やはり瞳ちゃんはまだ不安なようだ。
光希君のように堂々とすることは難しそうだ。
以前の環境を、以前の両親を、以前の学校を、思い出しては泣いている。
今回だけではなく、小さいことでも泣いていることが多い。
根付いた恐怖はそう簡単に消すことは出来ない。
昨日のことも相まって、流石の僕にも分かる。
彼女は、父親という存在に怯えている。
僕が『お兄さん』から『お父さん』に変わることに恐怖している。
「僕は…親にはなれないのかな…」
僕がお父さんになってしまったら、彼女とは話しも出来ないだろう。
なら親を目指すことは、止めるべきなのかもしれない。
―――――
「ただいま……何してんの?」
「あ、光希君おかえり。」
「寝てんの?ソファーにでも寝かせりゃいいのに…」
「あはは…そうだね…」
「………」
光希君は部屋を出た。
何も言わずに、僕達を放ってくれた。
不器用ながらに気遣ってくれたようだ。
何があったか分からないのに、僕が落ち込んでいることも、瞳ちゃんが泣いていたことも悟ってくれた。
「ありがとう。」
「…別に…」
今は…少し休みたい。
―――――
「ううん…」
「あ、おはよう瞳ちゃん。」
「お兄さん…?…!」
瞳ちゃんは僕から飛び退いた。
恥ずかしいや失礼など、理由は色々だろう。
「私…」
「怖いのは分かるよ。前が酷かったんだから…だからね、瞳ちゃん。僕は『お父さん』にはならない。」
「……違うんです…私は…優しいお父さんが欲しかった…構ってくれるお母さんが欲しかった…でもお兄さんには…『お兄さん』でいてほしかった…!」
「うん。」
「お兄さんが大好きで…光希さんも優しくて…夢が叶ったみたいで…いつも楽しくて…」
「うん。」
「お兄さんがお父さんを目指しているのは分かっているのに…『お父さん』になることは怖かった…」
「うん。」
「だから…今はまだ…『お兄さん』でいてくれますか…?」
「当たり前だよ。瞳ちゃんや光希君を…あとヒイロもね、幸せにするために引き取ったんだから…瞳ちゃんが『お兄さん』でいてほしいと思うなら、僕はそれを尊重する。」
子供の幸せを願う親も当たり前であれば、妹や弟を守る兄も、当たり前のことだろう。
《光希視点》
「……当たり前か…」
育が兄なら俺は次男か、少し曖昧なものだ。
でも確実なのは、瞳は俺にとっては妹だ。
そして育は俺にとっては父親だ。
ならば、瞳を守るのは、育だけじゃない。
俺も一緒だ。
「幸せを願うってのも悪くないな…」
苦しむ瞳を横目に、おじさん達が僕の幸せを願ってくれる気持ちを、少しながら理解した。
これが、親心という物なのだろう。
親心って言っても光希君は兄だけどね。光希君はいいこなんですよ~瞳ちゃんもね?最初の子達だから…ねぇ?(ノープラン)。