【ホロラバ】√:AlterNative最速クリア目指す 作:鈴北岳
誤字報告ありがとうございました。
白金コンビを引きずって白銀を白金にしてしまっていました。
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また、表現の簡略化のため対物ライフル(口径12.7mm)を重火器(口径20mm以上)と呼称しています。
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そしてもう一話だけ続くんじゃ(白目
ノエフレ退場辺りまでで8000字を超えました(
あやめ戦の途中までで既に3000字を超えました(
一話5000字くらいかなーで考えていたのにどうして……。
どうして……。
最初に動いたのはぼたんだ。
その場からショッピングカートをいそいそと校舎へとシャーと転がし、不意打つように狙撃銃でノエルとあやめの脳天を狙った。
当然のように弾かれ、距離を詰められる。
「ま、そうなるよね」
狙撃銃をラミィへ放り投げる。
ついでに詰められる距離のちょうど中間地点に手榴弾を投げ入れた。
爆発。
剛腕と爆炎が事もなげに爆発を無効化する。
砂煙が上がる。
手甲と刀がかち合う音が響く。
そして、ノエルとあやめの真ん前で二丁の大型拳銃を構えるぼたんがいた。
「マジか」
その呟きは誰のものか。
腹に響く低い銃撃の音が軽やかに踊る。
両手でしっかりと構えなければ骨が折れる大型拳銃を、ぼたんは事も無げに片手で連射していた。
「マジか! ははは! 鬼でもそんなのするやつ見てないぞ!」
あやめは二刀で全ての銃弾を斬り落とす。
返す刃で大型拳銃を断たんと迫るが、その直前に足元が凍る。
直後にノエルの拳が迫る。
一刀で軌道を逸らし、もう一刀で砂煙を巻き上げる。
ぼたんは咄嗟に後ろへ跳んだ。
下からあやめの鞘が跳ね上がってきた。
「避けるか」
「そこにいてくださいね」
ノエルが拳を真っ直ぐに突き出した。
あやめは一瞥もなく屈んで避ける。
直線状に重なっていたぼたんは持ち替えたショットガンでその拳を退けた。
下方向に大型拳銃を向け、あやめへと連射する。
「いったぁ……。団長、メイスが欲しいです」
「トラウマ刻みかねんから止めとけー」
銃撃の悉くを避けたあやめがノエルのぼやきにそう答えた。
「あやめちゃんも二刀、新入生相手には止めた方が良いですよ。団長、一回ポッキリ自信が折れちゃったんですからね」
「そんな怖い? 攻撃には使ってないのに」
「動き出しとか攻撃をその二刀で対処するの止めてくれます?」
「仕方ないじゃん。余、打たれ弱い乙女ぞ」
「鬼が何を言いますか」
「実は余な、非力なんだ」
「鬼族の中の基準を持ち込まないでくださいねー」
ぼたんは気楽に会話する二人を観察する。
分かっていたが、強い。
改めて強くそう思う。
ノエルは頑丈で力が強い。
弱点はといえば遠距離攻撃が無いこと。
距離を保って戦えばそこまで怖くはない。
だが──硬い。ひたすらに硬い。
ショットガンをゼロ距離で拳にぶち当てた。
弾の全てが命中した。
手甲の防御力もあるが、それが「痛い」の一言で済むのが化け物染みている。
あやめは速く、上手く、力が強い。
仮にも大型拳銃の至近距離。
どういう振り方をすれば銃弾に押し負けることなく弾くことができるのか。
そもそもどうして弾けるのか。
先手を取っているはずが、後れを取っている気がしてならない。
速く、早い。
内心で舌打ちをする。
こうした手合いをこそ、狙撃で終わらせたかった。
状況は拮抗している。
