「「「篠原さんに告白されたぁっ!?」」」
「耳元で叫ぶんじゃねぇ!!!」
例の告白の翌日。着慣れた制服ではなく野球専用グラウンドでランニングをしていた俺は、
この友人たちに耳元で叫ばれていた。鼓膜破けるわ。
「どうして篠原さんがこんな変態に・・・」
「どんな催眠術を使った?」
「貴様ら。」
こいつらなんて言い草だ。そもそも変態は男子高校生のステータスだろうに。
「というか、最近まで接点なんてなかったのになんで・・・」
「くっそうらやましい・・・同級生のママを独り占めとか前世で何したんだ。世界でも救ったか?」
やばい。こいつらの目が座ってきてる。不用意な話をするのはやめよう。俺が痛い目を見そうだ。
というか、こいつら去年のバレンタインくっそチョコもらってたやつらじゃないか。俺一つももらってないんだぞ。引く手あまたじゃないかふざけんな。
「というかまさか、今日の弁当も・・・」
「あ、篠原さんから。料理の勉強も兼ねて弁当作ってもらってるんだ。やめろ、お前らそんな目で俺をみt・・・っ!!!!」
なんということでしょう。ついさっきまで普通に話してた友人たちがあっという間にバーサーカーになりました。こいつらみんなそこまで足が速くないはずなのに今回に限ってはマジで速い。え、今なら盗塁王狙えるよ。スーパーカートリオ(※横浜大洋ホエールズ時代に活躍した高木豊選手、屋敷要選手、加藤博一選手の名称。1985年には3選手合計で148個の盗塁を奪った。)の再来だよ!!
結局その日は一日リアル鬼ごっこなみのランニングで終わってしまった。明日休みでよかった。筋肉痛確定だなこりゃ。そんなことを考えながら篠原さんの家・・・兼居酒屋へ足を運ぶ。学校出る前に彼女に連絡はしておいたし大丈夫かな。
「こんばんわー。」
「いらっしゃい!おう小唄の旦那候補じゃねぇか!!そんなところで突っ立ってないでこっち来な!!」
豪快に笑いかけてくるこの男性は篠原さんのお父さんだ。筋肉の付き方が異常かと思えば、どうも元野球部だったらしい。というかいつの間に候補になってるんだ。まだ告白の返事もしてないんだけど。
「あ、たっくん!」
「たっくん!!??」突然の爆弾発言。学校でこれを言われたら間違いなく俺は全男子生徒からの標的にされてしまう。
「あ、あはは。篠原さん、学校じゃそれやめてね。俺学校いけなくなっちゃう。」
きょとんとしてかわいいなぁ!!!けど俺の保身の方が大事なんだよなぁ。
「それより今日ははいっ!私特性スタミナ丼だよ!ホルモンだめだって聞いたからバラ肉使ってみたの!」
そう言いながら持ってきたお盆には部活の最低食事量である山もりのご飯の上に大量のスタミナ焼き。それとサラダとみそ汁。デザートにプリンまでついた豪華品だった。自分で言ったとはいえ、500円って安すぎる気がするぞ・・・?でも旨い!!!
「えへへ・・・おいしい?」
「すごくおいしい。篠原さんいつもありがと。」
・・・うん、練習後にカロリー計算もちゃんとしてる食事が出てくることに本当に感謝しかない。というか、料理のありがたさがやばい。
でもね?篠原さん。僕は見ちゃったんだ。お父さん、きっと他の野球部員にもご飯作ってるんだよね。
「・・・やぁ吉村。ちょっと一緒に飯食わないか?」
ギギギと音が鳴る肩。後ろを振り向けばにこやかな笑顔の同級生たち。けどなぜかな。腕には筋肉が盛り上がってるのがわかるし、もっと言えば目が笑ってないんだ。まずいなぁ。明後日から日の目が見れるかなぁ・・・
その日。正面を見ればああなんと癒しか。自分の事をすいてくれている同級生の笑顔。その手前を見れば同級生たちのなんとも言えない顔を見る羽目になってしまったのだった。