【ホロラバ】√:AlterNative最速クリア目指す   作:鈴北岳

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 2021/05/05 19:45
 加筆。
 少し前半の最後の部分が増えてます。
 フブキとレイラのやり取りです。





4.振り返り配信(表) その2

 

 振り返り配信は終わった。

 レイラの心に深い傷跡を残して。

 表情に虚無を出してしまったけど、泣かないだけマシだったと思う。

 レイラはそう思うことにした。

 思い込むことにした。

 

 もう思い出したくない。

 思い出したくない、が。

 配信をする以上、より良い振る舞いをするために、この振り返り配信は少なくとも一度は見返す必要がある。

 レイラ・ポーンズ約1500歳。

 未だ、ガラスのハートの持ち主である。

 

「──しかしまあ、人の琴線なんて何がそうかはわからないよねー」

 

 白い狐の獣人、白上フブキが隣の席でそう言った。

 たはー、と笑いながらお茶を飲む。

 

「そうですね。自分でもわかりませんから」

 

「あれ? もしかしてバトロワで言われて初めて気づいたの?」

 

「はい。まさかあそこまでがっくりくるとは思いませんでした」

 

「まあそうかー、あんな風に言われることなんてそうそう無いもんねー。このご時世だとなおさらだし、普通に生活してたら言われないよね」

 

 場所はファミレス。

 その一角にレイラ達はいた。

 先ほどの6人から3人増えて9人。

 大所帯も大所帯だった。

 

「その普通じゃないことをして、そう言われるレイちんが羨ましい……」

 

「トワちは悪くない方が良いよ。あれは色々キツいよー」

 

「いやでも、悪魔としてさぁー」

 

 レイラの被害者である二人がいた。

 紫を基調とした悪魔の魔族である常闇トワ。

 黄色を基調とした羊の獣人族である角巻わため。

 

 振り返り放送後に三人は現れた。

 

『貴女がレイラちゃんですね?』

 

 そう言って現れたのは、サングラスをかけたスーツ服姿の三人。

 狐と悪魔と羊だった。

 気圧されたレイラがこくんと頷く。

 するとあっさり三人はサングラスを外して。

 

『ちっっっっちゃ可愛い!!』

 

 などと言って三人でレイラを高い高いした。

 一瞬で目は死んだ。

 自尊心が他界他界した。

 その後にそのお詫びも兼ねて大所帯でファミレスに同行したのだ。

 

「一瞬の出来事だったけど、わためのこと覚えてる?」

 

「はい。悪魔のトワ様とセットで覚えてます」

 

「良かったぁー。あんなことされて覚えられてなかったらやられ損だったからねぇ」

 

「レイちん衝撃的だったから。トワ達は忘れたくても忘れられないわー」

 

「それは、その、……すみません」

 

「いーよ。来月はリベンジしに行くから」

 

「あはは。レイラちゃん、先輩方に早速目を付けられてるね」

 

 するりとぼたんが割って入った。

 オレンジジュース片手に。

 

「お。来たなーいぶし銀の獅子っ娘。立ち回り凄かったよ。トワ様、感心しちゃった」

 

「カートに乗った大見得も最高だったね。わため、あそこ凄い笑っちゃった」

 

「そうそう。ギャグとシリアスの落差やばかったねー」

 

「うん。ぼたんちゃんがいなかったら私はダメだったよ」

 

「ありがとうございます。頑張った甲斐がありますよ」

 

 言って、レイラにグラスを近づける。

 

「ああ、私もレイラちゃんが来てくれて良かったよ」

 

 うん。

 レイラはそう言って、ぼたんのグラスに自身のグラスを近づけた。

 チンと小気味良い音が響く。

 一口飲んで、笑顔を交わした。

 

 間近で見ていたフブキはイイ笑顔で諸々の感情を自制した。

 

「仲良いんだねぇ。元から知り合いだったの?」

 

「いえ、昨日が初対面です」

 