ノエルとあやめがお互いを優先的に狙っているからこそ対処できている。
ラミィが危ない時に適切な援護を挟んでくれるから一歩深く踏み込める。
仮に。
どちらかを倒したとして、ぼたんは残った方を倒すことは難しいと感じた。
手が足りない。火力が足りない。
頭数が足りない。
ラミィと視線を交わす。
感じていることは同じだった。
まとめて倒す。
方法はそれしかない。
だが、ラミィが動きを止めてぼたんが銃撃をしこたまぶちこむ、という手は難しい。
ラミィの体力は限界の手前だ。
今の適切な援護にせよムリを押している。
その上、動きを止めるためにこまめに魔法を使うのは厳しいだろう。
(となると。ラミィちゃんに止めを刺してもらう手段しか取れない。ならば私は何とかして二人の体力を削る必要がある。凍らせた後に砕かれないように。そのまま『転送』が始まるように)
難しい話だ。
上級生二人、それも最高峰の戦士。
その二人の体力を極限まで削る。
難しい。
とても、とても難しい。
だからこそ、やる気が出た。
火力が足りず、制圧面積の狭い大型拳銃をラミィの方へ投げ渡す。
「転送」の魔法で両手に新たな銃火器──重火器を持ち出した。
ショットガン。
そして。
「これなら
──アンチマテリアルライフル。
ノエルの頭部へ狙いを定めて引き金を引いた。
当然のようにガードが間に合うが、ガードごとノエルを後退させた。
「危なっ!? 危うく昇天するとこだった!」
「そのままイけば良かったのに」
ボソリと呟くあやめにはショットガンをばらまいた。
頭部狙い。
妖術の炎が猛り、大部分を逸らして躱し切った。
さしもの二刀による高速乱舞もショットガンの球数には敵わないようだ。
「適切だな。それで連射ができれば危なかったが──いや危な!?」
「転送」魔法で装填を済まし、ショットガンの引き金を引く。
魔力が乏しいぼたんにとって、消費量が多い「転送」はほいほいと使いたいものではないが。
折角のバトロワ、そのオーラス。
後は考えないことにした。
ついでに消費弾薬の値段も考えないことにした。
採算度外視──ああ。
とても良い言葉だ。
「出血大サービスの大赤字だ! 白銀ノエル先輩、百鬼あやめ先輩! この二人相手なら、採算度外視も上等だろうよ!」
自身と同期生──どちらか一手トチれば終わる。
綱渡るスリルに緊張で胸が張り裂けそうだ。
高ぶる気持ちのままに声を張り上げる。
後ろでラミィがビクリとしたようだが仕方が無い。
こうでもして己を鼓舞せねば、この重圧から逃げてしまいそうだった。
だからこそ堪らなかった。
万に一つの綱渡り。
このスリル。
楽しみ。
ふと、隣の席の少女が頭を過った。
その顔を想い出して内心呟く。
レイラもいたら、より楽しいだろうに。
「──ぼたんちゃん!!!」
驟雨を凌いだ。
矢の雨の中を飛んだ。
決して無傷ではない。
火傷と切り傷が絶えない。
敗走の気分だった。
戦争なんて参加したことは無いけれど。
戦場のような場所を横断した経験はある。
そんなことを想い出したのは偏に。
不知火フレアの弓術がそれほどまでに冴え渡っていたからだ。
距離は広がらない。
むしろ徐々に詰められつつある。
否、適切な距離を把握されつつある。
レイラに不利で。
フレアに有利な。
……本気でやりあうべきだ、と脳裏を掠める。
バトロワの終盤。オーラス。
もう誰もほとんど残っていないだろう。
残っていたとして、いるのはフレアのような猛者ばかりのはずだ。
ならば、今すぐ転進し、相打ちになってでもフレアを。
「──」
音が聞こえた。
炎、刀。
忘れもしない、覚えた金属音。
衝動のままに「突風」を吹かす。
