【ホロラバ】√:AlterNative最速クリア目指す   作:鈴北岳

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6.(表)日々は回る その2

 

 

「まず」

 

「私はアレの目的を知っていますが、心底からどうでも良い。協力する気は皆無です」

 

「百鬼あやめとの戦闘へのお膳立てを対価に、生成りの情報を渡しました。それ以上はありません。あれもバレるリスクを嫌ったのでしょう、もっぱら対談と称した護衛を頼む程度」

 

「しかし、あの様では地道にバトロワで狙うしかありませんね。まあ、アレは信用ならない手合いです。どの道、並行して狙う必要はありました」

 

「収穫はありました。魔法の知識と特殊な武器、そして大戦期の思想。いずれも得難いものでしょう。アレは凡夫らしく、師の才能があります」

 

「アレへの所感?」

 

「実にドラマティックで、劇的な悪魔だと言えます。御伽噺の悪役のよう。文字通りに何でもできるのが特に」

 

「目的の変わらない悪役」

 

「討たれて然るべき敵役」

 

「めでたしめでたしと締め括るのに、これほど都合の良い障害がアレの他には無い」

 

 

「領地の欲しい魔王などより、世界を滅ぼしたい悪魔こそ、御伽噺(フェアリーテイル)らしいでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 湊あくあはぷんぷんした。

 必ず、かの自分勝手なレイラ・ポーンズを正さねばならぬと決意した。

 

 具体的には自分の職務が遂行しやすいように取り決めをつけねばと思った。

 しかしその前に朝食のお礼と、単独行動への文句を言う必要がある。

 なのであくあはレイラの所属する1-1を、遠くから双眼鏡で観察した。

 

 いなかった。

 

 おかしい。

 早く登校しているはずなのにどうして。

 

 あくあは予め入手していた座席図を確認し、再び覗く。

 窓際の一番後ろの席。

 あくあが最も欲する座席。

 嫉妬に歯噛みしつつ、親しいであろう学友の席も確認する。

 一つ隣とその前。

 白髪の獣人と、水色のハーフエルフ。

 

 二人きりで会話している。

 レイラの姿は無い。

 

 ……どうしたのだろうか。

 もしや登校中に早速事件に巻き込まれたのだろうか。

 そんなことを想像して、血の気が引く。

 セキニンモンダイ。

 そんな単語が脳裏を過った。

 ささっとSNSで今朝に騒動が無いかを確認。

 ひとまず問題無し。

 そういうことにしておこう。

 

 再び双眼鏡を覗き込む。

 獅子の獣人と視線がかち合った。

 

「ヒエッ」

 

 逃げた。

 脱兎の如くすぐさま逃げた。

 

 そうして、悶々とした気持ちを抱えるままに昼休みを待った。

 諦めたともいう。

 

 一方、そんなレイラはギリギリに教室に着いて、軽くぼたんとラミィと会話をして、講義を受けた。

 昼休みには二人からの誘いを断り、すぐに図書室へ向かった。

 

「ごめんね」

 

「気にしない気にしない。準備に必要だかんね」

 

 図書室、否、図書館は広かった。

 バトロワでは立ち入らなかったが、三階までが吹き抜けになっているならば、ここも良かったかもしれない。

 

 そうして、予め用意していたシリアルバーを口にして、独りで図書を物色する。

 人の気配は無く、ひっそりとしていた。

 漂う匂いは紙とインク、本棚の木。

 酷く落ち着く。

 静寂の中、レイラは静かに動いて。

 

 ふと、袖が突っ張った。

 本棚のささくれに引っかかったのだろう。

 外そうとして振り返って、袖を掴むあくあの姿が目に入った。

 

「──」

「──」

 

 あと少しで悲鳴を上げるところだった。

 あくあで無ければ間違いなく上げていた。

 

 めちゃくちゃ不満げな顔をしている。

 

「お口に合いませんでしたか? カレー」

 

「美味しかった、ありがとう。……じゃなくてっ。私、護衛メイド」

 

「はい。心強いSPです」

 

「そう、私は心強いSP──なのにどうして置いていくのっ?」

 

 小声で叫ぶあくあ。

 レイラは器用だな、と感心した。

 

「書置きの通りです。登校くらいは問題ないと思いまして」

 

 こんな昼間から襲撃はかけないだろう。

 そう判断しての単独行動だった。

 

「ダメ。登下校は一緒」

 

「……逆に訊きますね。どこであれば護衛は外せますか?」

 

