なんとか帰ってきました。
とりあえず、前回の後書きで書かせていただいた件について、ここ(前書き)に書くのは不適切かなと思ったので、活動報告の方に書いておきます。
ただ、これだけはお伝えしたい。
応援していただき、ありがとうございました。引き続きこの作品を書けることになるくらいには元気になっています。
ワートリについてははい、きましたね。REBOOTプロジェクト。驚きです。嬉しいです。語彙力が失せてるなおい。
あと嬉しいのは私にとってのバイブル。漫画にハマるきっかけとなった【家庭教師ヒットマンREBORN!】が再アニメ化しそうな流れを感じていることです。
ねんどろいどとかフィギュアとか。ほしいものが増えてきています。
これくらいでしょうか、語りたいのは。と言うことで半年以上ぶりの更新です。
前話から読んだ方が理解しやすいかも。
よろしくどうぞ。
「ふう、すいませんね。退院してから動いてはいるんですが、長時間の立ちっぱなしはまだしんどくって。申し訳ないですけど
ドアから入ってきたばかりの来栖は、上層部らへ近づくことなくドアのすぐ横の壁に体重のほとんどを預けてはその手をコートのポケットに突っ込んで、上座に居座る城戸と相対して視線を交わした。
たったの短いその言葉。
ただそれだけなのに、会議室の雰囲気は、混迷を極めた。
まるで幽霊を見たかのような。信じられないものを見たかのような。
悔悟と安堵を入り混じらせた表情を、上層部の面々少なからずそれぞれ浮かべる。
「ま、不味いのではないのかね!!」
そうではあったが真っ先に崩したのは根付だった。
迅を見てはその奥にいる来栖を見て。また迅へと忙しなく交互に見合う。
「来栖くんと城戸総司令を会わせること! それが迅くんの予見した”最悪の未来”とやらのきっかけなのでは!?」
「ど、どうなんじゃ!? 迅!」
根付の発言に遅れて気づいた鬼怒田が、同じように慌てながら迅へと唾を飛ばす。
会議室にある視線の全てが迅へと向けられるが、当の迅の表情は当惑を浮かべていた。
「…………来栖さん?」
「迅」
来栖と迅の視線は交わない。依然として来栖は城戸を見つめ続けるだけだった
「お前がどんな光景の未来を
迅と来栖の視線は一向に交わらず。
ただ次の一言が、迅の表情を大きく変えた。
「それでも、
「!!!」
「どこまでできるかは、わからないけどな」
いつもの飄々とした態度からは程遠く、迅の表情はわかりやすく強張った。
「来栖、さん」
「来栖隊員」
迅からの再度の呼びかけ。二人の意味深なやりとりにほとんどの人間が困惑しながらも、かぶせるよう発言したのはこの会議室で最も権力を有する城戸であった。
「何をしに来た?」
「さっきもいいましたが報告ですよ。
「…………」
「それと
「……話したまえ」
「では。と言いましても、俺がここで話せることは多くありません」
努めて明るく。来栖の声は会議室全体が纏う荘厳さからかけ離れた声であった。
次の一声を放つまでは。
「残念ながら言えるのはこれだけ。
重々しく、鋭くなった来栖の声が会議室にいる全員に向けて放たれる。
「…………?」
会議室にいる人間にとって
その上で、来栖の発言は困惑せざるを得ない。
皆の気持ちを代弁するかのごとく、忍田が来栖に発言の真意を問う。
「どういう意味だ? 来栖」
「……すいませんが忍田さん。これ以上は言えません。いや、聞かせるわけにはいかない」
「聞かせるわけに、かい?」
忍田の質問に目を伏せるような反応を返す来栖。
その仕草に唐澤が吸っていた煙草の先端を来栖に向けて確認した。
「ええ、唐澤さん。
「……なるほどね」
来栖の強調に、一旦の納得を見せる唐澤。
そして未だ納得を得ていない忍田が、その唐澤に向けて説明するよう無言で視線を預けていた。
だが、唐澤はその視線を全く意にかえさず、来栖にさらに確認する。
