「行ってきます!」
笑顔でそう言う瞳ちゃんへの返しはいつも同じ。
「行ってらっしゃい。」
僕もまた、笑顔でそう返す。
見送りにはヒイロが大体いる(何故だろう?)。
光希君は基本昼まで起きることはない。
「…ヒイロは散歩とか行かないの?」
「なん?」
―――――
「んー…!」
休みだからとゲームばかりしていた体を思い切り伸ばす。
5,6時間していたせいでばきばき鳴る。
やはりRPGは長い時間黙々とやるのに凄く向いている。
F○9のカードゲームのシステムはコンプしたくなる。
盗むも何気に楽しい。
8のようなレベル上げ地帯(地獄に一番近い島)がない分レベル上げも楽しめる。
体を伸ばしていると、光希君が起きて来た。
時間は昼過ぎくらい。
「……あ、光希君おはよ~」
「はよ…何してんの?」
「F○」
「なにそれ?前のパーティーゲームみたいの?」
「ああ違うよ。RPGって言って、物語を自分で進行出来るゲームだよ。」
「へぇー…」
「あ、昼御飯は置いてあるよ。そろそろ起きると思ったから…」
「…ありがと。」
実はストーリー進行中に昼を作って置いておいた。
僕も一緒に食べることにする。
「先食べてねぇの?」
「一緒に食べようと思って…」
「……ヒイロ~」
「にゃーん!(テッテッテッ)」
皆で昼御飯を食べ始めた。
―――――
「なぁ…」
「?どうしたの?」
「……そろそろ一ヶ月くらいだろ?俺が来てから…だから…そろそろ…話さなきゃと思って…」
「話す?」
「俺が何で路上で生活してたのか…」
「!」
「そんなに隠さなきゃいけないようなことじゃないんだ!ただ……育が…親になろうとしてるのを知ってるから…どうしても…」
こう言うということは、おそらく彼は…親に捨てられたなどという理由で、あそこで暮らしていたわけではないのだろう。
もしかしたら…
「両親は…生きているの?」
「………」
こちらが何となく分かったことに気付いたのだろう。
無言で首を横に振る。
「俺…普通の家で暮らしてたんだ…ここみたいに…ちゃんと親から愛されて…楽しく暮らしてた。」
「……ご両親の死因は…?」
「…浮浪者の快楽殺人に巻き込まれた。父さんも、母さんも、目の前で…!」
「……」
もしかしたらニュースで僕も見ているかもしれない。
よくある話しではあるが、目の前に被害者がいて、その子も浮浪児として暮らしてきた。
「皮肉だよ…路上で生活してた奴に親殺されて、自分も路上で生活してんだから…それに、今なら分かる。なんであんなことしたのか…結局俺も同じだからさ…」
「……」
悲しそうに…しかし笑い飛ばすように、彼をそう言う。
「親戚に預けられたけど、殴る蹴るは当たり前、飯作らなきゃ縛られて納屋に放置、ろくに飯も貰えない。」
「……瞳ちゃんの話しは聞いたかな?」
「…ああ。似てた。それも俺より小さい女の子が、生まれてからずっと…」
「…そっか…」
「俺も逃げたんだよ…そんな環境から…でも、正解だった。道端で暮らすごみ溜めのじいさん達は、いつも楽しそうに笑ってた。一番小さい俺を何かと気にかけてくれたし、次は育が来た。」
「…今は、幸せかな?」
「ああ!瞳も毎日楽しそうだしな。だからさ…話しといて何だけど…過去なんて気にしないでほしい。俺は両親が好きだった。でも同じくらい、じいさん達や育、瞳が好きだ。父さんって呼ぶのは時間がかかるかもだけど…改めてよろしくな!」
「うん。こちらこそよろしく!」
終わり良ければ全て良し。
今が幸せなら、過去はどうでもいい。
彼は凄く強い子だ。
(光希君のご両親…この子は立派に生きてます。安心してお眠り下さい…)
深く黙祷を捧げた。
―――――
――日
光希君の過去を聞いた。
瞳ちゃんと同じで虐待されていた。
両親にではなく親戚だが、そこから離れて浮浪児として路上で生活していたらしい。
でも今は…心底楽しそうに暮らしている。
おじさん達にも近々挨拶に向かうつもりだ。
光希君の話しからすると、良い人達なのだろう。
それと…会話してるとき…時々自分を僕と呼んでいたのだが…どうやら虚勢を張るための演技だったらしい。
まあそれに慣れて、最近は素がそっちになっている。
帰って来た瞳ちゃんともこの会話を少しした。
知っていたからか、そこまでの狼狽は見せなかった。
僕はこれからも、この子達に幸せを与えていこうと思う。
ちなみに最初から最後までヒイロは光希君に寄っ掛かって寝てました。