【ホロラバ】√:AlterNative最速クリア目指す   作:鈴北岳

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 難産でした。
 誰だ六人で会話させたの(←
 三人で会話させるべきでした。

 本当はコメント欄とか書くつもりでしたが、(文字数がやばいので)止めました。
 ガバが多くて世知辛いのじゃ……。

 それはそれとして、友達とのwifiモンハンとレプリカント(序盤)は良きです。
 異形の「白の書」が良識的で、人間の主人公が微妙に物騒なのがなお良きです。
 モンハンのアプデ楽しみです。





4.振り返り配信(表) その1

 

 

 昨日のバトロワ後。

 レイラは転送中に気絶した。

 目が覚めるとあやめがいて一緒に学園を出た。

 何か話したはずだけど今は思い出せない。

 家に帰った途端、シャワーだけ浴びて泥のように眠ってしまったからだ。

 なのでバトロワのアーカイブを日が昇らぬ早朝に見返した。

 見返して激戦に何度か遠い目になった。

 

 あやめと共にレイラは学園に登校した。

 当然のように学舎は元通りだった。

 学園の創立者Ago・Yが一晩で直したようだ。

 

 登校直後にレイラはA講師に呼び出され注意を受けた。

 残念ながら当然だった。

 レイラも当然だと受け入れた。

 反省した。

 けど目的のためだったので後悔はしていない。

 そんな内心が伝わってしまったのだろう。

 A講師は微妙な表情だった。

 

 その後はあやめと共に大講堂へと移動した。

 振り返り配信の説明を受けるためだ。

 

「──以上で説明を終わります。では、皆さん、送られたメール通りの組を作って、指定の教室に移動してください」

 

 A講師の説明が終わり、バトロワ参加者全員が動き出す。

 

 レイラの組は最後の乱戦のメンバーだった。

 

 まず真っ先にぼたんがレイラに気付き手を上げる。

 レイラも同じように挨拶を返した。

 ぼたんの隣の水色の少女も小さく手を振った。

 名前を雪花ラミィというらしい。

 控えめながらもしっかりした少女のようだ。

 

「やぁ、チャンピオン」

 

 気安い言葉と共に肩を叩かれる。

 レイラが振り返るとそこにはフレアがいた。

 

「不知火先輩」

 

「あ、知っててくれたんだ。嬉しいね。フレアでいーよ、チャンピオン。君のことはなんて呼ぼうか?」

 

「ではレイラで。レイラ・ポーンズと云います。よろしくお願いしますね」

 

「オッケー、レイラちゃん。んじゃ今後ともよろしく……。いや、あやめ先輩、ここじゃ何もしませんて。あとノエちゃんも」

 

「ここじゃ??」

 

「レイラ、フレアちゃんはタラシだから気い付けてなー」

 

 一瞬でノエルの空気が冷え込んだ。

 ノエルはフレアの袖を掴んでいる。

 

 レイラはあやめの後ろでノエルの怪力を思い出す。

 腕じゃない辺り、ノエルが絶妙に冷静さを欠いてることがわかった。

 

「あっはっはっ。レイラちゃん、モテモテじゃん」

 

「アーカイブ見たけど、ホント凄かったね」

 

「うん。めちゃくちゃ頑張った。……めちゃくちゃ頑張った」

 

「うん、めちゃくちゃ頑張ったね……」

 

「あー……、めちゃくちゃ頑張ったなぁ、確かに」

 

 下級生三人は揃って遠い目をした。

 相手の上級生三人を思い出す。

 百鬼あやめ、白銀ノエル、不知火フレア。

 バリバリの武闘派三人相手にめちゃくちゃ頑張った。

 もう二度としたくないとぼたん以外は強く思った。

 ぼたんはあと何回かやりたいと思った。

 

「けど何だかんだ楽しかったな」

 

「いや、怖かったんだけどあれ、ラミィは!」

 

「うん。私も怖さが勝ったなぁ」

 

「お。レイラちゃんはちょっと楽しさもあった感じ?」

 

「………………まぁ」

 

「うそでしょ!?」

 

 ラミィはブルータスとでも言いたげだった。

 裏切られた気分だった。

 

「そろそろ行きましょうか」

 

「白銀先輩。……お話は終わったんですか?」

 

「終わったよー。もしフレアに何かされそうになったら私かあやめちゃんに言ってね。何とでもするから」

 

 あと私のこともノエルで良いよ、と。

 ノエルは下級生三人を割り当てられた教室へと促す。

 後ろでは何やらあやめとフレアが話し込んでいた。

 

 雑談もほどほどに教室に入る。

 機材の準備は既に終えていた。

 

