最強ノ一振り   作:AG_argentum

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『見せてやる。これが、お前の可能性だ』


枷は解かれた

 

【風間さん!】

 

 通話から伝わる、三上の焦り。

 風間の胸を焦がす焦燥。

 

 住宅街を埋め尽くしていた白煙は薄れていく。

 それでも白煙に映る、自身に相対するシルエット。

 

 風間は臨戦体勢が解けないでいた。

 

「仕留め、損ねたっ!」

 

「よう」

 

 風間の苛立ちを逆撫でするように、平然と声をかけてくる敵。

 ついに白煙が消え去った、瓦解させた住宅街で堂々と立ち姿を晒す来栖と目が合う。

 

 風間隊の攻撃が一瞬の間に行われたように。敵の対処もまた一瞬であった。

 

 だが──。

 

「今のを凌ぐか」

 

 激情が、風間から平常心を奪い、ギリリ、と歯軋りを余儀なくさせる。

 

 ──対処は不可能だったはずだ。

 

 視界及び聴覚を炸裂弾(メテオラ)の爆撃により奪い、白煙を抜けてきた来栖を完璧に待ち構えることで混乱させ、先手を取り切る。

 その上で、背後からの通常弾(アステロイド)と、位置が完全に黙された歌川による奇襲も備えた三位一体。

 防御・回避不能の必殺の一連。

 

 これをもって風間は来栖の討伐が可能であるとし、太刀川すら打倒しえた三身一体の連携攻撃を繰り出した。

 

 しかし帰ってきた結果がこれとは、顔を顰めたくもなる。

 肢体一つを奪うどころか、まさか部隊の一人を失う結果に終わったのだから。

 

 生まれつき鋭い眼光をさらに鋭くし、風間は来栖に視線を送る。

 

【すいません、風間さん】

 

 歌川の声が、通信越しに聞こえてくる。

 

 改めてそれが、認め難くも今この瞬間が現実であると思い知らされる。

 

「どうやってだ?」

 

「…?」

 

 風間はどうしようもないほどの困惑を含ませながら、来栖に問いかける。

 

 どうしようもないほど、理解の及ばない謎。

 

 三位一体の攻撃がなされた際。

 来栖は全身に向け放たれた通常弾(アステロイド)に広げたシールドを。風間・歌川の攻撃には極小までサイズを絞ったシールドで防御で対処した。

 

 そうして一切の代償を払うこと無く凌いだ後、来栖は風間をグラスホッパーで弾き飛ばし、歌川を一瞬で撃破している。

 ものの一瞬。たったの二撃で歌川の防御を崩し、首を刈り取るその速さはまさに電光石火というべきであった。

 

 しかしながら、風間が最も問題視したのは──

 

「どうやって、()()()()()に歌川の攻撃を防げた!?」

 

 ──風間だけを見ていた来栖が。死角から攻めてきた、レーダーに映ってもいなかった歌川の攻撃を完璧に防いだことである。

 

 歌川の攻撃。首への横薙ぎから始まり、次いで腕。もう一度胴体へと流れるように繋がれた一連を寸分のタイミングで狂うこと無くシールドで防ぎきっている。

 

 特筆すべきは初撃について。

 歌川の鋭い一撃に対して来栖はノールックかつ超絶と言えるほどのピンポイントの集中シールドで対処した。

 まるで攻撃してくる場所がわかっていたかのように。

 

 ボーダーのトリガーのひとつである”シールド”。

 その防御性能はまず使用者のトリオン量に依存し、次いでシールドの面積に影響される。

 面積が小さければ小さいほど防御性能は向上し、場合によっては攻撃力の高い攻撃手(アタッカー)用の武器ですら防ぎ切ることが可能である。

 

 故に。歌川のスコーピオンを防ぐためにはある程度小さくしたシールドを使用することは当然のことであるが、小さくするということは防御できる場所を少なくするということと言い換えれる。

 

 来栖はメイントリガーのシールドで、通常弾(アステロイド)を防ぎ、サブトリガーのシールドで風間・歌川の同時攻撃を防いだ。

 更にはサブトリガーのシールドを二箇所に分割展開。加え、スコーピオンに耐えれるほどの、普段では絶対しないような極小も極小の面積での展開だった。

 

