んー、ぐだった気もするけど、自分的にはこれで満足な気もする・・・。
「──という感じで今は安定してます。傷も殆ど塞がってきました」
『そう・・・。何から何までごめんなさいね、伸太郎くん。私達があの子の側にいれてやれないばかりに・・・・・・』
「いえいえ、気にしないでください。俺達が勝手にしたことですし」
『ありがとう、伸太郎くん。貴音ちゃんや桃ちゃん。優子ちゃんと秀吉くんにも伝えておいてくれると嬉しいわ』
「ええ。もちろんですよ」
『それと・・・』
「なんですか?」
『あの子とこのまま一緒に暮らしてあげてくれないかしら?食費や学費、その他諸々はもちろん私達が負担するわ。あの子をこれ以上傷つけられたくないの、お願いします・・・!』
「もちろんですよ、俺たちからもお願いします。」
『本当に、何から何まで・・・。二人には一生頭が上がりそうにないわ』
「いいんですよ。俺の家は妻と二人で住むには広すぎますし、明久達がいるくらいが丁度いいですよ」
『二人とも、本当にありがとう。そろそろお暇するわね』
「分かりました。お仕事お疲れ様です」
『ありがとう。そちらはお仕事頑張ってね』
ピッ!ツーッツーッ・・──
電話が切れてほうっと一息吐く。今の電話の相手は明久のお母上だ。
最初に経緯を話し、面倒を見ると言ったときに1週間に1度、経過報告を頼まれたのだ。明久はきっと私達に心配を掛けないように振る舞うだろうからと。
「母親ってのは偉大だな」
「・・・・・・?」
「直に見ずとも息子の状態を推測できるし、俺たちみたいな若造にも子どもの為だと偉ぶらずに頼み込むことができる。普通は変なプライドに邪魔されて出来ない人の方が多い」
「そうね、私も身に覚えがある」
「俺もある」
うんうんと頷きあっていると書斎─と書いて伸太郎の部屋と読む─の扉がコンコンッと叩かれた。
「お兄ちゃん、貴音さん!明久君達がご飯出来たよ、だって!一緒に食べよう!」
「ありがとねー、桃ちゃん!」
「おーう、教えてくれてありがとな。ってあれ?桃、仕事は?」
「あれ?言ってなかったっけ?殆ど収録済んだから今日はゆっくり出来るって」
「言ってないぞ!ったく、前もって言ってくれれば外食に皆で行ったのに」
「え~!それなら夜に行こうよ!」
「んー、俺は良いけど。貴音は?」
「大会は昨日終わったから問題ないわ」
「じゃあ、あとは明久達に聞いて決めるか」
「「異議なーし!」」
これから昼食だというのにもう夕飯の予定を組み立てる二人に伸太郎は呆れつつ、食卓へと続く扉を開くのであった。
~夜まで割愛~
あれから明久達と相談してやはりというべきか出掛けることになった。目的地はそこそこ高い焼肉屋だ。自炊が出来る俺たちは外食に頼ることが殆ど無いので結構久しぶりだったりする。
「何頼みます?」
「カルビ食べよう!」
「野菜も食おうな?俺はトリが食べたい」
「確か、味噌汁も頼めるわよね?私はご飯と一緒にバランス良く食べるわ」
「貴音さん、キッチリしてますね・・・」
「ま、昔から主食とか副菜キチンとしてたから、肉単体は落ち着かなくてね。皆、飲み物は何にするの?」
「俺は─」
「どうせ、コーラでしょ?」
「その通り」
「私はオレンジジュースで!」
「ワシは烏龍茶でお願いするのじゃ」
「僕もコーラでお願いします!」
「私は緑茶で」
「オーケーよ」
貴音が皆の要望の品をタブレットを操作して注文カゴに入れていく。少し待って注文したものが次々に運ばれてくる。焼く担当はどうやら伸太郎と明久のようだ。
「お兄ちゃん、これもういい?」
「おー、いいぞー。秀吉それはもう少し待て」
「了解なのじゃ!」
「豚焼けたけど、いる人~?」
「じゃああたしがもらおうかな」
「おっけー、皿に乗せるね」
火を点火して油をひいてもらってから焼いていく。さすが育ち盛りというべきか焼かれた側から直ぐに無くなる。見ていて気持ちいいくらいの食べっぷりだ。
