むか、最悪の場合は逃走も視野に入れての戦闘なら単独行動の方が格段にいいが、自身と相性の悪い相手が出てきたときに対応できるならメンバー行動も悪くない。
だが、肝心なことに組む相手が見つからないのであれば単独行動もやむなしとはいかず、理不尽
その事を思い出し、軽くため息をつくと戸棚からクッションとタオルケットを取り出すと部屋の隅でタオルケットで隠れるように丸まると寝息をたて始めた。
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アサギは千鳥に言われてからは何も言わなかった。
彼が寝付くまで終始見守っていたが、千鳥が無理ではなく無茶を言ったことはわかっていた。
現段階で主戦力を任務に駆り出す事は難しく、むしろ一人でありながら任務を確実に遂行して必ず帰ってくる千鳥の存在は対魔忍にとって貴重と言えるものである。
アサギ「だから…ね。あなたを下手に失うわけにはいかないのよ」
アサギは呟くと、千鳥がこの部屋で眠っていることで思い出した。
…千鳥がこの部屋で寝たときは大体ロクなことが起きない。
学生時代から戦線に立つことの多かった千鳥は報告書ついでにこの部屋で仮眠を取ることがあり、回数こそ少なくとも、良くも悪くも何かしらの火種だった。
体勢こそ入っていても寝てない限りは良い方向で事が起こり、どんな大勢でも寝ていれば大概問題が起こっていた。
そして問題が起こるタイミングは千鳥が眠ってから
大体30分前後と正確ではないが決まっており、普段通りならアサギは警戒する必要はなかった。しかし、以前から千鳥が二車骸佐が反乱を起こす可能性がある事を話していたので、少し警戒していた。
そしてその瞬間を待っていたかのように正面の扉が開かれた。
アサギ「相変わらず危機察知能力が高いわね、千鳥」
寝ているはずの彼を見つめてから、ニヤリと笑って正面に立つ相手と相対した。