【ホロラバ】√:AlterNative最速クリア目指す   作:鈴北岳

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やっと5000字程度に収めることができたので初登校です。
モンハンが楽しいので失踪します。





3.バトロワ~決着(表) その3

 

 

 明滅する視界が晴れて。

 レイラが見たものはケガ一つ無いあやめの姿だった。

 

 ぼたんとラミィの姿が無いことから失敗を悟る。

 あのぼたんならあるいは、と。

 思っていたが、どうにもダメだったようだ。

 

 頭を振って立ち上がる。

 体力は限界だ。

 精神も限界に近い。

 

 正直、このまま負けても良かった。

 レイラ・ポーンズは百鬼あやめを大切に想っている。

 好きな人に栄光を譲ることに抵抗はなく。

 レイラにとっては誇らしいことだった。

 

 けれど。

 ここで負けるわけにはいかない。

 目指すのは一位だ。

 

 レイラ・ポーンズは一身上の都合により、このバトロワの一位を取る必要がある。

 

「ん。じゃあ、タイマンだな。先手は譲るぞ」

 

 心なしか、あやめはそわそわとしていた。

 これからすることはお互い初めてのことだ。

 

「ありがとう。遠慮はしな、しませんよ」

 

 公的には初対面であることを気を付ける。

 うっかりと普段の口調が出てしまいそうだった。

 

「敬語は要らんぞ。新入生。知ってると思うが、余は百鬼あやめ。この学園の生徒会長だ」

 

「ではお言葉に甘えて。私はレイラ・ポーンズ。よろしく、あやめちゃん」

 

「レイラ、レイラだな。うん。覚えたぞ」

 

 笑顔が零れる。花開く。

 これで初対面ではなくなったと。

 お互いに相手の名を気兼ねなく呼べると。

 

 レイラはゆっくりと周囲を観察しながらチェーンの欠片を拾う。

 そして全てをかみ合わせ、「鉄操作」で修復する。

 3点セットをかけ直す。

 

 飛び上がる。

 翼を広げる。

 空を駆ける。

 

 そうして、体育館の屋根をぶち壊し。

 即席の長大な槍へと変えた。

 

 突貫する。

 

「いささか飽きるぞ、それは。レイラ!」

 

 炎刀閃く。

 瞬く間に長大な槍はスクラップへと変わり果てる。

 

 だがそれは目晦まし。

 当たればケガとなる砂飛礫とマシンガンの掃射。

 仕留めるのではなくダメージの蓄積を主眼に置いた削りの攻撃。

 

「む。これは痛いな」

 

 爆炎纏う一刀が振るわれる。

 剣圧と爆発が面攻撃を霧散させる。

 

 直後にスクラップの再形成が成る。

 長大な槍が左右に広がる。

 あやめはそれを斬り飛ばそうとして。

 

「『突風』」

 

 その直前に背中を押された。

 姿勢を保つべく迎撃を中断。

 直後に構えた二刀がスクラップと嚙み合った。

 合ってしまった。

 

「そこっ!!」

 

 急激な過負荷がかかる。

 視界が一瞬で捩じれた。

 

 あやめの背中はコンクリートと激突し、そのまま突き破った。

 突進が止まり、周囲を確認する。

 見覚えのある内装。校舎。

 

 あやめはレイラを見て。

 

「『雷の暴風』」

 

 視界が光に包まれる。

 

 炎が猛る。

 刀が閃く。

 

 現象の波涛を力づくで散らし切る。

 無理はない。

 その程度のことはあやめにとって容易いことだ。

 鬼の剛力とその合理化はそれを可能とする。

 ついでとばかりに周囲の邪魔な瓦礫と鉄くずも両断する。

 

 煤が舞う。

 炎熱纏う二刀が灰燼と帰す。

 

「その程度か」

 

 初めてだった。

 こうして本気で喧嘩のようなことをするのは。

 

「その程度か、レイラ」

 

 レイラはいつもあやめに譲っていた。

 あやめはいつもレイラを慮っていた。

 だから、喧嘩をすることは無かった。

 ぶつかっても拗ねて流して終わってしまった。

 

 それを寂しく思う。

 心を閉ざされているのではないとはわかっていても。

 

「そんなんじゃ、余は負けないぞ!」

 

