「………」
静かな空間に、マウスを押す音が木霊する。
キーボードをタップする音、ホイールを回す音、するのはその三つの音のみ。
発生源は当然パソコン。
理由は、小学生に必要なランドセルや授業で使う物の準備のためだ。
瞳ちゃんの以前の物は、親によって捨てられてしまった。
瞳ちゃんは身一つでここに来たのだ。
ランドセルや筆記具も何もない。
準備が遅いと思うだろうが仕方ない。
売っている場所に寄ることがなかったのだ。
それに光希君のこともある。
時間が少なかったのもあるだろう。
(しかし色々あるな…)
昔は赤と黒くらいだった気がする。
今は形も違えば色も様々だ。
僕がパソコンを弄っていると、部屋の扉が開く。
瞳ちゃんが来たみたいだ。
「お兄さん…ご飯一緒に食べませんか?」
実は起きた後、朝食だけ用意して調べていたのだ。
そこに『先に食べてていいよ。』と書いた紙は置いておいたのだが、瞳ちゃんは一緒に食べたいようだ。
「うん。一緒に食べよっか。」
これを断れる親はいないだろう。
僕はとりあえず調べるのを止めて、朝食を摂りに行った。
―――――
三人(と一匹)で食べる朝食、しかしあまり話すことはない。
瞳ちゃんは食事中に会話する行儀の悪さを理解、光希君はまだ心を開いてくれてない、僕は元々食事中に話すタイプじゃない。
結局あまり話さず朝食の時間は過ぎていった。
―――――
「光希君、今日はどこかに行くかな?」
「…あ?別に…そんな予定ないけど…」
「ならよかった!瞳ちゃんの学校に行く準備で買い物行かなきゃだったんだ。」
「ふーん…留守番してりゃいいの?」
「一緒に来たくなければ、家で自由に過ごしていいよ。でも一緒に来れば、好きなもの買ってあげるよ?」
ちょっとずるいかもしれない。
子供が何でも買ってあげるなんて言われたら絶対来る。
しかし光希君は留守番してると言い、部屋に戻っていく。
「…まだ話してくれませんね…」
「うん…まあ気長に過ごしていけばいいよ。」
僕と瞳ちゃんは以前のデパートへ向かった。
―――――
「本当に色々あるな~」
色とりどりのランドセルが並ぶ場所に到着した。
ネットで見た通り、昔より種類が多い。
どれを買うか悩む程数が多く、瞳ちゃんに選んでもらうことにした。
僕にセンスは期待しないでほしい。
「瞳ちゃんはこれがいいとかある?」
「えっと…あまり分からなくて…」
「まあそうだよね…」
そもそも以前はランドセルを買ったわけじゃないだろう。
あの親達だ、ゴミ捨て場のを拾っててもおかしくない。
「すみません。」
『はい!どうされました?』
「何か…おすすめのランドセルとかありますか?軽い物や容量の大きい物を探しているんですが…」
『そうですね…こちらなどいかがでしょうか。容量はほんの少し小さいだけで、とても軽い物になります。』
「…確かに軽いですね。小さくもないし…瞳ちゃんはどう?」
「……いいと思います。本当に軽い…」
「よし、じゃあこれ買います。」
『…えっと…失礼ですが…お子様ですか?なんだか他人行儀で気になってしまって…』
店員からしたら娘と敬語で話すのはおかしいだろう。
不審者とでも思われているのだろう。
「少し事情がありまして…この子の親がいなくなったので、親代わりとして預かっているんです。」
『あ…も、申し訳ございません!私好奇心が強くて…』
「大丈夫です。不審に思われるのも無理ないので…」
しかし毎度怪しまれるのも辛い。
やはり瞳ちゃんに頼むべきかもしれない。
親として、敬語はやめてほしいと。
ランドセルを買った後、筆記具や雑巾などの必要な物を買って帰宅する。
―――――
家への帰路、瞳ちゃんに話しかける。
「瞳ちゃん、少し話しがあるんだ。」
「はい…?」
「あ、大丈夫!そんなに深刻なことじゃないから!あのね…敬語をやめてほしいんだ。」
「え…」
「外で敬語を話すの、結構不審者と思われてるみたいだからね…」
「あ…ご、ごめんなさい!私のせいで…」
「違う違う!むしろ悪いの僕だから…」
その後二人で責任の擦り付け合いならぬ受け合いをしたが、数分したら家が見えてきたのでやめた。
玄関を開けると、ヒイロが出迎えてくれた。
少し遅れて光希君も来てくれた。
「なんかヒイロ、あんたになついてるんだよな。」
「なんでだろ?」
「ヒイロにもなんとなく分かんだろ。ゴマ刷って得する相手っての。」
「ああ…そういうことかな。」
「お兄さんの優しさが伝わってるんですよ。」
ヒイロは歩き回って頭をぶつけていく。
足にもふっとする感触がくる。
皆でその感触を少し堪能していた。
―――――
その後は各々好きに過ごした。
学校の準備のため僕と瞳ちゃんは色々ランドセルに詰めていく。
光希君はそれを見ながらヒイロを撫でている。
「出来れば光希君も学校に通ってほしいな…」
「俺はいい。色々面倒くせぇし…」
「将来のために学校に通うのは必要なことだよ。近いうちにどこか近い中学校に手続きするよ。」
「……」
―――――
まあ準備が終わったらゲームする辺り、瞳ちゃんは染まってきている。
このまま中毒みたいになったら困るが、瞳ちゃんはしっかりわかっているようだ。
制限するだけ僕の子供の時よりえらい。
学校前だからと予習をし、夕飯を食べ早めに就寝。
特に何があるでもなく、普通の一日が終わった。
―――――
七日目
学校の準備をするため、買い物に出掛けた。
瞳ちゃんが『あれを買いたい』などあまり言わないため、特に他のものは買わずに帰った。
我が儘は言ってほしいと思うのは、親ならあることなのかな?
帰ってきてからも特に何をするでもなく、いつも通りゲームをしたりヒイロを撫でたりと、特別なことは何もなく終わった。
明日はとうとう学校。
瞳ちゃんはこの七日でかなり変わった。
友達も出来るだろう。
頑張れ、瞳ちゃん。
味ない一日ですね…仕方ないんですけど。