蛇行飛行を一瞬だけ止める。
種も仕掛けもない直線飛行で駆ける。
感覚のままにチェーンを手繰る。
金属音。決して軽くはない音。
偶然だが、矢を弾くことができた。
「突風」を吹かす。
強く、強く翼を羽ばたかせる。
瞬く間にねじれていく風景。
そうして。
駆け抜けた先に。
あやめちゃんとぼたんちゃんがいた。
衝動のままに獅白ぼたんの名を叫ぶ。
百鬼あやめは上級生だ。
軽々しく味方になってくれるかのように振舞えば後が怖い。
いや、今のあやめちゃんの拗ねた顔も怖いけど。
アンチマテリアルライフルとショットガンを持ったぼたんが振り返る。
手をかざし、魔法の詠唱を開始する。
意図をくみ取ったぼたんが二丁の重火器を手放した。
水色の少女から渡されたライフル二丁を構える。
無防備な背中へ迫るノエルとあやめ。
「雷の暴風」を放ち牽制する。
最高速度を更新し続け、真正面から二人へ飛び込みチェーンを振るう。
あやめに切断、ノエルに捕まれた端から「鉄操作」で対処していく。
最高速度を維持し続け、ノエルを中心に削っていく。
「ちょっ。この局面でこれはズルじゃ……! 実質二対一じゃないですかー!?」
時折矢が掠めるが問題は無い。
視線をフレアへズラす。
ぼたんの狙撃がフレアの矢の悉くを撃ち落していた。
「狙いが素直だぜ、センパイ! 小っちゃい女の子を追っかけるより、私とタンゴしないか!?」
「見慣れない顔……! ホント、今年の新入生は粒揃いだね! おあいにく様、今はあの子を愛でたい気分なのよ!!」
「そうかそれはざんね──いや待てアンタなんつった今、その絵面でその発言は色々まずくないかアイドルとして!?」
「待ってフレア今なんつった???」
「ヒエッ」
「切り抜き確定じゃないかノエフレこれ!?」
場は一瞬で混乱した。
とんでも発言にツッコむぼたん。
柔らかな表情がすぅっと消えたノエル。
偶然直視して心底からの悲鳴を上げたラミィ。
それを見てカラカラ笑うあやめ。
そんな最中にも矢が飛んでくるレイラはそのまま必死に躱し続けていた。
ついでにノエルが変なギアが入ったのかチェーンどころか翼を掴まれかける場面が増えた。
「鳥さん止まって。じゃなきゃ殴れない」
「殴られたら死んでしまいます……!」
「はいはい、新入生狙いはほどほどになー」
手甲と刀が甲高い金属音を響かせる。
幾たびもの衝突。
拳が刀に逸らされる。
思うように攻撃を振るえないことにもノエルは苛立ち。
「ああ、もう、邪魔くさい……。
あ、あやめちゃんになら良いか」
名案だ、とばかりにノエルはチェーンを防ぎながら呟いた。
「いや、それ被害甚大──」
「行きますよー、あやめちゃん。二刀使ってるんだから、本気でやっても大丈夫ですよね?」
気の抜けた声と共にノエルの魔力が猛る。
チェーンを風圧で退け、一歩で空中に飛び上がり、あやめに踵を叩きつけた。
大ぶりな攻撃のため、避けられるが。
「おわっ」
「きゃっ」
「ととっ」
地響き。
三者の悲鳴が上がる。
影響を受けなかったのはフレアと飛行するレイラのみ。
レイラには一時的に矢の雨が降り注ぐ。
「何事!?」
「白銀先輩の余波!」
「防ぐのは!?」
「チェーンが触れてもないのに弾かれた!」
「オーケー把握!」
あやめはレイラとぼたんのやり取りにじとっとした目を向けた。
隙有りとばかりにノエルが低空のドロップキックをかます。
「面倒くさいなぁ、もう! これでもまだ手加減してるんだけど!」
「団長からメイス取り上げたあやめちゃんが悪いんですー!」
ノエルの攻撃を凌ぐあやめ。
ノエルの標的が半ば固定されたことで、レイラもまた標的をノエルに定めた。