「隣の席だったから、始まるまで話してたんすよ。レイラちゃんから話しかけてくれて」

 

「うん。何となく、合いそうだなと思って」

 

「なるほど。初対面での直截っぷりはそれでか」

 

 ぼたんが初対面のエピソードを話す。

 聴いてトワが言う。

 

「レイちんってあやめちゃんと同類?」

 

「天然さんっぽいよねぇ」

 

「姉です。しっかり者だと評判です」

 

 レイラの即答にぼたんがむせた。

 

「ぼたんちゃん……?」

 

「い……いや、……んふっ。いや、何でもないむせただけ」

 

 ぼたんは手をひらひらと振ってみせた。

 目線をレイラから逸らし、唇をきゅっと引き結んで。

 

 パンとフブキが手を叩く。

 

「そーいえば、三人はホロライブ志望なんだっけ?」

 

「あ、はい。そうです」

 

 ぼたんはすぐに返事をした。

 助かった。

 

「……ラミィちゃんもそうですね」

 

 コーヒーで口を湿らせたレイラが続く。

 少し不服だった。

 

「となると上位三人がウチに来るのかー! いやぁ、今年は躍進の年になりそうだ!!」

 

 フブキは喜色満面になる。

 

「他は誰か知ってるんですか?」

 

「スバルと最後に戦った二人って聴いているな。確か……フェネックの獣人と、チャイナっ娘な人族」

 

「えっと……尾丸ポルカちゃんと桃鈴ねねちゃんかな」

 

「そうそう、そんな感じ」

 

 あやめの言葉を受けて二人の同期生を思い出す。

 どちらも身軽な少女だった。

 サーカスと中華の拳法。

 元気な娘達だったと思う。

 

 エンタメ性はその一戦が一番高かった。

 やや泥でポンの様相であったが、あの三人のダメージレースはその危うさもあってとても白熱していた。

 中でもねねのタフネスは印象的だった。

 

「ガッツがあった、ね……?」

 

「あったなぁー! その末の桃鈴ちゃんの爆発オチは気の毒だけどめっちゃ笑った」

 

 ねねはスバルを打倒した。

 ポルカという尊い犠牲(ポン)を以て。

 その直後のことだ。

 スバルの装備が空から降ってきた。

 最後のねねの打撃によるものだった。

 それがねねの目の前で爆発した。

 スバルの装備には(なぜか)自爆機能があったのだ。

 

「あれの何が一番酷いってさ、スバルがその機能を忘れていたことだよね。振り返りでのリアクションで更に笑えるっていう」

 

「桃鈴ちゃんも脱落した原因覚えてなくて、三人で驚いていたのは驚きだった」

 

 視聴者も驚いていた。

 ある意味伝説の振り返り配信だった。

 

「あれは凄かったよねー。最初から最後までしっかりオチてる。……白上もやられるならあんなやられ方が良かったかなー、ねー、間違いじゃなくてねー、あやめちゃん」

 

「余、なんのことか思い出せないなー。フブキちゃんは事故だったような」

 

「酷い事件だった……。ちなみに、実際のところは?」

 

「事故ということにしてください」

 

「じゃあレイラちゃん借りるね」

 

「──ゑ」

 

 あやめは少し狼狽えた。

 

「いや、レイラは関係無くないか……?」

 

「具体的には近々白上の枠に呼びたいのです。あやめちゃんのあんな話やこんな話を聴きたいしぃー」

 

「来月の中旬辺りであれば大丈夫ですよ」

 

 ニヤニヤするフブキにレイラは言った。

 その承諾にやったー、とフブキは喜ぶ。

 しかしはたとレイラの顔を見た。

 

「……来月の中旬?」

 

「一月後くらいに、あやめちゃんと最初にコラボする約束をしていますので」

 

 様々を自制したフブキの口角が吊り上がる。

 不気味な笑顔だった。

 あやめはちょっと引いた。

 