 校舎の天井が崩落する。

 瓦礫が飛び交う。

 閉所の壁をぶち壊して、レイラは校舎を武器とする。

 

 生き埋めにする気だ。

 あやめはそう悟る。

 事実、それは有効だ。

 

 鬼は頑丈だ。

 全ての現象に耐性を持つ。

 ただそれはあくまで、極まった生体機能の副産物に過ぎない。

 化け物染みた力には種も仕掛けもある。

 鬼とは、上限の無い人族に過ぎない。

 

 である以上、鬼もまた反動負荷により筋力が跳ねる。

 カタログスペックを出すには溜がいる。

 その溜を潰せば拘束も不可能ではない。

 

 だがこれでは足りない。

 校舎の重量全てで一息に拘束するならばともかく。

 こうして、徐々に詰める方法では不可能だ。

 

「余にはこれがあるぞ」

 

 これ見よがしに炎を盛らせる。

 刀では無効化できずとも。

 炎を併用すれば先のように爆砕できる。

 

「わかってるよ。けど、コレは知らないでしょう?」

 

 チェーンで校舎を崩す。

 崩して、飛礫を飛ばす。

 あやめは落胆と共にそれを爆炎で無力化する。

 

「ショットガンと変わらんぞ」

 

粉塵(・・)

 

 レイラは「矢避け」を起動させる。

 口元を布で覆う。

 落ちる瓦礫がレイラを避ける。

 

「息苦しいよね」

 

 あやめは咳をした。

 確かに鬼の体は強靭だ。

 だがそれにも限度はあり。

 文明人であるあやめにはこの悪環境は適さない。

 

「それにね、あやめちゃん。戦争で一番怖いのは兵器だけど、その余波も恐ろしいの。鎧──軍服はそれを防ぐデザインをしている」

 

 ここまで言えばわかるよね。

 

「飛礫、破片、すなわち擦過傷。あやめちゃん、その二刀で砂嵐を捌けるかしら」

 

 手首に巻かれたチェーンが暴れまわる。

 瓦礫と砂飛礫が弾き出される。

 

 あやめは炎刀で飛礫を弾く。

 同時、校舎の外へ出るべく跳躍した。

 

「逃がさない」

 

 「突風」が押し戻す。

 超感覚が魔法を示す。

 炎刀を振るい、風を押し戻──し切れない。

 足と胴体に絡む風があやめを校舎へ押し戻す。

 

「線で面を押し戻せるのはその線部分だけ。放射線状に広がるにしても、その根元は線でしょう? なら、振るわれる根本から『突風』を使えば良い。難しくはないわ」

 

「だが易しくもないぞ。特に、鬼たる余相手にはな」

 

 けほっ。

 咳をしながら不敵に笑う。

 強張ったレイラの顔。

 初めて見る緊張の顔。

 胸が躍る。

 

「それにな」

 

 炎が爆ぜる。

 障害物を灰燼と帰す。

 本気のノエルに匹敵する脚力であやめが跳躍する。

 地面はひび割れた。

 

 レイラは後退し。

 「突風」で押し戻し。

 瓦礫と砂飛礫を弾いた。

 

「放射線状には広がるのだろう?」

 

 炎を前面に──盾にして。

 炎刀を振るう。

 

 爆ぜる爆炎がレイラを飲み込む。

 咄嗟に翼を広げて風圧で押し戻し、「突風」で回避を行う。

 だが肌は焼かれ、髪は煤けた。

 

「削り合いだな、レイラ! とても──とても良いアイデアだ! 悪手の数で勝負する! よくもここまで余の強みを抑えたな!」

 

 百鬼あやめの強みは一撃の重さと手数の両立である。

 一撃必殺でもない。

 無限回の攻撃でもない。

 対処し辛い衝撃を、対処し辛い回転数で繰り出す。

 すなわち、どちらかを封じれば、あやめの攻撃は受けても致命的なものではなくなるのだ。

 

 レイラは「突風」であやめの必殺を封じた。

 逃走も封じた。

 そして、場を整えることでか細くとも勝ち筋を作った。

 

 崩落による生き埋め。

 瓦礫と砂飛礫による擦過傷──多量出血。

 粉塵による呼吸器への継続ダメージ。

 そして、捕まえれば最後、チェーンによる振り回し。

 