 レイラは確認のためのタブレットを準備する。

 

「それにしてもレイラちゃん、あやめちゃんにとても好かれているね。幼馴染って聞いたけど、本当?」

 

 ノエルのその言葉に少し逡巡する。

 あやめとの関係性を明かして良いものか、と。

 あやめを見る。

 あやめは楽し気にレイラとの昔話をしていた。

 本当に楽しそうだった。

 

「はい。私はあやめちゃんのお姉ちゃんなので」

 

 なので胸を張ってそう答えた。

 レイラはあやめより二十歳ほど年上だ。

 鬼族にお世話になっていた時は、そのほとんどをあやめと過ごしていた。

 特にあやめは迷子になりがちだったので、夕暮れ近くには手を引いて一緒に帰ったものだった。

 

「あーね──姉っ?」

「えっ姉っ?」

「マジで姉っ?」

 

 三者同時に驚いた。

 胸を張るちびっこと楽し気な少女を見比べる。

 

「姉? ……妹じゃなくて?」

 

「はい。身長は抜かされましたが、姉です」

 

「え、ほんとなの?」

 

「ほんとほんと」

 

「マジで?」

 

「デジマ。しっかり者のお姉さんとして、よくあやめちゃんの手を引いてたよ」

 

「え、余の方がレイラの手を引いてたんだが」

 

「うん、そうだね。外に連れ出すのはあやめちゃんで、私は迷子になったあやめちゃんを家に帰したよ」

 

「あー、あやめ先輩、地図が読めないからね……」

 

 ふとノエルはあやめとレイラの関係性を表に出して良いかと迷った。

 このままだと確実にあやめは口にするし。

 レイラもそれを拒まないだろう。

 

「フレア。これって表に出して良いの?」

 

「確認は取ったよ。大丈夫じゃないかな、このやり取り見る限り」

 

『ノエルさんとの通話から聞いてましたが、問題は無いかと』

 

 A講師の声がフレアのスマホから聞こえた。

 その声にあやめは笑顔になった。

 

『ただ一応、先輩後輩ではありますので、レイラさんはあやめさんの「妹分」ということでお願いしますね』

 

「ヱ」

 

「どっから出してるのその声?」

 

 レイラの変な声にラミィは驚いた。

 

「姉です」

 

『妹で』

 

「私はあやめちゃんのお姉さんです。近所でも良い姉だと評判だったんですよ。今もです」

 

「いや、今はわからんのじゃないかなー。もうあれから千年以上経ってるし」

 

「「「「千年!?」」」」

 

 ししラミ、ノエフレの驚愕が重なる。

 ノエフレはあやめの年齢を思い出し、まあそうだよな、と納得するものの。

 

「今も姉です。評判なんですよ」

 

 あやめとA講師に抗弁するレイラを見る。

 

 この場の誰よりも背丈が低い。

 上級生三人はホロライブ最小の潤羽るしあを連想する。

 同じくらいか、それより低いか。

 この場のメンバーがあやめを除き比較的長身組なので余計に小さく感じた。

 

「「「「……」」」」

 

 四人は目線で会話した。

 どうしよう。

 本当にどうしよう。

 レイラは姉を希望している。

 けどあやめはレイラが妹であることに期待している。

 

『しっかり者の妹でいきましょう』

 

「姉です」

 

 平行線だった。

 あやめはふと時計を見る。

 時間が近い。

 

 ささっとA講師にメールをする。

 姉志望の妹系幼馴染はどうか、という内容だった。

 あやめは判断をリスナーに丸投げすることにした。

 返信はすぐきた。

 ではそれでお願いします、と。

 

 あやめはそのメールを読んで笑みが零れた。

 

「はいはい、そこら辺でなー。そろそろ時間だし、さっさとさっさと」

 

「あやめちゃん、私はあやめちゃんのお姉ちゃんだよね?」

 

 

「ほらほら、ノエルちゃん、フレアちゃんよろしくー」

「あ、はーい。ノエちゃん、ししラミいくよー」

「はいはーい」

「うす、了解です」

「はい、わかりましたー」

 

 

「え、ねえ、お姉ちゃんだよね」

 

 すっとレイラは視線を逸らされた。

 イイ笑顔であやめが肩を叩く。

 

「とりあえず、レイラ。こっちに集中しような」

 

「あやめちゃん──」

 

 レイラは悲痛な声を上げた。

 あやめはそんなレイラを見てちょっとぞくぞくした。

 

 配信が始まる。

 

「うひゃー。思ったより凄いな。見ろよ、レイラちゃん。この鎖の悪魔って君のこ」

 

「私は悪魔じゃないです」

 

