最後の方に少しだけのワートリ 要素があります
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昏い、不思議な世界で目が覚めた。
この世界は例えるならば宇宙のような世界だった。
ただ、この世界の景色はまさに“闇”そのものだ。光は一切感じない。先ほどこの世界を宇宙と例えたがここが唯一の相違点だ。
宇宙なら太陽を始め、多くの星々が命を燃やしながら光を放っている。
なのにこの世界ときたら一切光は感じ取れない。
世界に、地球に物理的な光が届かない場所は無いといわれているのに。
ホントかどうか知らないが少なくともここはどうも光が届いてない世界だ。
だから自分はこの世界を“不思議な世界”と名付けることにした。
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“不思議な世界”での自分は──先ほどのこの世界は宇宙みたいなものという表現に乗っとれば──スペースデブリのようなものだった。
地に足がついているような感覚はなく浮いているような感覚の方が強い。そもそも“不思議な世界”に地面がある気配は全くない。
あと一つ。世界に変化があった。
音が聞こえてきた、ものすごい小さい。ようやっと聞こえてくるような、そんな音が。
少しでも意識が移ろえば聞こえなくなるような音でその上やけに規則的なリズムで聞こえてくる。
この“不思議な世界”では今、自分とそのか細い音だけが存在していた。
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ただ漫然と時間が過ぎていった。多分、ではあるが。
この世界で存在を主張する、微かに聞こえる音。何度か聞き漏らしたものの取り敢えずは100度ほど聞き届けててそれをもって時間が経過した、と自分で決定付けた。
(そういえばなぜ自分はこんな世界に居るのだろう)
一瞬、思考がそれにとらわれると、先ほどまで聞こえていた音は耳に届かなくなった。
今更ながらようやっと気づいた。この世界は気持ち悪い。理屈においても、本能的にも。とにかく気持ち悪かった。
理屈で言えばこの宇宙みたいな世界にいるのはそもそもおかしい事だし。
本能的なことでは気持ち悪いの一言で済むのだがあえて理屈をそこにつけるならこの昏さが怖い。そこからくる気持ち悪さだと思う。
それに、だ。
どうやらこんなことにも今まで気がついていなかったようだ。気がおかしくなりそうになる。はっきり言って今までの自分はどうしてこの“不思議な世界”で平然としていたのか理解できないぐらいに。
この昏闇の世界と同化していて身体はまず見えない。そして
だがそこまでだ。それ以上は感じれない。
右手で左腕を握ろうと動かす。動いている。確かに自分は右手を動かしている。だが、握れない。触れれない。
右手が左腕のある場所に至ってもまるで自分は幽霊なのか、手と腕は干渉しあわないように通り過ぎている。
もう一度、今度は右手で胸に手を当てようと動かしてみる。
しかし、先程と変わらないように右腕は痛みのないまま胸部を透過していた。
要するに、手応えがない。感触というのを実感できなかった。
体は闇に飲まれてて、見えもしないし、触れれもしない。これは存在すると考えていいのだろうか。
(なんだこの世界は。どういう理屈だ。何故ここに居る。いつからここに居る。どうやってここに来た。
今更ながらに浮かんだ疑問の答えを見つけようと試みる。が、どれだけ時間を使おうとうまく考えがまとめられない。何かを思い出そうとしてももやがかかったみたいで浮かばない。ここで覚めた時から前が思い出せない。
疑問に答えもそこに至るための過程も見つけれないままどんどん時間だけが過ぎていく。
そして
(飽きた)
答えの手掛かりすらみつからない問いに諦めを感じ、仕方ないからさっきと同じように...
(⁇。 ...。 !?)