頭部を中心にチェーンで攻め立てる。
「あだ、あたたっ」
……効果は薄いが集中力は削げていた。
一度大きな隙に「雷の暴風」を顔に打ち込んだ。
当然のように減衰されたが、意識を少しこちらに向けることができた。
どのような手でとんでも強化をしているかは不明だが、あやめも相手取っている以上、集中力の分散は有利に働く。
「あー! もう、手間! ──フレア!!!」
ノエルが両腕を振り上げる。
同時にノエルを中心に魔力の渦が吹き荒れる。
「ぶっ叩くからね!!!」
「ラミィ! 来るよ!」
「大丈夫!」
そのやり取りにノエルはぼたんとラミィを一瞥した。
位置関係はノエルを中心に散らばっている。
フレアとノエルとぼたん達の位置は三角形に近い。
上々だ。
そして、ノエルはグラウンドに盆地を作るべく両腕を振り下ろした。
降ろそうとした。
「いやさすがにそれは本気で止める、余。であった」
鞘が左右から、ほぼ同時に叩きつけられた。
こめかみ。
脳が揺れる。
僅かに一瞬全身が脱力した。
だが直後に脳の揺れが収まる。
脱力し、落ちる体のままに腕を振り下ろす。
目の前のあやめが追撃を加えようとするが遅い。
その程度の打撃で落ちるほどノエルは脆くはない。
「凍えて、終われっ!」
寒波が吹き荒れた。
瀑布の如く横に落ちてくる大氷壁。
過冷却の空気の層が押し出される氷壁と共に迫りくる。
叩きつける直前に当たる。
当たれば威力が減衰する。
逡巡は僅か。
騎士の戦闘理論が体を動かす。
より長く戦い続けるための経験則。
足を横へスライド。
滑らかに人体が旋回する。
振り下ろす勢いのままに拳を横へ振るった。
ついでにあやめも巻き込む算段だったが、既に近くにはいなかった。
冷気と氷壁はその一撃で上へかち上げられた。
そしてあの二人がいるからフレアが自由に動けないことを想い出す。
獅子の獣人の姿が見えない。
どこかに隠れたか。
ならば、水色の少女を先に落とそう。
フレアはノエルの意図を読み取っていた。
地面を揺らして隙を作る。
そのついでに盆地を作り、鳥の獣人の高度を削ぐ。
不知火フレアはどんな悪路であろうと疾駆する。
その健脚は全ての障害を踏破する。
例え、崩れ落ちる足場であろうと。
例え、揺れ続ける震源であろうと。
類稀なセンスの前には平野と変わらない。
火炎魔法を自身に付与し、冷気を無効化する。
かち上がる氷塊、あふれ出す冷気。
その向こうに、翼を捉える。
「『エンチャント・アールマティ』」
弓と自身に魔法を付与した。
弓にしなやかさを、弓引く腕に剛力を。
番える矢は二本。
矢を魔法で硬化する。
瞬く間に四本の矢が放たれる。
二連射。
等間隔に放たれたそれらは氷塊を打ち砕く。
そして、その向こうにいたレイラを捉えた。
駆けだす。
崩落する氷の足場を跳躍する。
引き延ばされる時間感覚。
レイラの姿は再び氷塊に隠れた。
だが確信がある。
矢を番える。
極限まで研ぎ澄まされた感覚が告げる。
何もない空に狙いを定める。
次の瞬間にはそこを通るだろうという確信があった。
そして、手を離した。
未来を射抜いた。
次の瞬間には姿を現すレイラへと矢を放つ。
「「隙有りですよ、先輩」」
矢は銃弾に落とされ。
足はチェーンに掬われた。
氷塊の上にぼたんがいた。
フレアが地震の最中に問題無く動くことを見通し、地に触れずに飛ぶ氷壁の上で狙った。
まさか氷塊を砕かれるとは思っていなかったが、問題無い。
ここならノエルとあやめの攻撃は届かず、相対する敵は同じ射手。
そして一対一。
上級生に有利な状況であっても、簡単に負けるほどぼたんは弱くない。
