お人好しの不幸な子供育成日誌   作:ジシェ

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オリジナル小説読み漁ってたら自分も書きたいな…と思って投稿しました。自分でも馬鹿だとは思ってます。
三つ同時投稿とか全部終わんの何年後になるんだ?
まあ不定期更新増えるから自分の他小説読んでくれてる人には申し訳ない…でも書くの楽しいんですよ。試しでもいいので至らないところは目を瞑って、読んでいただけると嬉しいです。


最初の一人

「うぇーん、うぇーん、」

「………」

 

雨の中、泣き叫ぶ少女の前に、俺は足を止めた。

少女の顔にハンカチを当て、大粒の涙を拭う。

そして、ほぼ無意識に囁いた。

 

「付いて来るかい?」

「…いいの?」

 

思えばこれが始まりだった。

辺りには、雨の音が響いていた。

 

―――――

 

「……そんなに引っ付かなくても、逃げたりしないよ?」

「……」

「……不安なのは分かるけど、それじゃあ何も出来ないから、ね?」

「…うん…」

 

足に引っ付いていた少女は、渋々ながらも離れてくれた。

 

「さてと…何であんなところで泣いてたのかな?親御さんは?」

「……いないの…」

「え?」

「お父さんも、お母さんも、どこにも……」

 

再び泣きだした彼女は涙ながらに説明してくれた。

母親から外で遊んでこいと追い出された。

夕方程に帰ると鍵は開かず、アパート住まいだったため隣家の人が心配して、大家さんを連れて来てくれた。

開いた部屋には誰もいなかった。

しばらく大家さんと待っていたが、一向に帰らず夜になった。

父親が仕事から戻ることもなく、その日は大家さんのお世話になった。

翌日になっても帰ることはなかった。

大家さんが、『捨てたのかい…?』と呟いたのを聞いてしまい、大家さんのもとを飛び出した。

歩き回って途方に暮れて、泣き叫んでいた。

 

「そっか…」

「わたし…捨てられたの…?いい子じゃなかったから…いらない子なの…?」

「ごめんね…お兄さんには、何も分からない。けどね、一晩子供を放っておくのは、酷いことだよ。それぐらいは僕にも分かるくらい当然のことなんだ。ただ…もしかしたら、偶然何か事件に巻き込まれたとかで、帰れなかっただけかもしれない。だから戻ってみよう?僕も確認したいからね。」

「…うん…」

 

それから、その子の家に向かった。

まだ小学生にも満たなそうな幼い少女が、自分の家の場所を分かるのは、それほど追い出されることが多かったのかもしれない。

ただ聡いだけかもしれない。

親に案内されただけかもしれない。

何も分からない。

しかし確定してしまったことがある。

分かってしまった事実がある。

彼女は捨てられたのだ。

それは、大家さんに言われるよりも先に、窓から部屋を見て確信した。

その部屋には、家具も靴も、何もなかったのだ。

 

―――――

 

「お母さん…」

「……」

 

泣きそうな声で呟く少女は、自分が捨てられたことを理解している。

やはり聡い子なのだろう。

扉が開いていることに気が付いた大家さんが、僕達の前に迫る。

 

「あんた誰だい?その子の親はもっと厳つい顔だったような…?」

「この子を保護した者です。少しお話しいいですか?」

「…ああいいとも。しかし…」

 

少女をちらりと見る。

やはり話ずらいのだろう。

捨てられたというのは、子供には辛いどころの騒ぎではない。

気遣える大家さんは、いい大人なのだろう。

もっとも、賢い彼女は既に悟っている。

しかしわざわざ本人の前で話すことではない。

大家さんは、隣家の人を呼び、少し少女を見ているよう頼んだ。

 

「それじゃあ話そうか。」

「はい。」

 

―――――

 

「見ての通り、家具も何もないってことは…」

「夜逃げ…ですか?」

「…多分ね。そもそも結構な博打中毒だったんだよ。」

 

