最強ノ一振り   作:AG_argentum

6 / 44
理想への一歩

『君はボーダーで何を成すつもりだ』

 

 何を成すか。

 

『何を目指すかとも言える。君の答えを、聞かせて欲しい』

 

 何を目指すか。

 

 何も知らない、今もつ答えを聞きたいということだろうか。

 

 近界民(ネイバー)を全て排除する。違う。

 

 市民を近界民(ネイバー)から守る。これも違う。

 

 そして……。いや、それは絶対に無い。何で思いついたのか思わず自分をブン殴りたくなる発想だ。とにかくこれも絶対に違う。

 

 これらは在り方だ。これから定めるべき己の在り方の形。今の無知なる自分では定められ無いモノ。

 叶うならばこの組織に所属し、敵について知り、その上で定めると決めたモノだ。

 

 しかし何を目指すか。1つだけ、この組織の門を叩いた時に定めていた事がある。

 

 いうならばそれは在り方を成す為の目標。

 

 言葉という弾丸を己に込める。

 

 意志という名の引き金を引けば弾丸(言葉)は世界に放たれ、もう二度と。引き金を引く前の自分には戻れない。

 言うなれば、これは今までの自分を殺す儀式。銃口は額に向けられていて、これが己を殺す第一歩だ。

 

 目標とするソレは荒唐無稽と笑われるかもしれない。星に手を伸ばすようなものだと弄されるかもしれない。

 いや、どうだろうか。目の前の男性は硬派といったイメージがまず付随してきそうな人相だ。嘲笑うような真似をせず、こちらにそれは不可能だと諭してきそうだ。

 

 どちらにせよ関係ない。何を言われようと知ったことか。そんなのはわかっている。目指すモノが存在しない事、この世には在らざるモノである事など先刻承知だ。

 

 それでも。たとえ叶わぬ理想(ユメ)だとしても。幻想だとしても。だからなんだと生涯不可能()に手を伸ばし続けると冷たくなる両親の亡骸を抱いたあの日誓ったのだ。

 

 もう二度と誰にも涙は流させない。

 

 もう二度と誰も無力感に打ちひしがらせはしない。

 

 もう二度と壊れるかもしれない明日に絶望させはしない。

 

 

 舌が乾く。自分でも届くかどうかの理想(ユメ)を追おうとしているのだ。大きく唾を飲み込んで、わずかに潤いを取り戻す。

 

『強くなければ何も成せない』

 

 如何なる在り方を選ぼうと弱ければ、どれだけ高尚な在り方を示そうと何も成せない。

 強くなければ、かの暴虐に一矢報いる事すら不可能だ。

 

 意志(引き金)に指をかける。そして来栖響は世界に弾丸(言葉)を放った。

 

『だから俺は最強を目指します。誰をも(たす)けれる、そんな存在に。俺はボーダー(ココ)で、最強に成ってみせる』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。