最強ノ一振り   作:AG_argentum

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2カ月経つ前になんとかあげれた。
遅筆ですが許してください。

あとこれは嬉しい報告なのですがこの小説が日間ランキングに掲載されました。すげー嬉しい。

まだまだですがこれからもよろしくお願いします


ー追記ー

いくつかの点を変更しました。

minotauros様、誤字脱字報告ありがとうございます。


前触れ

 俺は夕陽が沈みかかっている河川敷で足を止めた。

 季節はもう秋が本格的な10月下旬。夕陽が綺麗だ、としみじみ思っていた最中に迅さんから譲ってもらったパーカーのポケットに突っ込んでいた、今では周りから物珍しく見られるガラケーが規則的に震えた事に気が付く。

手に取って液晶画面を見てみるとやれやれ、と思いながら左上の応答ボタンを押し、俺は耳元に当てた。

 

「お疲れさまです。何ですか、小南先輩?」

 

 {ちょっととりまる、あんたまだ来ないの!}

 

「あと少しで玉狛(そっち)に着きますよ」

 

 止めていた足を再度動かし始める。

 事実、玉狛支部は目に入っていた。あと三分もしないうちに着くことは可能だろう。

 

 {そっ、ならさっさと帰って来なさいよ。今日焼肉だから}

 

「焼肉っすか」

 

 平静なトーンで受け答えするが心の中で小さくガッツポーズを決める。

 

「でもどうして今日なんすか。なんかあったすかね」

 

 焼肉をする様な祝い事が最近あったかと聞かれれば無いと言わざるを得ない。一応確か11月の始めに林藤支部長の誕生日があった気がするがそれをやるには早すぎる気もするし、そもそも今日だけでもこうして小南先輩から電話やメールがバイトが終わってから鳴らされまくりだった。 

 

 {ええっ! それはその……。良いことがあったのよ! 取り敢えず}

 

「……」

 

 怪しい。聞くからに怪しい。上擦った声と電話越しでも想像できてしまう小南先輩の慌てっぷりはその()()()()が何なのか興味を持つのには十分だっただろう。

 

「小南先輩、知ってますか。良いことがあった時に誰かに電話したらその内容を相手に伝えないと呪われるって噂」

 

 {ウソ? そんなのあたし初耳よ}

 

 聞くからに疑っている声色だ。ならばもう一押し。

 

「……。だといいんすけど」

 

 一旦間を置き、ウソの噂にリアリティーを持たせる。唐突な話題転換。明らかにウソだとわかる噂ではあるがそれに騙されるのがこの先輩だ。

 

 {だって言えないんだもん! その呪いって具体的に何⁉︎ねえ、とりまる? とりまるってばぁ!}

 

 騙せた。完全に小南先輩は狼狽した声をあげている。

 しかし言えない、ときたか。普段の先輩ならここら辺で音を上げる様に本当(ほんと)の事を言うのだが今日はやけに口が硬い。これ以上言ってもどうも口を割りそうには無い。観念してネタバラシをする。

 

 {とりまる⁉︎あんた聞こえてんでしょ! 返事しなさいよ! ねえとりま「すいません小南先輩」ふぇ?}

 

「ウソです。さっきの噂」

 

 {……。はぁ⁉︎}

 

「全部ウソです」

 

 {…………}

 

「…………」

 

 俺と小南先輩との間で静寂が続く。

 

 {だ……}

 

 だ? 

 

 {だましたなぁぁああああ!!}

 

 咄嗟に俺は手に持っていた電話を耳元から遠ざけた。それでも小南先輩の絶叫は耳に入ってくる。

 今日も相変わらずこの人の反応は面白い。

 

「すいません小南先輩。ウソついたことは謝ります」

 

 {ふぅー、ふぅー。まあ、いいわ。今日は機嫌がいいから許してあげる}

 

「良いことがあったからっすか?」

 

 {そうよ。とにかくさっさと帰って来なさい。来たらすぐにわかるから}

 

「了解です。では」

 

 右上の通話終了のボタンを押し込み、通話画面が待ち受け画面に変化する。そこには随分と前から変えられていない写真があった。

 

『京介、一位になった記念だ! 最後に写真撮っとくぞ!』

 

 なんて言われて、若干強引に撮られた写真。俺に出水先輩。国近先輩に太刀川さん。そして来栖隊長。

 狭い画面に全員が映り込むように身を寄せながらも、肩にあるエンブレムの上部にある“A”と“01”を強調する様に撮られたその写真はあの人が一年半前、病院で眠るようになってからずっと変えられないでいる。

 

「今度、見舞いに行くか」

 

 写真をじっくり見たせいか。ふと、そんな独り言を呟く。俺が最後に見舞いに行ったのは確か夏休み中。今は太刀川隊が遠征でいないから誰も見舞いに行けていないだろう。医者ですら打つ手が無いと言っている状況で俺が見舞いに行った所で容態が良くなるかはわからないが何かの足しにはなるはずだ。

 取り敢えず、林藤支部長に手続きをしてもらう必要がある。今日焼肉を食べ終わったら相談する事に決めた。

 

 そんな事を考えている内に目的地に到着する。どうやらまだ夕食は始めていないらしい。焼肉をするときは匂いが付かないようにと屋上を使う筈だが立ち昇るはずの煙も肉の匂いもしない。

 

 俺を待ってくれているのか、と申し訳ない気持ちになり逸るように木製のドアを引き開ける。

 

「お疲れ様っす」

 

 そして俺は一階にいる人に聞こえるよう少しばかり張った声で自らの存在を主張した。

 

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