ただ彼は、知りたかった。
自らの父が生まれ育ったという故郷。
多くの
彼はこっそりと、ここ一帯で一番高いと言えるようなビルの屋上にいた。
屋上に人が訪れることを一切考慮していないそのビルには安全のための金網なんてものは無く、高所であるが故に吹く強風は彼を容赦無く襲う。
しかしそんなものに物怖じる事なく彼は屋上の端へと歩いて行く。
風が背を押してここから落ちてしまった時の恐怖なども無く、いたって平常に目に映る世界を見渡した。
「ふむ、
先に広がる光景に彼は感動を覚えた。
これまで渡り歩いて来た世界の中で最も煌びやかな世界かもしれない。
「それはこの世界がトリオンに依存しないエネルギー系統を有しているからだろう。ユーゴの遺した記録によれば”電気”と呼ばれるエネルギーでほぼ全てを賄っているらしい」
「ほほぅ、でんき」
隣に浮いている相棒から教えられた情報に彼はいまいちピンとこなかったが、それでもこの世界が豊かなのにはその”でんき”のお陰なのだろう。そう彼は解釈した。
「それで、あれが」
相棒にも分かるようにある一箇所に指を差す。
明かりに溢れるこの街で、彼の指差したその辺りは。違う世界のように黒ずんでいた。
彼が指差したのは、その違う世界にある。夜の世界に紛れそうな程の黒い巨大な建築物だった。
「やっぱ見えないな」
彼は残念だ、と肩を落とす。
彼がここを訪れた目的にはその建築物を見ることも含まれていた。
しかしながら、その全貌は朧げにしか見えず。はっきりと見ることは叶わなかった。
想定内だったといえば想定内だが、それでも見れなかったのは残念だった。
「朝になれば日も出る。そうなればよく見えるはずだ。しかしユーマ。明日には”学校”を控えている。今日は家に戻って身支度を整えておくべきだ」
「そうだな。今日のところは帰って朝に基地は見に行こう」
「それとだユーマ」
「分かってる。トリガーの扱いは慎重に、だろ」
相棒からの提案と忠告を聞き入れると、彼は僅かに足に力を込めた。
踏み出すように彼はビルから跳躍する。
彼の跳躍した先はさっきまでいたビルより僅かに背の低いビルだった。
屋上へと見事に着地し、間を置くこと無く更に別のビルへと跳躍する。
彼はこれを繰り返して、最終的には人気のない裏路地に着地した。
そして服に付いた汚れを払いながら相棒に問いかける。
「でもレプリカ。本当に今も潜伏していると思うか」
「それはわからない。確かに奴は長期的な潜伏は好まない、とこれまでの情報から推測できるが念には念を入れるべきだ」
「それもそっか」
彼は相棒の言葉を肯定し、多くの光によって照らされる表通りへと歩き出す。
「できれば戦いたくないもんな。
白髪を揺らしながら彼、空閑遊真は呟く。
そして空閑は、最近住み始めた住処へと帰り始めた。