「それじゃあ僕は仕事に行くけど…光希君一人で大丈夫かな…?」
「平気だから早く行けよ。」
「……行って来ます。」
「行ってら~」
少し複雑だ。
嫌われたわけではないと思うが、必要ないって言われたみたいで…
これが瞳ちゃんなら結構つらい…光希君でも少しへこむけど。
男の子と女の子に言われるのは違うから、まだ光希君で…良くはないけどましだった。
しかし一日光希君は何をするのだろうか。
また出掛けるのだろうか。
家の鍵は渡してあるし、瞳ちゃんが帰る頃にはいてほしいとも伝えてあるから心配はないだろうけど…
「やっぱりもう少し休むべきだったかな…」
生活のためそんなに休むわけにはいかない。
有給も多いわけではないし、同僚にも迷惑だ。
既に八日も休みをもらってるのだ。
そろそろ行かなければ仕事にならない。
不安な気持ちを抱えながら、僕は職場へ向かう。
―――――
「ふぅ…」
二人が出たことを図って、
「二人共心配性だよね…僕のことやっぱり役立たずだと思ってるのかな…」
「なぁ~ん」
「どうしよっか…」
特にやることを言われたことでもなく、自分でやりたいことがあるわけでもなく、暇をもて余す。
ヒイロは僕といてくれるけど、喋りもしなければ暇潰しを提案してくれるわけでもない。
やっぱり寝るのが一番かもしれない。
ゲームは…一人だとやる気が起きない。
「…おじさんのとこ行くか…」
「なぁ~…ぁぁ~…」
ヒイロは大きな欠伸をする。
ヒイロは寝たいようだ。
「薄情な奴。一緒にお世話になった人のとこに行く気もないの?」
「…………」
「もう…」
―――――
「おじさん!」
「ん?おう!光希じゃねえか!」
「一昨日ぶりだね!」
「そうだな。ますます健康そうな顔になってきたな。」
「うん…」
「辛気臭ぇ顔はやめろよ!幸せでいいじゃねぇか!それとも何か?お前は俺らみたいな底辺生活戻りたいってか?今の家族止めて、俺らと同じとこに落ちるのか?」
「…ううん。僕は皆にお酒を奢る約束したからね。」
「……お前が元気なら、俺は…俺らは嬉しいんだよ。お前は俺らにとって、ガキみてぇなもんだからな。」
「おじさん…」
僕は、今も昔も、恵まれたところにいたんだ。
他にもホームレスの溜まり場なんていくらでもある。
その中で、仲間の幸せを喜んでくれる場所なんていくつあるだろうか。
そんなところで暮らすストリートチルドレンを拾う物好きなんて、何人いるだろうか。
僕は恩返しをしなければならない。
それが僕の目標だ。
―――――
「おじさん達元気にしてたよ、ヒイロ。お前も来ればよかったのに…」
「な?」
「僕の言葉分からないよね…」
家にいるのは僕とヒイロだけ。
お兄さんも瞳ちゃんも帰ってない。
おじさん達と世間話をしてから帰ったが、そこまで時間は経ってなかった。
瞳ちゃんは昼過ぎには帰ると思うけど、一体何をするというのだろう。
お兄さんがいない今、二人だけで話すのもいいかもしれない。
「そろそろ嫌な思いさせるのも止めよう…」
意図的ではなかったにしろ、嫌な思いさせたのも事実。
これからは気を付けなきゃ…
「ただいまです。」
「おかえり~」
瞳ちゃん…瞳が帰って来た。
「……」
「……」
…話しが続かない。
お兄さんがいないと気まずい。
あまり二人で話す話題などはないために、沈黙が続く。
「……」
「あ、あの…」
瞳が口を開く。
「…な、なんだ?」
「突然ごめんなさい。でも…あまり話すことなかったから…少し話してみたくて…」
「…俺もそう考えてたよ。話さなきゃな…と思いながら気まずくてな…悪い。」
「い、いえ!…私…凄く酷い人達に育てられてて、もしかしたら、私も光希さんと同じように、道端で暮らすしかなかったかもしれなくて…お兄さんが拾ってくれなきゃ、いつ死んじやうかも分からなくて…」
「…そうか…」
「はい…だから、話してみたかったんです。光希さんと…」
「…そうか…なら…俺らが拾われるまでのことでも話すか?」
「え?」
「俺らの話すことなんで、それくらいしかないしな。」
「…そう、ですね…教えて下さい。光希さんのこと…」
「ああ。代わりにお前も教えろよ?」
「…はい!」
育に内緒の俺の昔、瞳には話してもいいかもしれない。
出来れば育にはばれたくない。
だから…
「育には内緒だぞ?」
口止めはするべきだ。
「はい…」
この子は良い子だ。
内緒と言えば言わないだろう。
俺はぽつぽつと、昔の話しをしていった。
次は昔話…ではなく育視点です。読者さんは育視点で話を見て頂きたいので、昔話は育に話す時に一緒に聞いて下さい。