 沈黙。

 

「私は悪魔じゃないです」

 

「お、おう」

 

「ですので、他の誰かでしょう」

 

「でも鎖を使ってたのはレイ──」

 

「しっ。ラミちゃん。それ以上いけない」

 

 レイラの表情筋は死んでいた。

 虚無だった。

 何もない。

 

「あー、じゃあまあ。映像、送るね」

 

 ノエルが気を使ってカメラをオンにした。

 配信画面に六人が映る。

 六人も配信にのせるのは普通の機材では難しいが、この学園は普通ではない。

 

「お、映ったね。リスナーの皆さん、こんまっするー! 武闘派上級生その一、白銀ノエルです。本日は振り返り配信ということで──」

 

 最初の自己紹介は特に問題なく終わった。

 コメントで上がったのはやはり3つ。

 ラミィのノエル戦での奮闘。

 ぼたんのカート事件。

 そして。

 

「おー、よしよし。好きでやったわけじゃないよなぁ」

 

 案の定、レイラのチェーン傷害事件だった。

 悪魔呼ばわりされたレイラの眼は濁っていた。

 

 気の毒に思ったぼたんはレイラの頭を抱き寄せて撫でる。

 出遅れたあやめは真顔になった。

 

「まあ確かに絵面は酷いよなぁ」

 

「フレア、しっ」

 

「や、ごめん」

 

 率直な感想を零れたフレアをノエルが窘める。

 

「ラミィはあれ、効率的で良いと思いますけどね」

 

「非倫理的なのは否めないけど、私がレイラの立場なら多分したかなぁ」

 

 新入生二人は概ねレイラの戦術には肯定的だ。

 というより、ああした戦術の一つか二つは必須だと実感した。

 

「……まあ、余もあれは有りかなぁ、と。実際、レイラの魔法はそこまで痛くなかったし」

 

 二人が肯定的にならざるを得ない元凶がレイラの戦術を肯定した。

 

「いや、あやめ先輩はそもそも魔法に強い種族じゃないですか。通る攻撃探し出すのめっちゃ苦労したんですよ」

 

「フレアちゃんのは違う意味で容赦無いよね。その探し出す過程で余、何十本と異なるパターンの矢受けたし、『痛ったあ!?』と思ったら直後にそれと同じ矢がたくさんくるし」

 

「ですよね。フレア先輩は徐々に詰めてきます。私も飛ぶ癖を読まれてきたのか、避けることに専念しなくちゃ難しかったです」

 

「敵の弱点突いたり行動読んだりは当然じゃないですか? ホント苦労しましたよ。あやめ先輩は当たらないのも見失うことも多いし。レイラちゃんは純粋に飛ぶのが上手だよね。置いた矢への反応が鋭い」

 

「ガチ勢な羅刹が多いですねー。コメント欄も引いてますよ。あ、この際だから言いますが、あやめちゃんの攻撃の出だしを潰すのも団長えぐいと思います。心が折れます」

 

「ノエルちゃんのゴリッゴリの不思議怪力もえぐいのだが。何で鬼たる余より力強いん?」

 

 ぼたんとラミィはこの上級生三人共間違いなくえぐいと確信した。

 レイラは未だ無抵抗にぼたんの脇で髪を梳かれていた。

 この子の髪すげえサラサラなどとぼたんは手を動かす。

 落ち着くななどとレイラはぼたんにされるがままだ。

 

「ちなみにレイラ、何か申し開きみたいなのないか?」

 

「私は悪魔じゃないです」

 

 あ、はいという言葉をあやめは飲み込んだ。

 ふんふんと頷きながら続きを促す。

 

「私はこれが一番倒すのに効率的だからこの手段を取りました。悪魔のように、彼らを痛めつけることを目的にこの手段を取っているわけじゃありません。なので私は悪魔じゃないです」

 

「え、何。レイラちゃん悪魔に何か恨みでも?」

 

 唐突な悪魔への罵倒染みた言葉にフレアは慌てた。

 その言い回しはまずい。

 それに気づいたようでレイラも慌てて言葉を続ける。

 

「すいません。軽率かつ不適切でした。魔族の1つである悪魔ではなく……何と言いましょう。比喩的な意味で『悪魔』という言葉を使いました。悪魔という種族を貶す意図はありません」

 

 深く頭を下げる。

 一部コメントに怒りの文章が見えていた。

 舞台裏でA講師も注意喚起の通達を飛ばしていた。

 

「こういうの多いですよねー。団長もうっかりしないように悪口は控えてます」

 

「鬼としても『強い』という意味で使われるのは大歓迎だが、『鬼畜』という意味で使われるのはちょっとなー」

 