「学園内だけ。それ以外は私と一緒」

 

 レイラは渋面になった。

 レイラはアウトドア派かつ早寝早起き派だ。

 インドア遅寝遅起きのあくあに合わせるのは少々きつい。

 とはいえこれも身から出た錆。

 仕掛け(・・・)が無事に作動したのは良かったが、周囲の人物に要らぬ不安を与えたのは事実であって。

 

「わかりました。では」

 

 レイラはあくあのSNSに画像を送り付けた。

 

「なにこれ?」

 

「今日の予定です」

 

「へえ……。うえ、訓練室使った後に配信するの……? 体力きついよ……?」

 

「もちろんそこは調節します。帰宅して軽い食事の後に短時間の仮眠を取る予定です。お手すきでしたら、その時に叩き起こしていただければと」

 

「オテスキ? まあ、時間になれば起こしてあげる」

 

「……手が空いていたら、という意味の古い言い回しです」

 

「……そっか、私より年上なんだよね」

 

 あくあはレイラの体を見た。

 身長は自分より低い。

 るしあと同じ程度か、それ以下か。

 雰囲気こそ大人しいが、大人らしくはない。

 

「……気にしないでください。年上らしからぬとは良く聞きますので」

 

「え? ううん、そうじゃなくてね、何というか……うん、言い方悪いんだけど、その外見で良く仕事をもらえたなって」

 

「ああ、昔はその辺緩かったので」

 

「そうなんだ。同年代の子とかいた?」

 

「似た外見年齢の方であれば」

 

 いた。

 今はどうしているのか知らないが。

 

 あくあとの会話を切り上げて図書館を探る。

 

 収穫は一冊。

 「電磁波兵器の可能性について」という科学論文。

 詳細は省くが、電磁波は電流に影響を受けることを理解した。

 

 もう一つの収穫は電磁波の一種は光であること。

 

「……ああ、まあそうか。灯体に電気は必須だしね」

 

「雷は光るから、そう違和感は無いね。ただ、改めて言われると、ねえ」

 

「不思議だよね」

 

 流し読みした内容を講義の合間の休憩時間に、ぼたんとラミィに話す。

 

 電気は光を生み出す。

 当然の理屈だが、改めて知ると新鮮だった。

 火が光を生むように。

 

「ただ、やっぱりそこで止まっちゃうね」

 

「止まるって?」

 

「興味」

 

「……あー、それは悩ましい」

 

 ラミィは疑問符を浮かべている。

 察したぼたんが補足する。

 

「『で?』っていう話になっちゃうんだよね。それがどうしたのって」

 

「あ、それは確かに。話が続かない」

 

 ふむ、とラミィは少し考えて。

 

「レイラちゃんがどう思ったかだね。となると」

 

「私?」

 

「そう。皆はレイラちゃんを目当てに見に来てるから」

 

「そっか。授業じゃなくて、レイラちゃんのお話を聴きに来てるわけだ」

 

 レイラは納得した。

 確かにそうだ。

 本気で勉強するならば、高名な先生のチャンネルを見る。

 

「私生活のエピソードと絡めた方が良いかしら」

 

 それが良いと、二人は口を揃えた。

 

 講義を受け終えて訓練室へ向かう。

 申請は済ませてあるのでスムーズに入れた。

 

「レイラちゃんってさ。用意周到だよね」

 

 寸前で悲鳴をかみ殺した。

 背後から音もなくあくあが話しかけて来たからだ。

 

「……あくあ先輩は人を驚かせるのが趣味ですか?」

 

「え? なんで?」

 

「今日で二回目ですよ。忍び寄って来るのは」

 

「クセになってんだ、音殺して動くの」

 

 どやぁとするあくあにレイラは首を傾げた。

 

「一緒に使いますか? 私は適当に魔法を撃つだけでですので」

 

「そうなの? じゃあ()させてもらうね」

 

 レイラは一瞬違和感を覚えた。

 しかしあくあは信用できる人だ。

 問題は無いだろうと疑問を切る。

 

「『飛行』『鉄操作』『矢除け』」

 

 訓練室に入るや否や、レイラは即座に魔法を起動。

 

「『突風』」

 

 翼を広げ、初速を付けて飛び上がる。

 その風にあくあはスカートと目元を押さえた。

 

「やっぱりハヤイなぁ」

 

 速度も、起こりも。

 魔法使いでありながら、身体能力が高い。

 学園でも上位層。

 確実にあくあより上で、鬼族に劣らない。

 筋力もそれなりか。

 だが一番は反応速度か。

 

