落ちこぼれと言われ続けた僕は彼女達に何の夢を見るか。 作:べるぬい
タキオン製薬。タキオンの薬のせいで子供になっちゃったり記憶が無くなるのはよくあること。
残暑の時期が過ぎ、少し肌寒くなってきた今日この頃。肌着を半袖から長袖に変えた僕は、2人分の弁当箱を持ってトレセン学園のとある場所を目指し歩いている。
「…はぁ。今日は何されるんだか」
10分後ぐらいには変化する自分の体を案じつつ、弁当を崩さないように少し早足で目的地へ向かう。おにぎりがいいって言ってたけど、具は何でも良かったかな。シャケとか安直なものばかりだけど。
「タキオーン。いるー?」
目的地の扉をノックする。すると室内からドタバタと物音がし、「ちょっと待ってくれないか!」と声がした。
どうせ研究道具とか片付けてるんだろうな……せっかく弁当温めてきたんだから早くしてくれ…とか思いながら数分扉の前で待つ。
「やぁ!トレーナー君!待ってたよ!」
「ははは…待ってたのは僕なんですが。弁当冷えちゃったかもしんないよ」
「えーっ!?それは困るな!早く食べようじゃないか!」
しっぽをぶんぶん振り回しながら椅子に座るタキオン。こういうところは素直で可愛いな…とか思ったり。対面に僕も座り、タキオンに弁当を渡す。
「ふむ。おにぎりか。具は何かな?」
「シャケと昆布、あとはからあげとか入れてみた」
「ほ〜?美味しそうじゃないか。まぁトレーナー君のご飯何でも美味しいからね」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない!!」
料理は割とする方だし、褒められるのは悪い気分じゃない。もっと褒めてくれてもいいんだよ!!
「んでタキオン。僕は今日は何の用で呼ばれたの?」
「……あー…えーっと…そう!実はね…」
ガシャーン!!
何かシャキッとせず、口ごもってるタキオンの背後からビーカーやら何やらガラス製の物が割れる音がした。
「とー!!!」
「えっ!?あべしっ!!」
タキオンの背中をよじ登り、そのままジャンプしたかと思えば弁当スレスレに着地し、このままこっちに向かってきて急に顔面を蹴りに来た。嘘だろ??この小さいウマ娘誰なんだ…
「と…トレーナー君…大丈夫かい?」
「そこまでの威力じゃなかったから何とか…ね」
「じ、実はそのウマ娘の子守りを頼みたくてね…」
「子守り?いや、別にいいけど…この子誰だい?」
まじまじと小さいウマ娘を見る。前髪はパッツンで綺麗に長く伸びた芦毛が特徴的なウマ娘だ。顔も整っている。どこかゴールドシップに似ているような…。
「そのウマ娘…ゴールドシップだよ」
「え?はい??」
「私の研究中の薬を勝手に飲んじゃってね。特に害はないが、何故か幼児化してしまったんだ」
「おいおい困るよ!来週に菊花賞が控えてんだよ!?」
「大丈夫だ。その薬の効果は明日の朝には戻る」
「それは良かった…」
その言葉を聞いて安堵した。菊花賞に間に合わなかったらゴールドシップの頑張りはどうなってしまうんだ。
その時はタキオンを責めよう。当分ご飯抜きも良いかもしれない。
「まぁという訳だ。迷惑を掛けた代わりと言ってはなんだが、弁当箱はしっかり洗って後で返そう。では頼んだよ!」
厄介者を押し付けてやった!みたいな顔をされて研究室を追い出されてしまった。弁当まだ途中なんだけどな…。
「なぁなぁ!あんたなにものだ!?あたしのとれーなーか!?」
記憶が無いのか…?これはマックイーンとかに見せたら面白い反応してくれそうだな。
「自己紹介しようか。僕は君のトレーナーだよ。鴛鴦 悠って言うんだ」
「ゆたか……。えっと…あたしはごーるどしっぷ!」
「元気だね」
「まぁな!ごーるどしっぷちゃんはいつでもげんきだぜ!」
可愛らしいな。幼い時のゴールドシップをこうして見れるなんて。この可愛さ、ディーバの皆に共有しよう!
「そしたらチームのみんなを紹介したいから着いてきてくれる?」
「いいぜ!あんないしな!!」
「よし。じゃあ行こうか」
ゴールドシップを持ち上げ、自分の肩に乗せる。所謂肩車ってやつだ。ゴールドシップの今の身長は120あるかないかぐらいだろうな。小さくて軽い。
「うぉー!たけぇー!!よっしゃ!!とれーなーごうはっしんだー!」
「任せなさーい!」
後に学園内で幼女を肩に乗せ走る、体が黄緑色に発光不審者が目撃されるという噂が流れるとか。
◇◇◇
「えぇ!?これゴールドシップですの!?」
「おーよ!めじょまっきーんだっけ?よろしく!」
「メジロマックイーンですわ!」
「めじょまっきーん!」
舌っ足らずの感じが可愛い。ゴールドシップは元々は美人だが、幼くなると美人というよりは可愛さが目立つな。
「いぇーいゴールドシップ!僕が遊んであげるよ!」
「私も遊んであげるわね」
「ゴールドシップさん。パン食べますか?」
一躍みんなの人気者になったゴールドシップ。色んな人に構われて楽しそうだな。構われて嬉しそうなのは今も昔も変わらないってことか。
「…まぁゴールドシップがこんな姿になってしまったが、来週に菊花賞が控えてることは変わらない。テイオー。シンボリルドルフを目指すのならば、ゴールドシップを負かしてみろ」
「…任せてよ。僕は負けないよ」
……仲間のどちらかが負け、どちらかが勝つ。せめて敵同士であればと思わなくもない。けれどこれは彼女たちが選んだ選択だ。僕がとやかく言う資格はない。
「よし。ゴールドシップの子守りは任せてね。君たちはいつも通りトレーニングだ!」
ゴールドシップを肩車し、トラックへと向かう。僕が彼女たちに出来ることはトレーニングを見て、アドバイスするぐらいしか出来ない。走り、勝つのは彼女たちだから。
◇◇◇
さて。ここで問題が発生した。夜、ゴールドシップは誰が面倒を見るのか。トレーニングを終え、普通に帰ろうとしたらゴールドシップがくっついてきた。離れなさいと言っても離れない。
そんなゴールドシップを見てマックイーンが一言。
「トレーナーさん。ゴールドシップさんの子守りは任せろって言ってましたよね?」
という訳で、今僕はトレセン学園内のトレーナー専用寮で、幼女ゴールドシップを寝かしつけたのだが、そこに至るまでに、一緒にご飯を食べ、一緒にお風呂に入った。
これ犯罪じゃないよね?元の姿に戻ったら僕蹴り殺されない?大丈夫??
願わくば記憶が残っていませんようにと神に祈る他なかった。
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