「団長は良く『鬼のような怪力』とか言われてるんですけどどう思います? 団長、これでも乙女なんですけど」

 

「致し方ないね。ノエルちゃんのは下手したら鬼より怪力だからなー。まあ、鬼族なら魅力の一つだけど、人族ではちょっとダメなんだっけか?」

 

「ノエちゃんの怪力は鬼でも驚くほどですか……。はい、女の子にあんまりよろしくは無いですね。少なくともエルフではダメですよ。コーヒーはどうかは知りませんが」

 

「ですね。ラミィのいたとこも女の子にそれはダメと」

 

「獣人でもその傾向はありますね。獅子族の上の世代では魅力の一つだったそうですが、今はそうでもないです」

 

 さり気なく話題をすり替える。

 あやめがいてノエルは助かったと思った。

 ついでに「鎖の悪魔」という呼称も控えるように暗に示しておく。

 ノエルとラミィは落ち着いたコメント欄を見て胸をなでおろす。

 

「私も色々な土地を巡りましたが、力強いは女の子に多用しちゃいけない誉め言葉でしたね」

 

「あ、レイラちゃん、前は運び屋やってたんだっけ?」

 

「うん。つい最近までしてた」

 

「なるほど。あのチェーンでの攻撃の発想はそこから?」

 

「はい。職業柄、私は悪天候でも荷を運ぶことがあったので。気持ちの悪い飛び方と、その耐性はあります」

 

「うん。あれは気持ち悪かったな。最初は衝撃の瞬間に備えることはできたんだが、四度目辺りからはめちゃくちゃになって、酔いと痛みできつかった」

 

 ここですね、と。

 ノエルはアーカイブの動画でそのシーンを再生する。

 

「え、その状態で炎の反撃できたんですか?」

 

「ラミィには絶対にできませんね……」

 

 魔法使い二人はその映像を見て改めて思う。

 ああなった時点で負けだと。

 そもそも最初の落下の衝撃で落ちている確信がある。

 

「そうですね。団長も浮かされた時は焦りました。職業柄、団長の総重量はかなり重たいんですよね」

 

 ノエルは防衛を得意とする騎士だ。

 だからこそ、吹き飛ばされてはならない。

 そのために自らの重量を増す魔法を鎧に刻んでいる。

 

「そのKな胸筋じゃなくて?」

 

「確かに肩こりと足元はヤバいよ? けどそうじゃなくて。一度目も二度目も団長の負けパターンなんだよ。団長、速くないから動かされるときついんですよね」

 

 あの動きで速くないのか。

 あやめは一気に詰められた距離を思い出す。

 

「足吊られたのは怖かったなぁ」

 

「その後の魔法は大丈夫だったんですか、あれ。見てて『痛ったぁ』とラミィ思ったんですけど」

 

「どちらかというとびっくりしたかな。足の鎖外そうとしたら目の前が真っ白に光ったんだよ。何が起きたのかわかんなくて、気付いたらあやめちゃんにボコされました」

 

「あれはあっという間でした。多分、ラミィがその時は一番周りを見れてたんですけど」

 

「我ながら恐ろしく上手にハマりましたね。二正面作戦」

 

 ぼたんが感慨深く呟く。

 あの時は三人の内誰かを落としたかった。

 特にレイラを狙うフレアは確実に。

 次点で何かやらかそうとしたノエルを。

 

 その後に失策だったかと感じたが。

 きっと、あれは分厚い紙一重だったのだろう。

 同じ状況にもう一度挑んでみたいとぼたんは思う。

 

「はい、ぼたんちゃんがフレア先輩を、ラミィちゃんがノエル先輩とあやめちゃんの気を引いてくれたので助かりました」

 

「ちなみにレイラちゃんや、どうしてノエル先輩狙いだったの?」

 

「あやめちゃんを最後にタイマンで倒すと決めていたので」

 

「そう! あれ!」

 

 あやめが思い出したように大きな声を出す。

 五人の視線があやめに集中した。

 

「あれさ、最初から最後までああして倒すと決めていたのか?」

 

 あの倒し方。

 あやめの最大の疑問はそれだ。

 

 およそ、百鬼あやめは近接において学園最強だ。

 種族による強い肉体と多い魔力──妖力。

 類稀な観察眼と瞬発力による後の先。

 二刀の大太刀を振るい辛いとしても。

 屋内における接近戦は必ずあやめが優勢になる。

 

 だからこそ、あやめとの戦闘において最も大事なのは逃走経路だ。

 仕切りなおせる距離と言って良い。

 

 間違ってもあやめに主導権を握られかねない手段で距離を取るのは自殺行為だ。

 