 ただでさえ極小の面積でありながら歌川の攻撃に合致するようシールドを偶然展開できるはずがない。

 偶然で防ぎ切れるわけがないのだ。

 

「蒼也。お前の作った部隊。その連携は凄いと思う」

 

 来栖が凪いだ表情で、風間を称賛する。

 

「通信を介せず、アイコンタクトと最小の動作のみで行われてるであろう連携への意思疎通。お前単体でのトップスピードと遜色のない超速のスピード。弱点を的確についてくる攻撃の正確さ」

 

「例え一の剣が挫かれても、続く二の剣、三の剣に活かされ、決して意味の無い攻撃はその連携の中に存在しない。連携の、理想だといってもいい」

 

 一度言葉を切った来栖が、表情はそのままに口にする。

 

「だからこそ。その剣に意味があったことが、俺に活路を見いだす機会をくれた」

 

「おまえ、まさか…………!」

 

 そこまで聞いた風間は来栖の対処できた理由を紐解いた。

 

「オレの攻撃から歌川の攻撃を予測したのか!!?」

 

「…………」

 

 コクリ、と来栖が静かに頷く。

 

 予測による防御。

 

 風間隊の連携は、卓越している。

 その一撃毎に連携を成立させる意図がある。

 

 風間の攻撃が作った敵の隙を、続く歌川が絶対に活かす。

 

 来栖がやったのは、視界にとらえている風間の動作から、来栖自身に生まれる隙を活かすであろう歌川の動作を逆算・把握し、それに則った防御を展開するということ。

 風間の攻撃に対して来栖がどう動くかを想定した上で繰り出されるであろう歌川の攻撃を、風間の攻撃動作から予測する。

 

 それは、人が黒雲に陰る空模様を見て傘を持ち出すように。

 陰る黒雲(風間)が見せた、訪れる(歌川)という結果を、来栖は(シールド)で防いで見せた。

 

「そんな、馬鹿なことが」

 

 できるはずがない。

 

 予測すると言ってもそれは、20ある選択肢が10に狭まる程度だ。

 それでもある10の選択肢から1の結果にまで絞ることなど、不可能に近い。

 

 空模様に雲が見えたとしても、その先が雨だという保証がないように。

 歌川が初撃を首筋に向けるという保証はなかったはずだ。

 

 絞り切るには、それこそ往年の。積み重ねてきた、経験が──。

 

 そこまでひとしきり考えて風間は息を呑んだ。

 

 今の来栖にはないはずだ。

 例え二ヶ月という期間を持ってしても、そこまで成熟できないほどの重みが。

 

 だが、今の一連。

 

 少しでも防御位置を間違えれば、致命傷になり得る攻撃を凌いだことも。

 攻撃を防ぐために、あの短い時間で防御の理屈を組み立てたことも。

 理屈を組み立てるために必要とされる膨大な戦闘への経験値を有しているだろうことも。

 膨大な経験値を有することが、記憶を取り戻したであろう証左であることも。

 

 風間の前に要素が出揃う。

 それでも、あえて風間は問う。

 

()()()()()()()()

 

「…………」

 

 目の前の人物がフッと小さく笑い、名乗り上げた。

 

「ボーダーの最強。来栖響」

 

 

 ============

 

 

「っ!?」

 

()の光景が書き変わる。

 

 おそらく今この時点において、迅しか大部分を把握できていない、遠い先の光景。

 捉えてしまったその光景は──。

 

【ゆりさん! なにかあった!?】

 

【それが──】

 

 殺伐とした声。少し前まであった安堵は一瞬にして消し飛び、変化の中心点を把握しようとする。

 

 伝えようとする切羽詰まったゆりの声。

 しかし、それは目の前の斬撃が阻んでみせた。

 

「どうした迅!? なにか考え事か!?」

 

「太刀川さん!」

 

 密着の距離で煽る太刀川。

 振られる弧月は、風刃で防御しようとも次の動作で太刀川に遅れをとってしまうような見事な剣だった。

 

 ──昔の来栖さんみたいな剣だな!! 

