【ホロラバ】√:AlterNative最速クリア目指す   作:鈴北岳

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5.突撃うry(表) レイラの長い一日 その4

 

 

 変化は無い。

 当然だ。

 昔の記憶を思い出しても何も変わらない。

 嫌な気分になるだけ。

 終わったことだ。

 

 覚醒劇なんて物語の出来事だ。

 現実は噛み合わない。

 

「『突風』」

 

 洗脳兵を吹き飛ばす。

 細身の獣人。

 顔は無い。

 猛禽類を思わせる手の形をしている。

 

 「鉄操作」で瓦礫をどかす。

 「矢除け」「飛行」を起動する。

 帽子は無い。

 血に濡れた金髪が重い。

 その湿り気が現実を突きつける。

 悪夢なんかじゃない。

 

 疼痛。

 痛みの種類からして裂傷と打撲。

 刺さった金属は「鉄操作」で摘出。

 裂傷を雷で焼き潰す。

 失血死は避ける。

 

 まずは合流だ。

 飛び上がりクロを視認する。

 複数人に囲まれていた。

 加勢しなくては。

 

「ねッ゛、ネ゛ええエ゛ぇぇえぇ……!!」

 

 背後から迫る洗脳兵。

 翼を出して飛んでいる。

 レイラよりも速い。

 旋回し爪の一撃を避ける。

 追撃。

 胴体へ足が迫る。

 「突風」を使用し横へスライド。

 唸り声。

 

「魔法は使えないのね」

 

 使う必要が無いのか。

 

 いや、使えないのだろう。

 使えたとしても魔法未満。

 本能的な動作の補助が精々か。

 

 魔法は論理的な思考が必要だ。

 カラダに依った頭では発動の難易度は高い。

 

 洗脳兵は素のままにレイラに追いすがる。

 翼の形。猛禽類の爪。

 ハヤブサの獣人。

 速度では敵わない。

 必ず追いつかれる。

 

 眼下。

 レイラを追いかける者を見た。

 狙いは自分。

 矢や銃弾が見えた。

 「矢除け」が逸らす。

 

 「突風」を使い上空へ。

 敵が旋回し追いかけてくることを確認。

 翼による飛行の限界は身に染みている。

 

 できることも。

 逃げることは不可能。

 必ず倒す。

 

 急降下。

 すれ違い様に頬が裂かれた。

 爪。

 避けたと思った。

 だが生きている。

 

 血が目に入りかねない。

 雷で止血。

 傷跡は考えない。

 

(鋭い。昔見た時よりも手強くなっている)

 

 昔はもっと愚鈍だった。

 重装備の大男だけだった。

 武器も重量のある棍棒だ。

 今回のような洗脳兵は初めてだ。

 

 洗脳兵もまた追いかけてきている。

 翼を広げ一時的に加速。

 一瞬、距離が空く。

 すぐに詰められる。

 

 空いた距離を頼りに地面すれすれに曲がる。

 「突風」を使用。

 背のすぐ後ろにいた洗脳兵へ。

 背中が裂かれた。

 灼熱。

 直後に轟音。

 

 反転、転進し洗脳兵を視界に。

 落下の衝撃に呻いている。

 「鉄操作」でワイヤーを操作。

 洗脳兵の足を吊る。

 外そうと手を伸ばした所。

 鎖で頭を打ち据える。

 

 周囲からの攻撃を避ける。

 危険なものは魔法と近接。

 魔法は「突風」で自身を動かし。

 近接は上空へ退避する。

 

 洗脳兵を振り回し周囲の敵へぶつける。

 同時にワイヤーを操作。

 複数人をまとめて捕らえる。

 

 きつく締めて気づく。

 ハヤブサの獣人の力が強い。

 あえて緩める。

 抜け出そうともがき始めた。

 動きが手に取るようにわかる。

 緩んだところをきつく締める。

 同時、振り回した。

 瓦礫に何度も叩きつける。

 

 まだ死にはしない。

 

 「突風」で加速。

 数名、ブラックアウトしたようだ。

 洗脳兵はまだ意識がある。

 力強い。

 

 クロの元へ助太刀に向かう。

 武器は確保した。

 

 

 

 

 音が聞こえた。

 風切り音。

 視線を空へ。

 

 たなびく金髪が見えた。

 

「全くお元気そうで」

 

 何よりだ。

 