 一つ一つは有効打に届かない。

 対処される。

 しかし、同時に重ねれば対処に追われる。

 一手二手の遅れは出る。

 四手のリードを奪えれば、レイラには必殺の勝機がある。

 

 そう。

 ここからは持久戦。

 削り合い。

 

 弱者が強者に勝つべく組み上げた泥沼。

 強者を弱者へと変貌せしめるコロシアム。

 戦術を制限した勝負の鳥籠。

 

 ここにおいては敵の悪手こそが勝利への道筋。

 すなわち、勝負を運任せに貶める悪辣であり。

 すなわち、勝利のための技術(スキル)への冒涜である!

 

「軽蔑する?」

 

「いいや。真正面から戦う限り、余が勝つからな」

 

 その言葉に偽りなく。

 むしろ嬉しいとさえ感じた。

 競ってこそ初めて見えるものがある。

 

「ただまあ、二度はゴメンだと思うがな!」

 

 嘘は無い。

 二度目はマジでごめんである。

 あやめはちょっと鼻水がきつかった。

 

 炎刀を携えて鳥籠へと挑む。

 

「ははは! イタズラっ子だなぁ! レイラは!!」

 

 あやめの勝ち筋はレイラの体力を削り切ること。

 そして、強引にこの鳥籠を突き破り、レイラへと必殺を叩きこむことである。

 それだけの力があやめにはある。

 だがそれもレイラを守勢に回らせての話。

 肉を切らせて骨を断つ、そこまでいけば勝てるとあやめは確信する。

 

 ふと、レイラが自分より下級生であることを思い出す。

 手加減するべきだろう。

 むしろ負けるべきだ。

 取れ高的にはやり過ぎて滑るくらいがちょうど良い。

 

 けど。

 

 レイラの険しい目があやめを貫く。

 いつもの柔らかな目ではない。

 拗ねている時の目でもない。

 新鮮だ。

 ドキドキする。

 この目と対峙していることに楽しさを感じている。

 

「うん。やっぱり本気でやろうか」

 

 (カルマ)不知火(しらぬい)への妖力の供給を最低限に。

 爆炎への生成へと回した。

 

 レイラはジェットエンジンで回る独楽を連想した。

 見たことも聞いたこともない妄想の産物。

 そんなでたらめが目の前に現れた。

 

 あやめの足元が炎に爆ぜる。

 コンクリートの焦げる臭い。

 爆砕される校舎。

 

 「身体強化(雷)」を以てしても見失いかける跳躍。

 

 百鬼あやめがねずみ花火の如く爆ぜ回っていた。

 

 目晦ましに「雷の暴風」を放つ。

 同時に「突風」を吹かし移動を制限。

 移動先へ瓦礫と砂飛礫を飛ばした。

 

 そうしてようやくあやめの攻撃を凌ぐことができる。

 あやめの息継ぎに校舎の破壊を挟む。

 脆くすることで崩落の危険性を高め、チェーンで弾くことのできる瓦礫を増やす。

 

 頭痛がする。

 手も頭も休む暇がない。

 休まずに動いて保てる均衡。

 僅かな優勢。

 

 コンクリートが乏しくなる度に階上へ上がる。

 あやめが追いすがる度、生き埋めを狙う。

 動きは確実に鈍っている。

 しかしなお火力は健在。

 涙目のあやめに申し訳なさを感じるが、手は緩めない。

 

 そうして、何の成果も挙げられずに屋上へと上がる。

 位置を調節する。

 火花からあやめの位置を推測。

 対角線上へと自身を置いて。

 

「さあ、追いつめたぞ!」

 

 煤汚れたあやめが追いすがる。

 炎を爆ぜさせ跳躍した。

 しようとした瞬間に「雷の暴風」を撃ち込んだ。

 

 急激な方向転換で避けられる。

 あやめが校舎に着地し、再び跳躍しようとして。

 

 校舎の崩落が始まった。

 屋上が崩れ、瓦礫があやめに降り注ぐ。

 足場が崩れる。

 

 レイラは空中を飛び。

 あやめは空中に浮いた。

 

