変わった世界の直後のお話(妄想)。
エヴァロスでいろんなシンエヴァ小説を読んでたら自分でも出力したくなったので初めて投稿してみました。
自分なりのエヴァアフターなので、いろんな人のエヴァアフターが増えることを期待しています。
予定より早めに駅に着いた為ベンチで一息ついていたら眠ってしまっていたみたいだ。
【僕】は碇シンジ、14歳……かな。
【俺】は碇シンジ、28歳。国連主導の災害復興機関『
どちらも嘘じゃない。
【僕】はついさっき南極のマイナス宇宙で、アディショナルインパクトによってあの世界をエヴァが存在しない世界に作り替えた。
【俺】は一昨日まで南極で、セカンドインパクトによって露出した旧文明の遺構の調査をしていた。
その結果が
(こういうのも前世の記憶って言うのかな?)
浮上する意識の中でそんな事を考えていると後ろに誰かの気配。
そのまま目を塞がれ、馴染みのある声が耳元で囁く。
「だーれだ?♪」
「……メガネをかけて、胸の大きい、良い女」
少し苦笑しながらそう返す。
「せいかーい♪」
そう言いながら回り込んでくる
「変わらないねーキミは♪」
「君も、前と変わらず可愛いよ」
普段のお返しも込めてそう揶揄う。まぁ本音でもあるが。
「お、言うようになったにゃー。……ふーん、以前とはちょっと違う、大人の香りってやつかにゃー?」
【僕】の首元に顔を寄せ匂いを嗅ぐマリ。そして……
カシャン
乾いた音を立てて外れたDSSチョーカーを指先で弄んだ後、ぞんざいにコートのポケットに放り込んだ彼女は……
「行こう! 碇シンジくん!」
そう言って手を差し出した。
≪僕は、旧世界に
≪俺は、新世界に
「ああ、行こう!」
【俺】はそう言いながら彼女の手を握りしめる。
彼女は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに普段と同じ……いや、普段よりも輝いた笑顔で手を握り返した。
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体の奥から湧いてくる衝動のままに階段を駆け登り、改札を抜け、駅前のロータリーを走り抜ける。
「はぁはぁ……、あっはっは! バス乗り場過ぎちゃったけどどうすんの!」
「ふぅ……、いいさ! 大した距離じゃないし式までまだ時間もある。歩いて行こうよ」
手をつないだまま駅前の通りまで駆けてきた俺たちは話す。
そう、式だ。結婚式。
俺の上司であり、ヴィレで現地調査のまとめ役をしている赤木リツコさんが結婚する事になりこうして式場に向かっている。
「それで、シンジ君は今何やってるんだっけ?」
「南極で発見された旧文明の遺跡によるセカンドインパクト、その災害の調査と復興作業。……
「ほほーう」
エヴァの存在しない、誰もが自分の居場所を持ち幸せになれる世界。世界を改変する時、俺はそう願った。
だけど時間の巻き戻しや世界のやり直しはしなかった。
それは旧世界を精一杯生きてきた人たちの意志を蔑ろにする行為だと思ったし……何より自分の罪をなかった事にするように思えたからだ。
だから、この世界にミサトさんは居ない。正確にはこの世界のセカンドインパクトで亡くなっている。
コア化しインフィニティやLCLになってしまった人は改変の直前、ガフの扉から魂が解放された時に還ってきた。
だけどそれまでに肉体的に死んだ人は還ってこないのだ。
ミサトさん、加持さん、ヴンダーのクルーの人たち、ともに使途と戦ったネルフの人たち……。
彼らはセカンドインパクトで、またはそれに伴う災害と混乱で死亡。
(悲しい、そして寂しいけれど……)
それが世界の辻褄合わせだ。
また、エヴァが無くなったことで
これも世界の辻褄合わせ。
エヴァが無ければネルフが存在すること無いし、そこでネルフスタッフと出会う事も無い。
エヴァパイロットたちと出会う事も、第三新東京市の中学校に転校することも無い。
ではなぜ俺はリツコさんの結婚式場へ向かっているのか?