 そう簡単に死にはしないだろう。

 ああいうのは強かだ。

 

「さっさと済ませるぞ。もう飽きた」

 

 距離をとる。

 最早追いはしない。

 空を飛んだ以上は大丈夫だろう。

 こちらにもご執心のようだ。

 陣形を組みクロを囲む。

 銃弾、魔法が横殴りに降ってきた。

 

 慌てずに対処。

 足止めを考えなければ難しくはない。

 挟撃を避けさえすれば良い。

 

 斧から剣へ。

 刃が根元へ。

 剣斧が唸りを上げる。

 ようやく剣斧の機構に熱が入った。

 鉄塊染みた剣斧が正体を表す。

 片刃。緩やかな反り。

 身の丈超えて2メートルに迫る。

 

 黒風が吹く。

 

 反応できたのは無貌の洗脳兵のみ。

 音もなく巨躯が沈み込む。

 横殴りの剣閃を大剣で上へ反らす。

 響かぬ音。

 予定調和。

 

 直後に降るクロの唐竹割り。

 洗脳兵は片足を軸に回転し回避。

 轟音。斧剣が地面を砕く。

 洗脳兵は足を突く。

 跳んで避けられる。

 

 頭上。

 クロは地に刺さる斧剣を支えに跳んだ。

 追って大剣が上へ跳ねる。

 

「単調だっつったろ」

 

 柄を支点に体を逃がす。

 曲芸。

 クロは斧剣の影に着地。

 取り巻きがその隙へ凶刃を振るう。

 

 しかし。

 既に斧剣は地から引き抜かれている。

 

 凶刃が消失。斬り落とされる。

 クロの体が回る。

 斧剣を目で追う襲撃者。

 無貌に斧剣が迫る。

 

 それを隙と見てクロに殴りかかり。

 意識の外。頬に裏拳が突き刺さる。

 地面に叩きつけられる。

 同時に洗脳兵の大剣が斬り飛ばされた。

 クロを斬ろうとした直後のことだ。

 頭上に位置した大剣を振り下ろそうとしていた。

 

 斧剣の重量と鋭さにモノを言わせた曲芸。

 普通の武器では不可能だ。

 

 洗脳兵の意識が上へ。斧剣へ。

 直後に足を刈られた。

 体が崩れる。頭が下がる。

 その顎をクロの足先が掠め意識が混濁する。

 

 迫る銃弾と魔法を斧剣でかき消した。

 体を投げ出し、消し損ねたものを避ける。

 外周を駆ける。

 その内に溜めを終えた。

 

 跳躍。

 向けられた銃口全てを視認。

 発砲のタイミングは同時。

 良く訓練されている。

 マズルフラッシュ。

 銃声。

 

「『狐条玖剡(ナインブレイズ)』」

 

 ──黒炎が奔る。

 銃弾を焼き付くし銃を焼き切る。

 厄介な武器を無効化。

 

 斧剣を放り出し、黒風が吹く。

 

 こうなれば後は容易い。

 魔法は銃より遅い。

 あの無貌以外は鈍い。

 

 瞬く間に打ち伏せる。

 

「ふうっ」

 

 一息。

 嫌な視線は既に消えた。

 

 放り出した斧剣が手元に落ちる。

 起き上がろうとする洗脳兵へ一撃。

 意識を絶つ。

 熱が排出され剣斧へ。

 軽く振り回し熱を逃がす。

 

「そろそろか」

 

 クロは断続的な音を捉えた。

 瓦礫に何かが落とされている音。

 既に趨勢は着いたようだ。

 

 音が近づいてくる。

 

「……苦戦してるのか?」

 

 走り出す。

 もしそうならば加勢しよう。

 

 そうして走ってレイラと合流。

 レイラは複数名をワイヤーで括り振り回していた。

 

「……」

 

 クロは閉口した。

 映像で見た時は合理的だと感じた。

 楽に倒せるならそれに越したことはない。

 けれど。

 

「あぁ、うん。絵面ひっっでぇわ」

 

 青白い顔に流血があるのがえぐい。

 一名、無貌のみがまだ元気そうだが風前の灯か。

 

「先輩」

 

「おう」

 

「しぶといやつ、落としてくれませんか?」

 

「先輩使いが荒えぞ、後輩」

 

 軽口を叩きつつ。

 他の奴を気の毒に思う。

 せめて手早く終わらせてやろう。

 投げられた塊を剣斧で打つ。

 狙い過たず。

 洗脳兵はそれで沈黙した。

 