 

 物量ではない質で圧倒しにかかる剣筋。

 

 おおよそ昔の太刀川であれば、二刀流の利点である多大な攻撃回数で、迅の処理速度を上回ってきていたが、今の太刀川はその真逆。

 

 最小の攻撃回数。その上で迅が剣を振るうために必要な腕の可動域を制限する。

 未来を視て、対応できる防御を繰り出そうとも、今度は対応した防御の弱点を突く攻撃を仕掛ける。

  

 完璧な防御は存在しない。どこかを防ぐということは、どこかを疎かにするということだ。

 

多分だけど来栖くんが、なにか思い出してるかも!! 

 

 ゆりがなにか言っている。聞こえていないわけではない。

 ただ、それを理解するほどの余裕が太刀川の剣を受け続ける迅にはなかった。

 

 ──今、太刀川さんと戦いながら別の未来を見るのは無理か! 

 

 達成しなければならない目標。

 食い止めなければならない未来。

 

【ごめんゆりさん! もう一度後で教えて!】

 

 遠い未来ではなく、この目の前の未来だけを取捨選択する判断を下す。

 

「悪いね、太刀川さん。用事ができた。さっさと決めさせてもらうよ」

 

「はっ! 言うじゃねぇか、迅!」

 

 犬歯を剥き出しにして吠える太刀川。

 

 迅の挑発に太刀川のギアが一段上がる。上げざるを得ない。 

 

 太刀川の疲労のピークは最高値をもはや超えつつある。

 いくらトリオン体に筋肉的な疲労感が存在しないとは言え、迅という強敵を打倒するための質の良い攻撃をここから先繰り出すにはいよいよ精神的体力が底を尽きかけた。

 

 太刀川は直感する。

 

 ──このセットで迅を倒しきれなければ、もはや足止めすら叶わない。

 

 二振りの弧月を同時に迅へと叩き込む。

 

 戦闘序盤で左腕を切り落としたことで、迅は片手持ちになっている。

 風刃一振り、片手の迅ではその物量・勢いに耐えられない。 

 吹き飛ばし、迅の体勢を崩すことで、一気に決めにかかる。

 

 太刀川の描いた理想。

 

 それを──。

 

「勝負を焦ったね。太刀川さん」

 

 叩き込まれた二振りの弧月を、拮抗するまでもない威力で跳ね返す、一振りと()()()()()

 斬撃を折り重ねた擬似的な三太刀が迅と太刀川の距離を、太刀川が思い描いた形とは真反対ながら引き離す。

 

 ──ここでか! 

 

 温存していた風刃がその真価を発揮する。

 残存する風刃の帯は七本。

 

 太刀川が崩れかけの体勢で迅を視界に捉える。

 

 僅かに空いた距離で、迅は風刃を素早く振るい、遠隔斬撃を解き放つ。

 

 四方八方。

 地面・壁から太刀川を囲むように斬撃が翡翠の軌道を描きながらひた走った。

 

 太刀川はメイン・サブ両方のシールドを起動。

 自身前方から飛来する斬撃三つを封殺する。

 

 残る後方四つは──。

 

【古寺!】

 

【はい!!】

 

 近くにまで寄らせていた、狙撃手(スナイパー)古寺が展開するシールドで防いでみせた。

 ガラスが割れるような音が鼓膜を揺らすが、太刀川のトリオン体に斬撃は僅かに届かない。

 

 ──いける!! 

 

 太刀川が勝利を確信する。

 

 古寺がシールドを太刀川に合わせられる距離にまで詰めてきていることは先ほどの攻防で露呈した。援護はしばらく期待できない。

 しかし、遠隔斬撃を完封し残弾の尽きた風刃は、間違いなくただの高性能ブレードに成り下がっている。

 

 ここから数瞬、風刃の再装填(リロード)が完了するまでは剣の腕がものを言う。

 そして剣の腕ともなれば、迅と太刀川の実力差は僅かながらでも明白であった。

 疲れがなお足を引っ張る状態の太刀川においても、十分過ぎるほど勝機がある。

 

 この勝負は──。

 

「貰ったぞ! 迅!」

 

「ああ、そうだね太刀川さん。この勝負──」

 

「っ!?!?」

 

「おれの勝ちだ」

 

 地面から発生する()()()()()

 それが迅悠一の勝利を確定させるよう、弧月を握る太刀川の両手を吹き飛ばした。

 

 

 ====

 

 

 状況を、確認しろ。

 

 自身の戦闘力。 

 

 こちらの戦闘体は右腕欠損。ただし利き腕の左は存続している。

 もっとも左右どちらが残っていたとしても、振るう剣に影響は一切ないため問題たり得ない。

 