「ほ、ほう。お仲がよろしいようで……。でもなんで一か月後? 来週くらいでも良いんじゃない?」

 

「その、嫉妬されるかな、と。もしかしたらあやめちゃんに酷い言葉がいくかもしれないので」

 

「ナルホドー」

 

 遠慮がちな幼女の姿はクルものがあった。

 思わずフブキは片言になる。

 

「……ん? それは今更じゃない? 幼馴染CO(カミングアウト)したし」

 

「姉です。──失礼しました。それについては、バトロワ中に親しいやり取りをしてしまっていたので……」

 

「一応、A講師の許可は取ったぞ。……エゴサする限り、変な気配はしないし、余は来週でも良い気がしてきたが」

 

 フブキはさっとスマホでSNSを開く。

 少しばかりレイラの姉発言に不服な文言はあった。

 ただし「姉を名乗る幼馴染」「姉振りたい妹分」などのワードが上位だ。

 あんまりの微笑ましさにフブキの笑顔が更に不気味になる。

 (だらしなく)笑いたいのを必死で堪えた末路だった。

 

「だい、じょう……ぶじゃないかな!」

 

 大きく笑顔を作って一旦リセット。

 それでフブキはそうやく落ち着いた。

 

「先に二、三回一人で配信して、四回目くらいにあやめちゃんとして。で、その後一、二回レイラちゃんの配信挟んでから私とするのはどうかな?」

 

「……そうですね。それが良いと思います」

 

 レイラは少し考えてから承諾した。

 一回目は自己紹介。

 二回目は定期的に行う予定の企画。

 三回目はあやめちゃんの好きなゲームをしようか。

 四回目のあやめちゃんとのコラボに備えて。

 五回目以降は柔軟にいこう。

 

「じゃあ、二週間後くらいか!」

 

「そうなるね」

 

 いえーい、とあやめとレイラは手を合わす。

 笑顔のあやめにレイラは微笑む。

 

 そしてふと一つの疑念が脳裏を過る。

 

「私、あやめちゃんのお姉ちゃんだよね?」

 

「え。もう妹で良くないか」

 

 コラボの時は姉らしさを出そう。

 さしあたってはゲームに慣れることだ。

 

 レイラは強く決意した。

 

「あ、レイラちゃん。その打合せしたいから近々会おうね。()()()()()

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 ペコリ、とレイラはフブキに頭を下げる。

 あやめから表情が抜け落ちた。

 

「あのフブキ先輩とコラボできるなんて嬉しいです」

 

 良く配信見てました、とレイラは続ける。

 ファンです、とも。

 

 だから会わせたくなかったのだ。

 

 

 

 

 ファミレスを後にして帰路に就く。

 あの後、話題に上がったスバル達三人と鉢合わせた。

 少しやり取りをして、あやめは自身の同期達に着いて行った。

 ぼたんとラミィとも途中で別れた。

 

 肌寒い春の夜を歩く。

 歩きながら。

 スマホに今日あったことを記していく。

 

 長く生きたせいかレイラは忘れっぽい。

 昨日のことを自力で思い出すことが難しい。

 陽が落ちる前、眠る前に記録を残す。

 それが──生き延びてしまった時からの習慣だ。

 

 ズキン。

 頭が痛む。──あるいは心か。

 記録することがトリガーとなってしまった。

 ナーバスな時ほど思い出したくないことを思いだす。

 

 地獄。だった。

 火上がることなく干上がった大地。

 美しい緑は失われた。

 命も。郷も。何もかも。

 もはや場所すらわからない。

 

 特に。

 様々な世界が衝突した今では。

 悼むことすら難しくなってしまった。

 複数の世界のエネルギーを供給できるほど、基盤になった世界は強くはなかった。

 

 気まぐれにTube・Yを開く。

 気晴らしだ。

 登録してあるチャンネルは四つ。

 ホロライブグループ。

 百鬼あやめ。

 白上フブキ。

 タケクラ。

 