 レイラは宙に浮いたまま。

 二度、三度と地面に落とした。

 ピクリとも動かない。

 

「お疲れ様でした」

 

「容赦ねえな」

 

「はい。抜かりありません」

 

 着地したレイラが胸を張る。

 幼げな少女の仕草は可愛らしい。

 所業はともかく。

 

 ふと鉄の臭いがクロの鼻をつく。

 見ればレイラの頬と額に焼き跡がある。

 

「ちょっと待て」

 

 レイラの体を診る。

 近づくと肉の焦げた臭いがした。

 

「……おい、このポンコツ」

 

「パワハラですか」

 

「うるせえ。ケガの報告をしろ。正確に。あと処置も」

 

「裂傷と打撲です。刺さった釘は抜きました。裂傷は焼いて止めました」

 

「────」

 

 クロは。

 深く、深くため息をついた。

 

「おい、ポン」

 

「ポーンズです」

 

「生意気なお前はポンで充分だ。で、まだ何か隠してやがるな。血の臭いが酷い」

 

「そういえば背中を裂かれました」

 

 そちらは未処置です、と。

 他人事のように。

 

「……バカか。とっとと言え」

 

 化膿したら地獄だぞ。

 言って、クロは消毒液と布で手当てをする。

 携帯していた救急キットだ。

 ガーゼとテープで傷口を覆う。

 

「ありがとうございます」

 

「……。他の傷は明日にちょこ先に診てもらえ。残すなよ」

 

「わかりました」

 

 応えて。

 レイラは手早くワイヤーで縛り上げた。

 手慣れている。

 

「先輩が倒したのはどちらに?」

 

「つれてく」

 

 その後。

 フブキが呼んできた警官隊が到着した。

 縛り上げた下手人らを引き渡し。

 簡単な事情聴取と治療を受けて。

 

 クロとフブキはレイラを自宅へ連行した。

 

 

 

 

 夕方。

 連れてこられた先は山近くのウッドハウス。

 

「我が家へようこそー!」

 

 喜色満面の白上フブキがレイラを招き入れる。

 

「豪邸ですね」

 

「まあ、そういう感想が先に立つよねー」

 

「稼いでいるから良いんだよ。これくらいフツーだフツー」

 

 言って、クロは二人の横を通り家へ入る。

 パッパッパッと家に明かりが灯り始める。

 

「ハイテクですか?」

 

「スマートでしょ」

 

 フブキとレイラも続く。

 

 外観と似た雰囲気の内装だった。

 近代的だが木の温かみが感じられる。

 

 そこで懐かしいものを見た。

 草を編んで作られた床。

 いわゆる畳。懐かしい。

 流石に質感は昔と異なるが。

 

「畳は好き?」

 

「好きです。匂いや質感とか、良いですよね」

 

「だよねー。ちょっと高かったけど、奮発したよ」

 

「おいフブキ。くっちゃべってねーで夕食作ってくれよ」

 

 ふと、部屋の奥からクロの声が飛んできた。

 

「え? クロが作ってくれるんじゃないの?」

 

「疲れた」

 

「……むぅ。色々言いたいけど良いでしょう。二人は何が食べたい?」

 

「何でも良いよ」

 

「お任せします」

 

 フブキは笑った。

 

 

「 な に が た べ た い ? 」

 

 

 猛獣の笑みだった。

 肉食獣二体は寒気を覚えた。

 

「……オムライス」

「……お味噌汁をお願いします」

 

「りょうかーい! 混ざらない和洋折衷といきますかー!」

 

 それは折衷ではないのでは?

 レイラは疑問を口にしなかった。

 

 フブキは上機嫌にして料理へ取り掛かる。

 

「……迫力がありましたね」

 

「間違っても怒らせるなよ。めんどくせえ」

 

「それは問題なく。後輩ですので」

 

「お前少し前の自分の言動思い出せ」

 

「気を付けます」

 

 そそくさと二人はテーブルに着く。

 お茶はクロが用意していた。

 クロが慣れた仕草で湯呑に茶を注ぐ。

 

「すみません。何から何まで」

 

「一応客だからな。あと、紅茶はティーバッグしかない。コーヒーはインスタント」

 

「折角の畳ですので」

 

 茶を啜る。

 上等な茶葉を使っているのだろう。

 風味が良い。

 