 機動力に直結する脚は両脚とも健在。

 オプショントリガー”グラスホッパー”を使用せずとも、この脚ならば願うままに動き切れる。

 

 しかしながら所々の細かい傷に加え、先ほど貰った右腕・腹部への一撃でかなりのトリオンが漏れ出てしまっている。一撃でも貰えば、緊急脱出(ベイルアウト)は確定的だ。

 が、問題ない。

 弧月の生成と旋空・グラスホッパーが一度使用できるだけのトリオンがあるならば、あとはどうとでもできる。

 

 トリガーに”叢雲”は装備していない。

 あれは本部が作成した試作トリガーだし、確か小南が量産していないと口にしていた気がする。

 あの日から約二年という月日が流れ、性能面がどうなっているかはわからないが、玉狛にいた「今」の来栖が入手できるものではない。

 

 生来持ちうる空間認識能力。距離把握の感覚は十二分に冴えている。

 

 副作用(サイドエフェクト)、集中力強化もまた健在。

 ただし、集中力強化をフルスペックで使うわけにはいかない。

 枷を自力で解いたとはいえ、「今」の来栖に集中力強化の真価は手に余るからだ。

 

 敵の戦闘力。

 

 風間蒼也。『俺』の親友。そして『俺』の好敵手(ライバル)

 

 あちらは五体満足。

 しかしながら、戦闘開始時に比べ、なぜか動きが少しずつ悪くなっていっている。

 精神的疲労、と決めつけるのは早計か。

 持久戦に持ち込めばさらに隙を晒すかもしれないが、その余裕はこちらにもない。

 

 トリガーはスコーピオン二刀にカメレオンと標準的なシールド及びバックワーム。

 ただし、未だ確認ができていないトリガースロットが二箇所存在。

 事前情報では空きになっていたが、対(ブラック)トリガー戦闘に備え、増備の可能性は捨てきれない。

 

【ゆりさん、ここ以外の戦況。どうなってます?】

 

 ここ以外の戦況の確認。

 簡易でありながら、わざわざ遠征先でオペレーターに入ってくれているゆりに通信を入れる。

 

【……嵐山くんたちが米屋くんと当真くんを撃破。三輪くんと出水くんはまだいるけど、ダメージはあるみたい。だけど、嵐山くんたちも時枝くんが落とされて、嵐山くんも木虎ちゃんも足が落とされてる】

 

【迅と太刀川は?】

 

【迅くんが太刀川くんの両腕を落としてる。多分だけど迅くんの勝ちだよ】

 

「…………ふはっ」

 

【来栖くん?】

 

 懐かしい名前を聞けた。

 それだけで、自然と笑みが溢れる。

 

「太刀川のやつ、迅に上手くやられたのか」

 

【ねえ、やっぱり──】

 

【何か動きがあったら、教えて下さい】

 

 ここ以外の戦況の把握は済んだ。

 ゆりの言葉に被せるようにして会話を断つ。

 

 ここから大きく動けば、またゆりが自分に伝えてくれるだろう。

 

 ──時間がない。

 

 この1セット。次の1セットで勝負を決める。

 ここからは、()()()()()()()()()()()()()

 

 風間との間合いは距離にして23メートル。

 駆け出して衝突に二秒。

 自分と風間との勝敗はこの二秒とその後の数瞬に集約される。

 

 風間の過去及び今回の戦闘状態から、行動パターンを演算。

 対スコーピオン戦闘における技術は、現在のトリガー編成及び制限実力下でも使用可能。

 

 左腰に先ほどの攻防で失った小太刀サイズの弧月を再生成する。

 準備は、整った。

 

「見せてくれ。お前のこれまでを。あの時からどれほど、俺に(せま)ったのかを」

 

 風間を視界に捉えたまま、全身を脱力。

 

 弛緩させた脚を一瞬にして収縮させ、爆発的な初速を叩き出す。

 剛弓から放たれた矢の如く、空気を引き裂きながら来栖は風間に詰め寄る。

 

 一秒。

 

 一般の弧月使いなら旋空を選択肢にいれる距離15メートルに突入。

 

 風間がアクション。

 不可解な動作、風間の右手が胸元に寄せられる。

 

