その約束に、花束を   作:ヨコヨコ

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自分が生活していくうえで、何よりも必要なのは自分が生活しやすい環境を作ることだ。

但し、そこに自分は必要ない。あくまでも、自分は黒子なのだから。


1-新学期の桜と共に

キーンコーンカーンコーン・・・

 

「はぁー・・・始業式だけっていうのもなんか物足りない感じするな。いやいや、これからのことを考えれば、今の時間に帰れるなんて全くと言っていいほどないんだから有意義に活動しなくちゃ。」

 

私立潮騒高等学校。新興住宅街開発が進む潮鳴市を望む丘にある高校。今日は吉村竜幸・・・自分の2年目の春が始まった日だ。

 

「どうせ帰ってもゲームして寝るだけだし、駅前で何か借りてから帰ろうかな。というか、クラスメートみんないないんだけど。誰も誘ってくれなかった・・・」

 

まずい、このままじゃ一年ぼっちになってしまう!という危機感を背負いつつも、誰もいない教室ではもはやむなしさしか残らないこともありとりあえず学校から出ることに。

 

学校が丘の上にあることから、バイクでの通学も許可されているこの学校。ちょっと下まで下がれば喫茶店やファミレスがあり、潮鳴駅から徒歩でも15分程度とそれなりに立地が悪いわけではないこの学校。ちらほら同じ制服の高校生を見かける。みる限り同学年が多いようだ。

 

「・・・寂しくないし。」

 

頬を伝ってるのはただの汗だし。寂しくなんかないし!!??そんなことを考えながら大通りに出ると、おばあさんがうろうろ。みれば大きな荷物と歩道橋。周りに横断歩道はなし。

確かに、おばあさんにはちと厳しいかな。

 

「おばあちゃん、よかったら向こうまで持ちましょうか?」

 

「あらあら、別にいいのよ?重いし、学生さんには・・・」

 

「大丈夫ですよ・・・っと。」うわ、確かに重い。この人どこからこんなの運んでたんだろ。とりあえず一段ずつ歩道橋を上がっていく。足を踏み外したらおしまいだ。ゆっくり、ゆっくり・・・っと!!

 

危ない、何とか落とさずに済んだ。まさか滑るとは・・・とりあえずおばあさんを見送り、家路へと急ぐ。っていうか、どこか切ったかな。血がついてる。まずいな、ばんそうこうなんて持ってないし。家まで我慢するか。そんな時だった。

 

「はい、ばんそうこう。」

 

「・・・へ?」

 

急に横から出てくる女子が持ってそうなばんそうこう。一体だれかと顔を上げると、両方の髪を横に結んだどこか見覚えのある・・・見覚え・・・

 

「篠原小唄だよ?吉村竜幸くん。今日同じクラスで自己紹介したの忘れちゃった?」

 

篠原小唄・・・小唄・・・

 

「あ、ああっ!学年一母性溢れるって評判の!?写真は一枚3000円から取引されるレベルの!!」

 

「待って!?色々それは聞きたいことがあるんだけど!?写真って何!?なんのことなの!?」それは俺に言われても困るのだ。あ、何枚か買ってます。

 

とりあえず一息ついてせっかくもらったばんそうこうをつけてみる。うん、これいいやつだ。何かお返ししないと。って思ってたらニヤニヤしながら篠原さんがこっちを見ていた。

 

「・・・な、なに?何かついてる?」

 

「ううん。ただえらいなって。おばあさん、知り合いって感じじゃなかったから吉村くんから声をかけてあげたんだろうなって思って。」

 

「なるほど、大正解すぎる。これが一日100枚売り上げた母性か。」

上級生からもファンがいるという彼女。こんなところ見られたらきっと明日からまともに学校の中歩けないんじゃないか。なんてことを考えていると自分が住むアパートの前まで来てしまっていた。

 

「あ、俺ここなんだ。じゃあ篠原さん、これありがと。」

 

「うん。また明日ね!」

 

やわらかな笑顔を見せながら手を振り歩く彼女の後姿。ツインテールがゆれてマジかわいい。

 

「・・・まっ、それ以上にはなれないか。」

 

なんてことを呟きながら、一人暮らしの部屋に入っていった。

 

・・・あ、飯買うの忘れた。

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