「美味しいですね」

 

「まあな」

 

 微かに笑う。

 

 クロはテレビを点ける。

 ニュース番組がやっていた。

 早速今日の出来事が流れている。

 

「早いですね」

 

「そりゃ手回ししたからな。こういうのは噂になる前に流すもんだ」

 

 内容は「暴徒が出た」というもの。

 洗脳兵の話は一切出てこない。

 姿も。

 ただのスラムの出来事として扱われていた。

 

「幸い目撃者はいなかったからな」

 

 空気がひりつく。

 何気なく零した言葉──に、見せかけて。

 

 レイラは躊躇なく応えた。

 

「洗脳兵ですね」

 

「どこまで知ってる?」

 

「一般常識程度、ですね。あとは──メルビレイの備品であるということだけ」

 

 目は。

 レイラの目はいつも通りだった。

 

 じっ、と。

 クロはレイラを見て。

 

「オーケー。フブキが来たらそれ、話すぞ。良いか? 正直に話せよ」

 

「はい。私からも、お知らせしたいことがありますので。……けど私、そんな信用無いですか?」

 

「いや、会って一日の奴を信用しろとかムリだろ」

 

 あの変わり様も思い出す。

 レイラは必要とあらば騙すだろう。

 

「えー、私はレイラちゃん信用してるけどなー」

 

「そりゃお前が疑いたくないだけだろ」

 

 クロは鼻を引くつかせる。

 良い匂いだ。出来上がったのだろう。

 レイラが立ち上がる。

 

「フブキ先輩、持って行きますね」

 

「わ。ありがとー! クロも手伝ってー」

 

「はいよっと」

 

 三人分のオムライスとお味噌汁が並ぶ。

 遅れてサラダと取り皿も。

 健康的な食事だ。

 

「「「いただきます」」」

 

 一口。

 美味しいオムライスだ。

 表面が半熟なのが流行を押さえている。

 

「凄くて美味しいですね。やっぱりあの動画ですか?」

 

「そうそう。美味しそうだったし、クロも喜ぶから練習したよ」

 

「……まあ、好物のバリエーションが増えるのは良いことだ」

 

「それにクロの得意料理だしね。クロのはもっと美味しいよー」

 

「それは是非食べてみたいですね」

 

 お前ね、とクロは眉根を寄せる。

 尻尾は緩く揺れていた。

 

「これはフブキより数こなしてるから当然だっつの。そういうポーンズは? 得意料理の一つはあるだろ」

 

「レイラで大丈夫ですよ。そうですね、カレーなどは良く。あとはチャーハンですね」

 

「カレーならフブキも得意だっけか。レシピ無しで作れるんだろ?」

 

「こだわるものの一つです。……といっても季節の具にこだわるくらいだね。好きなカレーとかあったりするの?」

 

「チキンカレーですね」

 

 沈黙。

 

「……いや、あの。私、猛禽類ですよ?」

 

「あっ! そ、そのっ……そっ、ソウダヨネー。何もおかしくは、ないね? ウン」

 

 慌てるフブキを横目に、クロは無言で首を縦に振る。

 黒い狐耳がピンと直立していた。

 

「……いえ、まあ。安価だったこともあり、好んで良く。あと、作り置きができるので」

 

「カレーはそこが強いよねー。私も良く忙しい時は作ってたよ」

 

「おかげで一時期カレーの匂いがやばかったな」

 

 あはー、とフブキは視線を逸らす。

 焼肉ほどではないがカレーもきつい。

 獣人にはそこそこ死活問題だ。

 

 雑談もそこそこに食事が終わる。

 お味噌汁には珍しいことに生わかめが入っていた。

 旬は春だったな、と。

 ぼんやりとレイラは思う。

 

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

 

「お粗末様でした。……クロは?」

 

「いつも通り美味かったよ」

 

 良かったー、とフブキは笑顔。

 食器をシンクに漬け置き、テーブルにつく。

 

 胡坐をかいたクロが口を開こうとして。

 

「さて。じゃあ、ちょっと難しいお話ししようか。レイラちゃん」

 

 フブキが言う。

 

「君は、あそこで本当は何をしようとしていたのかな?」

 

 湯呑のお茶が温かい。

 春先の夜は冷え込む。

 

 







 ああでもこうでもないと失踪してました。
 左回りって可愛いですよね。

 遅れたのでまた失踪します。


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