 弾トリガーを展開するには遅すぎる。

 この距離でスコーピオンに起こせる攻撃動作は()()()()()

 

 しかしながら。直感が警笛を鳴らす。

 

 ──違う。それは。

 

()()()()()()()()()()

 

 瞬時に直感へ理由をつける。

 

 認識を改めろ。この距離は、風間にとって攻撃圏内だ。

 

 風間の胸元で折られていた右腕が、肩、肘、手首を連動させながら勢い良くこちらに伸ばされる。

 そして手先から伸びたブレードが、スコーピオン()()では到達し得ないこの距離を鞭のようにしなりながら首元に差し迫った。

 

 対応。

 首元に迫るブレードを弧月でそのまま弾く。

 誤差・修正はなし。

 予定通り、一秒後に風間と衝突。

 

 弾かれた風間のスコーピオンは、手元に巻き取られ剣を形成した。

 

 接敵・衝突。

 

 刹那にして二閃。

 風間に向けて、弧月をふるう。

 

 一撃目が回避されるのは想定内。

 二撃目のスコーピオンによる防御も想定内。

 そして。

 

「……!!」

 

 二撃目をもって、そのスコーピオンを()()ことも予定通り。

 

 硬度ある物質同士を激突させたような壊れ方ではない。

 風間が右手に持つスコーピオンが中腹辺りで()()()()()()()()

 

 武器が半壊した風間の目は死んでいない。

 

 ただ冷静に。

 破壊された右手のスコーピオンが形状変化。

 分断され、手元から離れたスコーピオンは可変できないが、手元側のブレードは未だ変形機能が生きている。

 耐久度を度外視した薄さで引き延ばされたスコーピオンが、来栖の弧月に絡みつく。

 

 一瞬の固定。

 振り解こうとすれば、苦もなく来栖は弧月を固定するスコーピオンを壊し攻撃ができるだろう。

 

 たったの一瞬。

 それだけあれば、来栖が弧月を固定するスコーピオンを破壊して攻撃動作に入るより尚早く、風間は残った左のスコーピオンで来栖の身体を捉え切れる。

 トリオンが大量に損失している来栖には、僅かなダメージでさえ致命的な一撃になるだろう。

 

 このままいけば来栖の敗北で幕を閉じる。

 しかし。

 

 ──()()()()()()()()()()()()

 

 風間が攻撃を仕掛けるその一瞬より、尚疾い攻撃を繰り出す。

 

 ──実行しろ。

 

 目視から思考・判断。

 来栖の身体は一瞬より尚疾い最適解の実行に動く。

 

 固定された弧月を手放し、素早く腰の弧月を抜きにかかる。

 

 左腰にマウントされた小太刀を、左手で抜くということ。

 

 純手の抜刀では風間の一瞬には追いつけない。

 

 逆手で抜刀。それで風間の一瞬に追いつく。

 そしてその一瞬を追い越すべく、加速装置(グラスホッパー)を起動する。

 

 弧月を握る手首を固定し、肘にグラスホッパーを当てる。

 勢い良くはね上げられた肘先。

 アッパーカットのように振り上げられた来栖の弧月はトリオン体それだけで生むことのできない速度を叩き出しながら、相対する風間の左腕を胴体から切り離した。

 

 スコーピオンを握ったまま、風間の左手が宙で回転する。

 

「獲った」

 

「…………!!」

 

 確信からの宣告。

 

 風間がシールドを展開するよりも疾く。

 来栖の剣戟が、風間の残る肢体を簒奪した。

 
















==============

言い訳ですが風間さんはあの技、できるにはできるけど、本家みたいに戦闘に組み込めるほどの出来栄えではないと判断して、使わない派だと思います。
 
ただ非常に有効だと判断したのなら使うという選択肢を選ぶ人間だとも解釈。
今回の戦闘では、初見の『来栖』に刺さると判断したため使いました。
なお相対した『来栖』からの評価は持ち越させていただきます。
 
今後風間さんの戦闘描写を書くことになっても使わないと思います。
 
ちなみにですが、アニメの方で使い手2名を見比べたんですが、本家の方は肘から先を基本振ってるのに対し、白い悪魔は腕全体で(もしくは肩から)振ってる感じでした。
所感です。場面とか派手さによって本家も肩から降ってる時もあると思います。これ書いてるやつの目が節穴なだけかも。
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