やはり俺が呪いに関わるのはまちがっている   作:りおん

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少し変更しました。話に直接の影響はありません。


第7話

「硝子、八幡の容態は?」

 

「外傷は完治したよ。が、いつ死んでもおかしくない状況だ」

 

「やっぱりそうか」

 

八幡は東京にいる僕たちがはっきりと知覚できるほどの呪力を使った。恐らくは自分の命を代償にした縛りの力。

 

「何で死んでないんだろうねぇ。誰かに呪われでもしたかな」

 

「人一人を、しかも死ぬ寸前の奴を生かし続ける呪いか?そんなのとんでもない呪力量と思いが必要だ。生きているのは代償を設定する際に無意識に妥協したからだろう。今回の場合やってもやらなくても死ぬんだ。そんな状況で普通、高校生が本気で命を捨てようなんて考えない」

 

「……まあ、それに関しては考えても仕方ないか。それで?回復の目処はたってるの?」

 

「できる限りのことはやった。あとは彼の気力と生命力次第だ」

 

 

 

 

 

 

 

扉の中から先生たちの声が聞こえる。

比企谷の異常な力は命の代償によるものらしい。

家入先生は否定していたが、私は否定しきることが出来ない。1週間しか過ごしていないが、それでもあいつが自分のことを軽視しすぎていることを知っている。

 

 

「ホント……バカ」

 

手に持ったビニール袋がくしゃりと音をたてた。

 

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」

 

「おっ。起きたね。おはよう」

 

左から声が聞こえる。そこには目に深い隈を作った女医がいた。たしか家入先生だったか。

 

「気分はどう?君はあれから1週間も寝込んでたんだから不調なところがあったら言って」

 

1週間も寝たきりだったのか。はっきりとした内容は思い出せないが……寝ている間に夢を見ていた。暖かくて冷たいそして、とても優しい夢だった気がする。

 

不調なところは全くない。むしろあの時よりも呪力の出力が上がっている。

 

「特に不調なところはありません。治療ありがとうございました」

 

「これが私の仕事だからね。礼はいらないよ」

 

がちゃりと音を立てて扉が開く。見てみるとコンビニの袋を持った五条先生が立っていた。

 

「おっ。八幡起きてるじゃん。はい、お見舞いのコーヒー。前飲んでたでしょ?」

 

「お前、病み上がりの人間にコーヒーって。もうちょっと胃に優しい物を選べよ」

 

「え~?病み上がりだからこそ好きなもの飲みたいでしょ。ねえ、八幡?」

 

その気持ちは分からなくもないが……ていうか、これマックスコーヒーか。京都にもあったんだな。

 

「貰います」

 

目隠ししてるのにどや顔をしているのが分かる。家入先生が呆れた顔でこちらを見た。しょうがないだろ、千葉県民にとってマックスコーヒーは水と同義。なんなら水より胃に優しいまである。

 

「それ、頭おかしいぐらい甘いコーヒーだよね?良く飲めるね」

 

「人生は苦いからコーヒーは甘すぎるくらいが丁度良いんですよ」

 

五条先生が腹を抱えて笑い始めた。家入先生はため息をついて頭を抱えている。

 

「それなに?」

 

「マックスコーヒーのキャッチコピーです。俺が作りました」

 

「人生は苦いとか。否定できないところがまた面白いね。良いギャグセンしてるよ」

 

どうもと言って話を切り上げる。俺としてはギャグのつもりは無いんだが。

 

まだ笑い続ける五条先生を家入先生が諫める。

 

「五条、事情の説明をした方が良いんじゃないのか」

 

「それもそうだね。ふぅ。笑った笑った。……どっから話そうかな」

 

空気が引き締まった感じがした。どうやら今から大事な話があるらしい。

 

「八幡は特級と遭遇し縛りの力を使った。これは合ってる?」

 

「はい、合ってます」

 

あの時は無我夢中だったから正常な判断が出来ていなかった。いま思えばもう少し軽い縛りでも時間稼ぎくらいは出来たはずだ。

 

「そうして君は見事に特級を払ったわけだが、本当に重要なのはここからなんだよ。最後に君が手に持っていた物を覚えてる?」

 

「変な指みたいな物のことですか?」

 

「そうそう。あれは両面宿儺の指っていう特級呪物で発見されてるものは高専で厳重に保管されてる。もちろんあの学校にはもともと無かったものだ。それが存在した。つまりは、君たちを殺そうとした者が意図的に配置したと考えられる」

 

「どうして、そんなに強くもない俺たちを狙うんですか?理由が無いです」

 

「君の体質だよ。この指を置いていったものは君の体質について知っていると考えるのが妥当だ。そして、ここからがもっとも大事な話だ。今回の襲撃で君は生きている」

 

なるほど、殺そうとした奴が生きているんだ。だったら、何度も殺しに来るのが普通だ

 

「これからも狙われるってことですか」

 

「理解が速くて助かるよ。君にはもっと強くなって貰わなくちゃならない。正直、君の体質は不明なことが多い。呪詛師に良いようにはされたくないんだ」

 

「分かりました。努力はします」

 

「うん、頑張ってね。というわけで辛気臭い話はここまで」

 

そう言って手を2回叩いて場の空気を入れ替える。

 

「八幡は2年生だからね。毎年恒例の姉妹校交流会に参加して貰います。あ、開催は2週間後ね」

 

交流会っていうことは食事でもしたりすんのか?いや、ここは呪術の学校だ。腕の競い合い、体育祭方面のイベントだろう。

 

体育祭か……嫌な思い出しかない。

 

「そんなに嫌そうな顔しないで。若人から青春を取り上げることは誰であっても許されないんだよ。それがたとえ自分からであってもね」

 

 

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