バカと嫌われと元ニート   作:Argo(不定期更新)

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 どうもです!前回ブクマ増えて嬉しかったです!やる気に繋がるのでありがとうございます!
 よければ最後まで読んでくれると嬉しいです!!!
 修正加えました!


『ジャージのヒーロー』

 それから、僕は優子さんに手伝われながらどうにか学校を抜け出しました。歩くのもやっとで、足取りはフラフラ、出血も激しく、息も絶え絶え、やっとの思いで、伸兄さんと貴音姉さんと出会った場所に着いて、力尽きて倒れました。

 

 

☆★☆

 

 

─っと、ここらは少しの間優子さんにバトンタッチしますね。

_その日から3日間のことはあたしが話します。明久君じゃないのか?

・・・・・・3日間寝込んでたんですよ、明久君。

 

 

☆★☆

 

 

 明久君が意識を失ってから、あたしは何も出来ませんでした。救急車を呼ぼうにも、近くの病院は明久君のクラスメイトのA君の家が経営していて、頼ることが出来なかったんです。彼の親は身内贔屓で有名なので尚更。

 もうどうすればいいか分からなくって。

 ただ、助けてと泣き叫んでいたところに赤いジャージと青いジャージを着て買い物袋を持った二人組が現れました。・・・お察しの通り、伸太郎さんと貴音さんです。

 

 お二人の第一声は『どうしたの?』ではなく『大丈夫!?』でした。その時、あたしはお二人に背を向ける体勢だったので慌てて振り返ると、さっき言った格好の二人が立ってたんです。正直言うと、驚いたんですけどそれどころじゃなかったので直ぐに『助けてください!』って言ったんです。

 普通、人って見るからに厄介なことからは目を逸らすじゃないですか。それなのに二人は何も聞かずに『分かった』と即答。

 病院に行かない理由も聞かずに伸兄さんは素早く明久君を背負うし、貴音姉さんは何やらスマホを操作するしであまりに迅速であたしは困惑しましたよ。

 

 早足で急ぐ彼らのあとをあたしは呆然と着いていくだけでした。貴音姉さんは『きっと大丈夫』『もう少しだけ頑張って!』ってずっと声を掛けてくれて、本当に有り難かったです。この家に着いてから、明久君はゲストルームに運び込まれました。伸兄さんの処置が終わるまであたしはただ、踞ってました。

 あたしに出来ることはもっとあったんじゃないか?とか、色々思っちゃって。そんなどうしようもないことをぐるぐると考えていると貴音姉さんに声を掛けられました。

『とりあえず、お風呂入ってきなさい。服なら貸すし、あの男の子なら伸太郎がちゃんと診てるから大丈夫。』

 後々教えて貰ったんですけど、あたし、明久君の血とか汗とか土とかで、かなり汚れていたみたいで。

 処置が終わったあと、着替えさせられてベッドに横たわる明久君を保護してくれた2人と見ていました。包帯だらけで痛々しい彼から視線を離すと伸兄さんは私へ自己紹介をしました。

 

 

 

 

─_─_─

 

 

 

「さて、遅くなったが自己紹介といこうか。

俺は如月伸太郎、歳は22だ。」

「如月貴音、伸太郎の妻よ。歳は22。両方如月でややこしいから、あたし達のことは下の名前で呼んでちょうだい。」

「あたしは、木下優子です・・・。それで、傷だらけの彼が吉井明久君です・・・」

 

 目を覚ます気配を見せない彼・・・、明久君の周りに椅子を置いて3人は自己紹介をする。

 

「とりあえず、彼の状態だが暫く安静にする必要がある。彼のご親族はこの怪我に関する事を把握しているのか?」

「恐らく、把握してないと思います。前に彼は『両親と姉さんは海外で暮らしていて、僕は一人暮らしなんだ。』と言っていました。

彼が連絡しない限り情報は届かないかと」

「そうか・・・」

「あ、あの・・・・・・」

「ん?なんだ?」

 

