答えの出ない自問自答を何度繰り返したのだろう。
時計の針が進む度冷えていく部屋で、眠れない夜を過ごす。
瞼を閉じて寝ようとしても、その裏に浮かぶ光景が決して眠りに就くことを許さなかった。
無理やりにこじ開けられる。
そして、光景を思い浮かべる度に、震える手を見ざるを得なかった。
微かに震える手。
それと同時に襲ってくる、脳を刺すような痛み。
悩ましい種なんてものではない。
眠りには自発的につけず、体と精神が限界を迎えて漸く眠れる始末。
日中だって上の空になることも多くなった。
重くなって閉じられた瞼であってもフラッシュバックした光景が何度自分を飛び起きさせたことか。
瞼の裏を覗くたび見える悪夢のような光景。それは平穏な町中で。突如として異世界の門は開かれて。恐怖が人を襲う。
震える手と、増していく痛みに耐えながら、浮かぶ光景をより鮮明にしていった。見たくて見たいわけじゃない。
この震える手も、脳に加わる痛みも全くと心地いいものではない。
ただ、この痛みを。どうでもいいものとして処理はできない。
「この痛みも、震えも。きっと──」
きっと、
今の自分が少しでも過去に近づきたいのなら。思い出したいというのなら。
避けては通れないものだ。
そして何より。
「超えなきゃ、いけないんだ。俺が──」
俺が、本当にどうなりたいかを決めるために。
あの日。
街に出たあの日。
夕空を泳ぐトリオン兵が、空爆によって街を襲ったあの日。
ただの、無慈悲に訪れる天災では無い。明確な、人によってもたらされる悪意を本当の意味で理解した。
己の利の為に、他者を平気で踏み躙れる。まるで人を、人ではなく家畜として扱うかのような、極めて不快な悪意。
思わず、吐き気を催した。
悪意を持った人間が、こんなにも残酷なことに。
いままでそれを直視しきれていなかった自分の愚かさに。
本当は、わかっていた。それでも目を逸らしていた。
今の自分には、過去の自分ほど、
百聞であった今までと、一見した過去。
どれだけ想いを積み重ねようとも、感じた現実には敵わない。どちらの理解が勝るかなんて言わなくてもわかる。
それでも、わかった気でいた。
大事な存在を失う悲しみも、辛さも、わかった気でいた。
それでもあの時。本部か玉狛か選択を迫られた時、過去から遠ざかることになったとしても、本心に従って、
でも、
以前と同じように心だけでは立っていられない。もう、迷ってしまった。
俺は、この事実と向き合わなければならない。
折り合いをつけなければならない。
葛藤が、胸を締め付ける。
俺は、見つけれるのだろうか。
手を取り合おうとする心を、揺らがずに目指せる理由を。