その後は、よく聞く話を淡々とされた。

競馬やスロット、博打ばかりする放置親。

借金だらけでぼろぼろな家庭。

家賃も三ヶ月滞納中。

子供に対して、父親は暴力を振るう。

母親は見てみぬ振り。

 

「酷いですね…」

「だろう?彼女も気の毒な子だよ…」

「……そうですね。」

 

親に愛されることもなく、それどころか暴力を振るわれた。

気にかけるでもなく、放置し続けた。

常人には想像出来ないような生活。

それを受け入れていた。

 

「…なああんた…」

「引き取ってほしい…ですか?」

「…あの子が気の毒でね…勝手とは思うけど、あたしに養う余裕はないんだ。あんた人は良さそうだし、あんたになら預けられる。そう思ってね…」

「……最初からそのつもりですよ。」

 

自分だって気の毒だ。

可哀想だと思う。

一度助けたなら、面倒見るのが責任というものだ。

それに…

 

「僕も…一人は寂しいですから…」

「…ありがとうよ。」

 

―――――

 

「疲れたんだね。」

 

時刻は既に五時を過ぎた。

帰る頃、少女は倒れるように寝てしまった。

今はおぶって帰っているところだ。

大家さんから少しこの子のプロフィールを聞いて、ある程度分かった。

 

名前は柊谷(ひいらぎ)(ひとみ)

年は七、誕生日は三月三日の雛祭り。

身長は114cmと小柄。

髪は切れず、結ぶ物も買ってもらえなかった。

よく大家さんと話していて、家の話もたまにしてくれた。

学校には一応行っていたが、友達を作る心の余裕はなかったらしい。

義務教育で小学校に行かせないのはまずかったのだろう。

勉強は並、聞く限りでは学校でもあまり話さない。

 

これほど大家さんが知っているということは、余程相手をしていたということなのだろう。

 

「苦労したね…これからは明るく過ごせればいいな…」

 

そう自分に言い聞かせる。

 

―――――

 

「ふぅ…」

 

僕は瞳ちゃんを布団に寝かせ、夕飯を作ろうと台所へ向かった。

食材は、豚肉キャベツ人参…もやし。

野菜炒めかな…

 

―――――

 

「んぅ…」

「夢でも見てるのかな?」

 

寝てる彼女の横に座ると、置いた手をその小さな手で掴まれる。

 

「……僕…この子の父親に…なれるのかな…」

 

そう不安になる。

 

「…ならなきゃ…いけないよね…」

 

彼はそう胸に誓う。

しかし彼は知らなかった。

そして気付いていなかったのだ。

自分と周りとの差違に…

自分がどれ程のお人好しなのかを…

 

―――――

 

「うぅ…ん…」

「起きたかい?」

「ん……!?」

 

何かに驚いたように、彼女は飛び起きる。

すぐに理由は分かったが、他にも疑問がある。

 

「……わたし…」

「大丈夫だよ。君は僕が引き取ることにしたんだ。だからもう、安心してほしい。」

「なん…で…」

「うん?」

 

泣き叫ぶ彼女は、何故、何故と繰り返す。

自分は悪い子なのだ。

自分がいても良いことなんてない。

 

「わたしは……!」

 

僕は彼女を抱きしめる。

この子は十分苦しんだ。

これ以上辛いことをさせてどうする。

 

「大丈夫。もう大丈夫だから…」

「……お兄さ…」

「今まで辛かったね…もう大丈夫だよ。」

 

幸せにしなければ、引き取った意味はない。

こんな幼い子を、苦しめていい道理はない。

これからが…この子の始まりだ。

 

「これからは、楽しいことを知っていこう。」

 

それはこの子に言ったのか。

それとも自分に言った(誓った)のか。

今の僕には分からなかった。

 

 




面白そうと思っていただけたら是非次回も…いつになるかな…
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