アンチマテリアルライフルを「転送」によりリロード。
片手で支え、引き金を引く。
反動で狙いが逸れる無様はしない。
しなやかな肉体が精緻に抑え込む。
避けられる。
距離を保たれる。
「転送」でリロード。
放たれる一矢を重火器の一撃で相殺する。
「いや、化け物かよ」
個人が持てる武装の極み。
それを再現する魔法に恐怖する。
口の端が上がる。
マシンガンをばら撒く。
その反動で位置を微調整し、この状況でなお放たれるレイラへの矢を処理する。
溢れる冷気は焼け付く重火器が退ける。
足先が痺れてきたが、今は気にしない。
できない。
あと保って五秒。
それ以上を過ぎればフレアをフリーにしてしまう。
その前に倒すしかない。
チェーンで足を絡め、ノエルを吊った。
すぐさまノエルはチェーンを掴もうと手を伸ばした。
だが、そんな動作は読めている。
「来たれ雷精、風の精。雷を纏いて吹きすさべ南洋の風──『雷の暴風』!」
伸ばし、無防備となった頭部へ命中させた。
しかしなお始まらぬ「転送」。
レイラはこちらへ迫るあやめの姿を視認。
すぐさま
「あびゃ──ぁ!?」
「え、ドン引きなんじゃが」
あやめはチェーンを断つ。
そして外れたノエルに拳を叩きこんだ。
眉間、肝臓、こめかみ、みぞおち、顎。
いつか熊を降した時に似たコンボを叩きこまれ、ようやくノエルは「転送」された。
それを確認する前にレイラは飛び上がる。
「『雷の暴風』、『突風』」
飛び上がった先で、ぼたんとフレアを視認。
「雷の暴風」をフレアへ、「突風」をぼたんへ。
ぼたんに態勢を整える隙を与え、フレアの矢を引き受ける。
「突風」を連続で使用し回避しつつ、あやめの位置を確認する。
フレアがあやめへ近づくように位置を調節する。
レイラの視界の端で、あやめが苦笑した。気がした。
矢がざっくりと体を裂く。
流血は魔法未満の雷で焼いて止血する。
痛みを感じる段階はとうに過ぎた。
幽世の民が森の民を直視した。
旋回。
同時に「雷の暴風」を放つ。
直接は狙わない。
あやめと挟み込む。
「くっ!」
狙いを察したフレアは矢を放つ。
爆炎を付与した速射。
三連射。三方へ。
「エンチャント・アールマティ」使用下での速射。
爆炎を付与した三連射。
フレアが最も誇る切り札。
本来ならば一人に射ち込むもの。
それを三方向に射ることは悔しいが、そうも言ってられない。
「撃ち落す」
「
矢は撃ち落された。
再びの氷壁が迫る。
逃げ道を塞がれる。
ただの氷塊であれば駆け上がれた。
過冷却された空気さえ纏っていなければ。
火炎魔法を付与していようと、これは防げない。
憎々しげにラミィを睨む。
押せば倒れそうな蒼白。
少しバツが悪くなった。
「ん。疲れたっぽいか」
額──眉間に衝撃。
ラミィを見て。
あやめの行動を見ようとした矢先のこと。
「まあ、この瞬間は四対一だからな、仕方ない」
その言葉を最後に。
不知火フレアの意識は落ちた。
レイラはすぐさまチェーンで氷塊をひっかけてあやめへと投擲した。
「遊びが無いなぁ! 前口上は要らんのか!?」
ぼたんはちらりとラミィを見る。
ラミィは首を横に振った。
時間稼ぎをしても保たないほどにラミィは衰弱している。
そういえばトラッシュトークの一つもしていなかったな、と。
ぼたんはそんなことを想い出した。
「ごめんね」
「いいや、その気迫だけでも儲けもんさ」
敵に影響があるかは不明だが。
間違いなく、その気迫はぼたんを奮い立たせている。
「まったく、気丈なお嬢様だこと」
「え、なんでわかったの」
「え、まじもん? けどなるほど、その上品さはそれ由来かー」