 有利な状況でとはいえ。

 あの百鬼あやめと付かず離れずの戦闘ができるのは強い。

 

「主武装は鎖……とワイヤー」

 

 鎖は足で、ワイヤーは手で。

 正しい。

 叩きつける方を筋肉が多い足で使うのは合理的だ。

 細やかさを要求されるワイヤーを、第二の脳とされる手で使うのも理に適っている。

 

「ワイヤーは捕縛、鎖は打撃、魔法は補助。勝ちパターンは縛り上げての叩きつけ」

 

 「雷の暴風」も有効なダメージソースか。

 エルフであれば必殺クラスの魔法だ。

 惜しむらくは獣人由来の魔法適性の低さ。

 それを抜きにしても強いのは本人の努力の賜物だろう。

 

「努力家」

 

 それを苦と思わない生粋の。

 最も気の抜けない手合い。

 

 あくあは縦横無尽に空を飛び、魔法を撃つレイラを観る。

 

 魔法の補助込みでも上手い。

 速度と小回りの両立が特に。

 不知火フレアの絨毯爆撃を避け切っただけはある。

 飛行技術は文句無しに学園トップだ。

 

 その上で戦闘ができる。

 開けた場所で戦う厄介さは、あのドラゴンに匹敵するか。

 

 ……さすがに両者が戦った場合はレイラが負けるだろうが。

 そもあれに勝てるのは極少数だ。

 少なくともあくあはドラゴンに勝てない。

 

 「雷の暴風」を撃ちながら、ワイヤーを操り、仮想敵へ鎖を叩きつけるレイラ。

 流れるような三コンボ。

 全距離、広範囲に対応しているのが強い。

 

「やっぱり、上手だな」

 

 単発の攻撃そのものは致命的ではない。

 縛られての叩きつけも一撃必殺というわけではない。

 それが何度も続けることができるから必殺になるわけで。

 

 有利な状況の押し付けがレイラの強みだ。

 レイラ自身が特別強いわけではない。

 立ち回りが上手なのだ。

 

 つまり。

 あくあにとって勝てる可能性のある相手だ。

 

 そしてそれとは別に一つ。

 確信を深める。

 

 新入生チャンピオン。

 レイラ・ポーンズ。

 彼女は。

 

(強くない)

 

 優秀だが強くはない。

 むしろ白獅子とハーフエルフの方が強い。

 体の性能がより戦闘に向いている。

 普通はこの2人が一位を取るはずだ。

 

 だというのにレイラが一位。

 それは尋常じゃない努力の賜物だろう。

 

(一位になりたかった、あるいは、なる理由があった)

 

 通常、努力と成果は比例しない。

 成果に比例するのはあくまで性能差だ。

 それ以外は誤差にしかなり得ない。

 

 だってそうだろう。

 死に物狂いの一位と、余裕をもっての一位。

 前者は痛快だが、はっきり言って浪費だ。

 一番になること、それそのものは無価値だ。

 得るものがあって、初めて一番に価値がある。

 

 バトロワの一位に、死に物狂いで取るだけの価値は無い。

 月一で行われるイベント、催し物。

 全力を尽くすには相応しくとも、死力を尽くすまでには至らない。

 加えて、一位を取り続けられるほど甘いものでもない。

 

 レイラは一瞬で逆方向へ。

 鋭角の急旋回。トンボのよう。

 戦闘機を連想させる技術を繰りながら、汗をかくレイラの顔は涼しいまま。

 

(……一位が欲しいわけではなさそう)

 

 ぼんやりと、確証の無い確信を抱く。

 勝利を渇望する者には必ず、独特の凄味がある。

 あくあはそれをレイラから感じられなかった。

 仮面を被るあの鬼のような。

 剣鬼に挑む僧衣の生成りと同質の凄味はない。

 

(何のために頑張っているんだろう)

 

 SNSで送られたスケジュールを見る。

 あくあにはその動機が分からない。

 ここまでレイラが頑張ろうとする理由が。

 

 文学的な、異国の映画を見ているような。

 そんな気分だった。

 

 

 

 








1月以上空いたので初登校です。


妖精キノコと苦手な日常回にやられていました。
許されよ、バトル脳を許されよ。ギャグ回路の後付けは難しい。
(ウマはイイですね。けど妖精王が来てくれません)

ところでこの走者はいつメガトン好意してくれるんでしょうね。
まだ先になりそうです(白目


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