お人好しの不幸な子供育成日誌   作:ジシェ

11 / 40
この時間にも投稿するという試しで投稿しました。毎週読んでくれる方…いたらいいなという願望ではありますが、朝なければこの時間にも確認してみて下さい。それでもなければ投稿しないと判断して頂ければ間違いないです。


仲間と家族

()はこの家にお世話になっている。

まだ()日だが、既に返し切れない恩がある。

事情も聞かずに家に置いてくれた。

無二の親友を一緒に連れて来てくれた。

温かいご飯、寝床、そして…家族。

汚ならしいホームレスに、手を差し伸べてくれた。

しかし反面、誰かに恨まれていたりするのではないかとも思ってしまう。

家もなく、家族もいない、そんな状況での暮らし、当然似た境遇の知り合いも出てくる。

自分だけが幸福な道を選んでいいのか。

この『幸せ』は、彼らにとっての『嫉妬』に繋がるのではないか。

自分はまだ、路上で暮らす方がいいのではないか。

そう考えてしまう。

だから、僕は家を出た。

いや家出ではない。

ただ出掛けただけだ。

過去に助けられた人達に、せめてお礼の一つ、報告の一つでもしなければ、僕の『幸せ』は、『罪』として残り続ける。

せめて、いくら罵られようと、暴力を振るわれようと、彼らにお礼をしなければ。

今の自分は確かに幸せだ。

しかし前の生活でも、確かに幸せだった。

たとえ食事が貧しくても、道行く人に汚ないと罵られようと、あの頃の生活も、確かに幸せだった。

親のような接してくれたよき隣人達。

彼らも間違いなく、一つの家族の形だった。

だから、罵倒や暴力が怖くとも、彼らの元へと向かうのだ。

 

―――――

 

僕が暮らしていたのは、あの公園じゃない。

近くの河川敷に、ホームレスの集まりみたいな場所がある。

そこで暮らしていたというのは少し違い、日によっては路地やそれこそ公園にいたりした。

僕は今、その河川敷にいた。

見知った顔、よく知る場所、誰だという疑念の視線。

しかしそれは、一人のおじさんの一言で消えた。

 

「お前…光希…か?」

「…おじさん。」

 

ホームレスとして一年の間、彼はずっと、僕を守ってくれた。

彼もまた、僕の父親だった。

だから怖い。

彼に拒絶されることが。

嫌われることが。

妬まれることが。

しかしそれは…そう思っていたのは…僕だけだった。

 

「…光希…よかったな。」

「…え?」

「身なり見りゃ分かるだろ?誰か引き取ってくれる人でもいたか?それとも仕事でも貰えたか?何にしろお前は、この生活から抜け出したんだ。」

「…僕は…」

「お前のこった。どうせ自分だけ…みたいな感じで少し負い目でも感じてんだろ?なぁ?」

「………」

 

図星だった。

信じた人に責められることが怖いから、自分が裏切ったから、幸福になることが怖かったから…僕は、泣いた。

静かに、涙を滴らせた。

彼らは責めるどころか祝ってくれた。

なけなしのはずの食料を、少ない体力を、ごみ溜めを掃除してまで、僕を祝う。

 

「どうして?」

「ん?何だ?」

「だって…僕は自分だけが救われたんだよ?皆を置いてきぼりにして、僕だけが…」

「…ははは!何言ってんだ!ガキが大人に遠慮するもんじゃねぇぜ?なあ?」

『そうだそうだ(笑)』

「俺らは自分の意思でここにいる。勉強サボって、学校サボって、働くのも嫌で、こんなごみ溜めに落ちて来た。」

「ごみ溜めじゃねぇだろ~」

「一緒にすんじゃねぇよ~」

「同じだろーが。まあ、それでもな…お前みたいにそれしか道がなかった奴なんて、ここにゃ一人もいねぇよ。何せガキはお前だけだからな!ははは!」

 

そう言い彼らは笑う。

河川敷を通る一般人が引く程に、大声で笑う。

まるで面白いものでも見たかのように。

事実そうなのかもしれない。

僕は彼らにとって、珍妙な生物に近かったのかもしれない。

 

「俺らは言えば敗北者だ。努力しないでただ敗けたプレイヤーだ。でもお前はまだ、プレイヤーにもなってない。勝利も敗北も自分次第、真っ白なキャンパスだ。」

「かっけぇ言い回しだな!」

「似合わねぇ~」

「うるせぇよ。…で…ああ何だったか?まあとにかく、これからどうなるかはお前次第。どうしたいか、どう進むか、お前の道はお前が決めろ。ほら、お前はこれから、どう生きたいんだ?」

「僕は……」

 

何をすればいい。

何も思い付かない。

勿論世話になるあのお兄さんや少女に、少しでも恩返しをしなければならないだろう。

今ここにいる仲間達にも、何かお礼をしたい。

 

「……悩んでんなぁ~どうせ恩返しでも考えてんだろ?」

「必要ねぇよ!聞いたろ?俺らは自分の意思でここにいんだ!何なら将来酒驕れよ!?がははは!う、おぇ…」

 

一人の男性が酒を吐いた。

随分飲んだから酔ったのだろう。

でも…やりたいことは分かった。

 

「お?決まったか?」

「…ふふ…そうだね…将来お酒でも驕るよ。」

「…はは!楽しみにしてるぜ!」

僕はまた、彼らと過ごしたいんだ。

 

―――――

 

「ここにいたんだな。ヒイロ。」

 

路地で一匹の猫を見つけた。

彼は僕の友達だ。

ホームレスのおじさん達が親なら、彼は親友だ。

ずっと一緒にいてくれた、唯一無二の親友だ。

彼も一緒にいたら…それが口に出ていた。

 

「言葉分からないよなぁ…知ったことじゃねぇか…」

 

それでも言ってしまう。

 

「お前も一緒ならなぁ…」

「…猫?」

「!?」

 

そこに来たのは、俺を探していたお兄さんだった。

いや…そこにいたのは…()の家族だ。

 

 




前瞳ちゃんでもやった閑話です。彼の過去はもっと先で考えてるので、話展開のためまだ出しません。『俺』と『僕』の使い分けの理由もその時。何話かは自分も分からないけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。