「来栖くん。確認を含めて聞いておこう。
「ありませんね。ですので」
「うん。推察混じりではあるが、後で説明はしておこう。君は君の、やりたいことをするといい」
「ありがとうございます。さて、城戸総司令。改めて嘆願を聞いていただきます。俺の願いは迅と同様。今現在玉狛にいる
「……認めない、と言ったのなら?」
城戸は落ち着き払って確認する。
それに来栖は冷ややかな視線を注いだ。
「残念ながらそう言える余裕が
「何?」
「
確信に満ちた物言い。
来栖の不遜とも言える発言に鬼怒田が怒鳴りをあげる。
「何を根拠にそのような事を!?」
「わかるんです」
「何が!!」
わかるはずがない。
来栖は1年半の昏睡の末、今ここに立っている。
情報量という観点で見ればボーダー上層部より劣っているはずなのだ。
「これから来る敵は4年前を超える存在。ひいては4年前以上の被害をこの街にもたらせる存在です」
「…………!」
断言する。
根拠のない出任せ、ではなく。何らかの自信を抱いて来栖は発言していた。
「迅の
『来栖』は、空閑を守る気はない。
ただ、空閑がもたらすであろう
そのもたらす利益がより善き未来につながると信じて。
「…………」
来栖に対面する城戸はあくまで沈黙を貫く。
「なるほど。こちらが納得いく答えは頂けませんか」
壁に背を預けていた来栖が僅かに体を反発させ、上層部らへ近づく。
その手を相変わらずコートのポケットに突っ込んだまま。
迅を超えて、長テーブルのそばまで。
そして。
「俺がここに入ったのは、誰も泣かないようにするためです」
音もなく。
来栖の姿が変わっていた。
羽織っていた青のコートは、黒いコートへ。
「その為なら──」
存在していた右腕が欠損していき、左手には抜き身の弧月が握られて。
「今、あなた方を斬ってでも、受け入れてもらいます」
「来栖隊員!」
「それ以上動かないで下さいよ、忍田さん。もし換装しようとしたならば、その前に城戸さんを殺します」
バン、とテーブルに手を叩きつけながら忍田が椅子から立ち上がって来栖と同じ目線になる。
が、来栖の言葉にもう
忍田は一切の身動きが封じられ、来栖を睨みつけるしかできなかった。
ボーダーのトリガーが一部を除き量産品である以上、来栖と全く同じタイミングで換装をし始めなければ戦闘体への。ひいては戦闘を行う上での同じ土俵に立つことはできない。
生身で戦闘体と戦おうなど、武器を持たず戦車に立ち向かうようなものだ。
そして今、この場で戦闘体となっているのは来栖のみ。
来栖の言動は、会議室の緊張感を一気に跳ね上げ、この瞬間をもって会議室は来栖によって支配された。
「来栖貴様!
「トリガーをですか? ええ、この部屋に入ってからはずっとです。いつでも、換装できるように」
「こ、このような! 隊員規定違反ですよ来栖くん!!?」
「そんな脅しじゃ俺は止まりませんよ、根付さん」
眉を吊り上げる鬼怒田が叫び、根付はわかりやすく狼狽する。
会議室の視線を集める来栖が城戸に向ける目は冷徹そのもの。
”殺す”という発言は決して出まかせなどではないと、真に感じさせるものであった。
「さあ城戸さん。俺がこの弧月で旋空を起動する前にお答えいただけませんか、
「…………」
あいも変わらず弧月の切先は城戸に向けられたまま。来栖は城戸へ
それに対し城戸は、自らが殺されそうになっているというのに表情ひとつ、眉すらピクリとも動かさず、来栖を見据えている。
唐沢は来栖の顔に走っている亀裂に注目しながら言葉を投げた。
「僕らを殺してでも、街を守ろうというのかい? 来栖くん?」
「ええ、その通りです」
ボーダーのブレードトリガー、弧月。
このトリガーは弾トリガーと違い殺傷能力を帯びている。
そして刀身を伸縮させるトリガー、旋空を併用すれば弧月の切っ先が城戸の胸部を貫くのは明白だった。