 あやめの足元に炎が凝縮される。

 これまで一度も見せなかった空中での跳躍。

 校舎の崩落がいつか起きることは読めていた。

 それを利用する心づもりも推定済み。

 だからこそ空中機動を見せなかった。

 

 初見で詰める。

 息苦しさは軽減された。

 新鮮な空気を吸おう。

 そうして、レイラを降すのだ。

 

「──やっぱり、できるよね」

 

 チェーンが校舎の鉄骨に触れていた。

 伝播する「鉄操作」。

 動くのに邪魔なコンクリートは剥げ落ちた。

 チェーンを振るうがごとく、校舎の鉄骨が蠢いた。

 

 鋭い鉄柱が凝縮された炎に複数穴を空けた。

 無秩序な爆発。

 バランスを崩したあやめはしかし、体へ迫る鉄骨へ的確に二刀を振るう。

 

 その隙に足を絡め取った。

 視線が足に向いた瞬間に横合いから「突風」をぶつける。

 足の位置はそのままに、上体が傾ぐ。

 

 一瞬、あやめは平衡感覚を失った。

 同時に頭上からチェーンが迫る。

 一瞬早く周囲の状況をすり合わせたあやめがチェーンを斬り飛ばす。

 そして足を捉えた鉄骨へと刀を振るい──刃が食い込んで、止まった。

 

 何事かと逡巡が生じる。

 一瞬だ。

 すぐに刀の峰に爆炎を生じさせようとした。

 

「捕まえたよ、あやめちゃん」

 

 その声に悪手を悟る。

 細い鉄骨が無数にあやめの体──特に腕を抑え込む。

 完全に抑え込まれる寸前にチェーンを握る。

 事ここに至り、爆炎のみではこの拘束から抜け出せないと悟った。

 

「まだだっ!」

 

 視線をレイラへ向ける。

 視覚情報を基準に妖術の炎を生成。

 レイラへと撃ちだした。

 

 「突風」でレイラは炎を避けた。

 急激なGにあやめの視界が一瞬ブラックアウトする。

 

 レイラは校舎から垂直に飛び上がる。

 高く、高く。

 あやめ以外に誰もいないことを良いことに、限界高度まで駆けた。

 空気が薄くなるところまで。

 

 それでもあやめの意識は生きていた。

 掴んだチェーンから伝わる情報からレイラの位置を推察。

 正確に炎を叩きこむ。

 その度に体が激しく撹拌され、位置感覚を見失う。

 恐らく避けられているのだろう。

 だが、避けられているのであれば位置はほぼ掴めているはずだ。

 撃ち続けていればいずれ当たる。

 

 何より、チェーンを手繰り続けていればいずれレイラを捕まえられる。

 掴む右手がジリジリとチェーンを手繰る。

 短くしていく。

 

「さ、一緒に落ちようか」

 

 レイラは炎を避けながらあやめを地面に叩きつけた。

 炎が止む。

 レイラは好機とばかりに水面を跳ねるように地面にあやめを叩きつけ続けた。

 

 それでもなお、炎が掠める。

 あやめを縛る鉄骨が嫌な音を立てる。

 

 「飛行」は切った。

 隙を見てかけ直した「身体強化(雷)」と「鉄操作」も限界が近い。

 

 のたうつ鳥のように。

 レイラは地面を跳ねる。

 あやめを地面に叩きつけ続ける。

 

 飛び交う炎と翼は徐々に弱まっていっていた。

 

 響く音も徐々に落ちていく。

 

 のたうつ鳥は勢いをなくしていき。

 

 先に。

 

 百鬼あやめの「転送」が始まった。

 

 数度、鳥が跳ねる。

 

 軽くなった鳥籠に気付き、動きを止めた。

 

【生存者残り一名となったので今年度初回、学内バトルロワイアルを終了します。最後の生存者は「レイラ・ポーンズ」! 例年以上のハイペースを駆け抜けた彼女に盛大な拍手を! 同じく、この激戦を駆け抜けた他の方々にも盛大な拍手を!】

 

 アナウンスが入り、「転送」が始まった。

 

 ほう、と息を吐く。

 手首に巻きつけていたチェーンが地面に落ちる。

 視界から学園が消えて「転送」が終わる。

 

 そうして、レイラは意識を落とした。

 

 

 

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