人間関係は失われた。
だけど【縁】は残っていたのかもしれない。
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『あなたが碇シンジ君? 私は赤木リツコです。このヴィレでセカンドインパクトの調査チームをまとめているわ』
前世の記憶を持つシンジがセカンドインパクトの調査や災害復興に関わろうとするのは至極当然の事だった。
熱意を持って勉学に励み復興ボランティアに携わりついにヴィレに配属された時、彼を待っていたのは旧ネルフのスタッフ、そしてヴンダーのクルーたちだった。
『やぁ碇、俺は日向マコト、これから一緒に頑張っていこう』
『青葉シゲルだ。よろしくな、碇』
『あたしは伊吹マヤです。よろしくね、碇君』
『ヘリや艦船、重機の整備・操作を務める高雄や長良は後日顔合わせしましょう』
彼女たちはシンジとはこれが初対面だ。
旧世界と変わらない彼女たちと出会ったシンジは涙を堪えるのが精いっぱいで、早速みんなを心配させてしまう事になった。
数年間みんなと仕事をこなしていたある日、リツコから爆弾発言が飛び出した。
『私、結婚するから。今年の3月8日に式を挙げるので来て頂戴』
普段、調査と研究が優先で結婚なんてする暇が無いと言っていた彼女の結婚は寝耳に水だった。
その時南極の調査基地に詰めていたシンジは慌てて帰還の手配をし、二日前に日本に帰ってきたばかりだった。
普段帰らない自宅の整理、スーツやご祝儀の準備などで奔走し、現在に至る。
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「いやー、うちの教授の再婚相手がリッちゃんとは世界は狭いねぇ。……これも縁ってやつかな?」
「そう……だね、きっとそうだ」
リツコさんの結婚相手は京都大学でセカンドインパクトの研究をしている教授で、マリはその助教をしているそうだ。
マリに久しぶりの帰国を連絡した際、リツコさんの結婚の話をしたらまさか同じ結婚式に出席とは、お互いに驚いたものだ。
「…シンジ君、すぐ分かることだから教えといてあげる。セカンドインパクトで親を失った子供の後見人制度があるのは知ってるよね?」
「うん。それが?」
「うちの教授が担当してる被後見人、加持リョウジ君って言うんだ。今年で14歳だってさ」
思わず足が止まる。
涙腺が緩む。
涙を流さないように空を見上げる。
(ミサトさん、加持さん…)
失われた命に思いを馳せる。
「泣かないのかにゃ?」
マリがからかい半分、もう半分は心配だろうか、微妙な表情でこっちを見ている。
「…泣いて救えるのは自分だけだからね」
そう呟き、再び歩き出そうとすると、
「みんな自分の居場所を見つけて自分の意志で生きてるよ。悲しみや寂しさを乗り越えて…いや、寄り添いながらね。だから…」
そう言いながらマリは優しく微笑む。
「シンジ君も自分を救ってあげてもいいんじゃない?」
涙が、零れた。
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「そろそろ落ち着いたかにゃー?」
「…うん」
新世界では泣いたことが無かったため、泣くところをを女性に見られるのは気恥ずかしいところもあるが、今更か。
「やっぱりワンコ君はアタシが付いてないとダメだにゃー♪」
「はは…、そうだね」
マリには旧世界から救われっぱなしだ。
これからもきっとたくさん救われるんだろう。
その幸せをこの世界に少しでも返していきたい。
マリと一緒に。
「さーて!そろそろ式の時間も近いしまた走りますか!」
「うん!」
彼女は
「行こう!
パートナーだから。
歩き出した世界には、青い空と海が広がっている。
シンエヴァのアフターは観た人の数だけあると思いますが、今後もいろんな人のアフターが見たいので投稿が少しでも盛り上がると良いなと思い、自分なりのアフターを文章にしてみました。
初めての投稿なので拙く短い文章ですが、頑張って書きました。
みんなも自分のイマジナリーエヴァアフターを書こう!
特にシンジマリ推しというわけではありませんが、作中で書いたように過去の自分を知る唯一無二の存在過ぎて恋人というより腐れ縁・相棒感あるなと。
実際恋人になってるかこれからなるかは自分でも妄想できてません。
以下、作中妄想 ()内は映画の描写からの解釈
・時間の巻き戻しが無いので、改変までの死亡者はそのまま死亡
・セカンドインパクトはあったが地軸のズレはなかったため、四季はある(駅にいた人間が薄着ではない)
・アスカ、レイ、カヲル、トウジ、ケンスケなど、ネルフスタッフ以外はまだ関わり無し。(ホームの反対側。シンジの反応も無し)
・誰かの結婚式かセレモニーか(シンジスーツ、マリそれなりにおめかし。年齢的に就活では無いが院卒だったり研究職なら有るかも?)
・マリが髪を解いてるのはユイが結んだ髪を解く=マリもエヴァの呪縛から解放された