僕の家に、また一人人が増えた。
家族…とはまだ言えない。
彼女が望まない限り、家族にはなれない。
二人も分かっているらしく、客として接するように接している。
簡単に言えば、遠巻きに眺める…ようなものだ。
父親が捕まって丸一日、彼女が部屋から出ることもなかった。
未だに名前も分からないのだ。
果たしてどうすればいいのか。
そんな疑問を抱きながら、ヒイロとソファに横たわる。
―――――
「私…これからどうすればいいの…?」
そう自問する。
それに答えたのは、恐らく自分だ。
しかしその声は、他人の言葉のように聞こえてくる。
『この家に住めばいいじゃない。今までと…何も変わらない。』
「変わらない…?」
『そうよ。また安い女に成り下がって、渡り鳥みたく逃げればいい。』
「……」
『どうしたの?今までと同じじゃない♪』
私を嘲笑するように、目の前の私は上機嫌だ。
今までは、確かに渡り歩いて来た。
自分を売って、逃げ続けてきた。
「そうだね…何も変わらない…」
『そう。そうやって臆病者であるのが、一番幸せよ♪』
(…本当に?)
何故思ったかは分からない。
しかし私はそう思った。
それが…幸せと呼べるのか。
逃げ続けることに意味もなければ、その先に幸せなどないのではないか。
塞ぎこんで自分を貶め、周りさえも悪戯に傷付ける。
これが本当に幸せなのか。
「…違う。」
『ん?』
「違うよ…そんなの…ただ苦しいだけ…生きることに何も価値をなくして、ただ苦しい道を進むだけ…そんなの…幸せじゃない…!」
『…そう?いいじゃない?辛いことから逃げて、あんなクズの親を忘れて、何もなかったように振る舞えば、貴女は普通の女の子になれるのよ?辛いことは忘れなさいって言うじゃない。貴女は、幸せになりたくないの?』
彼女は…私は苦しみたくないだけ。
楽しい思いで一杯にして、辛いことに蓋をする。
そんな偽物の幸せを目指している迷い人。
でも…
「それだけが…幸せになる方法じゃない…!」
『………』
「全部乗り越えて、初めて本物になるの…!貴女のそれは、ただの現実逃避!私は、貴女にはならない!父親にされたことも…これまで失ったものも…全部含めて、私の人生なの!」
『…な~んだ。分かってるんじゃない?私は貴女。だから私も、貴女の姿。貴女は…どんな貴女になれるのかしら?』
「…私は…絶対に、失わない!もう何も…」
助けてくれた人に報いるために。
私を戻してくれた子達のために。
空から視てくれてる母のために。
今私は、蓋を開ける。
私が、
今、部屋の扉を開く。
「…おはよう。」
優しい言葉をかけてくれる彼に。
「…ありがとう…!」
涙ながらに感謝をする。
私が泣いたことにあたふたする彼は、とても頼もしくは見えなかった。
名前初出し。