 会ったばかりで、それも助けてくれた人に対して不躾な質問だったなと思います。

でも、聞かずにはいられなかったんです。善人って言葉だけで済ませられるほど、その時、私は人に希望を持ってなかったので。

 

「どうして、ここまでしてくれるんですか?見ず知らずの、それも一目で厄介事だとわかるような人を。」

 

 思ったことを率直に聞きました。すると、伸兄さんは何かを思い出すような表情で私を真っ直ぐ見てこう言ったんです。

 

「・・・お前らが俺達に似てた、だから無視できなかった」

「似てた・・・?」

「あぁ・・・。随分昔の話になるけどな。俺達はサークルみたいなモノに入ってたんだ。その時落ち込んでた俺にとっては大切な居場所だったんだけど・・・・・・」

「伸太郎は居場所を奪われたのよ、途中でサークルに入ってきた女に嵌められてね。サークルメンバーも長く過ごした伸太郎じゃなくて、その女の方を信じた。伸太郎の意見も、明らかに可笑しい点すらも確認せずに」

「んで、袋叩きにされた。そのサークルは何でも屋みたいな感じで荒事も解決したりしてきて、力が常人以上にあった。その時は今みたいに体力が無かったからされるがままで。紅茶ぶっかけられたり、鳩尾を蹴られたり・・・まぁ、色々されてボロボロになって路地裏に捨てられて」

「私もその時は事情があって伸太郎を支えることが出来ないから伸太郎の妹ちゃんに事情を伝えて・・・」

「本当に最悪だった、痛いし、ショックだし、情けなかった・・・・・・」

「そんな・・・・・・!」

 

 正直、絶句しましたよ。あんな経験をした人が彼の他にもいたんだと、そんな最低なことを出来る人間があの転校生以外にもいたのかと。

 

 

★☆★

 

 

「ちょっと待ってくれ。」

「何ですか?」

「えっと、伸太郎君?おれ、そんな話聞いたことないんだけど?」

「当たり前だ、言ってないからな」

「そうじゃなくて・・・」

「質問なら後で答えてやる。今は優子の話を聞け。」

「・・・そうだね。ごめんね、邪魔して。続けてもらってもいいかい?」

「あ、はい。大丈夫です」

 

_では、続けますね。

 

 

 

★☆★

 

 

 

「だからさ、俺はとある案件を速急に終わらせてアイツらと縁を完全に切った。金輪際関わりたく無かったからな」

「復讐も考えたんだけど、あの連中の為に時間削ってやるのもバカらしいでしょ?だから関わらないようにここに移り住んだの。」

「・・・・・・明久君も、同じなんです。少し前に転校してきた男子生徒がいて、ソイツは明久君を苛めてて・・・、でもっ!明久君は優しいから、我慢して・・・・・・!明るく振る舞ってたのに、今日、嵌められて!明久君がアイツを苛めた事になってて・・・、皆明久君の話を聞かないし、信じないしで!

 遂には集団で暴力振るい始めて・・・、あたし、何も出来なくてっ!」

 

 支離滅裂なその説明を二人は最後まで一切笑わず、真剣に聞いて理解しようとしてくれました。そして、泣き出してしまった私を励ましてくれたんです。『何もできなかったわけじゃない』『俺たちを頼れ』って。

・・・・変な話ですよね、会ってまだ数分なのにこんなことを話して、しかも安心している。

 

 

 そこまで話したあと、私は疲れて眠ってしまったようです。なので、記憶があるのは次の日の朝からです。

 保護してもらった翌日はあたしの家に連絡と明久君の家に事情や彼の状態を伝えたり、ガーゼ等の買い出しをしたりしました。

 2日目は、私は貴音お姉さんについてきてもらって、1度自宅に戻って事のあらましを改めて両親と秀吉に説明しました。そして、お世話になっている人のことも。両親と貴音お姉さんが話すときは私たちは追い出されましたけど、話が終わったとき両親が安心しきった表情をしていたのは良い思い出です。