「明久も食っていいぞ。肉は俺が見てるから」
「でも、それだと伸太郎さんが・・・」
「あー、俺は元々少食だから気にすんな。」
「それなら、お言葉に甘えて・・・」
遠慮気味だった明久も肉取り合戦に参加する。伸太郎はよく食べる四人を優しく見守りながら自分も少しずつ箸を伸ばすのだった。
「そういえばさ~」
皆が満腹になったところで、唐突に桃が切り出す。デザートのパフェに目を輝かせながらも口を開くことはやめない。
「優子ちゃん達って私より年下なんだよね」
「ん?ああ。そうだな」
「じゃあさ!じゃあさ!二人とも、私のこと《お姉ちゃん》って呼んでみてよ!」
「「へ・・・?」」
困惑する二人をよそに盛り付けのウエハースをサクサクと食べ進める。手についた粉をペロリと舐めて話を再開する。
「私って末っ子だし、身の回りに年下の子が殆どいなかったからお姉ちゃんって呼ばれてみたくて・・・」
「あー、確かに親戚も年上ばっかだしな」
「そう!だからお願いっ!」
桃は食べ終わったパフェの容器を前に手をパンっと合わせてお願いする。
てか、食べるの速くねぇか?こいつ・・・。
それはさておき、桃の必死なお願いが聞いたのか二人は顔を寄せあって相談している。
相談が長引きそうなので、会計を終わらせて、店から出ることにした。
桃が秀吉に頼まなかったのは秀吉が既に師匠と桃のことを呼び慕っているからだろう。
ちなみに秀吉はお茶を飲んで「ほうっ・・・」と寛いでいる。一瞬縁側にいるような錯覚を覚えたくらいには。
秀吉を見てほっこりしていると、話がついたのか二人は俺達を呼び止めた。
「え、えっと・・・。兄さん、姉さん、あの日僕らを助けてくれてありがとう・・・!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん達がいなかったら、きっと私たちは何も信じられなくなってたから・・・」
「うむ、兄上、姉上、師匠。ワシからも感謝を。明久と姉上が元気でいれるのは間違いなく、兄上達のおかげじゃ。」
「「・・・・・・・!!」」
ビックリして前につんのめる。
桃のことをちょこっとだけ「お姉ちゃん」と呼んで終わると思っていたのに、不意打ちを食らった気分だ。
桃は笑ってるけど、もしかしてこの展開が分かってたのか?いや、流石にないか。
横で歩く貴音を見ると目を潤ませていた。どうにか泣かないようにしてるけど、あと一押しで涙腺は決壊してしまうだろう。
「良かったね、お兄ちゃん、貴音さん」
「おう・・・。ずっと、余計なお世話なんじゃないかと思ってたんだ・・・。だからさ・・・」
「こっち、こそ、ありがとう・・・・。」
貴音は声を震わせながらも伸太郎の言葉を継いで思いを伝える。貴音だって、明久達に救われた部分はあるのだ。自分達と彼らを重ね、昔とは違い、手を伸ばせるのだと・・・。
そこで終わりだと思った伸太郎だったが、明久から予想外の言葉が飛び出してきた。
「あの、これからも、兄さんって呼んでも良いですか?」
「・・・・・・ああ。それと、タメでいいぞ。」
「良かった・・・、これからもよろしくね。」
そう言って明久はふわりと自然な笑みを浮かべた。今まで、その笑みは優子と秀吉にしか向けられ無かったもの。信頼の証・・・。
貴音はもう限界のようだ。そっと貴音の手を握って、誤魔化すように明久達から顔を背け、前を見る。
ほんの少しだけ足を早めて明久達より前に出ると視界が滲み始めるのを気付かないフリをして、伸太郎は
「こっちこそ!」
と、返事をするのであった。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございます!
単純に嬉しいのですよ!
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