 少し考えてレイラは指を立てる。

 

「私が勝つための手段は二つありました。一つは一撃離脱で削ること、もう一つは捕まえて叩きつけ続けること」

 

 えげつね、とフレアは言いかけた。

 実際コメント欄ではえげつない、というものが多かった。

 鎖の悪魔、というコメントは流れなかった。

 

「最初はグラウンドでするつもりでした」

 

「そうなの? すぐ校舎に押し込んでたけど」

 

「はい。ぼたんちゃんが落とされた時に受けた攻撃で、これはダメだと直感しました」

 

 反応速度が早過ぎる。

 その事実はレイラを強く打ち据えた。

 

 レイラの強みは尋常ならざる空中機動である。

 想像よりも速い直線飛行。

 想像よりも鋭い方向転換。

 いずれも「突風」と大きな翼による移動量の多さによるものだ。

 それで正面から不意を打つ。

 レイラの戦術はこれが核だ。

 

 それを真正面からねじ伏せられてはどうしようもない。

 

「だから、あやめちゃんの手数を潰す方向で戦術を組み立てなおしました。対処に負えきれなくなればチェーンで、最後まで粘れればアーカイブのように勝負に出るように」

 

 強みを潰す。

 自身の強みである機動力を捨ててでも。

 自分の強さはあやめに届かないから。

 

「うん。厄介だった。何かしら狙っていることは読めてた。流石に瓦礫の投擲で本気で倒そうとはしてこないだろうから、結局はチェーンで吊ってくるだろうとは読んでいた」

 

「え、当たり所が悪くて気絶してくれないかな、とか考えてたんだけど」

 

「え。そこまで余間抜けに見えるんか?」

 

「私の運が良ければいけるかなー、と」

 

「それはさすがにあやめ先輩のこと舐めてない?」

 

 フレアは少し語気を強めた。

 

「いいえ。むしろそうした運が無ければ、あやめちゃんを倒すことはできないと考えています。勝負は時の運と言いますし。それに、期待していれば、相手からは奥の手を備えているか、悪足掻きかの判別に迷いますから」

 

「……なるほどね。ブラフのつもりならまあ妥当か」

 

「それはそれとして相手の失敗は本気で祈ります。有利な状況はあればあるほど良いわけですし」

 

「ちょっとタチ悪いな!?」

 

「レイラもしや性格悪くなった?」

 

「こういうのは老獪というのですよ。オトナはズルいのです」

 

 ふふん、とレイラは幼い胸を張る。

 ついでに年上アピールもかかさない。

 少しでも精神年齢を上に見せておかなければ、姉でなくなるかもしれないのだ。

 澄ました顔だが焦っている。

 

「そういえばレイラちゃんはあやめちゃんの幼馴染なんだっけ?」

 

 ノエルはコメントを見て二人にそう問いかけた。

 タイミングは計っていた。

 レイラのあやめへの気安さは良く分かる。

 同様にあやめの気安さもこのやり取りで見て取れる。

 元から少なからず二人の仲についてのコメントはあった。

 

「ううん、それなんだけどな」

 

「──姉です」

 

 ずいっとレイラは前へ出た。

 気持ち。

 あやめの言葉に被せてしまったのは焦りからだ。

 

「私はあやめちゃんのお姉さんです。近所でも良い姉だと評判だったんですよ。今もです」

 

「……いや、今はわからんのじゃないかなー……もうあれから千年以上経ってるし」

 

「……また同じやり取りしてる」

 

「ラミちゃん、しっ。レイラちゃんはパニクると壊れたラジオになるでしょ」

 

 五人は曖昧な笑みを浮かべた。

 それにコメント欄も察したようだった。

 

「……まあ、余よりレイラが20歳ほど年上なのは事実なんじゃが。ぶっちゃけなぁ、1500年も経つとなぁ」

 

「え、私、あやめちゃんのお姉ちゃんだよね?」

 

 まるでさも梯子を外されたかのような表情だ。

 他の五人を見る。

 優しい眼差しだった。

 なんだったら温かいし。

 幼い容貌のレイラには幾度となく経験したものだ。

 

 コメント欄を見る。

 嫌な予感がしたがねじ伏せる。

 年上アピールはした。はずだ。

 初配信にしては理知的な発言をしていた。と思う。

 

 ──果たして。

 

 レイラの瞳が濁る。

 表情が抜け落ちる。

 

 つまりは、そういうこと(背伸びする幼子扱い)だった。

 

 傷は深い。

 がっかりだ。

 

 








お嬢の保護者をやってみたい人生でした……。
書き溜めは無いのでまた失踪します。
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