 フブキとあやめの配信は良く見ていた。

 単純な興味でいえばフブキの配信をよく。

 彼女は頻繁に新しいことに挑戦していた。

 軽妙な語り口もポイントが高い。

 流行を知る上でも良かった。

 

 ふとタケクラのチャンネルを見る。

 彼はいわゆる動画勢だ。

 簡単な武器の使い方をまとめている。

 一本が十分ほど。

 配信は月二の歌枠のみ。

 一本二時間ほどでお礼枠も兼ねている。

 曲目を見る限りミックスボイスのものを好んでいるようだ。

 

 ふと。

 気配がした。

 

「──」

 

 家の近く。

 街灯の下。

 

 古代ギリシャの衣装の翁がいた。

 菫色を基調とした品の良い初老の男。

 背筋がしゃんと伸びている。

 

「もし、お嬢さん」

 

 薄い琥珀色の瞳がレイラの眼を捉える。

 

 見覚えは無い。

 道に迷ったのだろうか。

 

「何でしょうか。駅ならばあちらの方ですよ」

 

 大通りへの道を指し示す。

 同時、スマホを仕舞い、「突風」の準備を済ませる。

 少女にとって初対面の男は等しく不審者だ。

 トウソウの心構えは必要だった。

 

「いや、人を探しているんだ。金髪で獣人の女性。古い馴染みでね、このあたりに住んでいるらしい。オレより若い……およそ、人族で三十前後の姿のはずだ」

 

「申し訳ありませんが、私にはわかりません。警察に訊くのはどうでしょう?」

 

「追い返されてしまったよ。怪しいとね」

 

 男は目を細めて苦笑する。

 当然だ、とレイラは思う。

 知っていようと教えることは無い。

 

「……まあ、仕方ない。物騒がそこかしこに潜む世の中だ。ありがとうね、親切なお嬢さん」

 

「どういたしまして。おじさま」

 

「世辞も上手とは。先が楽しみなお嬢さんだ」

 

 男が微笑む。

 レイラはこの男の振る舞いに品を見て取った。

 一方で獰猛な気配も。

 この二つからレイラはこの男が権力者であると推定する。

 

 しかし距離は開けたまま。

 権力者にも善人と悪人の二種類がいる。

 

「モビー・ディック」

 

「おじさまのお名前ですか?」

 

「ああ。お嬢さん、もしもオレの探し人らしき獣人にあったのならばこの名前を出してくれ。モビー・ディックが探していたと」

 

「わかりました」

 

「では、お元気で。美しいお嬢さん。貴女の先を、楽しみにしている」

 

 男は会釈し、歩き出す。

 歩く方向はレイラの方だ。

 すれ違う形になる。

 

 レイラは男の道を空ける。

 道の横に。

 すぐに逃げられるように、駐車場へ。

 

 男の白髪が揺れる。

 瞳が。

 薄い琥珀色の瞳がレイラを写す。

 

 

「──ああ、そうそう。

 お嬢さん。

 メルビレイという古い悪魔を知っているかい?」

 

「──はい、名前だけは。

 かつて、世界を滅ぼそうとした混沌期の反逆者と」

 

 

 モビーはくつくつと口の中で笑いを転がす。

 けれど、堪えきれずに大笑した。

 

「そうか、そうか! はっはっはっ! あの男は──やはり、そう伝わるよなぁ!」

 

 レイラはその後姿を見送った。

 見えなくなるまで。

 

 そっと。

 その前に。

 消えてしまう前に。

 

 スマホを取り出した。

 カメラを起動した。

 

「モビー、ディック」

 

 名を口で転がす。

 ズームして、ピントを合わせる。

 

(メルビレイ)の、手がかり」

 

 パシャリ。

 

 ああ──やっと、()()()()()()()

 

 








次回、裏社会に潜るレズちゃん。
けどその前に配信のお話でもしようかしら。
でも難しそうなんだよな……。
(再現しようとしてできなかった苦み)


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