やはり俺が呪いに関わるのはまちがっている   作:りおん

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第5話

武器庫に着くまでにどんな武器を使おうか考えた。槍にはリーチのアドバンテージがあるし、刀は三輪が使えるということで教えれもらえば上達が速いだろう。一応武器それぞれの利点を聞きながらほとんど全部の武器を触ってみたのだが……。

 

「全然だめね」

 

「さいですか」

 

俺には武器を振る才能が0らしい。武器を構えて呆れられ、振って絶望された。

 

「比企谷くん、刀は最後まで振りきってください。戸惑ってはダメです」

 

「槍は真っ直ぐ突き出せ。自分の重心を意識しろ」

 

ダメ出しの嵐。三輪曰く1年もすればようやく形になるレベルだと。そんな俺でもしっくりくる武器が2つあった。短剣と拳銃だ。

 

時間があったなら刀とかに挑戦しても良かったんだが、今の目標は最低限戦えるようになることだ。この2つ以外の武器はその後でも問題ないだろう。

 

刃渡り15cmくらいの短剣と拳銃を携えて午後の組手に移行した。今日の俺の相手はメカ丸だ。ハンデとして武器は使わないでくれたが転がされまくった。

 

「くそ、どうすりゃいいんだ」

 

「なあ、比企谷」

 

「なんだ」

 

「どうして俺に刃を当てるとき躊躇する?」

 

……バレバレか。どうしてか分からないが当たると思った瞬間に体が硬直する。

 

「この前まで普通の高校生だったなどとは言うなよ。お前はもう呪術師なんだ。呪霊相手に戸惑えば……死ぬぞ」

 

「分かった。助言ありがとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで1週間が経った。今日、俺は初めて呪霊と戦う予定だ。今の俺の実力は素人に毛が生えた程度。でも、最初より戦えるようにはなった。禪院とペアになって中学校に出没している呪霊を祓いに行く。引率として庵先生が着いてきてくれている。

 

「この中学校では先週から自殺者が多発している。今週だけでも3人。最低でも3級、高くて2級の呪霊がいると考えられる。何か問題があればすぐに連絡して」

 

「分かりました。比企谷、足引っ張るんじゃないわよ」

 

「初めてなんだ。引っ張っても大目に見てくれ」

 

「どうしてそこで、任せてくれ、とか強気の言葉がでないのかしら」

 

「卑屈で悪かったな」

 

「じゃあ、帳を降ろすわ。気をつけて行ってきて」

 

二人で返事をして校舎内へ踏み出す。あの時と一緒だ。濃い呪いの気配がする。この学校は飛び降り自殺者が多い。居るなら屋上の可能性が高いだろう。

 

「結構ビビってるかと思ってたんだけど、そうでもないみたいね」

 

「祓いに行くのにビビってちゃどうしようもないだろ。なんなら生きている人間のほうが怖いまである」

 

「あんた、ホントぶれないわね。一周回って感心するわ」

 

「ありがとよ」

 

「誉めてないんだけど」

 

会話をしながら屋上へ向かっていく。屋上への扉の前に着いたときには俺の予想当たっていたことが分かった。

 

「この奥にいるわ。準備はいい?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

扉を開けて一気に屋上に飛び出る。

 

いた。呪霊だ。顔が真っ黒で女生徒の姿をしている。こんな人間みたいな呪霊もいるのか。あの頃ほどの怖さはない。対抗手段を身に付けたからなのか、精神的にも余裕がある。

 

「前衛頼んだ」

 

「おう」

 

短く返事をして呪霊との距離を詰める。とりあえず人間の急所である首に向かって短剣を横薙ぎにした。

 

後少しのところで上体を反らして避けられる。当たったと思ったんだがな。

体勢を崩した俺に対して掴みかかろうとしてくるが、それは禪院の銃弾が体にヒットすることによって防がれた。

 

「ナイスショット」

 

「当然よ。それと、あんた今躊躇したでしょ。その悪い癖治ったと思ってたんだけどまだだったみたいね。人形なだけで相手はれっきとした呪霊。私が居なかったら今頃取っ組み合いになってるわよ」

 

「悪い」

 

「そう思うなら今ここで治して」

 

俺は甘くみてたのかもしれない。実際に戦ってようやく実感した。ここは殺らなきゃ殺られる世界だ。こいつらを祓わなきゃ、俺は自分の命もあいつらも何も守れない。

 

呪霊が飛びかかってくる。それを余裕をもって避け、相手の無防備な背中が俺の目に映る。

 

次は心臓を狙う。何の迷いも躊躇いもなく、短剣を突き刺すことができた。呪霊は呻き声をあげて霧散した。どうやら胸が弱点だったようだ。安堵のため息が漏れた。

 

「克服できたかしら?」

 

「まあ、恐らくは」

 

「それは良かったわ。じゃあ、帰りましょうか」

 

そうして俺たちはもと来た扉に入った。

 

 

 

 

 

はずだった。

 

「どこだ?ここは」

 

赤黒い壁に途轍もなく濃い呪いの気配。明らかに学校の校舎内ではなかった。

 

「ど、どうして、生得領域がこんなところに。高くても2級のはずだったのに」

 

座学で習ったな。呪術の奥義である領域展開の術式が付与されていない空間。……おかしいだろ。特級でもなければこんな芸当出来ないはずだ。まて、逆に考えろ。

 

「禪院逃げるぞ。恐らくは特級がいる」

 

「そんな、ありえない!ただの学校に特級なんて」

 

「だが、これが現実だ。……先生に連絡は?」

 

「出来ない。繋がらないわ」

 

後ろの扉は既に無くなっている。不味いことになったな。出くわさないことを祈るしかないか。

 

「移動して出口を探そう。ここにとどまっててもいずれ見つかる」

 

「え、ええ、分かったわ」

 

後ろから舐めるような、不快な視線を感じた。

 

「禪院!」

 

咄嗟に禪院を突き飛ばす。短い悲鳴は地面が抉れる轟音にかき消された。

 

最悪だ、こんなに早く見つかるとは。人形の呪霊だ。顔には黒い線に4つの目がついている。今までみたどんな呪霊より化け物だ。

 

「禪院!無事か?」

 

「何とか無事よ。突き飛ばされてなかったら危なかったわ。ありがとう」

 

目の前の呪霊を観察する。襲ってくる気配はない。体をくねくねさせて笑っている。

 

「今のうちに逃げろ」

 

「あんたはどうすんのよ」

 

「あいつと戦う」

 

「バカ言わないで。あんなのと戦ったら殺されるのがオチよ」

 

「あいつは俺たちのことを完全にナメてる。俺にも時間稼ぎぐらいなら出来る。その間に先生を連れてきてくれ」

 

「……分かったわ」

 

禪院が走り出した。瞬間、呪霊の姿が消えた。後ろから禪院の呻く声が聞こえ、体が壁に打ち付けられていた。

 

「逃がすつもりはねぇってことか」

 

何も反応できなかった。禪院は気絶しているが、死んではないだろう。まだ、呪力を纏っている。帳が晴れれば先生が救助しに来るはずだ。……それまで耐えれるか?この化け物相手に。

 

「ぼっちの生き汚なさ舐めるなよ」

 

耐えるしかない。じゃなきゃ、死ぬ。

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