落ちこぼれと言われ続けた僕は彼女達に何の夢を見るか。 作:べるぬい
「んあー…暇!!ちょっと採集に行ってくるわ!」
「え?あ、おい!!……はぁ…」
ゴールドシップのデビュー戦から三日ほど経った今。チームディーバを結成したのはいいものの、チームメンバーが一人も増えない。
呼び込みとかもしっかりして、主にゴールドシップがチラシとかもばら撒きまくったのに、何の成果も得られませんでした!
いや本当にどうしよう。狭くも一人二人ではガランとして寂しい部室の中、僕はそろそろ本格的に焦ってきていた。
「…ふぅ。僕だけでもスカウトに行かなきゃな」
新たなメンバーを求めて外へと向かおうとすると急に扉が開き、顔面と濃厚接触する。
「ヴッ!」
「あーん?トレーナーかよ!何してんだよ」
「急に開くな…よ……え?その肩に抱えてる袋何…?」
「おー!トレーナーが気になってるって言うからよ!」
ズルっと袋から出されたのは綺麗な薄紫色の葦毛のメジロマックイーンだった。ん???
「え?いや何誘拐してきてんの!?」
「コイツが新しいメンバーだ!」
「いやいやいやいや!メジロマックイーンさんはもう他のチームに所属して……え?」
「…うっ…うぅ…ぐすっ…うぅ…」
「あれ?泣いてる?マックちゃん泣いてる?」
「ゴールドシップ…謝っとけよ」
「え?アタシィ!?」
袋からズルズルっと排出されたメジロマックイーンは何故か三角座りをして、膝の間に顔を埋め、本格的に泣き始めてしまった。
え?これヤバくない?どこか体とか痛めてたらどうしよう!メジロマックイーンさんが所属してるチームからボコボコにされるに決まってる!
ま、そんときはゴールドシップを犠牲にすればいっか!
「あのー…どうしたんですか?このゴールドシップのせいでどこか痛めたとか…?」
「おい!アタシのせいにすんじゃねぇ!アタシはただ袋に詰め込んで持ってきただけだ!」
「いやそれ普通に大問題!」
どうしよう泣き止まないよ。お菓子あげれば泣き止むかなぁ。いやでも子ども扱いするな!って怒られる?そもそもこれ社会的にヤバいのでは?
メジロ家に抹殺されるかもしれない!とりあえず早く泣き止ませないと!
「ほら!ここに飴があるよ!とりあえず落ち着こ??ね?」
「…食べます」
あ、え?もしかしてお菓子有効か…?とりあえずメジロマックイーンさんが落ち着くまではそっとしておこうかな。
◇◇◇
「…お見苦しいとこを見せてしまい申し訳ありません」
「いやいや落ち着いたようで何より。うちのゴールドシップがごめんね。怖かったでしょ?」
「頭の中がパニックになりましたわ。…あの一つ聞いてもよろしいでかしら?」
「ん?僕に答えられるならなんでも」
何を聞かれるんだ…?拷問は何がいい…?とか?不味いやはりメジロ家に殺されるのかもしれない!
「あの、ここはチームディーバ、ですよね?」
「そうだぜ!アタシとトレピッピだけの寂しいチームだけどな!」
「あはは。メンバー足りてないからまだ正式に決まってるわけじゃないけどね…。ゆくゆくはって感じかな」
「そう…ですか。あの!私も加入してもよろしいでしょうか!?」
「え!?」
「ほらなー?加入メンバーって言っただろ?」
ゴールドシップの言ってたことは本当だったのか…!でも何で?メジロマックイーンさんは他のチームに既に所属してたはずなのに。
「それは凄い大歓迎だけど……メジロマックイーンさんはもう他のチームに所属してなかったっけ?」
「実は……チームを追放されてしまったんです…」
「え?何で?だってメジロマックイーンさんは、あのメジロ家の」
「やめてください!!!…あ、ごめんなさい…」
思ったより深刻な理由があるのかもしれない。詮索は程々にしておこう。じゃないと多分僕が抹殺される。
「…あの、3日前のデビュー戦ありましたよね?」
「うん。ゴールドシップが勝ったやつだね」
「エクスプロージョンしたからな!余裕だったぜ!」
「私はそのレースで酷い結果を出してしまって、それで期待外れだと言われて……その、恥ずかしながらチームを追い出されたんです」
なるほど。確かメジロマックイーンさんが所属してたチームは【エギル】。強豪チームで、このトレセン学園でも1番注目されてるチームだ。
結果が出せないウマ娘は必要無い、のかもしれない。
「その、私は今家の方でも立場が危うくて…」
「え?」
「結果が出せないとなれば、もしかしたら勘当されたりするかもしれないんですの…」
「あちゃー。でもそれなら尚更別のチームに入った方がいいんじゃ…」
何で無名なチームであるここに来たんだろう。いやゴールドシップが無理やり連れてきたんだった。彼女程の実力なら引く手数多だと思うんだけどなぁ。
「では、では一度私の走りを見て貰えません?それで判断をしていただきたいです」
「分かった。僕としては加入は大歓迎だからね。それじゃあトラックへ行こうか。ゴールドシップもついでに……あれ?」
ゴールドシップはいつの間にか消えてた。
◇◇◇
「はぁはぁ…はぁ…ふぅ。…どうでしたか?私の走りは?」
トラックを3周ほどしてもらい、じっくりとメジロマックイーンさんの走りを見た。しかしどうにも足に力が入っておらず、ステイヤーと期待されてた割には確かにスタミナ切れが目立ってるかもしれない。
その通りなのか、息も荒い。何が原因なんだろう?
「足に力が入って無いんじゃないかな?って思うんだけど…どう?」
「…!そうです!そうなんです!なぜ分かったんですか?」
「いや、勘かな……。他の長距離ウマ娘に比べるとスタミナ切れも目立つし……ん?お腹に手を添えてどうしたの?具合悪い?」
「い、いえ!なんでもないですわ!」
そうメジロマックイーンさんが否定した時、ぐ〜、とお腹のなる音が響き渡った。この音は勿論僕ではない。そして近くには僕とメジロマックイーンさん以外はいない。
「うっうぅ…!恥ずかしい!恥ずかしいですわ!!」
そう言ってしゃがみこんでしまった。もしかしてご飯をしっかり食べていないのか?
「ねぇ。メジロマックイーンさん。ご飯しっかり食べてる?」
「え?えぇ。必要なカロリーはしっかり摂取していますが……あっ!」
しゃがみこんでから勢いよく立ったせいか、メジロマックイーンさんはふらついて倒れそうになる!
「危ない!」
間一髪何とか受け止める。近くに立ってて良かった。メジロマックイーンさんは大丈夫だろうか。
「メジロマックイーンさん?大丈夫…?あれ?おーい」
メジロマックイーンさんは気を失っていた。これ不味いじゃん!
僕はメジロマックイーンさんをしっかり抱き抱えて、保健室へと急いだ。
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