「……唐澤さん。あの日も俺は言いましたよね」
無論、そんなことをすれば来栖は罪に問われる。
殺人罪。決して軽くはない罪と人殺しの汚名を来栖はこれから背負っていくことになる。
そうであるにも関わらず来栖の、これから人を殺めることになる左腕は震えない。
人を殺すことに来栖は、迷いも。躊躇いも。恐怖も。全て乗り越えた。
なぜなら──。
「覚悟は、とうにできている」
あの日確かに。守りたいと思えるものを見つけることができたから。
会議室にいる、誰かが息を呑んだ。
城戸が答えを誤れば、来栖は間違いなく行為に及ぶ。
来栖の
「もちろん、無条件とは言いません。交換条件として──「いいよ、来栖さん」」
決まりつつあった未来に、待ったがかけられる。
「口を開くな、迅」
それは酷く、突き放したような口調。
来栖と上層部。二者のやりとりにより議論の外側へと追いやられていた
聞くものによっては、威圧感のあるその一言に身を縮こませ、閉口してしまうだろう。
だがしかし。
「大丈夫」
その程度で、迅は止まらない。
「やめろ、やめるんだ。迅」
城戸に向けられた切っ先は揺れることなく。
されど、先の脅しとは打って変わった、必死さを馴染ませた論調で来栖が迅を制止する。
先ほどまであったはずの冷徹な意志は内包されていない。
ただそこには。迅への◾️◾️◾️があった。
そしてその。再度の来栖の制止を振り切って。
テーブルに聳え立つ来栖の背後で、迅は胸元からあるものを取り出した。
「城戸さん。交換条件」
ゴトン、と重厚な音を立てながらテーブルに迅は取り出したソレを置く。
「こっちは、風刃を出す」
その一言を聞き終えた来栖は、静かに換装を解いて天井を見上げる。
未来が、確定した。
========
会議室から、二人そろって追い出される。
「ふー」
深く息を吐いたのは来栖だった。
息を吐くと同時に膝の力が抜ける。
「立ってるの、やっとだったんでしょ。来栖さん」
その場で崩れ落ちそうだった来栖を脇から支える形で迅が手を伸ばした。
振り払う気力もない来栖は黙って迅に支えられる。
「なんで邪魔した、迅」
肩を貸される形で歩く最中、来栖が迅を睨み、怨嗟を口にした。
が、その眼力に鋭さは微塵もない。
必死に睨みつけようとする来栖の様子にカラカラと、迅が笑った。
「あんな過激なのはダメだよ来栖さん」
「腹芸は苦手なんだ。……なあ良かったのか?」
「ん、何が?」
「あれはお前の、師匠だろ」
来栖は知っている。
迅が上層部に差し出した風刃は。
迅の師匠、最上宗一が命を賭した結果だ。
来栖は知っている。
迅が風刃に並々ならぬ想いをもっていることを。
現に、風刃選抜戦で迅が帯びていた意義込みは爽やかな熱ではなかった。
そんなものは例えとして的外れである。
あの時の迅は必死だった。いつも通りを取り繕いながらも、風刃の候補者全員を圧倒するほどに。
「最上さんはこのくらいじゃ怒らないよ」
いつかを懐古しながら迅はそうはっきり述べる。
「それでも」
肩を貸される来栖は迅の横顔を見ながらぶっきらぼうに言葉を投げ捨てた。
いつか、記憶が摩耗して。いなくなってしまった人のことをはっきり思い出せなくなる日が来るとしても。
「繋がりは多くあった方がいいだろうが」
いなくなってしまった人のことを、思い出すためのきっかけは。少しでも、少しでもあった方がいいと。
そう、来栖は思っているから。
「──優しいね。来栖さんは相変わらず」
二人しかいないボーダーの廊下で、迅の呟きが静かに溶けていった。
「ここで休んでてよ。みんな呼んでくるから」
「ああ、迅。呼ぶ前に伝言を頼みたいんだが」
「伝言?」
「ああ、出水・国近と太刀川に。内容はーー」
===
「いいの?太刀川さんにもそのまま伝えるけど」
「今更だろうさ」
「あいつが俺を隊長と思ってないのなら、そんな伝言。無視しちまえばいいんだからさ」