 3日目は私の両親と伸兄さん、そして明久君のご両親達と連絡を取り、今後どうするかとかを話し合ってました。そこで、しばらく伸兄さん達と過ごすことが決まりました。

 やるべきことが大体ひと段落した4日目の朝、明久君が目覚めました。怪我の度合いが酷かったので伸兄さんは1週間は寝込むだろうと予想してたんでものすごくビックリしてました。

 

_ここまでが、明久君が寝込んでいる間の話です。

 

 

☆★☆

 

 

「これが、私達がここで過ごすことになった経緯です。」

「目が覚めた後は、治療に専念しながら、僕が置かれている状況を説明してもらったりして、伸兄さん達とひと月過ごしました。」

「そして、ついこの間機会があって伸太郎さん、貴音さん、桃さん達をお兄さん、お姉さん呼びさせてもらうことになりました」

「だいぶザックリですが、これが僕達の身に起こったことです」

「・・・・・・」

 

 言葉を失うとは今この時の為にあるんじゃないかと、名取は何処か頭の隅で考えた。あまりに悲劇的で聞いた誰もが憐れむような、悲しくなるような話だ。

彼を傷つけた転校生はものすごく自分本意な悪意を持っていたし、彼とこれまで信頼を築いてきたであろう彼らは本当の事を知らないまま彼を切り捨てた・・・。

 唯一の救いと言えば、自分の友人たちが彼らのSOSに気付いて、こうやって過ごしていることだ。そんな目に遭った彼に、彼らに、咄嗟に掛ける言葉が見つからない。

 

 

「名取さん?」

「・・・すまない。軽々しく触れるべきでは無かったね、きっと思い出したくもないことだろうに・・・」

「いえ、いいんです。今は僕らも落ち着いてますし、何より名取さんに話すと決めたのは他ならぬ僕達です。だから、名取さんが気にするようなことではないですよ」

「そうか・・・・・・」

 

 ぎこちなく笑う少年に名取はそれしか言えなかった。

 

 

 

「・・・もうこんな時間か。」

 

 そう言って、ふっと顔をあげた伸太郎が伸びをする。その声に促されるように時計を見ると6時を回り、窓から見える空はほんの少し色を濃くしていた。

 

「夕飯作るか・・・、貴音は配信してるはずだからおにぎりでも差し入れてやるか。名取、折角だしお前は食ってけ。」

「え・・・?」

「この人数だ。1人や2人増えても変わらん、それにもうすぐ・・・」

「ただいま~!お兄ちゃん!」

「ほら来た。」

「見慣れない靴があったけど、誰か来てるの~?って、名取さん!!?」

「や、桃さん。お邪魔してるよ」

「いえいえ!どうぞ、ごゆっくり!!」

「ここ、俺の家なんだが。あと桃、お前はちゃんと家に帰れよ・・・」

「えー!いいじゃん!ちゃんと説明してここに来てるし!家にいてもお父さんとお母さんのラブラブ見せ付けられるだけで暇なんだから!」

「・・・それならしょうがない、か?」

「うん、しょうがないの!だからお兄ちゃん、今日のご飯は唐揚げがいいな!」

「だからに繋がってないぞ。別にいいけど」

「あ、兄さん、手伝うよ」

「お、サンキュー、明久」

 

 さっきまでの空気が嘘のように明るくなる。明久、優子、秀吉に笑顔が灯る。

 最初は切り替え切れなかった名取だが、明久達の自然な笑顔や楽しそうな雰囲気を見て少しずつ、表情を弛めるのであった。

 

「(後で伸太郎君にはお話をしないとな)」

 

 ちなみに、しっかりと途中の気になる発言について問い詰める気満々である。

 

「(ん?寒気が・・・)」

 

キッチンで不穏な気配を感じ取った伸太郎が、肩を震わせたのを彼は知るよしもない・・・。




 ご拝読ありがとうございました!よければアンケートに答えていってくれると助かります!

味方(上位2)にしたいのは・・・・?【カゲプロ部門】

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  • 小桜茉莉
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