5月の後半。今学期始まって最初の難関が半月後に迫っていた。
カリカリ…いつもより静かな教室。
「~であることから…はい、ここでるぞー」
そう。定期テストだ。今回は中間とはいえあなどれない。古典的ではあるが、この学校は上位100名の結果が張り出される。進学校に通うが故の性なのだが、ここに載るか載らないかで次のテストまでの期間でかい顔をすることができるのだ。
俺?ああ。載ったり載らなかったりかな。だって数学苦手だし。
「というわけで、今日の授業範囲は必ず出すからなー。各自ちゃんと復習するように!!」
退屈すぎる授業がやっと終わり、念願の昼休み。各自が学食や弁当を広げる。
「よっし、学食行こうぜー」
「ほいほい、今日の定食なんだっけか。」
「A定食がミックスフライ、Bが限定刺身定食だってさ。個人的に刺身食いたいなー。」
友人たちと学食の定食の話題で盛り上がる。去年からの付き合いだからか、この三人で何かをすることが多いのは学生としては当たり前なのだろうか。
「それじゃ食券出してくるから席取っておいてくれー。」
「ほいほいー。」
友人たちに座席を確保してもらい自分は食券を抑える。とにかく食券さえ・・・っ!!
「ぐえ、足!ふm…っ!!」
誰かに思い切り足踏まれた。畜生!!俺の足を踏むやつぁ・・・!
「ごめんなさっ、あ、パン・・」
なんか人込みの中から聞き覚えのある声がした。ちょっと探してみれば斜め後ろに篠原さんがもみくちゃになってた。うわ、あの小さな体でなんでこんな戦場に・・・とりあえずあのままだとケガするかもしれない。
そう立てば篠原さんの手を引き、自分の方へ抱き寄せるように体を引き付けた。
「きゃ・・・って吉村くん!?え、な、なにしてるの!?」
「見知った顔がつぶされそうになってるのを見過ごせるわけないでしょうに。はい、こっち少しすいてるよ。」
「あ、ありがと・・・」
さて、食券出してっと。篠原さんも無事に買えたみたいだ。よかった・・・というか今日はこっちなのか。
「吉村君ありがとう。野球部なのに危ないことお願いしちゃってごめんね?」
「別にいいよ。どうせ休部状態なんだし関係ないって。じゃね。」
篠原さんに別れを告げて、友人たちのもとへと戻る。さて、今日も学食は旨そうだ。夕食も出してくれんかな。とふと思う自分で会った。だって夕飯作るの面倒だし。
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さて、ときは移ろい篠原家。あの日からも夕飯をごちそうになることが増えた。というか一週間のうちほぼほぼお世話になってる気がする。食費入れた方がいいんじゃないか。そう思わずはいられない。
そう思って今月の親の仕送りを篠原さんに持ってきたのだが・・・
「えっ?別にいいのに。ほら、うち居酒屋さんでしょ?余った食材とか使ってるから大丈夫だよ?」
と断られてしまった。食事は文句なしに美味しいし、個人的に部活が再開してもずっと食べにきたいぐらいなんだけど、今のままじゃ悪い気しかしないし・・・
「・・・じゃあ500円。毎食500円払う。これは譲れないかな。」
「うーん・・・本当にいいのに・・・」
困ったような顔をする篠原さん。タダより高いものはない。子供の頃よく父親から教えられてきた言葉だ。篠原さんだって、幼い兄弟たちの面倒を見ながら自分の食事も作ってくれている。それに無料でだなんて納得することができなかった。
「それに、これから部活がまた再開したらそのたびにもしかしたら来るかもしれない。そしたら自分の料理の練習にもなるでしょ?俺なんかでよかったら篠原さんの料理の味見係付き合うからさ。」
「・・・もう、きみってば優しいんだから。」
そう言って俺を見つめ返す彼女の笑みが、とても安心するような笑顔。
「・・・姉ちゃんの旦那さん、吉村の兄ちゃんならいいのに。」
「「!!??」」
おっと、ここで予想外なところからのクリティカル。この世代は思ったことをすぐに口にするようだ。お互い顔を見合わせて頬を染める。
「じゃ、じゃあ俺そろそろ帰るね!!」
「あ、じゃあ外まで送ってくるから!」
お互い顔を合わせないように玄関先まで出る。外はすっかり夜になってしまっていて、繁華街から少し離れたこの家のあたりは静か・・・とはいえ少々の車通りはあるがそれしか聞こえない。
「じゃあ、また明日。」
「あ、うん!さっきの・・・わ、忘れて!ってきゃっ!」「あぶなっ?!」
急に振り向いたからかバランスを崩して転びそうになるのを抱え込む・・・となれば必然的に彼女を抱きしめる形になるわけで。
「・・・っ!」彼女の、篠原さんの髪の匂いが鼻腔をくすぐり、このままでいたいなんて思わせてしまう時間が流れる。
「・・・吉村くん。さっきの話だけど、恥ずかしいからこのままいうね?・・・私、恋愛とかよくわからないけど、貴方とならいいかなって。・・・返事、いつでもいいから!!」
・・・今俺は何を言われたのか。え、告白?篠原さんが、俺に?当の本人家に入っちゃったし。
満月が浮かぶこの日。俺は人生初の告白をこんな形で受けてしまったのだった。
「・・・帰ってテスト勉強しよ。」