のんきな会話の裏で、氷塊はあっけなく水蒸気へと変えられた。
剣閃、無数に煌めく。
蒸散の音、削れる音。
紛れもなく卓越の所業。
消える姿。
ぼたんの背筋を悪寒が貫く。
促されるままにもう一丁のマシンガンを手元に「転送」。
二丁のマシンガンを乱射する。
響くのは地面に当たる音。
「ぼたんちゃん!!」
「ああ! どっかにいるぞ!!」
「そんな妖怪みたいに言うか!?」
声の方向へすぐさま体を向ける。
「よいしょっと、せーの、どっこいしょー!!!」
氷塊が横殴りに飛んできた。
ぼたんは一瞬硬直し、すぐさまラミィを抱え上げようとした。
「『雷の暴風』!!」
打ち砕かれる。
ラミィからマシンガンへと持ち直し、乱射する。
ここにきて失策を悟る。
熱狂に沸いていた頭が冷え込んだ。
ノエルとフレアを過剰に警戒し過ぎた。
確かにあの二人は強い。強過ぎた。
だが、攻撃は通っていた。
攻撃を対処できていた。
百鬼あやめは違う。
銃撃は避けられた。
氷壁は斬り砕かれた。
高所からの急襲もいなされた。
ただ偶然、距離を保てていたから脅威ではなかっただけの話。
あやめを押し留めていたノエルはもういない。
ノエルと同時に撃破することがぼたんとラミィの勝ち筋だった。
一瞬レイラとフレアのせいで負けた、と頭が過る。
思考を振り払う。
どのみち細い勝ち筋だった。
あのまま削られていた可能性が高い。
今のラミィの状態ではそうなっていただろう──。
「違う。自分の力不足だろうが、獅白ぼたん」
嫌悪と共に叱咤する。
他人のことはどうにもならない。
意思疎通でさえ失敗することが多いのだ。
応える以前の問題だ。
伝えたいことが不明瞭な方が多い。
だから、ぼたんは恵まれている。
意思疎通ができた。
初対面だというのに。
これを恵まれているといわずに何というのか。
何かが飛来してきた。
撃ち落す。
だが撃ち落せたのは一つだけだった。
乾いた音が響く。
後ろに視線をやる。
ラミィの「転送」が始まっていた。
「くそ、何て体たらく……!」
気が抜けていた──本当に。
姿は依然として捉えられないままで──。
「待ってて! すぐ抱えるから!」
埋没する思考をレイラの声が引き上げた。
任せた、と声を張り上げる。
姿は見えない。
だが確実にいる。
この方向に。
必ず捉える──。
「ばぁ!」
「ホラーかよ!」
そう意気込んだ矢先に目の前に現れた。
斜め右。
左手のマシンガンの銃口を──間に合わない。
重さが邪魔だ。
手放す。
ショットガンを「転送」する。
最小動作で銃口を向ける。
「転送」が終わったと同時、引き金を引く。
過去最高最速の早撃ち。
引き延ばされた時間感覚が会心を告げて。
炎が猛る。
刀が閃く。
発射直後の銃弾が爆炎纏う一閃で弾かれる。
ショットガンがもう一刀にスクラップにされた。
顔の真横を鞘が通り過ぎ打撃音。
くぐもった悲鳴。
レイラへの攻撃か。
「実はな、発射直後なら一刀でいけるのだ」
刀を手放す鬼が告げる。
そのでたらめさに笑みが零れた。
「鬼かよ」
「鬼だよ」
至近距離。
膝を叩きこむ。
手で逸らされバランスを崩された。
あっけないほど簡単に体術を封じられた。
笑うしかない。
みぞおちに一撃。
視界が明滅する。
経験則であやめの死角に右手を置く。
そして、「転送」したデリンジャーの引き金に指をかけて。
一瞬で腕を捩じられ地面に叩きつけられた。
打撃が続く。一撃。
そうして、獅白ぼたんの「転送」が始まった。
マジで二度とボスラッシュなんてやりたくないと思いました。
なんでノエフレ、ししラミ、お嬢を一話に収めようとしたのか不思議でなりません。