おはこんばんは。Argoです。
前回、ブクマやお気に入り登録してくださった皆さん、ありがとうございます!私の励みになります。
期間はやはり空いてしまいますが、今後ともよろしくお願いします。先に言っておきます、作者はカゲプロキャラもバカテスキャラも大好きです。
案の定というべきか、食事が終わったあと、伸太郎は名取に問い詰められていた。
「それで、伸太郎君?さっきの話、詳しく」
「言ってなかったっけ?」
「少なくとも、おれの記憶ではないかな」
「んー、まぁいいか。」
伸太郎は少し悩む素振りを見せたが、話すことにしたようだ。
「前に、俺の力のことは話したよな?」
「ああ・・・。確か、元は薊さんっていうメデューサの能力で、幾つかの種類があるんだっけ?」
「そうだ。付け足すならその力が怪異のものだから、俺は霊や妖怪を式やまどろっこしい儀式を介さずとも祓えるし、他の人間より濃くハッキリと奴らの世界が見える」
「ここまでは知ってるよ。問題は、君が明久のような目に遭った事があるということだ。おれと君は小学校から友人だったのだから、そんなことがあれば知っている筈なんだ」
「まぁ、落ち着けよ。それを含めてこれから説明するんだろうが」
「・・・そうだね、少し冷静さを欠いた。すまない、伸太郎君」
「別にいい」
それだけ言うと、気にした風もなく『そもそも』と伸太郎は続ける。
「俺はどこでこの能力を手に入れたと思う?きっかけは?時期は?そんな素振りを名取は1度でも見たことがあるか?」
「いや、ないね・・・。さらに言うなら君から強力な怪異の気配を感じたこともない。メデューサは神話で語られることもある怪異だ。気付かないなんてあり得ない。」
「お前くらい優秀だったら尚更な。さて、ここの擦り合わせは大丈夫だな。分かってはいるだろうが名取と出会う以前にメデューサに会ったことはない。名取と出会ったのは小学校低学年。それ以前ともなれば、いくら俺でも親から眼を奪い、外へ出るのは難しい。それに、遊びにいくときは必ず父母のどちらかがついてきていた。
だから、変なところやモノには行けたりも触れたりもできないわけだ。能力の譲渡も一朝一夕で出来ることじゃない」
「そうなると、君がメデューサから能力を受け継ぐのは不可能だと言っているように聞こえるけど?」
伸太郎はその言葉にニヤリと口角を上げる。
「そう、不可能なんだよ。俺という人間がチカラを手に入れるのは。でも、思い出せよ、名取。俺がこの能力について初めて話したときのことを」
「・・・・・・君は、おれと初めて会った時には既に能力を所持していたと言っていた。おれが納得できたのはその時から度々、君が能力の一部を発動したのを見たことがあるから。
忘れもしないさ、あれは本当に衝撃的だったからね」
自分と同い年の幼い少年が見たこともない力で怪異たちを退けていく様をきっと忘れることは無いだろう。
「じゃあ、どうやって?」
「簡単さ、この人生で得られなかった。なら最初から受け継いでいたというだけだ」
「最初から・・・?まってくれ、混乱してきた」
「おう、悩め悩め」
頭を抱える名取とは対照的に伸太郎はさも楽しそうに彼を眺める。ちなみにだが、伸太郎たちは書斎で会話をしている。
「そう難しく考えることはない。さっきも言ったが、この人生で、今世で、得られなかったってだけなんだよ。」
「つまり、別の人生で得ていたから、君は生まれる前から能力を持っていたと?」
「That's right!その通り!とは言っても、正確には違うんだけどな・・・。それを含めて話す。さて、それが分かったところで話を始めよう」
どうやらここまでは本題ではなかったらしい。その証拠に、伸太郎はさっきまでとは違い真剣な表情をしている。
「俺が能力と・・・、いや、シンタローが蛇達とその主に出会ったのはこことは違う世界で19歳の時だった」
☆★☆
それから伸太郎が語ったのは学生時代を共にしてきた名取が知る伸太郎とは全く別物で、まるで空想のような突飛な物語だった。
その世界で、
そして中学3年のある日、彼に転機が訪れる。周りに嫌われ、周りを遠ざけてきた彼に構う少女が現れたのだ。彼女がきっかけとなり、シンタローの世界は広がっていった。同年度の冬頃、少女に連れられ、彼女の父が勤める高校の文化祭でシンタローは初めて恋をした。
高校に進学して彼はようやく人並みの幸せを得た。授業の感想を語れる相手、昼を共にする友人。悩みを相談できる先輩。心の底から大切にしたいと思える人。全てが彼にとって初めてのことで、今まで願っても叶わなかったものだった。
シンタローは大切にした、態度にこそ出はしなかったが彼なりに精一杯向き合った。不器用だったかもしれない。それでも彼女たちには伝わっていた。
だが、それも長くは続かなかった。二年生の夏に彼は全てを失ったのだ。
それから2年、彼は引きこもった。家族の為に片手間に家計を支えながら、彼女達との想い出を忘れないように、その声を忘れないように、あの暖かな日々を忘れないために。そうして温もりを抱えながら、自分を罰する日々の途中で彼はエネという無二の相棒と出会った。
最初は突き放していたが、シンタローはあることに気付いてエネを強く拒絶することはなくなり、少しずつ、ほんの少しずつ立ち直り始めた。真っ暗闇だった世界が彩られ始めた、2年もの時を経て彼の時間がまた進み出したのだ。
そんなある日のこと。いつものように株や楽曲製作をしているとき、うっかりキーボードにコーラを溢してしまった。あいにく、その時期はお盆。宅配はサービスを休止していた。浸水したキーボードで凌ごうにも『T』『O』『R』しか打てないのでは何も出来ない。シンタローはあまり気にしていなかったが、そうなった一因である電子の妖精は泣きそうになりながら必死に謝った。
シンタローは大切な人間を泣かせたままに出来るわけもなく、おもむろに赤いジャージを羽織り、愛飲する黒い炭酸飲料と財布を持った。彼女のためのスマホと白いイヤホンを耳に当て、少し混乱しているエネを急かして、2年ぶりに家から出た。
じりじりと焦がすような光が差す炎天下の中、彼はようやく泣き止んだ少女に笑いかけながら、目的地のデパートへ足を進めた。到着して、エネと相談しながらPC部品コーナーを物色していると、突如として店のシャッターが降りた。テロリストが身代金交渉の為にシンタローたちを人質にしたのだ。
テロリストの目を盗みながら、シンタローは縄をいつでも脱出できる程度に緩ませていると横から猫目の少年に声を掛けられた。
これが全ての始まりだった。
☆★☆
「おれの知ってる伸太郎君とは違いすぎて想像がつかないな・・・」
「そりゃあな、俺だってこうなるとは思わなかったさ」
「まぁ、そうだよね。・・・ところで、今の話に出てきた大切な人ってもしかして?」
「ん?貴音に決まってるだろ」
「貴音さんもなのかい?」
「あぁ、ついでにいえば桃もな。」
「桃さんも!?」
名取はぽかんと口を開けて驚く。彼にとってはそれほど衝撃的だったようだ。
それをスルーして伸太郎は言う。
「とりあえず、今の話がきっかけの大まかな説明な。疑問があったら今のうちに聞いてくれ」
「今のところ特にはないかな、続けてくれ」
名取は先を促した。
次回へ続く!
味方(上位2)にしたいのは・・・・?【カゲプロ部門】
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