自分がなぜここにいるのを先程まで考えていた。それは覚えている。
だがその前。
思い出せない。何をしていたのか思い出せない。
何をしていた。何かはしていた。だがその内容が思い出せない。
この世界には何があった。何かはあった。自分の体のような不確かなものではない。確かに存在を主張していたものがあったはずだ。
思い出そうとする。思い出すことを試みる。しかし。
思考はどんどんと鈍くなる。沼に沈んでいくように思考は鈍化する。
(だめだ。眠ろう)
鈍くなっていく思考の活性化には成功せず、気分に身を任せる。
目を瞑るという実感こそやはり無いがこのまま意識を手放すようにしていけばいずれ眠りに就き、やがて夢をみれるだろう。
(ああ、なるほど。夢か)
眠りに就こうとする前にしていたことは
そして意識を完全に手放そうとした直前で
「今寝ちゃ二度と起きれませんよ」
世界に
(そうだ、音だ。音を聞いていたんだ)
そして確かにそれを感じ取った。
世界に奔った僅かな
自分は眠ろうとする前、どうしてこの世界に自分はいるのか、ここはどこかと悩み、さらにその前は僅かな音に耳を澄ませ聞いていた、ということを。
微睡みかけていた意識は冷や水を浴びせられたみたいにはっきりと目覚める。
そしてはっきりとした意識は確かに、この不思議な世界の変化を捉えた。
(光だ)
真っ昏な世界に、まるで雨雲の間から陽の光が僅かに射すように一点だけ光輝いていた。
そして自分の不確かな存在の手が、体が、意識が
そこに理屈はない。ただ光に近づく事こそがこの怖い、昏い世界から抜け出す
そう、先程のが教えてくれたような気がして、そう感じ取って。
必死に、必死にそこへ近づく。 近づくにつれに光は大きくなっていく。
近づいている、確実に。 近づくにつれ光は輝きを増していく。
それと同時にこの世界に常に存在した音もそのボリュームを大きくしていく。
そして光が眩しいと思えるほどの距離に近づいてようやっと...
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「ああ、やっと起きてくれた」
目蓋を開けた、という
視界はかなり霞んでいる。見えたのは白一色だ。
匂ったのは鼻を突くような鋭さを持った薬品のような匂い。
聞こえてきたのは、呼吸にあわせてなる電子音の規則的な音で。
肌に触れたのはしっとりとした手触りの布の感触。
それでなんとなくだが、あの世界から脱出したんだ、と思い込んだ。
「おはようです、響さん」
そして
声がした方向に首を捻る。人物は窓か扉かを背にする形で隣に座っているようで人物の後ろには白以外の色が見えてその方向からは肌をかすかに撫でる風が吹いているようだった。
視界は未だに霞んでいる。だがその人物の容姿を少しばかり捉えることはできた。浅葱色よりも濃い服を着ており、レンズが一風変わった色合いの・・・サングラスだろうか、とにかくメガネの様なものが首元にある。髪型はサイドを残しつつも、前髪を後ろに持っていっている様に見えた。
未だに顔の細部はぼやけて見えない。
「いや〜、大変だったんですよ。響さんが寝込んじゃってから太刀川さんの様子とか、ホント酷かったんですし、ザキもかなり泣いて。あ、今お医者さん呼びますね」
声からして若いほうか。いや、もしかすれば自分よりも年上の人かもしれない。気さくな声でこちらに語り続けながらゴソゴソと自分の周りで動き回る。
彼の顔はまだ少しだけ見えづらい。
「あ、ああ、あ」
声を出そうとしてみたが何故だか喉と舌が痛んだ。ヒリヒリするし、もつれそうだ。が、声を出すのにはギリギリ支障はなさそうだ。
人物は自分が呻きをあげると先程とは打って変わって静かに、耳を傾けてくれて。この空間は自分が呼吸する度になる電子音だけが響く静寂から一歩だけはみ出た空間に生まれ変わった。
だから気兼ねなく、ゆっくりと
「あな...た..だれ」
ようやくはっきりとした視界には青年の驚愕に染まった相貌を確かに映していた。
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── 昏い、昏い世界から。鮮やかな極彩色の世界へ。──